二次コンでキモオタデブな俺が、異世界で幼女のおっさんとイチャラブする!

森月真冬

文字の大きさ
2 / 58

俺の名はジュータ、異世界で退屈中

しおりを挟む
 そして俺は、今日も『銀の三角亭』で日替わりのAランチを温いエールで流し込む。
 本日のAランチは、魚のフライを玉ネギと一緒にパンに挟んでソースをたっぷり塗りつけたものである。

 俺は、ちょっとウンザリしていた。だってこのAランチ、もう6日連続で食ってるんだもの。
 なんでも、西の街道にモンスターが出て流通がとどこおり、肉や野菜が高騰こうとうし、安く提供できるのは川魚だけという事情らしい。
 一応、メニューにはBランチもあり、こっちはしっかり日替わりしてる。しかし、Bランチは玄人くろうとメニューが多く、ローパーのヌルヌルパスタだの、スライムぶっかけ飯だの、ちょっと意味がわかないメニューばかりなので、必然的にAランチを注文する事になるのだ。その上、昼はランチしかやってないから、他の選択肢はないのである。
 ぶちゅり。食べかけのパンを握りつぶしながら、俺は叫ぶ。

「くっ……も、もうこれ、食いたくねえっ! 飽きた!」

 隣でエールを飲んでる男……デビット・マクドウェル(25才。鍛冶士。俺の数少ない友人)が、笑い混じりに言った。

「ジュータよぉ。おめえ金あるんだから、こんな安酒場じゃなくって、高級レストランでも行きゃいいじゃねえか」

 潰れたパンを皿の上に戻しつつ、俺は応える。

「ふざけんなっ! マナーも何も知らないのに、レストランなんか行けるかよ!」
「なら、メイドでも料理人でも、屋敷に雇えばいいだろ」
「ふっ。俺が人見知りなの、知ってんだろ? 知らない人を雇って食いたい物を作らせるなんて、怖くてできるわけがない!」
「……ドラゴンキラーが、情けないこと言ってんなよ」

 俺は、手に付いた真っ赤なソースを皿の端っこになすり付けながら、唇をとがらす。

「ドラゴンたってさ。あんなの、メガクラ連発してるだけで終わったもんよ。……ああ、それにしても、エロゲ、エロゲ、エロゲ……エロゲがやりてえよぉ。ギブミー、エロゲーっ!」

 俺の脳裏には、パソコンのモニターの向こう側で、優しく微笑む女の子達が浮かんでは消える。
 今まで攻略した数多のヒロインよ……そして、これから出会えたであろうヒロインよ……君達には、もう会えないのかい?
 そんな俺を見て、デビットが呆れ顔をした。

「まーた『エロゲ』の話かよ? ジュータのいた世界にあったって遊びだろ? ええと……小さなガラス板を通して、仮想世界で女の子と恋愛やエッチするんだっけ?」

 俺は遠い目をしながら拳を握り、頷く。

「ああ、そうだよ! エロゲは俺のすべてだった! あれには、俺の人生が詰まってたんだ!」

 デビットは、首をかしげて不思議そうな表情をした。

「いやー。何度聞いても、わっかんねぇなぁ……? だってその女の子、触ることができないんだろ? ガラスの板を通して話したり裸を見るだけって……そんなの、何が楽しいんだ?」

 俺はテーブルを叩いて唾を飛ばし、熱弁する。

「楽しかったんだよぉっ! 俺にはあれが、なによりも楽しかったのっ!」

 デビットが肩をすくめた。

「ジュータよぉ……溜まってエッチしたいなら、娼婦でも買いに行けばいい。お前さんは貴族なんだから、貴族専用のサロンにだって出入りできる。ドラゴン倒せるほどに強いんだし、恋愛しようと思えば、誰だって選び放題じゃねえか? ほら……そこのフォクシーとか、声かけてみたらどうだい?」

 フォクシーは、この酒場のウェイトレス。16才の獣人族の女の子だった。
 いつも嬉しそうに尻尾をフリフリしている、『銀の三角亭』の看板娘である。
 ちなみに、「ほとんど人間、耳と尻尾だけ」みたいな獣人と違って、もう少しディープな感じでケモノに近い。彼女は、こんな俺にも無邪気な笑顔を向けてくれるので、言葉を交わせる数少ない女性の知り合いだった。
 しかし俺は、渋い顔でエールを飲み干す。

「あ。い、いやー? ……フォクシーはなぁ……ちょっと、声かけられねーなぁ」

 一応、断っておく。俺は、ケモノも全然イケる。大好物。そこはまったく問題ない。
 でも、ダメなのだ。
 デビットが問うた。

「なんでだよ?」

 俺は頭を抱えて、テーブルに突っ伏す。

「だ、だってさぁーっ! 俺から声かけるなんて、できねーよ! もしもいきなり話しかけて『キモい』とか『怖い』とか怒られたら、どーすんだよ!? 俺、フォクシーに嫌われたら、もうこの店に来れねーよっ! ここ、家から一番近い酒場なんだぜぇー!? 毎日メシ食うのに、向こうの区画まで足を運ぶのなんて、俺イヤだよ!」

 そう。フォクシーとは知り合いであるが、俺から声を掛けるのはメニューを注文する時のやり取りだけ。あとは向こうが笑顔で挨拶してくれたら、俺もボソボソ返すくらいなのである。
 デビットが、ガハハと笑った。

「酒場の娘をナンパして振られたからって、気にする奴なんざ誰もいねえよ。三日もすれば、ナンパされた本人だって忘れちまう。……ったく。相変わらず根性ねえなぁ、ジュータは!」

 ふと見ると、フォクシーが酔客に尻尾を掴まれ、顔を真っ赤にして「こんのスケベーっ!」と叫びながらお盆を振り上げてる。ぱこーん! 酒場に音が反響した。
 いい娘ではあるんだけど……う、うーん? アレを俺がやられたらって考えると……リアルな女の子に声を掛けるのは……やっぱりちょっと、怖いなー。

「く、くそうッ! エロゲだったらセーブして、失敗したらロードでやり直せるのにぃっ! 現実はどうして、セーブもロードもないんだ!? ……ああでも、もう一人は嫌だーっ! さびしいよぉ、毎日が暇すぎるっ! だけど女の子に嫌われるのは、もっと嫌だーっ! ……エ、エロゲっ! エロゲがやりたい! 俺の心の隙間を埋めるエロゲを! 失敗してもやりなせる優しい世界をっ! ヒロイン達との目くるめく、エッチで素晴らしいマルチエンディングを……お、俺にぃーっ!」

 涙目になってしまう。そんな俺を、デビットはため息まじりに見つめ続ける。
 だが、しばらくすると顎を撫ぜ、天井を見上げながら言った。

「ん……? まあ、でも。そんな都合のいい女も……いねえわけじゃねえなぁ」

 俺は顔を上げる。

「……あ? どういう意味だ?」

 デビットはニヤリと笑った。それから耳に口を近づけて、小声で言う。

「奴隷だよ。ちょうど明日、年に一度の奴隷市が王国で開かれるぜ」
「ど、どれい……?」

 奴隷。この世界に存在する魔術形態の『呪い』によって、主人に逆らえないように強制された者達である。金持ちの家には大抵いるし、たまに街中でも見かけるくらいはメジャーな存在だ。
 奴隷の単語に俺は、懐かしきエロゲのタイトル郡を思い出した。
 そういや、奴隷を扱った物も多かったっけ……。

「俺の攻略したエロゲにも、前の主人に捨てられた全身が傷だらけの奴隷に、優しくて接して仲良くなるってゲームがあったなぁ」

 難易度は中の下、エロさもそこそこだったが、ベタで泣けるストーリーがけっこう良かった……しかし俺の大切な思い出に、デビットは手を振る。

「いやいや、ちげえよ! そんなハードな出会いじゃなくってよ! もっと、簡単でわかりやすい話なんだよ!」
「……ほほう、わかりやすい話とな?」

 興味をひかれた俺に、デビットはニヤリと笑い、ジョッキを掲げて新しいエールを注文しながら言った。

「知ってるか? 奴隷の中にはな、『一期一会』って呪いを付与された奴がいる」
「い、『一期一会』……? 知らん。そりゃ、どんな効果なんだ?」
「これはな、主人が許しを与えない限り、新しい記憶が保てなくなるって呪いなんだ。夜の十二時までに主人が記憶を許可しなかったら……その日にあった事は、綺麗さっぱり全てを忘れちまうのよ」

 俺は、ごくりと生唾を飲む。

「つ、つまり……? その娘の前で俺が、どんなヘマをやらかしても……? 一日の終わりにセーブしなかったら、次の日には前日の状態にロードされてるってわけ!?」

 デビットが頷く。
 
「その通り! もともとヘンタイ趣味の主人が、奴隷に付与する呪いなんだが……でも、今のお前にはピッタリじゃねーか? なにせ女の子との出会いや会話を、何度だってやり直せるんだからよ」

 俺は、震えながらコクコクと頷く。

「お、おお……一歩進んだらまた一歩、繰り返されるトライアンドエラーっ! な、なんて素晴らしいんだ……『一期一会』ッ!」

 と、その時だ。
 ドン! 俺とデビットの間に、乱暴にエールが置かれた。置いたのはフォクシーだ。
 彼女は、珍しく怒った様な顔をしていた。そして、俺をギロリと睨みつけて言う。

「ジュータさん……サイテーです! 見損ないました!」

 手に持つお盆が、プルプル震えている。
 一発、殴られるかと慌てて頭を抱えると、フォクシーはため息をひとつ吐き、プリプリ怒りながら尻尾を揺らして去って行った。
 突然のフォクシーの冷たい眼差しに、固まる俺へとデビットが苦笑交じりに言う。

「はは……。ほら、さっき言ったろ? 『一期一会』の呪いの掛かった奴隷は、ヘンタイ趣味の主人に買われる事が多いんだ。そんな奴らに買われた奴隷の一生は……ま、悲惨の一言だわなぁ」
「そ、そうか……っ! 俺、フォクシーにそんな趣味だと思われたのかぁ……」

 やっぱり、現実ってこええ。
 今、ロードできたら即効でオートセーブの直前記録を読み込んでたわ。
 デビットは俺の背中をドンと叩き、エールを一息に飲み干してから言った。

「ま、気楽に考えなよ! むしろ、ジュータが奴隷を買ってやる事で、そういう奴らの手から女の子を一人、助けてやるくらいの気持ちでさぁ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...