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第二章
閑話 Side家族ラブな父親キルヒホフ侯爵ユリアン
しおりを挟む愛するティーネがアルフォンスを産んでくれた時も感動に涙をしたものだが、今より九年前にマジ天使なエルネスティーネを産んでくれた際は本当に女神と天使が眼前に降臨したのだと思ってしまったよ。
部下や友人達から色々聞かされていたのだがこれ程にも娘の誕生に感動するとは正直思わなかった。
そう譬えるならばエルは愛する妻のミニチュア版!!
エルと出会う為に今日と言う日があるのだと酷く納得したものだ。
また仕事を放り出して迄ティーネの出産へ立ち会った……訳ではない。
そこは物理的に許されないと皆より叱責を受け、世の夫達と同じく扉の向こう側で冬眠前の熊の様にウロウロとしていたのだが心はだ。
心だけは愛するティーネの許に寄り添っていたとここに断言する!!
だが実際娘の誕生に諸手を上げて喜ぶ事は出来なかった。
いや勿論エルが生まれて来てくれた事に感謝感激雨あられ状態だったのは言うまでもない。
彼女と初めて対面させて貰った時は感激の余り滂沱の涙を流せばだ。
疲れた顔だけではなく本当に疲れ果て満身創痍なのにも拘らず、妻はビリビリと雷を纏わせたビンタを私へお見舞いし……。
『しっかりなさいませ!!』
そう愛のお仕置きをしてくれたのだ。
まぁコホン……話は大分逸れてしまったか。
兎に角私もティーネと出逢うまで王家の秘匿されし呪いの様な奇病について何も知らなかった。
実際ティーネの体験談を聞いて大層驚いたものだ。
妻と運命的な出逢いをした以降彼女自身その奇病に悩まされる事はなくなったらしい。
だから私自身妻と親友夫婦、義母である王太后からの情報で得た知識しかない。
妻の腕の中で健やかに眠る娘を見るにつけ何故と思うと同時にこの不条理を呪った。
これより先エルが背負うだろう過酷な運命を思えば泣きそうになる。
でも今泣けば漏れなくティーネのビンタ第二弾は間違いなく飛んで来るだろう。
あ、でもそれはそれで嬉しい……い、いや出産と言う大仕事を終え満身創痍のティーネに私の相手までさせる訳にはいかない。
だから娘よ、父は心の中で泣く事にするよ。
そしてお前の背負うものを少しでも軽くしてやりたいと父は努力する。
宰相として、また国王の親友兼妹の夫としてのコネを最大限行使し様々な文献にこれまでの王家、そう直系王族のみにしか閲覧を許されないと言う記録までを何度も隅から隅まで読み漁ったよ。
しかしながら如何せん情報が少な過ぎる。
この時程ファーレンホルスト家の男児出生率を呪った事はない。
この国が建国して約千年と少し。
娘を含め誕生しただろうファーレンホルストの血を受け継ぐ女児は十名。
ただ最初の女児の記載は何故か見当たらない。
昔語りではないが女神イルメントルートが実在していると言う説によればだ。
王家の初代国王にも係わってくるのだが生憎ながら私の頭脳はそこまでお花畑ではない。
女神信仰を否定する心算はない。
大昔の厄災は確かに起こりえた事なのだろう。
だがその厄災=女神降臨に魔女の存在は些かファンタジー過ぎて私はどう素直に受け入れ難いのである。
なのでそこをなかったものとしてそれ以降の女児に関する記録を読んだのだ。
確かには百年前後、かなり幅はあるのだが女児は誕生している。
また誕生した女児はもれなく皆奇病を発症していた。
そしてこの奇病は他の者へ感染はしない。
どの女児も5~7歳頃に発症し意識消失の度に記憶を失う。
その後成人を迎えるまでに運命の番となる者と出逢う事が出来た女児は奇病は消失し天寿を全うしている。
この文献を読んだ瞬間妻の身が安泰である事に感謝をしたのは言うまでもない。
だが成人までに三名の女児は運命の番と出逢えず奇病発症して数年後に没していた。
ファーレンホルスト家の血を受け継ぐ女児は皆百年前後毎に誕生し、百年以上はかなりの幅はあるのだが反対に百年以前の後差は五年だった。
だが現実に我が娘であるエルネスティーネは妻の誕生より三十四年しか経過してはいない。
これは一体何を意味するのであろう。
娘の誕生はどの女児にも相当しない。
この事実が私を何処までも不安にさせた。
だがこの一年後更に私達を不安にさせるとは予想だにもしなかったのである。
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