型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第7章・王位継承と、狙われた魔導書

第288話・ペルソナと、アクターと

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 勇者召喚。

 魔王国が周辺諸国に対して侵攻を開始したとき、ターゲットとなった国家を中心とした連合国が、古代の秘術である『勇者召喚術式』を用いることで異世界から勇者を召喚します。
 初代勇者は剣聖ファーマス・ドラキオン、大魔導師カナン・アーレスト、大剣豪マルメ・グランド、聖女マリリン・アズリエッテ、最強執事ジェームズ・バトラーの5名。
 そして彼らに付き従っていたエセリアルナイトである竜王ノワール、幻獣王ブランシュ、巨人王クリムゾン、妖精王シアンと共に、魔王を倒し、永久封印を施しました。

 ですが、魔王国そのものは滅んでおらず、精霊の結界により魔王領そのものが世界から隔絶され、世界は塚野魔の平和を取り戻すことが出来ました。
 
 そして時代は進み、精霊結界の力が弱り始めたころ。
 魔族は再び立ち上がり、世界を手に入れるために近隣諸国と抗争を開始。
 魔王なき魔族は、従来の力を発揮することはできないものの、人間族の数倍以上の潜在能力を持っているため、彼らの侵攻を押さえるのは容易ではありません。
 そのため、東西諸王国連合は、魔族の侵攻が始まる旅に、再び勇者召喚を行っていました。
 
 残念なことに、初代勇者たちの召喚以降は、本来必要な精霊と神代の力を集めることができないため魔力のみで勇者召喚を執り行っていました。その結果、従来の力を持つ勇者は召喚できなかったものの、魔族の侵攻をどうにか抑えることが出来たのです。
 なお、初代勇者に付き従っていたエセリアルナイトたちは、来るべき魔王復活のためにこの世界から姿を消し、いつか再び、主を得るときが来るまで、力を蓄えていたのでした。

………
……


「というのが、私がお母さまから教えて貰った勇者の物語です。初代大賢者であるカナン・アーレストはこの地を去るとき、彼女の弟子に『血の継承』というものを執り行い、その力と知識を後世に伝えるようにと言葉を残したそうです。それを受け継いだのがアーレスト家であり、今は私が、この指輪を通じて大賢者の力が使えるそうですが……」
「クリスティナお嬢様は、その指輪の力により精霊女王シャーリィさまと契約行い、【シャーリィの魔導書】が使えるようになったのです。そして、その魔導書を通じて」
「私たち【型録通販のシャーリィ】が、精霊女王の力を使い、異世界から様々な物品を入手し、クリスティナさんに納めています」

 おばあ様の自宅で、私とノワールさん、そしてペルソナさんが自分たちの事をおばあさまに説明しています。やはり、一つ一つ最初から説明した方がいいと思い、ペルソナさんの許可を得てお話をさせて貰いました。
 ちなみに今現在は、話が通じやすいようにペルソナさんも『認識阻害』を解除。
 この場にいるおばあ様には話が通じるようになっています。

「それで、数年前の勇者召喚でメメント大森林の聖域を守りきり、結界を行ったということは知っているよ。ただ、その時の勇者送還により、次に召喚用の魔力が集まるまではあと10年は必要になる。そして、この西方諸国連合で、勇者召喚術式が言い伝えとして残っているのは、ハーバリオス王国とカマンベール王国、あとはハーバリオス北方にあるクルマルス連邦共和国の3国のみ。次に勇者召喚が可能なのは、カマンベール王国かクルマルス連邦しかないんだねぇ」

 つまり、カマンベール王国が魔族の支配下にある以上、北方のクルマルス連邦に事情を説明し、勇者召喚を乞うしかありませんが。
 
「その件ですが。実は、すでに手を売ってあります」

 ペルソナさんがスッ、と小さく手を上げて告げてくれました。
 ええ、一体、いつの間にそのようなことができるのでしょうか。

「その手とは?」
「実はですね。ハーバリオス王国の精霊女王の教会にて、当代のアイリーン枢機卿に神託が降りているはずなのですよ。世界の危機であるので、勇者召喚を行うようにと。あとはクリスティナ様がシャーリィさまの教会へ赴き、枢機卿とともに現国王の承認を得ることが出来れば、勇者召喚は行われるでしょう」
「ふぁ、わ、私がですか!」
「はい。これについては、シャーリィさまの加護を持つあなたにしかできないこと。ということで、このあとは、クリスティナ様は私と共に、王都の教会へ向かいましょうか。ここの守りについてはノワール、お願いして構いませんか?」

 え、えええ、ペルソナさんと二人っきりで旅に出るのですか!!
 それは、私の心が持ちそうにないのですけれど。
 
「今の状況では、このフェイールの里に魔族がやってくることはないかと思われますが」
「ですが、里を裏切ったエルフはくるかもしれません。世界樹の結界はまだ構築されたばかり、隙間があるかと思われます……ということで、どうでしょうか?」

 ペルソナさんがおばあさまに提案しています。
 確かに、この方法以外では勇者を召喚することは出来そうにありません。

「そうだねぇ。シャーリィさまの従者であるあなた様がそうおっしゃるのなら。どうか、孫娘をよろしくお願いします」
「ご安心ください。この命に代えましても、必ず守り通して見せます」

 はっ、はぃぃぃぃぃぃぃ!! 
 その話し方ですと、私、ペルソナさんに嫁ぐみたいじゃないですか。
 いえ、それも決して悪くはないですし、むしろ大歓迎……って落ち着きなさいクリステイナ、今はそんな浮かれている場合ではないのです。
 そのあとの話し合いは淡々と進み、私とペルソナさんは王都バリアブルに向かう事になりました。


〇 〇 〇 〇 〇

――ハーバリオス王国王都・バリアブル
 精霊を祀るフェリシア教会では、大司教を始めとした聖職者たち使徒の到来を待っていた。
 特に、数十年ぶりにシャーリィの声を聞いた大司教ジョーゼフ・スタンリー・ハンセンとアイリーン枢機卿は、大聖堂の中を右往左往と乙咲かない様子。
 特にアイリーン枢機卿は、去年、ヘスティア王国の精霊女王シャーリィを祀る教会の総本山から派遣されて来たばかりであり、此度の勇者召喚については使徒様から指示を受けるようにと神託を得たのである。

「うわぁ……うわぁ……」

 大聖堂の中には、すでに多くの聖職者たちが集い、シャーリィを称える聖歌を奏でている。
 そんな中。

――ゴーン……ゴーン
 正午を告げる金が鳴り響くと同時に、大聖堂の扉がゆっくりと開く。
 そしてそこには、一組の男女の姿があった。

………
……


「……あの、ペルソナさん。これってどういうことでしょうか?」
「おそらくですが、シャーリィさまの声が届いたため、私たちが到着するまで聖歌を唱えていたのではないかと思われますが」

 そうペルソナさんが呟いた時、奥の方から二人の人物がやってきます。
 一人は大司教様であるジョーゼフ・スタンリー・ハンセンさま。そしてもう一人の女性は……私は知らない方です。ハンセン大司教さまは、私が幼い時にここでお会いしたことがあります。

「これはこれは、クリスティナ・フェイールさんではないですか。お元気そうですね」
「はい。ハンセン大司教さまもお変わりなく。こちらの方はペルソナさん……とご説明すれば、ご理解いただけますか?」
「ええ、シャーリィさまからお声を頂いております」

 ニコニコと優しい笑顔で、私に語り掛けてくれるハンセン大司教さま。
 その傍らでは、カチンコチンに固まって直立不動の女性が一人、立っています。

「こっここっこっこ、これは使徒アクターさま。私は精霊女王シャーリィさまから、お声を頂いております。もしもお急ぎでしたら、このあと直接王城に向かいまして、国王陛下に勇者召喚の儀式執り行うように進言いたしますが……」
「はぁ……」

 あれ、ペルソナさんが頭を抱えそうになっていますが。
 それよりも、この方がアイリーン枢機卿というのは察しましたけれど、今、ペルソナさんのことをアクターと呼びましたよね? 
 え? それって、私が精霊の祠で出会ったアクターさんですか?
 おそるおそるペルソナさんの方を向きますと……。

「クリスティナさん。この件につきましては、後ほどご説明します。とりあえずアイリーン枢機卿、今すぐに王城へ向かいたいと思いますので
ので手配をお願いします」
「ひゃぃ!! 只今準備を行いますので、それまではこちらのお部屋へどうぞ!!」

 そのまま私とペルソナさんは、来賓室へと案内されましたが。
 私の頭のなかでは、ペルソナさんとアクターさんのことがぐるぐると回っていますよ。
 一体、どういうことなのでしょうか……。  
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