私のスキルは相手に贈り物をするスキルです~スキルを使ったらお代吸収によっていきなり最強となりました~

厠之花子

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一章 云わば、慣れるまでの時間

28.学園から出ないとは言っていない

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 私は羊皮紙の束を持つと、跪くフェデルタに向けて言う。


「──今日から行動に移す。協力を頼みたい」

「御身に私の全てを捧げましょう。何なりとお申し付けください」


 流れるような動作で恭しく礼をするフェデルタ。一言命令を下せば、本当に彼女は何でもやってのけるだろう。その優雅な礼を見てそんな確信が湧き上がる。

 ──それだけに失望からの謀反が怖い。

 私はフェデルタから目を逸らし、手に持った羊皮紙へと目を向ける。


「まずはリスト最初の者だが・・・・・・」


 学園の管轄下ではあるが、それはあくまでも。それに、契約書に学園の外へ出てはいけないという制限まではなかった。・・・・・・寮母の許可は必要らしいが、気づかれなければきっと大丈夫だ。

 言葉を止めてちらとフェデルタを見ると、彼女の口からすらすらと情報が流れ出てきた。


「はい、ルチャード=ディバージュ。30代独身男性。自分に従順で美しい妻が欲しいようです」

「希望は人、か」


 代償はどれくらいだろうか。対象全て、とかだったら元も子もない。


「夜中に入るのだから無断侵入しかないだろうな・・・・・・面識もないわけだし」


 フェデルタに目配せを送るとひとつ頷いた。可能だ、目線でそう言っている。
 ただ、無断で入るわけだから、多少は手荒な真似をしなければならないだろう。しかし騒ぎを大きくしてはまずい。

 スキルを大っぴらに披露ができないが為に、このようにこそこそと商売をしなければいけない。勇者などであれば、話は簡単だっただろうに。
 当然だが、これからする事は未体験。親の庇護下にいた頃は、平和な日常だった・・・・・・はずだ。


 ──しかし、もしかしたら。そう、、だ。


 ふっと私の脳内にある推測が浮かび上がる。だが、それはあまりにも現実的ではない・・・・・・が、私のスキル内容に需要があれば、その可能性は出てくる。


 〝もしかしたら、国王とも取り引きができるかもしれない〟


 自分でもバカバカしい考えだと思う。余程切羽詰まった状況、あるいは阿呆でなければ、物を手に入れられるなどと信じはしない。何か裏があると考えるのが普通だ。
 ──それは転生者限定のスキルだと知っているならば尚更。


「アゼリカ様、そろそろ・・・・・・」

「わかっている。行こう」


 夜も更けてきた。静かな空気に混じり、エルミータらしき寝息が聞こえ始めた所でフェデルタが小声で促す。私は頷くと、渡された服を羽織り、顔が見えないようフードを目深に被った。

 フェデルタの手に自身の手を重ねる。行こうか、と彼女に微笑みかける。不思議とそれだけで張り詰めていた緊張が解けた。


「──ディバージュ氏の屋敷へ」


◇◇


「灰色の髪の少女に黒髪の美女の2人・・・・・・」


 現魔王── ヴィツィオ=ジオスは書斎で1人、まだ見ぬ相手に頭を悩ませていた。
 先程報告された出来事。それはあまりにも非現実的な事件だった。


「何がどうなれば10万もの兵が消える・・・・・・?」


 重苦しい雰囲気の中でヴィツィオの呟きだけが響く。先程までくだらない憶測を述べていた重鎮はいない。ようやく静かになった空間だが、一向に答えは出てこなかった。

 最初は反乱軍の仕業だと信じて疑わなかった。きっと動揺をさそっているのだと。しかし、両方合わせて10万もの兵が消えたと聞いた時、その可能性は無くなった。

 次に考えたのは天災や魔物たちによる襲撃。だが、その跡は全くと言っていい程ない。この可能性も無くなる。

 あと考えられるのは、第三者による集団転移魔法の発動──しかし。
 ヴィツィオは無言で首を振る。


(・・・・・・それは1番ありえない)


 転移魔法というのは、1度訪れた場所に瞬間的に移動するという魔法。こうして聞けば便利な魔法と思われがちだが、その消費する魔力量は想像以上のものである。

 生まれつき魔力量が他種族よりも多い魔族でさえ、せいぜい近くの街と街との移動が限界。ドラゴン族でない限り、そう遠くへは行けない。

 故に転移魔法を使う者は殆ど存在しない。代わりに発明されたのが転移石と呼ばれる代物である。これは大きさによって移動できる距離が変わるというものだ。
 しかしこれは1人につき1つ消費する。──10万の兵の移動は・・・・・・出来ない。


「・・・・・・」


 先程の部下からの報告を思いだし、ヴィツィオは苦い顔をする。

 そう遠くには行けない為、すぐに見つかるだろう──そう思っていた。


〝2人組の女、10万の兵──両者ともに魔族領内にはおりませんでした〟


 恐れから来る震え声での一言。どん、と気づいた時には握りこぶしを机に叩きつけていた。


「・・・・・・ふざけるな」


 静かな怒りがふつふつと湧き上がる。魔族の王である自身が、たった2人の女性によって翻弄されているという事実に腹が立っていた。

 漏れ出した圧のある殺気に、部屋の外で警備している上位悪魔グレーターデーモンたちが騒ぎ出した。

 魔族領は決して狭くはない。むしろ他種族よりも広大だと言えよう。転移魔法一つで外へ出るということは考えにくい。


 ──だが、見つからなかった。あの2人組も、10万の兵も。


「一体何が起きているんだ・・・・・・?」


 手がかりは灰髪の少女と黒髪の美女という僅かな情報のみ。魔族の脅威になり得る相手であるというのに、これだけでは対策のしようがない。


(──仕方ない。探させよう)


 ヴィツィオは諦めたようにため息を吐くと、新たな指示を出すために幹部を呼び出した。



◇◇
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