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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第270話・成せばなる、成さねばならぬといいますが
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ジュリア様のダイエットは無事に完了。
ミッション・コンプリートという事で、私たちもそろそろ、メルセデス邸を後にすることにしました。
「さて、それじゃあ帰るとしましょうか?」
「そうね。なんだか二階がもの凄く騒がしくなってきましたけど。ジュリア様の痩せた姿を見たお嬢さんたちが、その秘密を聞き出そうとしているのかもしれませんね」
「その通りだコン!! ジュリアさまが質問責めを受けつつも、必死に話をそらそうとしているコン」
「うわ、キリコには上の声が聞こえるのですか。これは、とっとと撤収するに限ると思うけど……」
うんうん。
私はすでに準備完了、覚悟も完了。
荷物なんてアイテムボックスに納めてあるので、片付けさえ終わらせて仕舞えばあとは簡単。
そのまま応接室で楽しい団欒をしているメルセデス夫人の元へ挨拶に伺いました。
今日の即売会は貴族のお嬢様がお相手。
ということはつまり、保護者である奥様たちもいらっしゃるということで、応接室はさながら、貴婦人たちのティーパーティ状態。
「あら、そのいで立ちは……もうお帰りなのかしら?」
メルセデス夫人が椅子から立ち、私たちの元へと近寄ってきました。
それに合わせて、私たちもゆっくりと頭を下げます。
「はい。本日の販売も終わりましたし、今頃サロンでは、ジュリアさんのダイエットについてお話に花が咲いているかと思いますので」
「それで、変に追及される前に、急いで撤収するということなのね……そんな心配は無用なのに」
「え、そうなのですか?」
はてさて、もしも私が体のことで悩んでいたとしたら、わずか数時間で激やせした方法を知りたくなりますが。どんな薬を使ったのか、どんな方法で痩せたのか。
それを知ることが出来れば、万が一にも太ってしまった時の対処も可能ですからね。
しかも、あと3日で始まるデビュタントに合わせて、少しでも美しくなることも出来るかもしれませんから。
でも、そんな心配は無用とは?
「そもそも、サロンを開いている最中に、主宰の許可もなく部屋から出ていくなんてありえませんもの。それも、ご友人が痩せた秘密を知るためにだなんて、そんな主宰の面子を潰すようなことはありません。ええ、今頃は皆さん、秘密を知りたくてソワソワしているでしょうけれどね……」
「ああ、そういうことですか」
即売会のあとのサロンでのティータイム、
当然ですが、それを取り仕切っている令嬢がいるはずです。
その令嬢を放っておいて、痩せるための秘密を知るためにサロンから出てくるなんてありえないと。
うん、確かにその通りですわ。
爵位による身分の格差、それについてはどうしても覆すことはできません。
叙爵した父親が絶対的な権力を持っている以上、格下の爵位を持つ貴族の令嬢たちもまた、上の身分の方の面子を潰すようなことはしません。
貴族の子女は、貴族法についてしっかりと学んでいるはずですから……と、この国の貴族法については、私も知らないので詳しくは存じませんけれど。
ハーバリオスでしたら、確かに令嬢同士でも格の違いについては、しっかりとしているはずですから。
「それで、まだ急ぎますか? 昨日、今日と二日間頑張ってくれた貴方たちをねぎらいたいのですけれど」
その言葉が真実であることは、集まっている婦人たちの優しいまなざしで理解できました。
「クリス店長、ここは折角ですから」
「そうですわね。では、喜んでお受けしますわ」
カーテシーで丁寧に挨拶をすると、私たちは婦人たちの招きを受けて、ティータイムに参加することになりました。
この様子ですと、ティータイムが終わり私たちが帰るときにも、ダイエット法について追及を受けることはないでしょう。
とにもかくにも、忙しかった二日間の出張販売もこれで終了。
明日は一日ゆっくりと休んで体調を整え、明後日にはハーバリオスを後にしましょう。
でも、今はこの場で、のんびりとお茶を楽しむことに。
「そうそう、フェイールさんは、このあとはどちらに行かれるのかしら?」
「この後ですか? 今のところは、目的地というものは定めていませんけれど」
思わずそう返事を返したのですが、クレアさんとキリコさんが頭を抱えてしまいました。
だって、このあとは王都からは離れる方向で旅をする予定出したから、具体的にどこへと……しまった!
失言です。
「あら、それならお願いがあるのですけれど」
「は、はぁ……それはどのような?」
やはり、そうきましたか。
こうなったら覚悟を決めて、メルセデス夫人のお願いに耳を傾けるしかありません。
「3日後、ここバンクーバー郊外でデビュタント・ボールが行われることはご存じですわよね。今日参加していた各家の令嬢たちも、そこでデビューするために奮発して買い物をしていたようですから。それてね、デビュタント・ボールのパーティーは勇者仕様で行うというのが、私たちの国の風習なのですけれど、そこで振舞われる料理の食材について、フェイール商店にもご協力をお願いしたいのですよ」
「そうそう、今年のデビュタント・ボールには、長年表舞台に出てこなかったソール王子が王家名代としてご参加することが決まったのですよ。なんでも、王家を支えるべく知識と経験を身に付けるため、隣国をはじめ、いくつかの国へ留学していたそうです」
は、はぁ。
つまり、そのソール王子が来るので、いつもよりデビュタント・ボールに力が入っているということですか。この話し方から察しますに、それを取り仕切っているのがアスパッハ辺境伯のようで。
その妻であるメルセデス夫人に、私は気に入られたようですね。
「そこでフェイール商店の食材を使って、料理を作ってもらいたいのですよ、あ、料理についてはちゃんと宮廷料理人の副料理長たちが出向してくるそうですので、フェイール商店には、当日、必要な食材の一部の仕入れをお願いしたいのです。詳細については、明日の夕方にでも、宮廷料理人の方から連絡を入れさせてもらいますし。なんでしたら、今晩もここに泊まっていって構いませんのよ?」
「あ、は……はあ……」
チラッとクレアさんたちを見ますが、すでに諦めモードの表情。
うんうん、これは私も断れる空気でないことは理解していますわ。
心の中で深いため息をつきつ、メルセデス夫人にはにっこりとほほ笑んで。
「いえいえ、二日もお世話になることはできません。宮廷料理人からのご連肉については、私どもが宿泊している宿にいらしていただければ、そこから移動することにいたしますので」
「あら、そうなの? せっかくだから、今日販売していた商品についても、色々と教えて欲しかったのですけれど」
「特に……ジュリア嬢をあのように一瞬で痩せさせた秘術、当然ながら門外不出の技なのでしょうけれど、私たちもできればあやかりたいなぁと思っていましたのよ。まあ、無理には申しませんし、今はデビュタントの方に全力を注いでほしいですからね」
あは。
あはは……。
完全に包囲されてしまいましたよ。
これは覚悟を決めて、デビュタント・ボールの手伝いに集中した方がよさそうですわね。
ミッション・コンプリートという事で、私たちもそろそろ、メルセデス邸を後にすることにしました。
「さて、それじゃあ帰るとしましょうか?」
「そうね。なんだか二階がもの凄く騒がしくなってきましたけど。ジュリア様の痩せた姿を見たお嬢さんたちが、その秘密を聞き出そうとしているのかもしれませんね」
「その通りだコン!! ジュリアさまが質問責めを受けつつも、必死に話をそらそうとしているコン」
「うわ、キリコには上の声が聞こえるのですか。これは、とっとと撤収するに限ると思うけど……」
うんうん。
私はすでに準備完了、覚悟も完了。
荷物なんてアイテムボックスに納めてあるので、片付けさえ終わらせて仕舞えばあとは簡単。
そのまま応接室で楽しい団欒をしているメルセデス夫人の元へ挨拶に伺いました。
今日の即売会は貴族のお嬢様がお相手。
ということはつまり、保護者である奥様たちもいらっしゃるということで、応接室はさながら、貴婦人たちのティーパーティ状態。
「あら、そのいで立ちは……もうお帰りなのかしら?」
メルセデス夫人が椅子から立ち、私たちの元へと近寄ってきました。
それに合わせて、私たちもゆっくりと頭を下げます。
「はい。本日の販売も終わりましたし、今頃サロンでは、ジュリアさんのダイエットについてお話に花が咲いているかと思いますので」
「それで、変に追及される前に、急いで撤収するということなのね……そんな心配は無用なのに」
「え、そうなのですか?」
はてさて、もしも私が体のことで悩んでいたとしたら、わずか数時間で激やせした方法を知りたくなりますが。どんな薬を使ったのか、どんな方法で痩せたのか。
それを知ることが出来れば、万が一にも太ってしまった時の対処も可能ですからね。
しかも、あと3日で始まるデビュタントに合わせて、少しでも美しくなることも出来るかもしれませんから。
でも、そんな心配は無用とは?
「そもそも、サロンを開いている最中に、主宰の許可もなく部屋から出ていくなんてありえませんもの。それも、ご友人が痩せた秘密を知るためにだなんて、そんな主宰の面子を潰すようなことはありません。ええ、今頃は皆さん、秘密を知りたくてソワソワしているでしょうけれどね……」
「ああ、そういうことですか」
即売会のあとのサロンでのティータイム、
当然ですが、それを取り仕切っている令嬢がいるはずです。
その令嬢を放っておいて、痩せるための秘密を知るためにサロンから出てくるなんてありえないと。
うん、確かにその通りですわ。
爵位による身分の格差、それについてはどうしても覆すことはできません。
叙爵した父親が絶対的な権力を持っている以上、格下の爵位を持つ貴族の令嬢たちもまた、上の身分の方の面子を潰すようなことはしません。
貴族の子女は、貴族法についてしっかりと学んでいるはずですから……と、この国の貴族法については、私も知らないので詳しくは存じませんけれど。
ハーバリオスでしたら、確かに令嬢同士でも格の違いについては、しっかりとしているはずですから。
「それで、まだ急ぎますか? 昨日、今日と二日間頑張ってくれた貴方たちをねぎらいたいのですけれど」
その言葉が真実であることは、集まっている婦人たちの優しいまなざしで理解できました。
「クリス店長、ここは折角ですから」
「そうですわね。では、喜んでお受けしますわ」
カーテシーで丁寧に挨拶をすると、私たちは婦人たちの招きを受けて、ティータイムに参加することになりました。
この様子ですと、ティータイムが終わり私たちが帰るときにも、ダイエット法について追及を受けることはないでしょう。
とにもかくにも、忙しかった二日間の出張販売もこれで終了。
明日は一日ゆっくりと休んで体調を整え、明後日にはハーバリオスを後にしましょう。
でも、今はこの場で、のんびりとお茶を楽しむことに。
「そうそう、フェイールさんは、このあとはどちらに行かれるのかしら?」
「この後ですか? 今のところは、目的地というものは定めていませんけれど」
思わずそう返事を返したのですが、クレアさんとキリコさんが頭を抱えてしまいました。
だって、このあとは王都からは離れる方向で旅をする予定出したから、具体的にどこへと……しまった!
失言です。
「あら、それならお願いがあるのですけれど」
「は、はぁ……それはどのような?」
やはり、そうきましたか。
こうなったら覚悟を決めて、メルセデス夫人のお願いに耳を傾けるしかありません。
「3日後、ここバンクーバー郊外でデビュタント・ボールが行われることはご存じですわよね。今日参加していた各家の令嬢たちも、そこでデビューするために奮発して買い物をしていたようですから。それてね、デビュタント・ボールのパーティーは勇者仕様で行うというのが、私たちの国の風習なのですけれど、そこで振舞われる料理の食材について、フェイール商店にもご協力をお願いしたいのですよ」
「そうそう、今年のデビュタント・ボールには、長年表舞台に出てこなかったソール王子が王家名代としてご参加することが決まったのですよ。なんでも、王家を支えるべく知識と経験を身に付けるため、隣国をはじめ、いくつかの国へ留学していたそうです」
は、はぁ。
つまり、そのソール王子が来るので、いつもよりデビュタント・ボールに力が入っているということですか。この話し方から察しますに、それを取り仕切っているのがアスパッハ辺境伯のようで。
その妻であるメルセデス夫人に、私は気に入られたようですね。
「そこでフェイール商店の食材を使って、料理を作ってもらいたいのですよ、あ、料理についてはちゃんと宮廷料理人の副料理長たちが出向してくるそうですので、フェイール商店には、当日、必要な食材の一部の仕入れをお願いしたいのです。詳細については、明日の夕方にでも、宮廷料理人の方から連絡を入れさせてもらいますし。なんでしたら、今晩もここに泊まっていって構いませんのよ?」
「あ、は……はあ……」
チラッとクレアさんたちを見ますが、すでに諦めモードの表情。
うんうん、これは私も断れる空気でないことは理解していますわ。
心の中で深いため息をつきつ、メルセデス夫人にはにっこりとほほ笑んで。
「いえいえ、二日もお世話になることはできません。宮廷料理人からのご連肉については、私どもが宿泊している宿にいらしていただければ、そこから移動することにいたしますので」
「あら、そうなの? せっかくだから、今日販売していた商品についても、色々と教えて欲しかったのですけれど」
「特に……ジュリア嬢をあのように一瞬で痩せさせた秘術、当然ながら門外不出の技なのでしょうけれど、私たちもできればあやかりたいなぁと思っていましたのよ。まあ、無理には申しませんし、今はデビュタントの方に全力を注いでほしいですからね」
あは。
あはは……。
完全に包囲されてしまいましたよ。
これは覚悟を決めて、デビュタント・ボールの手伝いに集中した方がよさそうですわね。
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