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転生の章 チャブチ篇
第44話 他愛無き雑談
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チャブチは早朝いつものように叔父の墓の前に手をついて長い時間額を擦り付けていた。
すると、後ろに気配を感じた、立ちながら後ろを振り返ると、そこには幼馴染みの三人が同じように額を擦り付けて拝礼していた。
「お前ら……」
声をかけると、三人は顔を上げ立ち上がった。
「水臭いぞ。チャブチ。自分一人だけいいかっこしいか?」
「全く、知らぬとでも思ったか。この城の中で知らぬものなど誰もいないぞ?」
「ゴールド様が自刃なすったのは何も、お前だけのせいじゃない。チャブチを止めなかった我々にだって少しずつ責任がある。それを自分だけのせいとか買い被り過ぎだろ」
公務でないのでいつもの友人口調だ。三人は手を振り上げて思い切りチャブチの尻を叩くと「いっ!」と言って、チャブチは自分の尻を押さえた。
「……いやぁ。叔父には何度頭を下げても謝り切れん。親の心子知らずなんて言い訳も言わん。今更墓に謝ったところでどうにもならんがな……」
と寂しげに目を下に向けた。そんな彼を友人たちは近づき無言で背中をトントンと叩いた。
見るとみんな微笑んでいた。
「許さないはずがないだろ? 今のチャブチを見たら」
「……そうとも。ゴールド様はお心の広いお方。そんなことも知らんのか?」
やはり心置けない友人は良い。
四人で笑い合った。
ポチが頭の後ろで手を組んだ。
「さて。今日の政務政務。仕事がたくさんある。ボクは城の外の砦二箇所の修繕の見回りだ。帰って女房殿が作った朝食を食わんとな。怒られてしまうわい」
「ふふ。全くだ」
そう言って、みんなで叔父の墓から出ようとした時、チャブチが友人たちを止めた。
「なぁ。今度、非番を合わせてみんなで釣りにいかんか? 故郷の池に良く似たところを見つけたんだよ。昔みたいにタンポポの花の疑似餌で誰が一番大物を釣れるか勝負しよう」
と言うと、みんな膝を叩いて大笑した。
「はっはっはっは。チャブチが勝てるわけなかろう」
「せいぜい、小ブナか小エビがいいとこだ」
そう。チャブチには釣りの腕前がなかった。
それもそのはず。ボクが肉体の主導権を握っていたころ、他の子供たちが遊んでいる間に剣術や戦術の稽古をしていたのだ。
たまに休みでみんなに交じって釣りをしてもよい釣果はなかったのだ。
「ムッ……。ボクの腕前を知らないな? 前にこーんなに大きな魚を逃がした」
たしかに、ボクは叔父と剣術の稽古に出かけた時に、池を見つけて駄々っ子のように転がって釣りがしたいと言ったことがあった。
一族の命運とは関係無しに無邪気に遊んでいるみんながうらやましかったのだ。
叔父はため息をついたが、「子供らしいこともいいことだ」と言って自分の服の糸を解き、貝殻を石で打ち磨いて針を作ってくれた。そして二人でこっそり釣りをしたことがあった。
その時、60cmほどの鯉がかかったが服の糸ではもろくて釣り上げることができなかった。
そんなことを、意識だけの存在であったチャブチも楽しい思い出だったのであろう。
三人の前で自分の両腕を思い切り広げて魚の大きさを自慢した。
だが両腕を広げた幅。それってつまり、チャブチの身長と同じ大きさの三メートルだ。
三人は噴き出してますます笑った。
「まったく! チャブチは信用できん」
「そうとも。またいつか妾騒動をおこすぞ?」
「おうとも。反省した振りをして!」
「いや多分、大木でも呑んでいて重くて上げられなかった……。ホントだって叔父に聞いてみろよ!」
と墓を指しながら戯けて言うと、クロはチャブチを指さした。
「今度は平気でゴールド様の名前までだしてきた。とんでもないヤツだ!」
「お、おい。待てよ」
チャブチは三人の背中を追いかけて行った。
「まぁ、いいじゃないか。酒でも呑みながら」
と、三人に近づいて肩を抱くと、怒ってなどいなかった。
「うん。今の時期はカタツムリが多い。それを石焼にしてつまみにするっと」
「となると、塩とニンニクが必要だな。やば。ヨダレが……」
「ふふ。目的が変わってるわ。それじゃバーベキューじゃないか。たしかに、最近はカタツムリを食べさせてはもらえんからな」
「そうそう。芋虫の揚げ物、セミのソテー、豆の葉の炒め物。貧しいながらも好物があったが、奥方はああ言う物が嫌らしい。」
「全くだ。生ハムとか骨なし肉とか、上品だが食いいでがない」
「ホントだよ。ピンクも骨を入れない。コボルドは骨メインだろ! って口論したこともある。それでも折れないからなぁ」
「どの家の女房どのは同じだな。はは。いいじゃないか。こっそりとカタツムリ焼き……」
とヤイヤイと雑談していると、ポチがチャブチに視線を送った。
「でもなぁ、カタツムリとなるとチャブチの箸が早いからなぁ」
「だって、カタツムリは半生だろ?」
「よく焼きだろ!」
「ボクも汁気が飛んだ方が好きだなぁ」
三人はウェルダンの方が好みらしい。レア好みは父ブラウンの影響だろうか?
「しかし、カタツムリは強壮だ。またチャブチの悪いクセが出るか、ピンクに7人めが宿るかもしれん」
チビが言うと、チャブチがピタリと足を止めた。
さすがに最近は反省しているのは分かっている。女グセのことは言い過ぎがと思ったクロが
「ん? どうした。いじられて怒ったか?」
との言葉にチャブチはモジモジしながら言い難そうに答えた。
「いやぁ。7人目はもう宿ってる」
大きな体で照れている。
三人は手で顔を押さえた。
すると、後ろに気配を感じた、立ちながら後ろを振り返ると、そこには幼馴染みの三人が同じように額を擦り付けて拝礼していた。
「お前ら……」
声をかけると、三人は顔を上げ立ち上がった。
「水臭いぞ。チャブチ。自分一人だけいいかっこしいか?」
「全く、知らぬとでも思ったか。この城の中で知らぬものなど誰もいないぞ?」
「ゴールド様が自刃なすったのは何も、お前だけのせいじゃない。チャブチを止めなかった我々にだって少しずつ責任がある。それを自分だけのせいとか買い被り過ぎだろ」
公務でないのでいつもの友人口調だ。三人は手を振り上げて思い切りチャブチの尻を叩くと「いっ!」と言って、チャブチは自分の尻を押さえた。
「……いやぁ。叔父には何度頭を下げても謝り切れん。親の心子知らずなんて言い訳も言わん。今更墓に謝ったところでどうにもならんがな……」
と寂しげに目を下に向けた。そんな彼を友人たちは近づき無言で背中をトントンと叩いた。
見るとみんな微笑んでいた。
「許さないはずがないだろ? 今のチャブチを見たら」
「……そうとも。ゴールド様はお心の広いお方。そんなことも知らんのか?」
やはり心置けない友人は良い。
四人で笑い合った。
ポチが頭の後ろで手を組んだ。
「さて。今日の政務政務。仕事がたくさんある。ボクは城の外の砦二箇所の修繕の見回りだ。帰って女房殿が作った朝食を食わんとな。怒られてしまうわい」
「ふふ。全くだ」
そう言って、みんなで叔父の墓から出ようとした時、チャブチが友人たちを止めた。
「なぁ。今度、非番を合わせてみんなで釣りにいかんか? 故郷の池に良く似たところを見つけたんだよ。昔みたいにタンポポの花の疑似餌で誰が一番大物を釣れるか勝負しよう」
と言うと、みんな膝を叩いて大笑した。
「はっはっはっは。チャブチが勝てるわけなかろう」
「せいぜい、小ブナか小エビがいいとこだ」
そう。チャブチには釣りの腕前がなかった。
それもそのはず。ボクが肉体の主導権を握っていたころ、他の子供たちが遊んでいる間に剣術や戦術の稽古をしていたのだ。
たまに休みでみんなに交じって釣りをしてもよい釣果はなかったのだ。
「ムッ……。ボクの腕前を知らないな? 前にこーんなに大きな魚を逃がした」
たしかに、ボクは叔父と剣術の稽古に出かけた時に、池を見つけて駄々っ子のように転がって釣りがしたいと言ったことがあった。
一族の命運とは関係無しに無邪気に遊んでいるみんながうらやましかったのだ。
叔父はため息をついたが、「子供らしいこともいいことだ」と言って自分の服の糸を解き、貝殻を石で打ち磨いて針を作ってくれた。そして二人でこっそり釣りをしたことがあった。
その時、60cmほどの鯉がかかったが服の糸ではもろくて釣り上げることができなかった。
そんなことを、意識だけの存在であったチャブチも楽しい思い出だったのであろう。
三人の前で自分の両腕を思い切り広げて魚の大きさを自慢した。
だが両腕を広げた幅。それってつまり、チャブチの身長と同じ大きさの三メートルだ。
三人は噴き出してますます笑った。
「まったく! チャブチは信用できん」
「そうとも。またいつか妾騒動をおこすぞ?」
「おうとも。反省した振りをして!」
「いや多分、大木でも呑んでいて重くて上げられなかった……。ホントだって叔父に聞いてみろよ!」
と墓を指しながら戯けて言うと、クロはチャブチを指さした。
「今度は平気でゴールド様の名前までだしてきた。とんでもないヤツだ!」
「お、おい。待てよ」
チャブチは三人の背中を追いかけて行った。
「まぁ、いいじゃないか。酒でも呑みながら」
と、三人に近づいて肩を抱くと、怒ってなどいなかった。
「うん。今の時期はカタツムリが多い。それを石焼にしてつまみにするっと」
「となると、塩とニンニクが必要だな。やば。ヨダレが……」
「ふふ。目的が変わってるわ。それじゃバーベキューじゃないか。たしかに、最近はカタツムリを食べさせてはもらえんからな」
「そうそう。芋虫の揚げ物、セミのソテー、豆の葉の炒め物。貧しいながらも好物があったが、奥方はああ言う物が嫌らしい。」
「全くだ。生ハムとか骨なし肉とか、上品だが食いいでがない」
「ホントだよ。ピンクも骨を入れない。コボルドは骨メインだろ! って口論したこともある。それでも折れないからなぁ」
「どの家の女房どのは同じだな。はは。いいじゃないか。こっそりとカタツムリ焼き……」
とヤイヤイと雑談していると、ポチがチャブチに視線を送った。
「でもなぁ、カタツムリとなるとチャブチの箸が早いからなぁ」
「だって、カタツムリは半生だろ?」
「よく焼きだろ!」
「ボクも汁気が飛んだ方が好きだなぁ」
三人はウェルダンの方が好みらしい。レア好みは父ブラウンの影響だろうか?
「しかし、カタツムリは強壮だ。またチャブチの悪いクセが出るか、ピンクに7人めが宿るかもしれん」
チビが言うと、チャブチがピタリと足を止めた。
さすがに最近は反省しているのは分かっている。女グセのことは言い過ぎがと思ったクロが
「ん? どうした。いじられて怒ったか?」
との言葉にチャブチはモジモジしながら言い難そうに答えた。
「いやぁ。7人目はもう宿ってる」
大きな体で照れている。
三人は手で顔を押さえた。
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