11 / 117
魔法の才能(1)
しおりを挟む
一日目、二日目、三日目とエルンは緊張のせいかほとんど口を利かずゲオルクとイルゼを心配させたが、四日目になると少しずつ話すようになった。
朝食の時だった。
「おじさんの仕事は何?」
ゲオルクは突然の言葉に少し驚いた。
「おおお、俺か。俺の仕事は鍛冶屋だ。少し離れた森の中に仕事場がある。鉄を熱くして柔らかくして、打って叩いて農具や剣を作る仕事だ。ここで鉄を打つと近所迷惑になるから離れたところで作ってるんだ」
「見に行っていい?」
「……おお、いいぞ。じゃあ、これから一緒に行こうぜ」
「エルンは鍛冶屋に興味あるのかな?」
イルゼが聞いた。
「わかんない。どんな仕事かよく知らないから」
「じゃあ、俺が教えてやらぁ」
ゲオルクの仕事場は家から百メートルほど離れた木々に囲まれた一軒家にあった。
エルンとゲオルクが連れ立ってそこまで行く。エルンはきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。目新しい景色は新鮮だった。
「ここだ。古い家だが頑丈だ。鍛冶屋として独立するときに買ったんだ。遠慮なく入れ」
大きくはない建物だったが太い柱と頑丈そうな壁が目を引いた。
中へ入ると、鍛冶屋としてのたくさんの道具が備え付けられていた。何十種類ものハンマーに何十種類ものやっとこが壁に掛けられ、大小様々な金床、バケツ、ふいごが所狭しと設えられていた。
ゲオルクは得意げにそれらをエルンに説明した。それからおもむろに窯の前にしゃがむと炭を入れ、火を付ける。火がある程度広がるとふいごで風を送る。たちまち炭が真っ赤に燃え上がる。
「この火の扱いが難しいんだ。ここが鍛冶屋の腕の見せ所だ。炎の色で温度がわかれば一人前だ」
エルンは興味深げにゲオルクの話を聞いていた。
「エルン、お前、わかっているのか」
わかってかわからずか「うん」と笑顔でうなずいた。ゲオルクはそれでもいいと思った。何か話をする切っ掛けがあればいい。
ゲオルクが鍛冶屋としての仕事を始めると、近くに椅子を置いてちょこんと座り、仕事ぶりを見ていた。手際のいい仕事、無駄のない動き、それらを興味深く見ていた。
「もうお昼だよ、おじさん」
ゲオルクは立ち上がると窓から外を眺めた。太陽がちょうど真上に来ている。
「そうか。昼か。昼飯に帰るか。イルゼがシチューを作って待っていてくれる」
「どうしてわかるの」
「お前、この匂い、気が付かないか」
「ああ、この匂い、おばさんのシチューなんだ」
「この匂いはイルゼお得意の肉シチューだ。うまいぞ」
「お代わりしていい」
「何杯でもお代わりしな。全部食べてもいいぞ」
「うん、わかった」
「昼からも見るか?」
「昼からは森の中を歩いてみたいんだけど、いい?」
「おお、そうか。近所の散策だな。道に迷うなよ。まあ、大丈夫か。二年も森の中で生きていたんだからな」
「二年?」
エルンは怪訝そうな顔を見せた。
家へと戻る途中、ゲオルクはエルンに聞いてみた。
「お前、二年も森の中で、一人で生活していたそうだが、大丈夫だったか?」
「……特に何もなかったけど」
「危ないこともあっただろ」
「そんな時は息を潜めてじっとしていれば大丈夫だった」
「そんなもんか? 食い物はどうしていたんだ?」
「探せば結構簡単に見つけることができたよ」
「……そんなもんか」
ゲオルクは簡単そうに言うエルンが不思議でならなかった。話に聞くと森に迷い込んだ者が生きて帰ってくることの方が珍しいのだ。妙な子供だとゲオルクは内心思った。
昼食をエルンとゲオルクとイルゼの三人で食べているとき、エルンが何かに目を留めて指を指した。
「あそこに置いてある本は何?」
イルゼが何のことかとそちらへと目を向けると棚の上に一冊の古い本が置いてあった。
「ああ、あれは鍋敷きよ」
朝食の時だった。
「おじさんの仕事は何?」
ゲオルクは突然の言葉に少し驚いた。
「おおお、俺か。俺の仕事は鍛冶屋だ。少し離れた森の中に仕事場がある。鉄を熱くして柔らかくして、打って叩いて農具や剣を作る仕事だ。ここで鉄を打つと近所迷惑になるから離れたところで作ってるんだ」
「見に行っていい?」
「……おお、いいぞ。じゃあ、これから一緒に行こうぜ」
「エルンは鍛冶屋に興味あるのかな?」
イルゼが聞いた。
「わかんない。どんな仕事かよく知らないから」
「じゃあ、俺が教えてやらぁ」
ゲオルクの仕事場は家から百メートルほど離れた木々に囲まれた一軒家にあった。
エルンとゲオルクが連れ立ってそこまで行く。エルンはきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。目新しい景色は新鮮だった。
「ここだ。古い家だが頑丈だ。鍛冶屋として独立するときに買ったんだ。遠慮なく入れ」
大きくはない建物だったが太い柱と頑丈そうな壁が目を引いた。
中へ入ると、鍛冶屋としてのたくさんの道具が備え付けられていた。何十種類ものハンマーに何十種類ものやっとこが壁に掛けられ、大小様々な金床、バケツ、ふいごが所狭しと設えられていた。
ゲオルクは得意げにそれらをエルンに説明した。それからおもむろに窯の前にしゃがむと炭を入れ、火を付ける。火がある程度広がるとふいごで風を送る。たちまち炭が真っ赤に燃え上がる。
「この火の扱いが難しいんだ。ここが鍛冶屋の腕の見せ所だ。炎の色で温度がわかれば一人前だ」
エルンは興味深げにゲオルクの話を聞いていた。
「エルン、お前、わかっているのか」
わかってかわからずか「うん」と笑顔でうなずいた。ゲオルクはそれでもいいと思った。何か話をする切っ掛けがあればいい。
ゲオルクが鍛冶屋としての仕事を始めると、近くに椅子を置いてちょこんと座り、仕事ぶりを見ていた。手際のいい仕事、無駄のない動き、それらを興味深く見ていた。
「もうお昼だよ、おじさん」
ゲオルクは立ち上がると窓から外を眺めた。太陽がちょうど真上に来ている。
「そうか。昼か。昼飯に帰るか。イルゼがシチューを作って待っていてくれる」
「どうしてわかるの」
「お前、この匂い、気が付かないか」
「ああ、この匂い、おばさんのシチューなんだ」
「この匂いはイルゼお得意の肉シチューだ。うまいぞ」
「お代わりしていい」
「何杯でもお代わりしな。全部食べてもいいぞ」
「うん、わかった」
「昼からも見るか?」
「昼からは森の中を歩いてみたいんだけど、いい?」
「おお、そうか。近所の散策だな。道に迷うなよ。まあ、大丈夫か。二年も森の中で生きていたんだからな」
「二年?」
エルンは怪訝そうな顔を見せた。
家へと戻る途中、ゲオルクはエルンに聞いてみた。
「お前、二年も森の中で、一人で生活していたそうだが、大丈夫だったか?」
「……特に何もなかったけど」
「危ないこともあっただろ」
「そんな時は息を潜めてじっとしていれば大丈夫だった」
「そんなもんか? 食い物はどうしていたんだ?」
「探せば結構簡単に見つけることができたよ」
「……そんなもんか」
ゲオルクは簡単そうに言うエルンが不思議でならなかった。話に聞くと森に迷い込んだ者が生きて帰ってくることの方が珍しいのだ。妙な子供だとゲオルクは内心思った。
昼食をエルンとゲオルクとイルゼの三人で食べているとき、エルンが何かに目を留めて指を指した。
「あそこに置いてある本は何?」
イルゼが何のことかとそちらへと目を向けると棚の上に一冊の古い本が置いてあった。
「ああ、あれは鍋敷きよ」
41
あなたにおすすめの小説
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる