エルネスティーネ ~時空を超える乙女

Hinaki

文字の大きさ
8 / 34
第一章

4  現実と霞の狭間で

しおりを挟む


「お前はどうしてそう狭量なのだ。ほんの僅かなエルとの逢瀬をゆっくり楽しませてくれても良いではないか」

 仏頂面の陛下よりぶんと力づくで私を奪い返すお父様。
 これって普通に考えなくても不敬罪だと問われてもいい案件だよね。
 しかし何故か陛下もだけれどお父様をはじめ周囲の人達は何も言わない……ってもしかしなくとも言えないの?

「ふん、逢瀬等といとけない子供の前でよくも言えたものですね、この破廉恥国王!!」
「逢瀬の何が悪い。王子達とは違いエルは幾つになっても赤子独特のミルクの様に甘く、マシュマロの様に柔らかい女の子なのだぞ。こうして何時まで触っていても飽きる事のない可愛らしさと愛らしさ。お前は本当にいいよなぁ。実の娘だから何時でもお触り放題ではないか!!せめて登城した時くらいわしが伯父としての権利を主張したとしても構わぬだろうが!!」

 ここでスルっと私はお父様から陛下へと抱き抱えられてしまう。
 抱っこちゃん人形ですか私は⁉

「その言葉そのものが変態国王なのですよ。何処の国の王が幼い少女に頬擦りからの抱っこ移動をして愉しむ変態がいるのですか!!」
「……ここにおるわ!!」

 のう、可愛いエルよ……って私をこの痴話喧嘩に巻き込まないでぇぇぇぇぇ。

 こうなると幼馴染兼親友である二人はいい年をした大人なのにまるで子供だ。
 この様子を見ていると何時も思ってしまう事がある。


 私の国って本当に大丈夫なの?


「さぁエル、どうしようのない男達は放っておいて私と一緒に陽当たりの良いサロンでお茶にしましょう。テアも一緒にお茶をしてくれるわね!!」

 こちらはこちらで色々な意味で瞳をギラつかせ有無を言わせないオーラ満載だけれど、とは言え優し気な笑みを湛えた王妃様。

「うふふ、エルのお陰でテアまでよ。あぁ可愛らしい女の子達に囲まれる時間って本当に幸せよね。さぁこの様なむさ苦しい男達は放って置いて向こうへ行きましょう」

「「は、はい」」

 一番逆らえないのはもしかしなくとも国王陛下ではなくお父様でもない。
 
 そうこの国で逆らえないのは絶対に王妃様と王妹であるお母様のお二人だろう。

 私は生まれた時からこの環境だったから特に何も感じないけれど、流石のテアでもこの状況に慣れるまで少し時間が必要だったみたい。

 だって国のトップがこれではね。

 それに何も両陛下と両親だけではない。
 アルお兄様とお兄様達も色々とややこしい。

 まぁこれだけ愛されているって事は本当に幸せなのよね。

 世の中には私の様に愛されてはいない人もいた訳で……。

 だから余計に惹かれたのかもしれない。
 ううん、押し付けとかそう言うものではなく、ただ純粋に傍にいたいと思えたの。
 でもあの御方にしてみれば私の存在は最後まで疎ましかっ……ん、こうしてまた私の意識が変?

 あぁ王命による婚姻をあの御方へ問題なく破棄する為に、全ては乱心した私が引き起こした問題として、私から永遠に解放される様にと思っての行動だった。

 断片的に沈んでは浮く、浮いては沈む16歳の記憶。

 少しだけ思い出したわ。
 そうあれは断じて夢ではなく現実に起こったもの。
 そしてあの日私は……ジーク様の目の前で死んだ。

 でも現実は今こうして私は生きている。
 理由は皆目見当つかない。
 然もただ単に時間が戻るだけではなく態々わざわざご丁寧にもジーク様と出逢う前ですか。
 それから身体もその頃に合わせ随分と幼児化してしまったのも受け入れないと……ね。
 
 私の頭の中でまた霞が濃くなっていく。
 きっとこれから先何度もこの不可解な減少が続くのは正直に言って余り宜しくない。
 でもこれは私の意志で操作できな……。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

だから愛は嫌だ~虐げられた令嬢が訳あり英雄王子と偽装婚約して幸せになるまで~

来須みかん
ファンタジー
 伯爵令嬢ディアナは、婚約者である侯爵令息ロバートに、いつもため息をつかれていた。  ある日、夜会でディアナはケガをし倒れてしまったが、戦争を終わらせた英雄ライオネル第二王子に助けられる。その日から、ディアナは【相手が強く思っていること】が分かるようになった。  自分を嫌うロバートとの婚約を解消するために、利害関係が一致したライオネルと契約婚約をすることになったが、彼の視線はとても優しくて……?

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

処理中です...