寵愛を受けた"元"公爵令嬢は、帝国で本当の幸せを掴む

天音 翔

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1章

親子

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 「お父様!!!」
 部屋に入ってすぐそう言うと、ソフィアはアトゥールに飛びつく。
 淑女的にははしたないことだが、皆がそのことを黙認した。
 なぜなら、2人の久しぶりの再会だから........

 「ソフィ.........」
 アトゥールは、存在を確かめるかのように強く抱きしめた。

 「お父様、お父様.........」
 するとソフィアは、今まで溜まっていた分の涙をこぼしていた。
 ポロポロポロポロとアトゥールの手により回復した瞳から、沢山の雫を落としている.........

 その姿を見た人々と神達は、苦しそうに唇を噛みしめている.....
 自分達では、愛し子であり後々知ったが主神様の本当の娘であるソフィアを今まで救うことがでになかった上に、目の前で涙を流す姿を見て、ソフィアが辛かった時自分達は何していた!と辛い思いが皆、走馬燈のように溢れだしていた.........

 「ねぇ、お父様。これからも、ソフィアと一緒にいてくれるの??ずっと一緒??みんなも一緒??」
 ソフィアは、今まで甘えられなかった分、心から思っている願いを告げた。
 記憶を書き換えられても、寂しい気持ちは覚えていたようで、とても悲しそうな表情だった。

 そんなことをずっと思い続けていたのかと、はじめてソフィアの思いを知った彼らは、思わず息を飲み主神の言葉を待った。

 「.........うん。みんな一緒にいるよ。これから、ずっと。」
 アトゥールは、そう言うと心から笑みを浮かべ涙を目に堪えていた.........

 まるで、幼い頃に戻ったかのようだった.....
 アトゥールはソフィアが甘えて、本当のことを話してくれる、それがまた嬉しくて仕方がなかった。

 すると、ソフィアはとても嬉しそうに満面の笑みを見せた。
 その笑みにより、その場の物凄く暗い空気は吹き飛ばされ、思わずその場にいた皆も笑みを浮かべて、みんなで笑いあった。

 「ソフィ.....感動の再会もいいけど、そろそろ俺の所に「待て、エドワード。もう少し2人に話をさせてやれ、久しぶりの再会なんだぞ?」

 「はぃ.....父上。」
 ソフィアに話しかけた途中で、父である皇帝によって話を遮られたエドワードは不服そうだったが、しょうがなく諦めた。
 
 そしてこちらの親子、皇帝のカイルとエドワードも2人を見守りながら話を続けた。


 2組の親子の仲睦まじい姿を見た神達は、微笑ましく思いながら見守っていた.........
 「(いいなぁ.....)」
 アガウスは、そんな仲の良い2組の家族を見て羨ましく感じていた..... 

 「なぜ、羨む必要がある?これから俺と家族になるのだから俺に甘えればいいだろ?なぁ、アス。」
 すると、隣になぜかコアトリクエ様が現れたのだ。

 「え!?コ、コア様?なぜここに??そして、なぜ愛称なの!?」

 「いや、たまたま仕事終わってお前のこと考えてたら、いいなぁ、なんて羨む可愛い声が聞こえたから会いに来たんだぜ。

 よぉ、主神!この後さっそくアガウス貰ってくな!あと、準備出来たぞ。いつでも消滅させることは可能だ。」

 「.........いつ来たのさ、ゴホッゴホッですか、コアトリクエ様?」
 突然現れた、コアトリクエ様に驚き思わず、敬語を使うのを忘れかけていた.....
 
 「さっきだ!」
 コアトリクエ様は、自信満々に腰に手を当てながら、言った。

 「今は、アスと呼ぶが夜は、アーと呼んでドロドロに甘やかしてやんよ。
 アーは、今からでも俺をアークって呼べ。
 お前だけが呼んでいい愛称だ。」
 アトゥールに話しかけるのとは別に、アガウスの耳元であまぁ~い声で囁いた。

 すると、アガウスは顔を赤くし固まってしまった。
 それを見た他の神達は、アガウスに申し訳なく思いながらも『あ、赤くなってる。クリティカルヒットだ!』などと色々な勝手な思考を重ねているのだった.......

 そんな仲睦まじい2人をみてアトゥールはソフィアの頭を優しく撫でながら、笑みを浮かべていた.....


 そして、心の底強くで願った。

 この先ずっと、このように穏やかな日々が続きますようにと。

 
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