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6 Sideアンジェリカ
しおりを挟む王女時代では考えられないくらいの短い期間とは言え乱れた生活でした。
こうしている間にも旦那様と騎士達は命を賭して帝国と戦っておられると言うのにです。
形だけの夫婦とは言え一般的な妻として今の私の行動は本当にあり得ないのでしょうね。
ええ、この身体が動く限り様々な場所へと出歩いておりましたわ。
観劇もそう、仮面舞踏会……今までに一度たりとも踏み込んだ事のない世界。
そう決して国王であられるお兄様が絶対に参加が出来ないだろうものばかりを態と選べば、当然の事ですがこの時の私は我が身に宿る子供の身の安全なんて一切考えてはおりません。
何故なら宗教上我が国で堕胎は行えない。
だとすれば可能な限り自然な形でいなくなって欲しい。
ふふ、本当に最悪最低な母親です。
それでもっ、この子を受け入れれば私は同時に兄の行った行為までをも受け入れてしまう様で怖かったのです。
私は兄を肉親としてしか受け入れられなかった。
でも今はその肉親と言う括りでも受け入れたくはない。
叶うならばこれより先生涯兄の顔を見たくはない!!
そんな兄の血を継ぐこの子はきっと誰よりも兄を、王家の特徴を色濃く受け継ぐ事でしょう。
決して生まれてきてはいけない我が子。
夫となった辺境伯に何があろうとも知られたくはない。
しかしこのままではもう直ぐ全てを知られてしまう。
そう十月十日で子は産まれるものだと知識では存じておりました。
もう直ぐ五ヶ月。
そして今この瞬間も私の胎の中ですくすくと子は育っているのですもの。
リザや侍女達の話では辺境伯はとても清廉潔白で強くも立派な騎士らしいそうです。
その様な立派な御方へ嘘を吐き続ける?
いえ、純潔ではない私は最初から彼を裏切っていると言う事実にこの身が否が応にも苛まれてしまう。
何故なら夫を裏切った証がこの子なのですもの。
共に辺境伯邸へと来てくれたリザと数名の侍女達は事情を知りつつも常に私の身を心より案じてくれています。
そんな私はこの子を失いたい一心で毎日毎晩クタクタになるまで出歩くのですものね。
そうして屋敷にいては情緒不安定で泣き暮らす私。
正解が全くわからない。
でもこのままではいけない事もわかってはいるのです。
日々膨らみつつあるお腹へ手をやれば、ぽこん――――と動くのです。
確かに私の胎の中で生きて育っている。
生まれて初めて我が身の内へ命が存在する事に驚きと不安、悲しさに悔しさとどうしようのない怒りからの最後はやはり不安で全てが埋め尽くされてしまうのです。
今はまだ体型をカバー出来るドレスで何とか周囲を騙せてはいるでしょう。
ですがもうそれもあと僅かです。
全てが白日の下へ晒された瞬間私は一体どうすればよいのでしょうか。
そんな悩み苦しみが続いたとある日の事でした。
密やかに夜陰に乗じて夫の辺境伯が王都にあるタウンハウスへ到着したのは……。
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