9 / 31
9 Sideアンジェリカ
しおりを挟む
何故⁉
どうしてっっ。
何故お兄様は執拗に私へ執着するのです。
私はお兄様の玩具ではない。
然も私は既に降嫁した身。
ましてこの結婚を決めたのは他の誰でもない兄自身。
譬えそれが臣下からの奏上があったにせよです。
国王としてアッシュベリーとの絆を深めなければいけないと判断したのは兄自身なのです。
私の様な穢れし者を旦那様へと宛がったのは兄なのです!!
なのに王都を出た瞬間情けなくも追い掛け剰え兄の狂気より逃げ出した私を旦那様の目の前で拘束しようとするのですか。
ああ嫌っ、目には見えない幾重もの鎖が私の身体へとぐるぐると絡みついていく。
『永遠に逃しはしない。私は死する瞬間までアンジェを愛している。私だけの、私だけが愛する愛しいアンジェ』
あの犯され続けた日々の中で繰り返しそう囁かれた兄の声が鎖となって生々しく、何処までも私の身体へと纏わりつく。
絶対に私は戻りたくはない!!
譬え死を受け入れようともあの兄の許へは戻りたくはない!!
『さあ王女殿下間もなく迎えの馬車が追い付きましょう。さすれば速やかに王都へのお戻りを――――』
無遠慮極まりのない勅使の言葉に私の怒りは頂点へと突き上げていきます。
そしてきっともう誰もこの勅使を止めはしないでしょうね。
リザ以外は……。
何故なら国王の勅使と勅令の前において臣下である旦那様とその配下者も達にしてみれば絶対的な命令でしかないのです。
逆らう等考えるまでもない。
そうアッシュベリーはどの貴族家よりも王家へ忠義を捧げている家柄なのです。
ただし旦那様の立場としては新婚の妻を取り上げられる屈辱は確かに存在するでしょう。
ですか私は所詮純潔ではない穢れし者。
然も子まで孕んでいる女を護る価値と義務は旦那様にはないのです。
旦那様の幸せを思えばこのまま迎えの馬車へと乗り、私と別れる事が良策となるに決まっています。
また此度は王家側の有責として陞爵若しくはそれに値するものを送られる筈です。
従ってどうか何も態々背負わなくともよい荷物を旦那様が背負う必要はないのですから……。
「リザ、あなたはこの馬車に残って下さい。そしてそのまま領地へお帰りなさい。王都へ戻るのは私だけで良いのです」
「アンジェ様どうかその様な事を仰らないで下さいまし。私は産まれて間もない貴女様を実の子の様にお育てしたのです」
「リザ」
「全てを仰らなくともよいのです。このリザは死する瞬間までアンジェ様のお傍にいとう御座います。あちらで両陛下へ共に会いに行こうではありませんかアンジェ様」
「り、リザ、リザっ、ごめ、本当にこの様な事へ付き合わせてしまってごめんなさい」
「しっ、駄目ですよアンジェ様。余り大きなお声でお話になられますと外の者へと聞こえてしまいます」
「ええ、そうねリザ」
何時まで経ってもリザには頭が上がりません。
本当に彼女は私の二番目のお母様で、何時も私が行おうとする事をわかってしまうのですもの。
ごめんなさいリザ。
そしてこの様な弱き母を許して頂戴。
何があろうともあの兄の許にだけはもう二度と帰りたくはないのです。
そうして私達はその瞬間がくるまで声を潜めて静かに泣いておりました。
どうしてっっ。
何故お兄様は執拗に私へ執着するのです。
私はお兄様の玩具ではない。
然も私は既に降嫁した身。
ましてこの結婚を決めたのは他の誰でもない兄自身。
譬えそれが臣下からの奏上があったにせよです。
国王としてアッシュベリーとの絆を深めなければいけないと判断したのは兄自身なのです。
私の様な穢れし者を旦那様へと宛がったのは兄なのです!!
なのに王都を出た瞬間情けなくも追い掛け剰え兄の狂気より逃げ出した私を旦那様の目の前で拘束しようとするのですか。
ああ嫌っ、目には見えない幾重もの鎖が私の身体へとぐるぐると絡みついていく。
『永遠に逃しはしない。私は死する瞬間までアンジェを愛している。私だけの、私だけが愛する愛しいアンジェ』
あの犯され続けた日々の中で繰り返しそう囁かれた兄の声が鎖となって生々しく、何処までも私の身体へと纏わりつく。
絶対に私は戻りたくはない!!
譬え死を受け入れようともあの兄の許へは戻りたくはない!!
『さあ王女殿下間もなく迎えの馬車が追い付きましょう。さすれば速やかに王都へのお戻りを――――』
無遠慮極まりのない勅使の言葉に私の怒りは頂点へと突き上げていきます。
そしてきっともう誰もこの勅使を止めはしないでしょうね。
リザ以外は……。
何故なら国王の勅使と勅令の前において臣下である旦那様とその配下者も達にしてみれば絶対的な命令でしかないのです。
逆らう等考えるまでもない。
そうアッシュベリーはどの貴族家よりも王家へ忠義を捧げている家柄なのです。
ただし旦那様の立場としては新婚の妻を取り上げられる屈辱は確かに存在するでしょう。
ですか私は所詮純潔ではない穢れし者。
然も子まで孕んでいる女を護る価値と義務は旦那様にはないのです。
旦那様の幸せを思えばこのまま迎えの馬車へと乗り、私と別れる事が良策となるに決まっています。
また此度は王家側の有責として陞爵若しくはそれに値するものを送られる筈です。
従ってどうか何も態々背負わなくともよい荷物を旦那様が背負う必要はないのですから……。
「リザ、あなたはこの馬車に残って下さい。そしてそのまま領地へお帰りなさい。王都へ戻るのは私だけで良いのです」
「アンジェ様どうかその様な事を仰らないで下さいまし。私は産まれて間もない貴女様を実の子の様にお育てしたのです」
「リザ」
「全てを仰らなくともよいのです。このリザは死する瞬間までアンジェ様のお傍にいとう御座います。あちらで両陛下へ共に会いに行こうではありませんかアンジェ様」
「り、リザ、リザっ、ごめ、本当にこの様な事へ付き合わせてしまってごめんなさい」
「しっ、駄目ですよアンジェ様。余り大きなお声でお話になられますと外の者へと聞こえてしまいます」
「ええ、そうねリザ」
何時まで経ってもリザには頭が上がりません。
本当に彼女は私の二番目のお母様で、何時も私が行おうとする事をわかってしまうのですもの。
ごめんなさいリザ。
そしてこの様な弱き母を許して頂戴。
何があろうともあの兄の許にだけはもう二度と帰りたくはないのです。
そうして私達はその瞬間がくるまで声を潜めて静かに泣いておりました。
2
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
嘘が愛を試す時 〜君を信じたい夜に〜
月山 歩
恋愛
サラとマリウス・ハンプトン侯爵夫婦のもとに、衝撃的な告白を携えた男が訪れる。「隠れてサラと愛し合っている。」と。
身に覚えのない不貞の証拠に、いくらサラが誤解だと訴えてもマリウスは次第に疑念を深めてゆく。
男の目的はただ一つ、サラを奪うこと。
*こちらはアルファポリス版です。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる