しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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退院して初めての理人の飯は美味かった。
おれに食べさせ終えた理人は自分の分を食べ始めた。
おれは入院前に理人が買って持ち込んだクッションに座っている。
まだ新しいのでふかふかだ。
これなら長時間Kneel座れの体勢で居られる。
そんなに長時間強いられることは無いけれど。
おれは体が柔らかいほうだから全然平気だけれど、体が硬い男性はいわゆるぺたんこずわりがキツかったり、出来ない人もいるらしい。知らなかった。
それを知った理人がクッションを買ってきたってわけだ。
気の利くパートナーである。

「おまえはほんとうにいいやつだよな……。」

おれにはもったいない。
ほんとうに。

「光太はおれにはもったいない人だから、大事にしたいだけだよ。」

思いもよらない返答が返ってきた。

「どこが!?」

心底驚いてしまった。

「え?ぜんぶ?綺麗だし、素直だし、優しいし、たまにちぐはぐな所も、ぜんぶ良い。」

「……おれにはよく分からない。」

「ほんとうはこの部屋内側から開けられないようにして、外から鍵を掛けて俺以外誰にも触れられないようにしたい。出来れば俺が居ないとトイレにすら行けないぐらい依存して欲しい。」

予想以上におもたいこと考えてた。
こわ。
独占欲舐めてました。

「そのくらい、光太が好き。」

「そのくらい……。」

でもどうだろう。
理人がおれ以外に優しくしてるところなんて、おれだって見たくない。
どうしよう、おもったよりおれ、理人のこと好きになってる。

「おれも、そのくらい、好きだよ……。」

「え?なに?」

洗い物をしている理人には聞こえなかったらしい。手を止めてこちらを見ている。

「に、二度も言わねぇよ!」

「言ってよー!気になるじゃん。」

「やーだ。」

ちぇっ、今度絶対聞き出す。と言って洗い物に戻った。言わせることも出来るはずなのにそうしないところとかも好き。
おれたちって、恋人なのかな。
恋人ってよく分からない。
こんなに好きでも、そうじゃないのかもしれない。
考えてたら不安になってきたので、洗い物をする理人の後ろから抱きついてみた。
普段なら絶対こんなことしないのに、なんで。自分でもよく分からない。

「わ、びっくりした。なに、甘えんぼう?」

「うるさい……。」

しばらくそのままでいた。
理人の体温が高くて夏の暑さとあいまって溶けてしまいそうだった。

「おれたちって、恋人なの、かな……?」

「はぁ!?いまさら!?」

「不安になった。」

「恋人だよ、大事な恋人。」

照れる。
けど、嬉しい。
おれ、理人の恋人なんだ。
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