18 / 43
炙山家の歴史
しおりを挟む
アニスが、空那にもらったコロッケをみつめる。
彼女はコロッケを半分に割って、片方を空那の皿に乗せた。そして、自分の皿に残ったコロッケをサクリと齧った。
炙山父が、話を続ける。
「ある日、生後間もない地球人の女が、社の前に放置された。置いていった人間は、遠くへ行ってしまった。戻ってくる気はなさそうだった。
よって私はそれを、私への『贈り物』と判断した。
その女こそが、そこにいるアニスの祖母にして、姉である」
……ん?
なんだろう?
今、なにか、炙山父が、妙な事を口走った気がした。
空那は、コロッケを齧りながら尋ねた。
「あ、あのう、えっと……? 『祖母』なのに、『姉』っていうのが……? よく、わからんのですけれど……?」
その疑問に、炙山父がコーヒー牛乳をドボドボと穴に流し込みながら答える。
「それは、今から説明する。
私は女を育て始めた。女に子供を作らせるためだ。
それは、私の身体情報を混ぜた胎児だ。宇宙人と地球人のハイブリッド種族だな。
私の狙いは地球上に、かつての私に匹敵するだけの演算能力を持った個体を、生み出す事であった。
しかし、狙いは失敗した。生まれた子供は、明らかにかつての私よりも劣っていたのだ。
どうやら、私の身体構造と地球人は違い過ぎて、うまく混ざらなかったらしい」
空那は口に運ぼうとしていた豚肉を途中で止めて、ビックリして叫ぶ。
「えっ、それじゃ、炙山父さんは、アニス先輩の『育ての父』ってわけじゃなくって……『本当のお父さん』なんですか!?」
「そうだ。アニスにも、私の身体情報が多く混じっている。だが分類するならアニスは、身体的にも概念的にも……まだ地球人と言えるだろう」
「それじゃアニス先輩って、宇宙人とのクォーターなんですか!? すげえーっ」
アニスには、宇宙人の血が混じっていたのだ!
空那はアニスを、驚愕と尊敬のこもった目でみつめる。炙山父は、空那が落ち着くのを待たずして、話を再開する。
「今、話したように、ハイブリッド種族を作る計画は、期待した結果がでなかった。
だが、私は諦めなかった。『私』の純度を高めていけば、いずれは限りなく、『私に近い存在』が生まれるはずだ。
そこで、生まれた子供が充分に成長したら、それを『母親』に、さらに私の身体情報を混ぜ合わせて新たな子供を作らせた。私は、同じ手順を繰り返したのだ。
つまり、『母体』の世代は変わっても父親は私になるのだから、何世代続こうと、理屈の上では『姉』である」
先ほどの驚愕も冷めやらぬ中で、突如明かされる禍々しい歴史に、空那は箸を取り落として狼狽し、アニスをみつめた。
「……え? うえええっ!?」
(そ、それって……炙山父は、自分の『実の娘』と子供を作ったってこと!? いくら宇宙人のやることだからって!?)
長く……本当に長く沈黙した後で、空那は口を開いた。
「ア……アニス先輩も……その。『母体』…………に、なる予定なんですか?」
それはもしかしたら、炙山家にとっては当然の行為なのかもしれない……けれど空那は、嫌だったのだ。
答えは、即座に返ってきた。
「アニスは、『母体』にならない」
空那は、ホッと胸をなでおろす。
「そ、そっか! アニス先輩は、ならないんだ! そうかぁ! ……ふぅー」
そして乾いた喉を潤すため、コーヒー牛乳を飲んだ。こってりと甘い液体で喉を潤してから、次に気になっている事を尋ねる。
「えっと。炙山父さんは、なんの為にそんな事をしてたんですか?」
その問いに、炙山父は酢豚のピーマンを脇に避けると、タケノコをつかんで答えた。
「私は、この星を出たいのだ」
「宇宙に……帰りたいってことですか?」
炙山父はタケノコを放り込みながら、目を光らせた。
「その通りだ。以前の私は、宇宙を自らの能力によって渡り歩いてきた。あの広大な宇宙こそが、私がいるべき場所と感じてる。
しかし、地球人に半身を奪われた今の私には、不可能だ。
そこで私は、『自らの失われた器官に匹敵するだけの能力』を、別の方法で手に入れることにした。つまり、『新しい私の半身』を作ることにしたのだ。
それは、『ケイ素的な素材』と様々な『有機物』で構成される。
設計には、とても長い演算が必要だった。アニスの母も、祖母も、交代で演算し続けた」
空那は首をかしげた。
なんだか……言ってることが回りくどすぎて……また、あまりにも壮大すぎて、よくわからない。
そして、なぜ自分がここに呼ばれたのかも……まだ、わからない。
炙山家にまつわる、そんなドス黒い歴史を聞かされるためだけに……呼ばれたのだろうか?
そんな空那の戸惑いをよそに、炙山父はさらに続ける。
「君は、私にとっての僥倖だった。
まさかこの星に、かつての私に匹敵するほどの演算能力を備えた生物が存在するとは思わなかった。
君は、非常に優れた固体である事は間違いない。
あのノートは完璧だった。おかげで演算を、20年も短縮できた。
私は君に……敬意と感謝を表したい」
そこで空那は頷き、手をポンと打つ。
「ああーっ! ようやく、わかったぞ! ええと、つまり……俺が見せてもらった、あのノート。あれを、俺が完成させたから、お礼を言う為に、呼んだって事ですか!?」
炙山父は、しばらく黙った後で答えた。
「平たく言えば、そういう事だ」
「なぁんだ! そんな事ですか。いいっすよ、別に。お礼なんて!」
あんなの、自分でもよくわからないで、なんとなーくやっただけなのだ。
まったく苦労しなかったし、大変でもなんでもなかったんだから、礼なんて言われても、逆に困ってしまう。宇宙人って、意外と律儀なんだなぁ、空那は笑顔で手を振る。
しかし、炙山父は……まだ、話をやめない。
「私は生存本能に従って、危険なこの地を旅立たなければならない。
この星が私より奪ったものは、あまりにも大きい。
今さら返せと望むべくもないが、せめて旅立つために、協力はしてもらう」
まだ何か必要らしいと聞き、空那は首を傾げて聞き返す。
「えっ? あのノートで完成じゃないんですか!? あと、何が必要なんです? 俺に手伝えるかな……? で、その、協力と言うのは?」
ふと気づくと大皿の上には、もうほとんど食べ物が残っていなかった。
炙山父は、そのわずかに残った最後の食物を、大皿ごと胸の穴に入れ……こう言った。
「現在、この街にいる8596人と胎児が162体。彼らには、『私の新しい器官』の『部品』となってもらう」
『人』を『部品』にする。
その無機質な響きに、空那の背筋をゾッと恐怖が貫いた。
「……は? そ、それ……どういう意味だよッ!?」
炙山父は、空那の怒鳴り声に怯むことなく、淡々と返す。
「理解できるだろう? そのままの意味だ。この地域の住人には、気の毒に思う。
その上で、君に感謝の意を示す。
明日の七時までに助けたい人を連れて、この地域より離れてほしい。24人までならば、誤差として修正できる。見逃そう。
それが、君への感謝だ。
本当は、もっと報いたいのだが、私の生存本能は、一刻も早くここを離れよと命令している。もはや、抑えられそうにない」
空那には、炙山父の言葉が、よく理解できない。……いや、したくない!
急激に乾いていく口で、空那は呆然と呟く。
「お、おい……待てよ。な、なんか……話が、すごくおかしいぞ……? これ……どこで、おかしくなったんだ!?」
おかしい……絶対におかしい!
なんなのだ、これは!?
さっきまで、それなりに平和に食事をしてたのにッ!
たった数分で、一気に状況が変わってしまった!
……それも、想像もつかなかったほど、最悪な方向に!
炙山父は、衝撃で震える彼に言う。
「待てない。おかしくもない。
順序立てて、丁寧に説明したはずだ。君は、理解に努めると約束しただろう。
もう一度、同じ説明を繰り返してもよいが……すでに、計画は発動しているぞ」
空那はもう、自分がとんでもない勘違いをしていたと、認めざるを得なかった。
彼は、「ありがとう」「どういたしまして」と言った、そんなほのぼのした平和な用件で呼ばれたのではなかったのだ!
そして、同時に理解する。
自分が、なにに手を貸してしまったのか……あのノートの数式を解くという行為が、どんな事態を生み出すか。
罪悪感と混乱にクラクラと揺れる頭を、なんとか支えて、やっとの事で問いかけた。
「……ア……アニス先輩は? あんた、先輩の事は、どうする気だよ?」
「アニスは、私のためによくやってくれた。
だが計画後、私はこの星にいない。共に連れて行くには脆弱すぎる。
よって、これまでの母体と同様に廃棄する」
廃棄。その言葉に、空那はいよいよ青ざめる。
そして、ふと廊下に張ってあった写真を思い出した。
「廃棄って……? アニス先輩のお母さんはどうしたッ!?」
「彼女は演算能力が著しく衰えたので、しばらく前に廃棄した」
「だから今、どういう状態かって……」
「今、現時点での状態の事か?
それに対する回答は存在しない。足跡を追っていない。脆弱ゆえに、死んだ可能性もある」
空那は、アニスを見る。
その目は相変わらず眠そうで、どこを見ているのかわからない。
空那が手を引っ張るが、首を振って立ち上がろうとしない。あきらめて、空那は部屋を飛び出した。その背に、抑揚のない声が響く。
「繰り返す。明日の朝七時までに、24人以内の人間を連れて、この地より離れて欲しい」
その声が届いたものか……否か。
しばらくしてから、箸を置いてぼうっとしている無表情のアニスに、炙山父は言い放つ。
「ご苦労だった。アニス、我が娘よ。
ずいぶんと悲しそうな顔をしているな。
そうか。お前は、深く考えたことがなかったのだな。この設計図の『材料』を、何処から持ってくるのかを。
そして今、彼との会話で伝えた通りだ。お前は脆弱ゆえに、共に連れていけない。
私にとってのお前の存在価値は、今、この時をもって失われた。
……よって、これより廃棄である」
彼女はコロッケを半分に割って、片方を空那の皿に乗せた。そして、自分の皿に残ったコロッケをサクリと齧った。
炙山父が、話を続ける。
「ある日、生後間もない地球人の女が、社の前に放置された。置いていった人間は、遠くへ行ってしまった。戻ってくる気はなさそうだった。
よって私はそれを、私への『贈り物』と判断した。
その女こそが、そこにいるアニスの祖母にして、姉である」
……ん?
なんだろう?
今、なにか、炙山父が、妙な事を口走った気がした。
空那は、コロッケを齧りながら尋ねた。
「あ、あのう、えっと……? 『祖母』なのに、『姉』っていうのが……? よく、わからんのですけれど……?」
その疑問に、炙山父がコーヒー牛乳をドボドボと穴に流し込みながら答える。
「それは、今から説明する。
私は女を育て始めた。女に子供を作らせるためだ。
それは、私の身体情報を混ぜた胎児だ。宇宙人と地球人のハイブリッド種族だな。
私の狙いは地球上に、かつての私に匹敵するだけの演算能力を持った個体を、生み出す事であった。
しかし、狙いは失敗した。生まれた子供は、明らかにかつての私よりも劣っていたのだ。
どうやら、私の身体構造と地球人は違い過ぎて、うまく混ざらなかったらしい」
空那は口に運ぼうとしていた豚肉を途中で止めて、ビックリして叫ぶ。
「えっ、それじゃ、炙山父さんは、アニス先輩の『育ての父』ってわけじゃなくって……『本当のお父さん』なんですか!?」
「そうだ。アニスにも、私の身体情報が多く混じっている。だが分類するならアニスは、身体的にも概念的にも……まだ地球人と言えるだろう」
「それじゃアニス先輩って、宇宙人とのクォーターなんですか!? すげえーっ」
アニスには、宇宙人の血が混じっていたのだ!
空那はアニスを、驚愕と尊敬のこもった目でみつめる。炙山父は、空那が落ち着くのを待たずして、話を再開する。
「今、話したように、ハイブリッド種族を作る計画は、期待した結果がでなかった。
だが、私は諦めなかった。『私』の純度を高めていけば、いずれは限りなく、『私に近い存在』が生まれるはずだ。
そこで、生まれた子供が充分に成長したら、それを『母親』に、さらに私の身体情報を混ぜ合わせて新たな子供を作らせた。私は、同じ手順を繰り返したのだ。
つまり、『母体』の世代は変わっても父親は私になるのだから、何世代続こうと、理屈の上では『姉』である」
先ほどの驚愕も冷めやらぬ中で、突如明かされる禍々しい歴史に、空那は箸を取り落として狼狽し、アニスをみつめた。
「……え? うえええっ!?」
(そ、それって……炙山父は、自分の『実の娘』と子供を作ったってこと!? いくら宇宙人のやることだからって!?)
長く……本当に長く沈黙した後で、空那は口を開いた。
「ア……アニス先輩も……その。『母体』…………に、なる予定なんですか?」
それはもしかしたら、炙山家にとっては当然の行為なのかもしれない……けれど空那は、嫌だったのだ。
答えは、即座に返ってきた。
「アニスは、『母体』にならない」
空那は、ホッと胸をなでおろす。
「そ、そっか! アニス先輩は、ならないんだ! そうかぁ! ……ふぅー」
そして乾いた喉を潤すため、コーヒー牛乳を飲んだ。こってりと甘い液体で喉を潤してから、次に気になっている事を尋ねる。
「えっと。炙山父さんは、なんの為にそんな事をしてたんですか?」
その問いに、炙山父は酢豚のピーマンを脇に避けると、タケノコをつかんで答えた。
「私は、この星を出たいのだ」
「宇宙に……帰りたいってことですか?」
炙山父はタケノコを放り込みながら、目を光らせた。
「その通りだ。以前の私は、宇宙を自らの能力によって渡り歩いてきた。あの広大な宇宙こそが、私がいるべき場所と感じてる。
しかし、地球人に半身を奪われた今の私には、不可能だ。
そこで私は、『自らの失われた器官に匹敵するだけの能力』を、別の方法で手に入れることにした。つまり、『新しい私の半身』を作ることにしたのだ。
それは、『ケイ素的な素材』と様々な『有機物』で構成される。
設計には、とても長い演算が必要だった。アニスの母も、祖母も、交代で演算し続けた」
空那は首をかしげた。
なんだか……言ってることが回りくどすぎて……また、あまりにも壮大すぎて、よくわからない。
そして、なぜ自分がここに呼ばれたのかも……まだ、わからない。
炙山家にまつわる、そんなドス黒い歴史を聞かされるためだけに……呼ばれたのだろうか?
そんな空那の戸惑いをよそに、炙山父はさらに続ける。
「君は、私にとっての僥倖だった。
まさかこの星に、かつての私に匹敵するほどの演算能力を備えた生物が存在するとは思わなかった。
君は、非常に優れた固体である事は間違いない。
あのノートは完璧だった。おかげで演算を、20年も短縮できた。
私は君に……敬意と感謝を表したい」
そこで空那は頷き、手をポンと打つ。
「ああーっ! ようやく、わかったぞ! ええと、つまり……俺が見せてもらった、あのノート。あれを、俺が完成させたから、お礼を言う為に、呼んだって事ですか!?」
炙山父は、しばらく黙った後で答えた。
「平たく言えば、そういう事だ」
「なぁんだ! そんな事ですか。いいっすよ、別に。お礼なんて!」
あんなの、自分でもよくわからないで、なんとなーくやっただけなのだ。
まったく苦労しなかったし、大変でもなんでもなかったんだから、礼なんて言われても、逆に困ってしまう。宇宙人って、意外と律儀なんだなぁ、空那は笑顔で手を振る。
しかし、炙山父は……まだ、話をやめない。
「私は生存本能に従って、危険なこの地を旅立たなければならない。
この星が私より奪ったものは、あまりにも大きい。
今さら返せと望むべくもないが、せめて旅立つために、協力はしてもらう」
まだ何か必要らしいと聞き、空那は首を傾げて聞き返す。
「えっ? あのノートで完成じゃないんですか!? あと、何が必要なんです? 俺に手伝えるかな……? で、その、協力と言うのは?」
ふと気づくと大皿の上には、もうほとんど食べ物が残っていなかった。
炙山父は、そのわずかに残った最後の食物を、大皿ごと胸の穴に入れ……こう言った。
「現在、この街にいる8596人と胎児が162体。彼らには、『私の新しい器官』の『部品』となってもらう」
『人』を『部品』にする。
その無機質な響きに、空那の背筋をゾッと恐怖が貫いた。
「……は? そ、それ……どういう意味だよッ!?」
炙山父は、空那の怒鳴り声に怯むことなく、淡々と返す。
「理解できるだろう? そのままの意味だ。この地域の住人には、気の毒に思う。
その上で、君に感謝の意を示す。
明日の七時までに助けたい人を連れて、この地域より離れてほしい。24人までならば、誤差として修正できる。見逃そう。
それが、君への感謝だ。
本当は、もっと報いたいのだが、私の生存本能は、一刻も早くここを離れよと命令している。もはや、抑えられそうにない」
空那には、炙山父の言葉が、よく理解できない。……いや、したくない!
急激に乾いていく口で、空那は呆然と呟く。
「お、おい……待てよ。な、なんか……話が、すごくおかしいぞ……? これ……どこで、おかしくなったんだ!?」
おかしい……絶対におかしい!
なんなのだ、これは!?
さっきまで、それなりに平和に食事をしてたのにッ!
たった数分で、一気に状況が変わってしまった!
……それも、想像もつかなかったほど、最悪な方向に!
炙山父は、衝撃で震える彼に言う。
「待てない。おかしくもない。
順序立てて、丁寧に説明したはずだ。君は、理解に努めると約束しただろう。
もう一度、同じ説明を繰り返してもよいが……すでに、計画は発動しているぞ」
空那はもう、自分がとんでもない勘違いをしていたと、認めざるを得なかった。
彼は、「ありがとう」「どういたしまして」と言った、そんなほのぼのした平和な用件で呼ばれたのではなかったのだ!
そして、同時に理解する。
自分が、なにに手を貸してしまったのか……あのノートの数式を解くという行為が、どんな事態を生み出すか。
罪悪感と混乱にクラクラと揺れる頭を、なんとか支えて、やっとの事で問いかけた。
「……ア……アニス先輩は? あんた、先輩の事は、どうする気だよ?」
「アニスは、私のためによくやってくれた。
だが計画後、私はこの星にいない。共に連れて行くには脆弱すぎる。
よって、これまでの母体と同様に廃棄する」
廃棄。その言葉に、空那はいよいよ青ざめる。
そして、ふと廊下に張ってあった写真を思い出した。
「廃棄って……? アニス先輩のお母さんはどうしたッ!?」
「彼女は演算能力が著しく衰えたので、しばらく前に廃棄した」
「だから今、どういう状態かって……」
「今、現時点での状態の事か?
それに対する回答は存在しない。足跡を追っていない。脆弱ゆえに、死んだ可能性もある」
空那は、アニスを見る。
その目は相変わらず眠そうで、どこを見ているのかわからない。
空那が手を引っ張るが、首を振って立ち上がろうとしない。あきらめて、空那は部屋を飛び出した。その背に、抑揚のない声が響く。
「繰り返す。明日の朝七時までに、24人以内の人間を連れて、この地より離れて欲しい」
その声が届いたものか……否か。
しばらくしてから、箸を置いてぼうっとしている無表情のアニスに、炙山父は言い放つ。
「ご苦労だった。アニス、我が娘よ。
ずいぶんと悲しそうな顔をしているな。
そうか。お前は、深く考えたことがなかったのだな。この設計図の『材料』を、何処から持ってくるのかを。
そして今、彼との会話で伝えた通りだ。お前は脆弱ゆえに、共に連れていけない。
私にとってのお前の存在価値は、今、この時をもって失われた。
……よって、これより廃棄である」
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる