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第一章
4 現実と霞の狭間で
しおりを挟む「お前はどうしてそう狭量なのだ。ほんの僅かなエルとの逢瀬をゆっくり楽しませてくれても良いではないか」
仏頂面の陛下よりぶんと力づくで私を奪い返すお父様。
これって普通に考えなくても不敬罪だと問われてもいい案件だよね。
しかし何故か陛下もだけれどお父様をはじめ周囲の人達は何も言わない……ってもしかしなくとも言えないの?
「ふん、逢瀬等と稚い子供の前でよくも言えたものですね、この破廉恥国王!!」
「逢瀬の何が悪い。王子達とは違いエルは幾つになっても赤子独特のミルクの様に甘く、マシュマロの様に柔らかい女の子なのだぞ。こうして何時まで触っていても飽きる事のない可愛らしさと愛らしさ。お前は本当にいいよなぁ。実の娘だから何時でもお触り放題ではないか!!せめて登城した時くらいわしが伯父としての権利を主張したとしても構わぬだろうが!!」
ここでスルっと私はお父様から陛下へと抱き抱えられてしまう。
抱っこちゃん人形ですか私は⁉
「その言葉そのものが変態国王なのですよ。何処の国の王が幼い少女に頬擦りからの抱っこ移動をして愉しむ変態がいるのですか!!」
「……ここにおるわ!!」
のう、可愛いエルよ……って私をこの痴話喧嘩に巻き込まないでぇぇぇぇぇ。
こうなると幼馴染兼親友である二人はいい年をした大人なのにまるで子供だ。
この様子を見ていると何時も思ってしまう事がある。
私の国って本当に大丈夫なの?
「さぁエル、どうしようのない男達は放っておいて私と一緒に陽当たりの良いサロンでお茶にしましょう。テアも一緒にお茶をしてくれるわね!!」
こちらはこちらで色々な意味で瞳をギラつかせ有無を言わせないオーラ満載だけれど、とは言え優し気な笑みを湛えた王妃様。
「うふふ、エルのお陰でテアまでよ。あぁ可愛らしい女の子達に囲まれる時間って本当に幸せよね。さぁこの様なむさ苦しい男達は放って置いて向こうへ行きましょう」
「「は、はい」」
一番逆らえないのはもしかしなくとも国王陛下ではなくお父様でもない。
そうこの国で逆らえないのは絶対に王妃様と王妹であるお母様のお二人だろう。
私は生まれた時からこの環境だったから特に何も感じないけれど、流石のテアでもこの状況に慣れるまで少し時間が必要だったみたい。
だって国のトップがこれではね。
それに何も両陛下と両親だけではない。
アルお兄様とお兄様達も色々とややこしい。
まぁこれだけ愛されているって事は本当に幸せなのよね。
世の中には私の様に愛されてはいない人もいた訳で……。
だから余計に惹かれたのかもしれない。
ううん、押し付けとかそう言うものではなく、ただ純粋に傍にいたいと思えたの。
でもあの御方にしてみれば私の存在は最後まで疎ましかっ……ん、こうしてまた私の意識が変?
あぁ王命による婚姻をあの御方へ問題なく破棄する為に、全ては乱心した私が引き起こした問題として、私から永遠に解放される様にと思っての行動だった。
断片的に沈んでは浮く、浮いては沈む16歳の記憶。
少しだけ思い出したわ。
そうあれは断じて夢ではなく現実に起こったもの。
そしてあの日私は……ジーク様の目の前で死んだ。
でも現実は今こうして私は生きている。
理由は皆目見当つかない。
然もただ単に時間が戻るだけではなく態々ご丁寧にもジーク様と出逢う前ですか。
それから身体もその頃に合わせ随分と幼児化してしまったのも受け入れないと……ね。
私の頭の中でまた霞が濃くなっていく。
きっとこれから先何度もこの不可解な減少が続くのは正直に言って余り宜しくない。
でもこれは私の意志で操作できな……。
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