しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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「先生、いる?」

「いるよ、どうぞ入って。」

先生いた!と犬ころのように駆け寄ってくる高橋理人。こいつは犬系男子だな。

「またおむすび1個だ、だめでしょ、ちゃんと食べないと。」

「朝しっかり食べたからいいんだよ。」

てつかずの高菜おむすびを隠すように机に手を置く。

「食事、ありがとうな……、美味かった。」

「ふふーん!でしょ!冷えても美味しい料理ってなかなかハードル高いんだからね!……っていうか、出来れば電子レンジ買って欲しいな~。」

「……考えとく。」

「そうだ!先生、俺約束守ったよ!」

「何の話?」

「え!!!」

「うそだよ。提出物の件だろ。」

意気揚々、とはこういう様のことを言うのだろう。

「提出物、溜め込んでたぶんも含めて全部!今朝いちで提出しました!!!」

おめでとう。そしてさようなら、おれのお金。

「姉ちゃんに教わったんだけど、勉強って案外ちょろいのな。」

調子に乗っていた。
提出物なんて日頃の授業を真面目に聞いていれば誰でも提出できるようにできているのだが、せっかく浮かれてるところに水を差すのも可哀想な気がしたのでそっとしておくことにした。

「それでさ、約束の欲しいもの……!次の土曜日、予定ある?」

「あいにく何も無い。」

「やった!じゃあ、土曜日先生の家に行くね?」

「え?まぁ、いいけど……。」

なんだ、何か買って欲しいんじゃないのか?
困惑する俺を横に高橋理人は弁当を広げ始めた。
ここで食べるつもりらしい。

「はい、あーん。」

え?

「くち、あけて。」

条件反射的に開かれる口。
里芋の煮っころがし。
美味しい。

Good boy良い子。」

頭を撫ぜられる。
そこからはなされるがまま、美味しい料理と心地よいCommandに流されて昼食を終えた。
一人でいた時はおむすびひとつさえ持て余していたのに、高橋理人が食べさせてくれると、何故か倍くらい食べられてしまう。

「こうして肥育されていくんだ。」

「先生ガリだから、少しくらい太った方がいいって言ってんじゃん。」

「別に太ることに抵抗を覚えている訳じゃなくて、お前にされるがままなことに抵抗を覚えているんだよ。大人って言うのはそういう生き物なの……。」

高橋理人は、わっかんね。と呟いて笑った。
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