神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

文字の大きさ
11 / 43

魔法の才能(1)

しおりを挟む
 一日目、二日目、三日目とエルンは緊張のせいかほとんど口を利かずゲオルクとイルゼを心配させたが、四日目になると少しずつ話すようになった。
 朝食の時だった。
「おじさんの仕事は何?」
 ゲオルクは突然の言葉に少し驚いた。
「おおお、俺か。俺の仕事は鍛冶屋だ。少し離れた森の中に仕事場がある。鉄を熱くして柔らかくして、打って叩いて農具や剣を作る仕事だ。ここで鉄を打つと近所迷惑になるから離れたところで作ってるんだ」
「見に行っていい?」
「……おお、いいぞ。じゃあ、これから一緒に行こうぜ」
「エルンは鍛冶屋に興味あるのかな?」
 イルゼが聞いた。
「わかんない。どんな仕事かよく知らないから」
「じゃあ、俺が教えてやらぁ」
 ゲオルクの仕事場は家から百メートルほど離れた木々に囲まれた一軒家にあった。
エルンとゲオルクが連れ立ってそこまで行く。エルンはきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。目新しい景色は新鮮だった。
「ここだ。古い家だが頑丈だ。鍛冶屋として独立するときに買ったんだ。遠慮なく入れ」
 大きくはない建物だったが太い柱と頑丈そうな壁が目を引いた。
 中へ入ると、鍛冶屋としてのたくさんの道具が備え付けられていた。何十種類ものハンマーに何十種類ものやっとこが壁に掛けられ、大小様々な金床、バケツ、ふいごが所狭しと設えられていた。
 ゲオルクは得意げにそれらをエルンに説明した。それからおもむろに窯の前にしゃがむと炭を入れ、火を付ける。火がある程度広がるとふいごで風を送る。たちまち炭が真っ赤に燃え上がる。
「この火の扱いが難しいんだ。ここが鍛冶屋の腕の見せ所だ。炎の色で温度がわかれば一人前だ」
エルンは興味深げにゲオルクの話を聞いていた。
「エルン、お前、わかっているのか」
わかってかわからずか「うん」と笑顔でうなずいた。ゲオルクはそれでもいいと思った。何か話をする切っ掛けがあればいい。
ゲオルクが鍛冶屋としての仕事を始めると、近くに椅子を置いてちょこんと座り、仕事ぶりを見ていた。手際のいい仕事、無駄のない動き、それらを興味深く見ていた。
「もうお昼だよ、おじさん」
 ゲオルクは立ち上がると窓から外を眺めた。太陽がちょうど真上に来ている。
「そうか。昼か。昼飯に帰るか。イルゼがシチューを作って待っていてくれる」
「どうしてわかるの」
「お前、この匂い、気が付かないか」
「ああ、この匂い、おばさんのシチューなんだ」
「この匂いはイルゼお得意の肉シチューだ。うまいぞ」
「お代わりしていい」
「何杯でもお代わりしな。全部食べてもいいぞ」
「うん、わかった」
「昼からも見るか?」
「昼からは森の中を歩いてみたいんだけど、いい?」
「おお、そうか。近所の散策だな。道に迷うなよ。まあ、大丈夫か。二年も森の中で生きていたんだからな」
「二年?」
 エルンは怪訝そうな顔を見せた。
 家へと戻る途中、ゲオルクはエルンに聞いてみた。
「お前、二年も森の中で、一人で生活していたそうだが、大丈夫だったか?」
「……特に何もなかったけど」
「危ないこともあっただろ」
「そんな時は息を潜めてじっとしていれば大丈夫だった」
「そんなもんか? 食い物はどうしていたんだ?」
「探せば結構簡単に見つけることができたよ」
「……そんなもんか」
 ゲオルクは簡単そうに言うエルンが不思議でならなかった。話に聞くと森に迷い込んだ者が生きて帰ってくることの方が珍しいのだ。妙な子供だとゲオルクは内心思った。
 昼食をエルンとゲオルクとイルゼの三人で食べているとき、エルンが何かに目を留めて指を指した。
「あそこに置いてある本は何?」
 イルゼが何のことかとそちらへと目を向けると棚の上に一冊の古い本が置いてあった。
「ああ、あれは鍋敷きよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。 果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか? ………………… 7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ………………… 主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...