型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第7章・王位継承と、狙われた魔導書

第286話・魔族の侵入と、滅びし王国

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 フェイールの里を出発した私たちは、一路、カマンベール王国の王都を目指して爆走中です。

 ちなみにペルソナさんの操っているエセリアル馬車は、【型録通販のシャーリィ】の正規従業員のみが操れる配達用。精霊の加護が満載であり、いかなる目的地へも一瞬で移動できるという優れものですが……。
 実は、一つだけ欠点があるそうです。

「ええ。配達に向かう時間は朝と夕方6つの鐘が鳴ったときしか、実体化することはできないのですよ。それ以外の時間帯にエセリアル馬車の機能を使うと、ペナルティが加算されてしまいます。ですから、あと一刻もあれば配達先であるカマンベール王国に到着することはできるのですけれど、残念なことに実体化して配達が出来るのは朝か夕方のみですので」
「ち、ちなみにですが、私だけ馬車から降りるという選択肢は……」
「さすがにお勧めできませんね。それを許可してしまうと、クリスティナさんを守るのが難しくなってしまいます」

 現在、御者台にはノワールさんが座っています。
 へぼるソナさんは私の前に座り、これからのことについていろいろと説明してくれていますが、やはり定刻以外の実体化は難しいとのことです。

「そうですか、いえ、私の我儘でここまで付き合っていただいているのですから、これ以上の無理は言いませんので」
「まあ、多少は無理を言っていただいても構いませんけれどね(ボソッ)」

 ん?
 今、ペルソナさんがなにか呟いたように感じましたけれど。
 
「今、なにか聞こえたような気が……」
「はははっ。風の音だと思いますよ。それよりもカマンベール王国に到着してからは、クリスティナさんの出番ですよ。私は折り返しでヘスティア王国まで戻らなくはなりませんが、帰路の途中でフェイールの里に寄ってさしあげますので、ご安心ください」
「はい、ありがとうございます。本当に、ペルソナさんにはどれだけお礼を言っても足りないぐらいですね」

 うんうん。
 あまりペルソナさんだけに頼っていてもいけませんけれど、今回はご厚意に甘えることにしましょう。
 さて、何事もなければよいのですが。

………
……


――ガラーン……ガラーン……
 カマンベール王国大聖堂、夕方6つの鐘が響き渡る。
 私たちはすでに王城手前で待機中でして、ここまで無事に、何事もなく到着しましたよ。
 エセリアルモードが見破られた様子もなく、王城を取り囲む城塞も広く深い堀もすべて無視して、王城内部に向かって走り出します。
 ええ、このエセリアルモードでの王城内侵入については、以前もガンバナニーワ王国でやらかしているので慣れたものですよ。

 豪華な装飾品が綺麗に配置された廊下。
 赤いビロードの絨毯。
 一定間隔で立ち並ぶ重装騎士たち。
 
 ですが、彼らは私たちに気付いているようはありません。
 ということで、馬車は広い廊下をひたはしります。
 そして階段を駆け上がると、ついに謁見の間へと到着。
 
「ペ、ペルソナさん……あのですね、私のおばあさまへ荷物を配達する予定なのですけれど、どうしてここに?」
「はい、ご安心ください。届け先であるミネルバ・フェリシモア・ベルーナさまは、こちらにいらっしゃいますが……ノワールさん、少々やっかいな案件になるそうですが、どうしますか?」
「……わ、私はクリスィナ・フェイールさまの護衛です。盟約の範囲内で、お嬢様をお守りします」

――ゴクッ
 なんだか、いやな空気が流れています。
 心なしか、ペルソナさんからひしひしと緊張と言いますか、いえ、これは怒りの気配を感じます。
 私のために怒ってくれているのか、それとも何か別のことなのでしょうか。

「クリスティンさん、今から馬車を内部に突入させます。ですが、最悪のケースもある可能性がありますので、その場合は馬車を走らせて、ここの壁から外に飛び出してください」
「え、あ、あの、それってどういうことでしょうか……」

 そう問いかけた刹那、馬車は扉を越えて謁見の間へと走り込みます。
 そして勢いよく玉座の前まで向かうと、そこで急制動からのサイドターン。
 ええ、柚月さんが教えてくれた、ドリフトターンというものです。
 窓の中から外を見ると、小さな階段の先に玉座があり、エルフの女王が座っています。
 その手前、階段下には、立ってなにかやら怒鳴り散らかしているおばあさまと、それを取り押さえようとしているエルフの騎士が二人。
 そして、玉座の横に立っている、額から角を生やした紳士風の人物。

「チッ……やっばり魔族か。ノワール、ミネルバさんを奪取して撤退します!」

――ガチャッ
 馬車が大きくターンしている最中、ペルソナさんが馬車の右扉を開いておばあ様を掴みます。

「ミネルバさま。御届け物がございますが、魔族が邪魔なので一旦場所を変更します!! クリスティナさんっ!!」
「はいっ、おばあさま、こちらへどうぞ!!」

 ペルソナさんがおばあさまを馬車の中に引きこむと、私がそのままキャッチ。
 急ぎ扉が閉められたのち、馬車は大きく弧を描いてから、再び謁見の間から外に飛び出します!

「なんだなんだぁ? そいつは精霊馬車じゃねーかよ、こんなところまで飛び込んできて、一体なにをしようというんだぁ?」

 玉座の横に立つ魔族が背中に背負っていたらしい巨大な斧を引き抜くと、それを馬車めがけて投げ飛ばしてきました。
 それは間一髪、私たちが扉の外に飛び出したので馬車に直撃することはなく。

――バッギィィィィィィィィィィィィッ
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ」

 魔族が投げつけてきた斧が扉を貫通し、さらにエセリアル馬車の屋根を吹き飛ばしましたっ。
 う、嘘ですよね、この馬車に干渉できるのですか!!

「やっばりか……クリスティナさん、一旦この国を離れます。カマンベール王国は、すでに魔族の支配下にあります……」
「どうして? え? だって、魔族がこんなところまできて、何を企んでいるのですか……」
「今は情報が足りません。それに、この王国内では、エセリアルナイトは力を発揮できません。一旦、フェイールの里まで戻ります。詳しい事情が分からない以上、この国にいるのは得策ではありません」
「は、はいっ!!」

 二階のベランダから馬車が飛び降りて。
 大きく揺れましたけれど、特に壊れるような雰囲気なく、馬車は王城から飛び出し、一路、中央街道へ向かって走り出しました。
 
 ええ、街道沿いのあちこちには、黒い鎧を身に付けた騎士たちが馬に乗って走っています。
 兜の形状から察するに、おそらくは魔族の騎士たち。
 ですが、私たちの姿をとらえることはできていないらしく、真横を高速で駆け抜け、ハーバリオス王国へ向かいます。
 先ほどの衝撃でおばあさまも気を失っているようですので、どこかで一旦止まってもらい、様子を確認しないといけませんね。

 でも、一体何が起こっているのでしょうか。
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