魔族転生~どうやら私は希少魔族に転生したようで~

厠之花子

文字の大きさ
4 / 29
【番外】勇者編 我々は〝賭け〟に勝ったのだ

1.召喚される

しおりを挟む
 ──某刻アチェレッタ王国、玉座の間にて。


「どうか魔族を退け、私たち・・・・・・いえ、この世界をお救いくださいませ!!」


 学生服姿の二人の青年の目の前で、煌びやかなドレスを身に纏った王女が懇願する。三人の周りには疲弊しきった魔術師たちが整列していた。
 少し離れた玉座では、この国の王と思われる人物が静かに鎮座している。

 ──この王国では数日前から『勇者召喚』と呼ばれる古代儀式を試していた。

 魔術師数十人で行う召喚儀式は莫大な魔力を使い、中には生命を落とす者もいるという。当然、成功よりも失敗の方が多い。
 他国でも成功した例は稀だと言われているが、召喚された異世界人は例外なく強大な力を持っており、英雄として崇められている者もいた。

 ──つまり、異世界人がいるだけでその国は他国よりも優位に立てたのである。

 まさにハイリスクハイリターン。ここアチェレッタ王国でも、度重なる議論の末に行うことが決定された。
 戦力としても重要な魔術師を犠牲にしても、異世界人の強大な力を欲したのだ。

 結果、数人の魔術師の生命は犠牲となったが、二人の召喚の成功という前代未聞の偉業を成し遂げたのだった。


「──ですから、お二人には魔王を倒していただきたいのです」

「ちょっ、ちょっと待ってよ。何で僕が・・・・・・」


 そう答えたのは茶髪の青年。顔立ちは整っており、王子様のような甘い雰囲気が数多の女性を魅了する。実際、目の前で懇願する王女もこの青年を見て頬を赤らめていた。

 そんな彼が困惑するのも無理はない。友人との下校中、激しい光に包まれかと思えば、いつの間にかこんな所にいたのだから。

 対するもう一人の青年は、所々跳ねた金髪で耳には四つのピアスとかなり軽い印象である。
 茶髪の青年とは違い、彼は慌てることもなく落ち着いた様子で、この状況を受け入れていた。膝を立てニヤリと笑うと、興奮気味に隣の青年に話しかける。


「つまり俺らは勇者ってことだよ、鈍いやつだな!! ほら、ラノベではよくある展開だろ? まさか知らねーの?」

「うん、まあ・・・・・・あまり読んだことなくて」

「はぁーお前なんか、まんまテンプレじゃんかよ・・・・・・ま、いいや。とにかく俺らには強大な力が眠ってる勇者ってこと!! 魔王討伐とかマジ楽勝ってワケ、んでその後は英雄としてハーレム三昧ってことよ」


 金髪の言葉に押されるように、なるほど、ともう一人の青年も納得する。自分の力さえ有ればどんな敵でも勝てると。それだけの力を持っている、と。

 それには目の前の女性も嬉々として賛同する。ゆっくりと立ち上がると、玉座のそばに置いてあった二つの水晶を手に取り、二人の前にそれぞれ置いた。


「ええ、貴方様方にはとてつもない力が眠っております。それは、この魔道具マジックアイテムが証明してくれることでしょう」


 マジックアイテム? と聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべたのは茶髪の青年だった。そんな彼に、もう一人の青年は呆れたようにため息をつく。


「お前、まさかRPGとかしたことねーの? まさか、魔法を知らないってことはねーよな・・・・・・?」

「魔法ぐらいは知ってるさ。ファンタジーとかでよく使われるやつだろ?」

「まーそうだな。これはその力が道具化したものだって考えりゃーいい」

「ふーん・・・・・・すごい便利なんだね」


 いまいち気のない返事に、ほんとにわかってんのか、と金髪の青年は心配になった。順応が早いのはありがたいが、本当に理解をしているのかは定かではない。

 二人の会話が終わったと判断したのか、王女が笑顔で説明に入った。両手で二つの水晶を指し示す。


「この魔道具には、触れた者の魔素量が数値化されるという魔法が込められております」

「へぇー・・・・・・じゃ、普通はどんくらいなワケ?」

「貴様っ!! 王女様に向かって何という言葉遣い・・・・・・」

「いいのです、お下がりなさい」


 青年の失礼な物言いに、待機していた兵士の一人が動いたが、王女自らがピシャリとそれを手で制した。柔らかな笑みを崩さぬまま、青年の言葉に応える。


「そうですね、一般男性で5000程度でしょうか。最高位であるSランク冒険者だと、10万以上はあるようです」

「へーえ、そんなもんなのか」


 青年の反応は薄い。じゃあやってみるか、と軽いノリで目の前に置かれた水晶に視線を向けた。ほらお前も、と隣に声をかけると、そうだね、と茶髪の青年も改めて水晶を前にする。


「僕に本当にそんな強い力があるなら、魔族は・・・・・・悪はこの手で消し去らなきゃダメだよね」

「・・・・・・さっすが、テンプレ主人公。正義感がお強いことで」


 ボソリと小声で金髪の青年が呟く。その強い正義感の裏で狂気じみたものが見えるのは気のせいか。


「ん? 何か言った?」

「いんや、何も。──それよりも早く試してみよーぜ」


 目の前に置かれた二つの魔道具。二人は同時にそのつるりとした表面に──触れた。

しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...