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丘の上のお姫様~姫島皐月の場合~7
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私が目を覚を覚ましたのは、ベットの上だった。
「一体ここは・・・?」
とても立派な部屋であるが、私の知っている王家の本宅や別宅とは、違った雰囲気である。
ベッドからゆっくりと体を起こすと、隣の部屋からメイド服を着た人が入ってきた。
「珠子様、お目覚めになられましたか?」
「何故私の名前を?って、ここはどこなんですか?」
私は、自分の記憶が蘇って、自分の意思でここに着たわけでは無いことを知ったのだ。身構えてしまうのは当然の事だ。
「大奥さまがお待ちでございます。」
しかし、帰ってきた答えは、私を混乱させるものだった。
「大奥さま?」
結局、私に有ったのは、有無も言わされることなく、メイドの後を着いて行くことしかなかった。
5分ほど歩いただろうか? 目の前に質素だけれど、綺麗な装飾のされたドアの前に着いた。
「大奥さま、お連れいたしました」
メイドがそういうと、内側からドアが開いた。
「さあ、中へどうぞ」
部屋の中を通されると、豪奢なベッドが部屋の中央に置かれていた。その回りを庭が見える窓が覆い、広い部屋がさらに広く感じる。窓から見える景色も美しく、色々な庭が楽しめる様に工夫されているのが分かる。
「あなたが珠子さん⁉」
凛とした女性の声が聞こえて、私は、再びベッドの方に視線を向けた。
そこには、大きなベッドには不向きな、線の細い女性の方が大きな枕に寄りかかって座っていた。
私よりも一回り年上くらいの方だろうか?綺麗な人である。でも、どこか。誰かに雰囲気が似ていた。
「聖さんも、皆さんも。ちっとも私に会わせてくださらないんですもの。」
「聖さんをご存知なんですか⁉」
私が訪ねると、クスクスと女性は笑いだした。
「ええ、知ってますとも。珠子さん。本当に環さんの若い頃にそっくりだから、ビックリしてしまったわ。私は巴よ。」
巴さんとおっしゃる女性は、そう言ってから私をベッドの方へ呼び寄せた。私も、何の警戒もなくベッドのすぐ近くまで歩み寄った。
「あの、ここは?」
「ここは、王家の別宅の一つ。皆、もう大きく育ったから、あまりここには近寄らないけれどね。」
クスクスといたずらっ子の様に巴さんは笑った。
「私ね、皐月の事を心配しているの。あのこったら、あなたの事を任されているから。気が張ってしまっていて。しかも、聖さんも雅さんも、結婚式の当日しかあなたに私を会わせてくれないと言うのよ。母親だと言うのに。」
「母親⁉」
「そうよ。私は、聖さんの義母ですもの。あなたはもうすぐ、私の娘になるの。」
「お母様?!」
思わず私は、息を飲んだ。なにしろ、聖さんからは、なにも聞いていなかったから・・・
「ごめんなさいね、驚かせてしまって。でもね、皆して私を会わせない様にするんですもの。特に皐月さんが。」
つまり、聖さんも、雅さんも、皐月さんも。お義母様から私を遠ざけるために「結婚式のエステ」を企画したと言うのである。
「あなたがエステをなさる日は、この時期社交界が忙しい時なの。それに、王一族の一大イベントが一月後に迫っていますしね」
巴さん改め、お義母様は、ベッドから体を起こし、私の手を握ってきた。
「お店に行こうとしても、あの三人があなたをガードしているし。それで、今日。丁度パーティもない日だったんですの。だから、チョット手荒な事をしましたが、あなたをここに連れて来てもらったんですの。」
お義母様は、少し悲しそうな顔をしたが、すぐにぱぁっと顔を明るくした。
「表面上は、あなたが一般人の暮らしをすることは、承知していますの。長である聖さんの決め事です。私も、それは受け入れましょう。ですが、お嫁にこられるからには、王家の嫁として、それなりの覚悟を持って来てくださらねば。だからといって、いじめたい訳では・・・」
ああ。それでだったんだ。誰に聞いても、お義母様の事を話してくれなかったのは・・・もしかしたら、一般人の私が、この世界を怖くなって逃げ出してしまうのかと。心配してくれたんだ。
お義母様も、私と話ができなくって。自分が背負っている責任を、結婚する前に話しておきたくって。心配で、わざわざこんな手を使って会ってくださったんだ。
私は、つい数ヵ月前まで身寄りのない、ただの喫茶店「坂の上」のオーナだったけれど。聖さんや皆からここまで大切に思われて。何て幸福者なんだろう。
「お義母様。私のために会う時間を作っていただき、ありがとうございます。」
私はその場で頭を下げた。
「いくら黙っていたとはいえ、お義母様の事を聞こうとしなかった私のミスです。本当にお会いしていただいて良かったです。」
「本当に、そう言ってくださるの?」
少し不思議そうに、美しい未来の母は、私を見つめていた。
「私の方こそ、これから色々ご面倒をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
再度、私が頭を下げる。お義母様は、嬉しそうに麗しい顔に満面の笑顔を浮かべた。本当に、この一族は、『美形の集まり』なので、なれはしたが・・・
「それでは、聖さんか皐月さんにでも連絡をして、迎えに来てもらいましょう。」
お義母様がそう言うと、メイドが私のスマホを持ってきた。
「あ、それと珠子さん。あなたにお願いしたいことがあるんですよ・・・」
私は、聖さんの電話にコールしようとしだが、お義母様の話の方が重要だったので、一先ず手を休めたのだった。
「一体ここは・・・?」
とても立派な部屋であるが、私の知っている王家の本宅や別宅とは、違った雰囲気である。
ベッドからゆっくりと体を起こすと、隣の部屋からメイド服を着た人が入ってきた。
「珠子様、お目覚めになられましたか?」
「何故私の名前を?って、ここはどこなんですか?」
私は、自分の記憶が蘇って、自分の意思でここに着たわけでは無いことを知ったのだ。身構えてしまうのは当然の事だ。
「大奥さまがお待ちでございます。」
しかし、帰ってきた答えは、私を混乱させるものだった。
「大奥さま?」
結局、私に有ったのは、有無も言わされることなく、メイドの後を着いて行くことしかなかった。
5分ほど歩いただろうか? 目の前に質素だけれど、綺麗な装飾のされたドアの前に着いた。
「大奥さま、お連れいたしました」
メイドがそういうと、内側からドアが開いた。
「さあ、中へどうぞ」
部屋の中を通されると、豪奢なベッドが部屋の中央に置かれていた。その回りを庭が見える窓が覆い、広い部屋がさらに広く感じる。窓から見える景色も美しく、色々な庭が楽しめる様に工夫されているのが分かる。
「あなたが珠子さん⁉」
凛とした女性の声が聞こえて、私は、再びベッドの方に視線を向けた。
そこには、大きなベッドには不向きな、線の細い女性の方が大きな枕に寄りかかって座っていた。
私よりも一回り年上くらいの方だろうか?綺麗な人である。でも、どこか。誰かに雰囲気が似ていた。
「聖さんも、皆さんも。ちっとも私に会わせてくださらないんですもの。」
「聖さんをご存知なんですか⁉」
私が訪ねると、クスクスと女性は笑いだした。
「ええ、知ってますとも。珠子さん。本当に環さんの若い頃にそっくりだから、ビックリしてしまったわ。私は巴よ。」
巴さんとおっしゃる女性は、そう言ってから私をベッドの方へ呼び寄せた。私も、何の警戒もなくベッドのすぐ近くまで歩み寄った。
「あの、ここは?」
「ここは、王家の別宅の一つ。皆、もう大きく育ったから、あまりここには近寄らないけれどね。」
クスクスといたずらっ子の様に巴さんは笑った。
「私ね、皐月の事を心配しているの。あのこったら、あなたの事を任されているから。気が張ってしまっていて。しかも、聖さんも雅さんも、結婚式の当日しかあなたに私を会わせてくれないと言うのよ。母親だと言うのに。」
「母親⁉」
「そうよ。私は、聖さんの義母ですもの。あなたはもうすぐ、私の娘になるの。」
「お母様?!」
思わず私は、息を飲んだ。なにしろ、聖さんからは、なにも聞いていなかったから・・・
「ごめんなさいね、驚かせてしまって。でもね、皆して私を会わせない様にするんですもの。特に皐月さんが。」
つまり、聖さんも、雅さんも、皐月さんも。お義母様から私を遠ざけるために「結婚式のエステ」を企画したと言うのである。
「あなたがエステをなさる日は、この時期社交界が忙しい時なの。それに、王一族の一大イベントが一月後に迫っていますしね」
巴さん改め、お義母様は、ベッドから体を起こし、私の手を握ってきた。
「お店に行こうとしても、あの三人があなたをガードしているし。それで、今日。丁度パーティもない日だったんですの。だから、チョット手荒な事をしましたが、あなたをここに連れて来てもらったんですの。」
お義母様は、少し悲しそうな顔をしたが、すぐにぱぁっと顔を明るくした。
「表面上は、あなたが一般人の暮らしをすることは、承知していますの。長である聖さんの決め事です。私も、それは受け入れましょう。ですが、お嫁にこられるからには、王家の嫁として、それなりの覚悟を持って来てくださらねば。だからといって、いじめたい訳では・・・」
ああ。それでだったんだ。誰に聞いても、お義母様の事を話してくれなかったのは・・・もしかしたら、一般人の私が、この世界を怖くなって逃げ出してしまうのかと。心配してくれたんだ。
お義母様も、私と話ができなくって。自分が背負っている責任を、結婚する前に話しておきたくって。心配で、わざわざこんな手を使って会ってくださったんだ。
私は、つい数ヵ月前まで身寄りのない、ただの喫茶店「坂の上」のオーナだったけれど。聖さんや皆からここまで大切に思われて。何て幸福者なんだろう。
「お義母様。私のために会う時間を作っていただき、ありがとうございます。」
私はその場で頭を下げた。
「いくら黙っていたとはいえ、お義母様の事を聞こうとしなかった私のミスです。本当にお会いしていただいて良かったです。」
「本当に、そう言ってくださるの?」
少し不思議そうに、美しい未来の母は、私を見つめていた。
「私の方こそ、これから色々ご面倒をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
再度、私が頭を下げる。お義母様は、嬉しそうに麗しい顔に満面の笑顔を浮かべた。本当に、この一族は、『美形の集まり』なので、なれはしたが・・・
「それでは、聖さんか皐月さんにでも連絡をして、迎えに来てもらいましょう。」
お義母様がそう言うと、メイドが私のスマホを持ってきた。
「あ、それと珠子さん。あなたにお願いしたいことがあるんですよ・・・」
私は、聖さんの電話にコールしようとしだが、お義母様の話の方が重要だったので、一先ず手を休めたのだった。
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