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Prologue
忘れられない-2
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登校中、ぼんやりと今朝の夢について考え込む。
あれはきっと、中学のときの夢だ。
先輩は黒の学生服を着ていたし、私も紺色のセーラー服を着ていた気がする。
でも私は、今まで先輩に告白された覚えなんてないし。ただ、私の願望が夢に出てきただけなのだと思う。
だって先輩は……
「おはよう、白坂さん」
爽やかな声がして振り向けば、澄んだ青空を背景に、柏木蓮先輩が立っていた。
今度は紛れもなく現実の世界の先輩だ。
ベージュのブレザーにオリーブグリーンのチェック柄のパンツがよく似合っていて、中学のときよりさらに大人っぽくなっていた。
「おはようございます、柏木先輩」
私と目が合うと優しく微笑んでくれて、ドキリと胸の奥が音を立てる。
彼の澄んだ瞳を見ていると、夢の中でキスをされてしまったことに罪悪感が生まれた。
(先輩。夢の中で勝手に汚してしまってごめんなさい)
隣に並んだ先輩は、ふと何かに気づいたように私のことをじっと見つめてくる。
「あれ? 白坂さん、髪の毛はねてる」
「えっ、寝癖?」
慌てて髪に手をやると、偶然先輩の手に触れてしまい、さらに慌てる。
ちょうど先輩も、私の髪に手を伸ばしていたのだった。
「わ……、すみません」
「ちょっとごめんね」
軽く断りを入れた先輩は、何を思ったのか私の後ろの髪を数回すいて、はねている部分をわざわざ直してくれた。
「もう大丈夫だよ」
「ありがとうございます……」
触れられたことが恥ずかしくて、下を向く。癖のあるセミロングの髪が顔の横に垂れ、私の表情を隠してくれた。
少しの間、学校までの道を一緒に歩くことになり、話題はほとんど部活のことについてだった。
それでも、私にとっては特別な時間。
「蓮、おはよう」
校舎が見えてきたとき。門の前で人を待っている様子の女子生徒が柏木先輩に声をかけ、小さく手を振った。
「――じゃあ、また放課後に」
先輩は私にそう告げ、その女の人と一緒に歩き出す。
「あ、……はい」
ほら、やっぱり今朝のはただの夢だった。私の勝手な妄想。
先輩には、美人で優しい彼女がいる。
確か中学のときからその彼女と仲が良くて。私の入り込む隙なんて、どこにもない……。
しかも、夢では私が先輩を振ったとか。そんなことが起こり得るわけがなかった。
たとえば、罰ゲームとして先輩が告白してきたのだとしても。私は即座にOKするはず。
ずっとずっと、出会ったときから大好きな先輩なのだから。
(先輩が彼女よりも、私のことを好きになってくれるなんて――そんな夢みたいなこと、現実に起こるわけないよね……)
門のそばで咲く桜が散っていく姿を、二人は仲が良さそうに眺めている。
そんな二人の後ろ姿を視界の隅に置き、私は密かな想いを心の奥底に閉じ込めた。
あれはきっと、中学のときの夢だ。
先輩は黒の学生服を着ていたし、私も紺色のセーラー服を着ていた気がする。
でも私は、今まで先輩に告白された覚えなんてないし。ただ、私の願望が夢に出てきただけなのだと思う。
だって先輩は……
「おはよう、白坂さん」
爽やかな声がして振り向けば、澄んだ青空を背景に、柏木蓮先輩が立っていた。
今度は紛れもなく現実の世界の先輩だ。
ベージュのブレザーにオリーブグリーンのチェック柄のパンツがよく似合っていて、中学のときよりさらに大人っぽくなっていた。
「おはようございます、柏木先輩」
私と目が合うと優しく微笑んでくれて、ドキリと胸の奥が音を立てる。
彼の澄んだ瞳を見ていると、夢の中でキスをされてしまったことに罪悪感が生まれた。
(先輩。夢の中で勝手に汚してしまってごめんなさい)
隣に並んだ先輩は、ふと何かに気づいたように私のことをじっと見つめてくる。
「あれ? 白坂さん、髪の毛はねてる」
「えっ、寝癖?」
慌てて髪に手をやると、偶然先輩の手に触れてしまい、さらに慌てる。
ちょうど先輩も、私の髪に手を伸ばしていたのだった。
「わ……、すみません」
「ちょっとごめんね」
軽く断りを入れた先輩は、何を思ったのか私の後ろの髪を数回すいて、はねている部分をわざわざ直してくれた。
「もう大丈夫だよ」
「ありがとうございます……」
触れられたことが恥ずかしくて、下を向く。癖のあるセミロングの髪が顔の横に垂れ、私の表情を隠してくれた。
少しの間、学校までの道を一緒に歩くことになり、話題はほとんど部活のことについてだった。
それでも、私にとっては特別な時間。
「蓮、おはよう」
校舎が見えてきたとき。門の前で人を待っている様子の女子生徒が柏木先輩に声をかけ、小さく手を振った。
「――じゃあ、また放課後に」
先輩は私にそう告げ、その女の人と一緒に歩き出す。
「あ、……はい」
ほら、やっぱり今朝のはただの夢だった。私の勝手な妄想。
先輩には、美人で優しい彼女がいる。
確か中学のときからその彼女と仲が良くて。私の入り込む隙なんて、どこにもない……。
しかも、夢では私が先輩を振ったとか。そんなことが起こり得るわけがなかった。
たとえば、罰ゲームとして先輩が告白してきたのだとしても。私は即座にOKするはず。
ずっとずっと、出会ったときから大好きな先輩なのだから。
(先輩が彼女よりも、私のことを好きになってくれるなんて――そんな夢みたいなこと、現実に起こるわけないよね……)
門のそばで咲く桜が散っていく姿を、二人は仲が良さそうに眺めている。
そんな二人の後ろ姿を視界の隅に置き、私は密かな想いを心の奥底に閉じ込めた。
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