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第7章 私が運命に翻弄される悲劇の悪女だなんて、絶対誰にも知られたくない!

第28話 あなただけを愛しています(※)

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「お腹、触るの、……っ」
「きもちいですか?」
「んっ」

 ぐりぐりと、腹の上から子宮を刺激すると、ビクビクと膣が締まる。

「あっ、あっ、んっ」
「ね、もう、いいですか……?」
「んっ、んぅ……」

 徐々に腰を大きく動かしていくと、彼女の腰もゆらゆらと揺れ始めて。

「んっ、んっ」
「動いて、いいですかっ……?」
「んっ、ぁあ、んっ、……いい、よ」

 待ってましたとばかりに、腰を大きくグラインドさせた。

「あ、あぁ、ああああっ」

 激しく腰を振れば彼女の白い喉元がさらされて、ボクの肩に爪が食い込む。その痛みすら、今のボクにとっては快感でしかない。

「あっ、あっ、ああああ」
「んっ、も、イキます……っ、も、出ます……!」
「んっ、あぁ、わたしも、んんぅ、イク、イク……!」
「っ、くぅ、あ、ぁぁ……っ!!」

 射精して、そのまま奥へ奥へと精子を送り込むように腰を動かし続けた。

「あっ、あぁ、ふっ、んんんっ」

 そんなボクを彼女がぎゅっと抱きしめてくれるから、ボクも彼女を抱きしめた。繋がったまま抱き合っていると、二人の境が曖昧になっていくようで。多幸感に包まれて。
 そっと彼女の顔を覗き見れば、ボクと同じ気持ちでいてくれていると分かって。ボクはいっそう強く、彼女を抱きしめた。


 * * *


 彼女が作ってくれた食事はすっかり冷めていて。二人で温め直してからいただいた。とても美味しくて、また幸せな気持ちになった。

「明日も仕事でしょ?」
「はい。魔王を倒すための聖剣が隠された、隠し迷宮ダンジョンの鍵が手に入ったんです」
「わ、すごい」
「真偽の程はわかりませんけど。明日、確かめに行ってきます」
「そっか。頑張ってね」

 一瞬、彼女の笑顔が寂しそうに揺れた気がした。でもボクは、気のせいだと思い込んだのだった。


 それを後悔したのは、次の日の朝になってからだった。


「エミリーさん?」

 目が覚めると、彼女の姿はどこにもなかった。寝室にも、キッチンにも、ダイニングにも、浴室にもいない。昨夜、たしかに一緒にベッドに入って眠りについたはずなのに。

「どこに……っ!」

 ふと、テーブルの上に2通の手紙が置かれている事に気づいた。一通はしっかり封がしてあって、『大好きなパパとママへ』と宛名が書いてある。もう一通は封がされておらず、『サイラスくんへ』と綺麗な文字で綴られていた。


==========

 サイラスくんへ

 ごめんなさい。
 本当は、ちゃんとお別れを言うべきなのに。あなたの顔を見ていると、どうしても言えませんでした。臆病でごめんなさい。

 ちょっと、遠くまで行ってきます。

 帰ってこれるかどうかは、分かりません。
 でも、帰ってきたいと思っています。そのために行ってきます。
 私は私の決めた生き方をしたい。だから、運命になんか従わない。

 もしも私が帰ってこなかったら。パパとママに手紙を届けてください。お願いします。

 大好きです。
 私は、サイラスくんのことが大好きです。
 私のことをかわいいと言ってくれて、好きだと言ってくれて、とても幸せでした。
 誰も知らない私を見つけてくれて、嬉しかった。

 愛しています。
 これからもずっと。あなただけを愛しています。

 それでは、また

 エミリー

==========


 握りしめたボクの手が震えて、手紙にシワが寄る。事情はわからない。それでも、彼女の気持ちは十分に伝わってきた。
 ポタポタと涙が落ちて、ボクは情けない嗚咽を漏らした。今のボクにできることは、それだけだった──。




 * * *




「暑い! どうにかして!」
「無茶言うな。こっから東は、ずーっと砂漠だよ」
「最悪……」
「あんた、素が出てきたな」
「別にいいでしょ」
「彼氏の前でも、そういう顔すんのか?」
「もっとカワイイ顔してますっ!」

 私とイアンは東隣の国の、さらに東端の町の外れにいる。そこから向こうは、見渡す限りの砂漠だ。

「本当に行くのか?」
「行くわよ」
「俺が送ってやれるのはここまでだ。ここから先は、一人だぞ」
「わかってる」

 イアンがため息を吐いてから、くるくると巻いた絨毯を渡してくれた。

「……なんで絨毯?」
「砂漠と言えば、空飛ぶ絨毯だろ?」

 同郷だ。その気持はよくわかる。

「ありがたく、お借りします」
「おう。こっちは魔物避け。つけてるだけで魔物から見つかりにくくなる」

 言いながら、イアンがペンダントを首にかけてくれた。

「強力な魔物には効かないから、気をつけろ」
「わかった」
「それと、保護の術式も組み込んでおいた」
「保護?」
「最悪魔物に捕まっても、死ぬ寸前までは守ってもらえる」
「死ぬ寸前?」
「そう。時間稼ぎだな。やばくなったら【東の魔女】にでも助けを求めたらいい。慈悲深いらしいから」
「ほんとに助けてくれるかしら」
「さあな」

 私は手元の地図を広げた。この先には広大な砂漠が広がっている、ただそれだけが判別できる地図に、赤いバツ印。

「この砂漠の向こうに、【東の魔女】がいるんだね」
「らしいな」
「……行ってくる」
「急げよ。魔王が倒されれば、俺達は強制送還だ」
「わかってるよ」

 時間がない。それでも、諦めない。

「私は、運命に翻弄される悲劇の悪女になんか、絶対にならない」
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