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第一章
3 溺愛?
しおりを挟む「国王陛下並びに王妃陛下本日は御招待して下さり誠に有難う御座います」
ふわりと、如何にも淑女らしく優雅なカーテシーをする私。
勿論ほんの少しはにかみながらの可愛らしい笑顔も忘れはしない。
でもだからと言ってあざとくしては駄目!!
何処の誰が見ても可憐で、清楚で儚げな令嬢でいなければいけない。
故に今の私はお猫様を背中へ何十匹も背負いこめば、現在進行形で化け猫ならぬ深窓のお嬢様?
はぁ、でもこれを完璧にやり通さなければいけないのである。
そして今背後に感じるモノは何だろう。
そう現実には絶対持ってはいない筈なのに、何故か架空の鞭を握りしめ背後でビシビシと、とても頑丈な革で出来ているだろう鞭を優雅に、然も慣れた仕草でしならせているのは私の専従侍女兼鬼教官。
とは言え現実のテアは淡いモスグリーンの生地に白い小花模様の可愛らしいドレスを身に纏って……いや私の目にははっきりと全身真っ黒でタイトな軍服姿。
それで以って血の様に赤くそして恐ろしく踵の高いブーツ姿で私の一挙手一投足をよ。
目を皿の様に細めつつ事細かく私の頭の上から足のつま先まで厳しくチェックしている!!
ほんの少しでもテアの求める淑女の枠より外れようものならば、帰ってからのおやつの姿が色々と変わってしまう⁉
最初は私もここまでテアの言う事を従順に聞いたりなんてしなかったわよ。
何故なら私は淑女としての礼儀作法よりも野山を自由に駆け回る方が大好きなの。
なのでシーズン中の王都滞在ははっきり言って余り好きではなかったりする。
でもそんな私へ王妃様は王宮内にあるこじんまりとしているけれども子供が遊ぶには十分なもの。
きちんと管理のなされている王宮内の森の中で好きな様に遊ばせてくれるのよね。
まあ敷地内の森とは言えど庭園のオブジェの一部とした人工的なもの。
貴人達のお散歩には丁度良い広さだね。
またその際はコルセットで締め付けたドレスではなく、ゆったりとした動き易い服までちゃんと用意して下さるの。
はぁぁでもそれもこれも全てはテアがくるまでだったのよね。
「ふふ、本当に可愛らしい姫君になってしまいましたねエル」
「そうだな。だがわしは森を駆け回るエルも大好きだぞ」
「本当にそうですわね。叶うものならばエルを本当の娘として迎えたかったのですけれど、こればかりは仕方がありませんわね」
「へ、陛下……」
「ま、嫌よエル。私達の事は伯父様と伯母様…・・・でしょ」
「いやいやわしは別にお父様とお母様でもいいぞ」
デレっデレだ。
やや強面風イケメンと永遠の美女であられる両陛下だけれど、幼い頃より私に対しては物凄くデレておられる。
まあ普通に血縁関係ですものね。
可愛い姪っ子にデレてしまわれるのも仕方がないのかもしれない。
王子様達には悪いけれども両陛下は本当に女の子をお望みだったらしい。
とは言えこればかりは神のみぞ知る……だし、私の従兄に当たる王子様達とは最低でも10歳も年齢が離れている故に合法的な方法での私の取り込みはどうやら無理だったらしい。
また既に四人の王子殿下にはそれぞれ素敵な婚約者がおいでなのだもの。
第一王子殿下が半年後に立太子なされれば、そのまま婚約者である公爵令嬢とご結婚されるらしいから……。
「もう直ぐクリスお兄様がご結婚なされればきっと直ぐに可愛らしいお姫様がお生まれになられますよ」
何時の間にか国王陛下に普通に抱っこをされたままサロンへ移動している途中で私はこっそりと耳元で囁いた。
「ふ、やはりエルは可愛いのう。そうじゃな、孫が出来たとしてわしと王妃は何時までもエルを愛しておるぞ」
「ふふ、有難う御座います」
微笑ましい談笑も済んだところでこの状況、普通に考えてこのシチュエーションは間違いなく可笑しいと思うのは果たして私だけなのだろうか。
近くのサロンへ移動するだけなのに、何故王国で一番偉い人に私は抱っこをされているのか。
そしてまた誰もこれに対し突っ込みを入れる度胸のある人はいない。
流石のテアでさえ、最初の頃は目ん玉ひん剥いて吃驚していたもの。
「――――おい陛下、言っておくがエルは私の大事な娘であって断じて貴方の娘ではありませんよ!!」
いた⁉
陛下に激しく突っ込める人物その一……つまりは私のお父様の登場です。
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