エルネスティーネ ~時空を超える乙女

Hinaki

文字の大きさ
9 / 34
第一章

5  最強は我が母なり

しおりを挟む
 結局あれからも陛下とお父様はぶつぶつと暫くの間押し問答の末、それぞれの侍従や文官達によって強制的に引き離されれば、そのまま半ば強引に押し込む様な形で各自の執務室へと放り込まれてしまったらしい。

 それでも王妃様とサロンでお茶をしている間に少なくとも陛下は四回、お父様は三回私の様子を見に来ていたわ。
 全くあれで賢王と称えられる王陛下で、もう一方は冷徹冷酷な我が国の誇る宰相閣下とは到底思えない。
 嬉しい反面少し恥ずかしいから公衆の面前では是が非ともやめて欲しいわ。


 可愛い女の子を愛でる王妃様の会と言う名のお茶会は続けられ、勿論私とテアが退屈しない様に美味しいお菓子や楽しいお話とピアノの生演奏付きで優雅な時間はどんどん過ぎていく。

 お昼前に王宮へ伺候して早数時間……流石に私の表情筋にも限界が〰〰〰〰。
 なのにテアは心の声で『淑女の仮面は絶対に剥がすな!!』って厳命してくるし、王妃様に至っては本当に心より楽しまれているご様子でずっとニコニコ満面の笑みを湛えていらっしゃる。

 きっと今日の日の為に公務を沢山頑張ってこられたのだなぁって思えばよ。
 姪として文句はとてもではないけれど言えやしない。
 そうしてまた時間は刻々と過ぎてゆき到頭とうとう私の忍耐にも限界が差し迫った時だった。

 うん、もうその証拠に表情筋が小刻みに震え始めたからね。


「お義姉様ご機嫌麗しゅう御座いますわね。ですがそろそろ子供達を解放して頂けますわよ……ね」
「ぴぎ⁉あ、おほほ、まぁクレメンティーネ様御機嫌よう……ですわ」

 あ、毎度の事ながらこの瞬間のお母様を見た王妃様は完全に身体を縮められると同時に、何故か酷く怯えた表情をされるのよね。


 譬えるならば蛇に睨まれた蛙……的な?


 確かにお母様を怒らせるのは得策ではない。
 何と言ってもお母様は色々な意味でお強いもの。

「エル、テアも屋敷へ帰りますよ」
「「はい、お母様(奥方様)」」

 私とテアはさっとその場より立ち上がればだ。
 王妃様はしゅんと項垂れられると共に物凄く寂しいオーラをぶふぁんと周囲に向けて放出されれば……。

「もう帰ってしまわれるのですか。クレメンティーネ様もご一緒にお茶をしません? そ、そので、出来ればエルだけでも今晩王宮へお泊りとか……も、勿論テアも一緒ならば尚一層嬉し――――⁉」

 もじもじと王妃様はそれはそれは上目遣いとお可愛らしい所作でお母様へお強請りをなされるのです。
 結果はわかり切っていると言うのに……。

「だ、めですよ王妃様!!エルだけでなくテアも私の可愛い娘なのです。子供は親許で一緒に暮らす事が一番ですわ!!」
「そんなぁティーネ様は狡いですぅ。可愛いエルだけでなくテアまでも娘に迎えられましたのに!!わ、私だって本当は女の子を生みたかったのです。ですが何の因果で四人も王子が続き……た、確かに我が子ですからね。勿論王子達を愛してはおりますけれどもそれでもやはり女の子!!リボンとフリフリのレース一杯の可愛らしいドレスを、流石に男の子では可愛らしいリボンとフリフリのレース一杯のドレスは着せられませんもの」

 お兄様方危機一髪でしたわね。
 まぁ王妃様が強固魘されれば色々と問題も勃発したでしょう。
 だけどそれはそれで女装されたお兄様方を少しは見たかったかも……。


 我が兄も然る事ながら従兄である王子様方は所謂イケメン様なのです。
 女装すればとてもお美しかったでしょうね。
 
 何時までもうじうじシクシクと泣かれる王妃様へ私は新愛を込めてちゅっと可愛らしく王妃様の頬にお別れのキスをしました。
 王妃様はエントランス迄名残惜しそうにされておられましたが、何とか今回も無事に私とテアはお母様によって屋敷へと帰宅する事が出来ました。
 

「本当に何時まで経っても王妃と言う自覚をお持ちになられないわね」

 なーんて馬車の中で文句を仰っておられるお母様ですが、実は王妃様とはとても仲良しさんなのです。
 そしてこの一連の流れは私の誕生以降変わらず王宮へ伺候する日の当たり前的な日常。

 どうかもこの幸せがずっと続きます様に……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...