彩光の詩 ~Eternal Echoes~

絹咲メガネ

文字の大きさ
11 / 29
1st STAGE ~Eternal Echoes~

第11話【響き合う心】前編

しおりを挟む
────────────────――――
 秋の夕陽が音楽室を茜色に染める放課後。

 彩花の指先が紡ぐ星のようなメロディと、れいの弦が奏でる繊細なアルペジオ。

 音と音が触れ合い、心と心が近づく瞬間。二人の想いが、静かに重なり合う――。
────────────────――――

・音楽室の夕陽:揺れる心の序曲・
 9月下旬、霧咲きりさき高校の音楽室は秋の夕陽に染まる。

 桜並木の紅葉がそよぐ中、秋の音楽フェスティバルの最終練習が熱を帯び、BlossomEchoブロッサムエコーNightReaverナイトリーヴァーの音が響き合う。

 彩花はキーボードを奏で、怜とのセッションで芽生えたフレーズを、流れるように鮮やかな曲に織り上げる。

 星空のようなメロディが、彼女の指先から自然に溢れ、音楽室を満たす。

れいくんのギター……私の音、届いてるかな……?

 りんの笑顔がちらつくが、怜の静かな瞳に心が引き寄せられる。

 怜は彩花の音に心を奪われる。

あのセッションの断片が、こんな美しい曲に生まれ変わるなんて……

 怜はふと、そう思った。

彩花さんの音……どうしてこんなに心を掴むんだろう……。

 彩花の才能に、胸が高鳴る。

 彩花がメガネを直す仕草に、怜の視線が止まる。

 彼女のメロディに心が引き寄せられるが、想いを言葉にする勇気がためらう。

あの音、俺のギターにまだ見ぬ力を与えてくれる……

 秋の風が楽譜をそっと揺らし、音楽室に静かな緊張が漂う。


・音の会話:心の触れ合い・

 練習の合間、怜は深呼吸し、彩花に近づく。

「……彩花さん、新しい曲、めっちゃいいね。キーボードのメロディ、秋の夜空みたいで……心に響くよ。」

彩花さんの音、俺のギターと合ってる……

 穏やかな声に、誠実さが滲む。

 彩花は驚き、シルバーフレームのメガネ越しに怜を見る。

「……ほんと? ありがとう、怜くん……」

 怜くんの真剣な瞳…… あのセッションで私の音を深く聴いてくれたときと同じ…… 心がこんなに温まるなんて……

 ロングヘアをそっと触り、はにかむ。

「怜くんたちのハードロックも、かっこいいよ…… また一緒にセッション、できるかな?」

 怜の瞳が輝く。

「うん、絶対……! 彩花さんのキーボードと合わせるの、ほんと楽しい。」

 勢いで続ける。「彩花さんの制服、きっちりしてて…… めっちゃ似合ってるなって……」

やばい、言っちゃった……!

 頬が熱くなり、ギターをぎゅっと握る。

 彩花の心が弾み、頬が赤らむ。

「……え、ありがとう……! 私、制服姿、自信なかったけど…… 怜くんにそう言ってもらえて、嬉しい……」

 怜くん、こんな風に……メガネを直し、地味な自分への小さなコンプレックスが温かな光に変わる。

 怜は照れ笑いを浮かべる。

「……うん、ほんとだよ。彩花さんの音楽も、全部……めっちゃいいなって。」

 秋の夕陽が二人の影を柔らかく照らし、音楽室に温もりが広がる。


・魔法の片鱗:彩花の輝く才能・

 怜は彩花の音作りに目を向ける。

彩花さんのキーボード、普及型のKASHIMAカシマ TONEトーン KT61…… 
本格的な音楽機材じゃないのに、こんな鮮やかな音を生み出すなんて……

あの不思議な音の秘密、聞いてみたい……

 心を奪われ、思わず踏み込む。

「彩花さんの音作り、ほんとすごいなって……。俺、昔キーボードやってたから、気になって。どうやってあんな鮮やかな音色出してるの?
あの学園祭のキラキラしたイントロ、まるで物語の幕開けみたいで、ずっと心に残ってるんだ……」

 彩花は鍵盤から手を離し、驚いたように怜を見上げる。

「え……! ありがとう。怜くん、キーボードやってたんだ……」

 照れながら続ける。

「私のキーボード、実は中学の時に親に買ってもらった誕生日プレゼントなの。
音作りは……理論じゃなくて、感覚でやってるだけ。好きな音をプリセットして、演奏中にフットスイッチで切り替えてるの。たとえば……」

 彼女は鍵盤に触れ、秋の光が織りなすフレーズを弾く。

 エレクトリックピアノの柔らかな響きを基調に、音階のピークでアコースティックピアノの澄んだアタックが一瞬だけ輝く。

 フットスイッチを小刻みに操るリズムが、曲の感情を呼吸のように導く。

「この曲だと、静かなパートでエレピの温かみを、盛り上がるところでピアノのアタック感を使って……
曲の心をそのまま表現したくて。私の気持ちを、音で伝えたいんだ……」

 怜は目を輝かせ、言葉を失う。

「それ……めっちゃすごい……! 音色の切り替え、タイミングが絶妙で…… まるで曲が生きてるみたいだ。」

 怜の心の中で、驚きが言葉になる。

これは……言ってみれば「リアルタイム音色スイッチング技法」。

フットスイッチで音色バンクをシームレスに変更する技法だけど、ワンフレーズでここまで細かく、何度も自然に切り替えるなんて…… 世界のトッププレイヤーでも見たことがない。

指と足の完璧な同期―― 数ヶ月以上の猛練習を繰り返しても、普通に考えたら、こんなタイミング良くできるはずがない。

彩花さん、どうやってこんな極限の技を……?

こんな才能、初めて見た……


 怜は全ての疑問をぶつける覚悟を決めた。

コーラス揺らぎの効果ディレイ残響音はどうしてる? あの透明感、どうやって出してるの?」

 彩花はメガネをそっと直し、微笑む。

「うーん……ディレイはタッチを大切にしたいから、ほんの少しだけ。アップテンポの短いコードでは、コーラスを大胆に深くかけて、音に推進力を与えるの。
 心の鼓動が、聴く人の気持ちを突き動かすように、フレーズに命を吹き込むんだ。」

怜くん、私の音にこんなに感動してくれるなんて……

 怜は心を奪われる。

彩花さんの音は、機材を越えて心を響かせる…… 
コーラスを強めにかけるのはビギナーがやりがちな失敗だと思ってたけど、彼女の音は自然に調和する。

一流ギタリストがどんなギターでも自分の音を出すように、彩花さんの音は彼女だけの輝きを放つ……
もし、本格的な機材で演奏したら、どんな世界が……生まれるんだろう…… 俺、絶対聴いてみたい……

 怜の心は、彼女の才能への尊敬と憧れで高鳴る。

 彩花は怜の熱い視線にドキリとし、逆に質問を返す。

「怜くんは……どうやって音作りしてるの? あのアルペジオ、いつも私の心を揺さぶるんだけど……」

 怜は弦をそっと撫で、緩めたネクタイが夕陽に光る。

「俺は……感情をそのまま音にする感じかな。音の切れ目を出さないように、同じコードでも左手の指の移動が最小限で済む位置を狙ってる。
フレーズの流れを滑らかにして、感情が途切れないように意識してるんだ。盛り上げたいときはアルペジオでメロディックに、颯のリフに合わせるときは力強く……。
でも、彩花さんのメロディを聴くと、俺のギターももっと表現したくなる。彩花さんと一緒に曲を作ったら、どんなハーモニーになるんだろうって……」

 彩花の瞳がパッと輝く。

怜くん……そんな真摯な情熱で音を紡いでるなんて…… 怜くんのギターを聴いてると、なんだか心が自由になる……

「うん……私も! また一緒にセッションしようね……」

怜くんの音、もっと近くで感じたい……

 二人の音が響き合い、音楽室に静かな高揚感が生まれる。

 心が一つになる瞬間だった。
────────────────――――
・次回予告:第12話【響き合う心 前編】
 彩花と怜の心が近づく中、倉庫での予期せぬ触れ合いが、二人の距離を一気に縮める。
 夕陽に染まる音楽室で、想いが言葉になる瞬間―― 次回、第11話「響き合う心」後編へ続く。

 この第11話で、あなたの胸にどんな気持ちが残りましたか? 彩花の不思議な才能、怜の静かな憧れ、二人の音が初めて本当の意味で響き合った瞬間……
 もし、少しでも心が揺れたり、温かくなったりしたなら、ぜひ、その想いを聞かせてください。どんな小さな言葉でも、すごく嬉しいです。
────────────────――――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...