魔族転生~どうやら私は希少魔族に転生したようで~

厠之花子

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第1章 異世界に来たのなら、楽しむしかない

6.可愛さから始まる

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「・・・・・・え?」


 思いもよらなかった言葉。エンシャが言っていた女言葉ですらない。様子が変わりすぎていて、どうにもついていけない。
 バーバチカの言葉は続く。


「だいたいさぁ、アンタ何様なわけ? 母上様に迷惑かけっぱなしじゃん。ほんと邪魔なんだけど」

「え、えっと、その口調は一体・・・・・・」


 想像していた女言葉とは全く違う、そう言いたげな私に、はっ、と嘲笑してバーバチカが言う。


「この口調のこと? アンタはボクが男だって知ってるんでしょ? なら、媚びる必要ないじゃん」


(表裏で対応変わりなんですがそれは・・・・・・)


 本物の女よりも怖いのでは、などと思ってしまった。

 ・・・・・・あの天使のような微笑みはどこへ行ってしまったのだろう。もはや生意気なガキにしか見えなくなってきた。


「てか、なんの目的でこの森に来たの? 気づいたらここにいたとかベタな話は止めてよね」

「いや本当に気づいたらこの森にいて・・・・・・」

「はあ!? アンタ舐めてんの?」

「でも事実だし・・・・・・」


 バーバチカの勢いに押され、自身の語尾も小さくなる。何故こんな所に来たのかは私だって知りたい。
 気づいたらここにいた──それ以上もそれ以下もないので私が黙っていると、目の前から盛大なため息が聞こえてきた。


「あーもう、わかった。一応そういうことにしてあげる。見たところ、悪意は無いっぽいし。アイツらとは違うみたいだし」

「あ、ありがとう?」


 疑問に思いつつも、とりあえず私はお礼を言う。それでも相変わらずのムスッとした表情で、バーバチカが腕を組んだ。


「で、アンタはいつまでここに居座るつもり? ボクとしてはさっさとどっかに行って欲しいんだけど」

「・・・・・・そりゃあ、私だって行く宛があればそこに向かってるよ。そもそも記憶が無いんだってば」


 私も私で苦笑しか浮かばない。無茶言うな、というのが私の本音である。
 へにゃりと力なく笑っていると、それを見ていたバーバチカが不意にそっぽを向いた。


「どうしたの?」

「べっ、別に。・・・・・・それよりも、アンタは何も思わないの?」


 その質問の意図もわからずに、何が、と聞けばどこか決まりが悪そうな表情になる。少しこちらの様子を窺うようにして、声をひそめた。


「・・・・・・ボクの格好だよ。変だと思わないの? ・・・・・・男なのに女の服着てさ」

「ううん、似合ってると思うよ? 凄く可愛いもの」

「なっ・・・・・・!!」


 バーバチカが酷く驚いた顔をする。その反応に、若干私も目を見開いた。あまりにも大袈裟過ぎやしないか。


(そんなに驚くことじゃあないだろうに。・・・・・・今まで散々言われてきたのかな)


 似合っていることは事実だし、とても可愛いのも認めている。間違いなくあれは本心からの言葉だ。──そもそも女装に偏見はない。


「・・・・・・嘘だ。みんな気持ち悪いって・・・・・・おかしいって。ボクはただ可愛い服が好きなだけなのに・・・・・・」


 そう呟くと、くしゃりとバーバチカの顔が歪んだ。泣き出しそうになっている表情でさえも儚げな少女の影がある。
 自分よりも遥かに幼い見た目の彼に、大人としてなのだろう、つい手が伸びた。

 少し背伸びをして、よしよしとあやす様にバーバチカの頭を撫でる。サラリとした灰髪が手に触れた。
 下から覗き込むようにして、ふにゃりとした笑みを向ける。


「うんうん、可愛い可愛い」

「・・・・・・なっ!? な、なななな何を・・・・・・!!」


 途端、かぁーっとバーバチカの頬が朱に染まった。突然だったせいか、言葉が吃って大変なことになっている。

 尚も私が撫で続けていると、パシンと鋭い音と共に手が払い除けられた。
 白い肌を真っ赤に染め、険しい顔で睨みつけられる。


「ボクに触るな!!」

「あ、ごめんなさい・・・・・・つい」


 右手にほんの少しだけ痛みが走ったものの、不思議とそれもすぐに治まった。音の割には大した威力ではなかったのか。

 何となく払われた所をさすりつつ、バーバチカの顔を見上げた。じっと蒼色の瞳を見つめると、すぃっと目を逸らされた。


「でも、私は可愛いと思うよ? いいんじゃないかな、着てても」

「そんなこと・・・・・・っ!! ・・・・・・アンタに言われなくたって着るつもりだし!! それに、ボクが可愛いのだってとーぜんの事でしょ? 今更何を言ってんの」


 ようやく、バーバチカの表情が元に戻ってきた。まだ頬は赤いが、ふふんと得意気な顔で胸を張る。もちろん、ぺっちゃんこの胸をだ。
 そしていつものすまし顔に戻り、ツインテの髪を片手でくるくると弄るバーバチカ。


「──ま、少しならアンタと宜しくしてやってもいいけど?」


 思いがけないその台詞に私は二度見した。


「ほんとに? 仲良くしてくれるの?」

「・・・・・・っ、ほんの少しだけ!! ほんの少しだけだから!! まだアンタを怪しんでるから!!」


 どこまでも上から目線だが、耳の先を赤くしている所を見ると自然と笑みが零れてきた。ここは母親似らしい。
 ふと、キャンキャンと吠えるチワワの姿が脳裏に思い浮かんだ。アレとどこか似ていると思うのは私だけか。

 相変わらず、意味もなしに睨まれている。だが、ほんのり赤い頬がその威圧感を無くしていた。

 やはり、美少女は怒っていても画になる。


「・・・・・・可愛いっていいなぁ」

「はあぁ?」


 ただ呟いただけなのに、何故かバーバチカに変な顔をされた。何言っちゃってんの、という言葉が雰囲気から伝わってくる。
 ・・・・・・おかしいな、変な事は言っていないはずだが。

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