愛すべき『蟲』と迷宮での日常

熟練紳士

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第二十七章

第百二十五話(最終話):エピローグ(5)

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最終話になります!!
だけど、完結ではないです^^
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 そわそわそわ

 落ち着け…落ち着くんだ。今更、この私に出来る事は何も無い。堂々と構えていれば良いのだ。先ほどから熊のように分娩室と書かれた部屋の扉の前で左右に行ったり来たりしている。

 なぜなら、ゴリフターズが産気づいたのだ。蛆蛞蝓ちゃんが事前に予定していた通りの日程だったので、準備は万全。

 この日の為に、ギルド総本山が存命時代に出産補助の依頼をこなして十分な経験を積んだ。この手で我が子を取り上げる楽しみもあったのだが…本番でご破算になった。ゴリフターズに『お気持ちは嬉しいのですが、外で待っていて頂けませんか。恥ずかしいので』と言われてしまったのだ。子作りして置いて今更恥ずかしいも何も無いだろうと言いたかったのだが、そこはグッと抑えて分かったと言ったよ!!

ギェェ『困ったわ。実に困ったわ…ウロウロ。まだかなぁ~』

 瀬里奈さんも同様に入り口の外でウロウロしている。私の母である瀬里奈さんだが…生憎と出産経験は、無いのだ。助産婦としての経験もなく、蛆蛞蝓ちゃんから戦力外通告を言われて待機状態なのだ。瀬里奈さんは多芸の腐女子ではあるが、乙女(笑)だったらしい。

 誤解がないように言っておくが、戦力外通告を言い渡されたのは瀬里奈さんだけではない。娘の出産の為に、駆けつけてくれたヴァーミリオン王家の義理の父親と義弟達もだ。尤も、性別が男性だから当然と言えば当然だがさ。よって…今現在はゴリフリーザ様が分娩室にて蛆蛞蝓ちゃんと一緒にゴリフターズを励ましているのだ。

 こういうときは、母親の出番らしい。出産経験者でもあり、実の母親が側に居る方が心強いのだろう。母親という存在はそれだけ偉大なのだ。

「心配するなゴリフリーザは、魔法にも長けておるし…何より、二人を産んだ母親だ。こういう時は、男は何も言わず黙って構えていれば良いのだ。そして、産まれた時に声を掛ける。それだけでいいのだ」

「ありがとうございます。お義父さん」

 やはり、貫禄が違いますね。流石は、ゴリフターズと義弟達の父親である。人生経験が違うと実感してしまう。義弟達も先ほどからグラシア殿の赤ん坊と戯れていないで、瀬里奈さんの相手をしてあげなさい。さっきから、ウロウロしながら構ってくれないかなという目でみているでしょう。

「グラムちゃん、きゃわいい~。グラシア様、抱っこしていい?」

「えぇ、良いわよ」

「ミルア、次かわってね!!」

 グラシア殿と『闇』の使い手の男の子の名前はグラムちゃん。可愛いのは当然だ。グラシア殿の遺伝子をもつ子供だぞ。それに、蛆蛞蝓ちゃんが手塩を掛けて作ったのだ。これで可愛くないはずが無い。

 ただ、唯一の懸念は…この子供が特別な属性を受け継いでいるかという事が判明していないのだ。物心つく頃には分かるだろうと予想している。可能であれば、『闇』の魔法は遺伝して欲しくない。私的な予想では特別な属性が遺伝される事はないと考えている。

 現に、以前に殺した『雷』の使い手の子供は、特別な属性ではなかった。よって、それが例外で無いと信じたい。

 この世に、私が絶対に勝てないと思える存在が多く居て欲しくないのだよ。ただのわがままではあるが、大事なことだ。

「にしてもだ…この待合室。メンバーが些か豪華なのは気のせいだろうか。見たことがある顔ぶれしかいない」

「それは、お義父さんが『ウルオール』の国王陛下だからではありませんかね。なんせ、ヴァーミリオン王家の方々がいらっしゃっているのですから、豪華なのは当然です」

 待合室には、『闇』の使い手グリンドール・エルファシル。『聖クライム教団』前教祖グラシア・ハーラント殿。『神聖エルモア帝国』のガイウス前皇帝陛下。『ウルオール』のミカエル国王陛下、至宝の双子のミルアとイヤレス。『神聖エルモア帝国』で名高いエーテリアとジュラルド。『筋肉教団』教祖ゴリヴィエと副教祖タルト。

 蒼々たる面子が集ったのだ。

 だが、当然と言えば当然だ。なんせ、ゴリフターズの出産に関しては、最重要機密なので、妊娠の事実を知っている者は本当に少ない。この屋敷に出入りできる者とゴリフターズの血縁者であるゴリヴィエしか知らないのだ。まぁ、タルト君はオマケみたいな物だ。先ほどから借りてきた猫みたいに大人しい。

 本当は、こんなタルト君より出産経験をもつフローラ嬢をお呼びしたかったのだが、旦那とお子さんに悪いと思ってお話はしていない。私が頼めば来てくれるだろうが…考えてもみたまえ、美人人妻を屋敷に呼ぶなんて悪代官がするような悪行ではないか。これが人の耳に入れば尾びれ背びれが着いてドンでも無い話になって、広まる事は明白だ。

 ここまで徹底した情報管理を行っているかといえば簡単だ。秘密とは知る者が多いほど漏れるのだよ。本来ならば、このようなおめでたいイベントは領民で祝うところがおおいのだが、ヴォルドー家ではそんな事はしない。

 なぜなら、独自運営に乗り出した各国にあるギルドや敵国がいつ、動き出すとも分からない。流石のゴリフターズでも出産直後ならば弱っているだろうし、守らねばならない存在もいるのだからやりようによっては高ランク冒険者で殺せる存在にまで力が落ちるだろう。

 私レベルなら、出産直後の二人であれば正面から挑んでも纏めて殺せると断言できる

 きっと、タルト君は『誰が狙うんですか。あり得るわけ無いでしょう』とか考えているだろう。そういう顔をしている。それと、先ほどからタルト君の横でめそめそ泣いているゴリヴィエをなんとかしろ!! 

「なぜ、私は助産婦の経験を積んでいなかったのだ。こうなるのは分かっていたのに…あぁ、神よ。貴方はなんて残酷なんだ」

 ゴリフターズの身を案じて来てくれた事には感謝するが、うるせーぞ!! 普段は紳士的な私でも今日に限ってもいつものような平常心が保てるかは分からない。大人しくバナナでも食べていなさい。ヴォルドー領の名産品で、人気商品だから滅多に食べられないんだぞ!! 

………
……


 出産には、時間がかかる。

 途中途中、ゴリフリーザ様や蛆蛞蝓ちゃんが経過報告をしてくれるが、まだ掛かるとの事だった。

「ふっふっふ、では、儂が待っている間に重大な案件を思い出させてやろう」

「ガイウス皇帝陛下がいう重大な案件…ま、まさか!?」

「皇帝は引退したのだから、わざわざ皇帝陛下と付けないでも良いと言っているのに頑固者の~」

「いいえ、私にとって皇帝陛下はガイウス皇帝陛下ただ一人だけです」

 実際に、皇帝の地位にいるガイゼル様には悪いが…『神聖エルモア帝国』で皇帝陛下といえば未だにガイウス皇帝陛下を思い浮かべる人が多いのが事実なのだ。ガイウス皇帝陛下が偉大すぎる存在で、超えるべき背中が大きいと言う点でガイゼル様は可哀想だ。

 そして、ヴォルドー家とガイゼル様との仲は良いか悪いかで言えば…悪い方なのだ。ガイゼル様でも圧倒的武力と財力を誇るヴォルドー家に対して強く出れないし、冷遇もしにくい。

 関係が良好でない一番の原因は、今まで安価で地下資源を提供していたのだが一般卸売り価格に戻したことだ。今までは、一般卸売り価格の半値八掛け二割引というまさに捨て値という価格で提供していたのだ。他にも、恩人であるガイウス皇帝陛下だからこそ戦争で無報酬で働いたり、戦争物資を無償支援したりといった数々の貢献を有償へと切り替えた。

 これらの行動は、ガイウス皇帝陛下への恩返しが出来ればと思ってこそ実施していたのだ。よって、恩も無いガイゼル様にしてやれることは殆ど無い。出来る事と言えば、しっかりと納税をしてあげるくらいだ。

 ヴォルドー領は、『神聖エルモア帝国』でもド辺境で人口も少ないから納める税も少ない。だが、隣接する大国である『ヘイルダム』へ対する抑止力として十分な役目も果たしているし、『ウルオール』との同盟だってヴォルドー家があってこその物だ。今までが、貢献しすぎていただけで、普通に考えれば今でも十分貢献しているはずなのだ。

 無論、できる男であるガイゼル様はそれは理解している。だが、納得はしていないのだろうね。

「ゴホン!! でだ!! 内容は、分かっているな…」

「はい。産まれてくる子供の名前かと…」

 あぁ、間違いなくもめる。この場には、ゴリフターズの実の父親であるミカエル国王もいるのだ。孫の名前を付けたいと言うだろうな…当然、ゴリフリーザ様もだ。これを機に戦争に発展したら笑い話にもならない。戦争の原因が子供の名前なんて後生に残せないよ。

「ほほぅ、子供の名前か…確かに重要だ。だからこそ!! ここは、ゴリフリーテとゴリフリーナの実の父親である儂の出番だと思うぞ」

「何を言うか。レイアは儂が育てたのじゃ…よって、レイアの父も同然であるこの儂に出番があっても可笑しくは無いだろう」

 全く以て、可笑しくないですガイウス皇帝陛下。確かに、ガイウス皇帝陛下無くして私も生き残れたか分からないし、ゴリフターズと結婚なんて身分の違いから夢であったはず。そう言った意味では、間違いなく功労者だ。

 しかし、義理の父親であるミカエル国王もガイウス皇帝陛下と並ぶ功労者だ。ゴリフターズを育て上げて、この私との婚姻を認めてくれたのだ。大事なことだが、身元、経歴など殆どの情報が公開されていない状態で歴史ある大国の王家が婚姻を許してくれたのだ。普通なら許されないようなことを平然とやってのけるあたり、尊敬に値する。

 よって、ここは、私が妥協案をだすべきだろう。

 幸い、ゴリフターズが同時出産になりそうなのだ。まぁ、二人同時にいつも相手していたから当然の結果と言えば当然だろう。改めて思えば、よく死ななかったな。

「ここは、お一人づつお名前を付ける事で決着に致しませんか。幸い、ゴリフリーナが男の子、ゴリフリーテが女の子を出産予定です」

 恩人のためとはいえ、我が子を売るような事をしてしまい、申し訳がないと内心涙を流している。許してくれ我が長女よ…ゴリの宿命からは逃れられないかもしれないが、この私が全力で愛を注ぎ込むから許して欲しい。

 この世界に生まれてから、どうしても女性にゴリを名付ける風習だけは理解出来ない。そんな理解出来ない風習を娘に押しつけようとする悪い父親を許してくれ。可能であれば、大人になった際にそんな悪習をなくすように世界に働きかけて欲しい。『ウルオール』王家の血を引く子供ならば私にできない事でも可能であろう。

「…女の子の方は、『ウルオール』王家として譲れんじゃろう。儂が男の子の方を名付ける。それでよいな?」

「異論はない。ここは、義理の息子の顔を立てようじゃ無いか。我々が争ったところで良いことなど一つも無い」

 ミカエル国王が、持ってきていた手荷物からタウンページより分厚い本を取り出した。いやいや、まさか、そんな事無いよね。一体、何頁あるんだよと言いたくなるような本だぞ。

 か、考えたくは無いが、アレに記載されているのが全部、ゴリが付く名前なんてオチでない事を祈りたい。常識的に考えて、出だしがゴリフなんて付く名前をそんなに考えつけたらギネス物だ。

 …よし、名前は諦めた。紳士たるもの諦めが肝心だ。よって、別方向からアプローチを試みる!! それは、蛆蛞蝓ちゃんとゴリフ化の原因を突き止めて排除する事だ。幸い、エルフの知り合いよりゴリフの知り合いが多いという奇妙な立ち位置にいるこの私だ。研究材料には困らない。

 そして、研究成果で『ウルオール』に貢献するんだ。例え、ゴリヴィエが死ぬ気で邪魔してきても問題ない。ゴリフ化の原因を突き止めると言うことは、逆に意図してゴリフ化も可能になるという事なのだ。そう考えれば、文字通り身体を私に売る気で研究してくれと申し出てきそうだな。

 これから産まれてくる子供は、私とゴリフターズとの子供なのだ。どんなに考えてもゴリフ化待ったなしに決まっている。才能に恵まれないとかありえない。多方面での英才教育を施す準備も整っており、未来の紳士淑女も確約されている。

「あぁ…だけど、ゴリフリーナとゴリフリーテに一言いっておかないとな」

 言い出しにくい。夫婦であっても、子供の名前を両親が決めたくて譲ったなんていったらどんな顔をするだろうか。二人だって楽しみにしていたに違いない。いいや、楽しみどころか、既に名前だって考えている可能性が高い。それを踏みにじる事になるとは。

 子供が産まれることが天国だとすれば、名前の件は地獄だな。

 バタン!!

 今まさに、動こうとした時、分娩室の扉が大きく開いた。

「あら~、その心配はもう要らないわよ。男性達が、のんびりしている間にきまっちゃったから…文句はありませんわね」

 ゾワ

 ゴリフリーザ王妃から発せられる威圧感。ゴリフターズより、『聖』の魔法を使わなければ勝てないと言っていたが…冗談では無かったようだな。さっきまで、浮かれていた男性陣営がしょんぼりしている。

 ………あれ? いま、「その心配はもう要らないわよ」っていったよね!!

「まさかぁぁぁぁ!!」

 ガイウス皇帝陛下とミカエル国王については、ゴリフリーザ王妃にお任せしよう。私は、すぐにでもやらないといけない事があるのだ。

 さぁ、私の可愛い妻達を褒め称え。私の可愛い子供達に愛を注ぎ込まないといけない。

 清潔で広い分娩室の中に足を踏み入れると、やり遂げた感をしたゴリフターズが居た。当然、その手には小さい…いや、当社比的に考えて本当に小さい赤子が二人の腕に抱かれている。

 蛆蛞蝓ちゃんが空気を察して、私の影の中に戻っていった。以前に、子供が産まれたら抱かせてくださいねと言っていたから、本当ならば今すぐにでも抱きしめたいのだろうが…よい女は焦らないという事なのだろう。

 ゆっくりと、二人の側に歩み寄った。

「ゴリフリーナ、ゴリフリーテ…よくやった」

 二人の手を握り、心から感謝を伝えた。今まで見たことが無い程に疲弊している。やはり、出産というイベントは男には理解出来ない程、辛い物なのであろう。聞いた話じゃ、鼻からスイカが出るほど痛いとか………要は、死ぬほど痛いと言うことだよね。

「「旦那様。私達の子です。抱きしめて頂けませんか」」

「あぁ、もちろんだ」

 二人から子供を託された。

 スヤスヤ

 か、かわいい!! もう何て言うのかな…天使!? そうとしかいえないほど可愛いぞ。眠る我が子を抱きしめて、親バカここに極まれりだと思ってしまった。我が子が一番可愛いという世の中の父親の気持ちが今初めて分かったよ。

 耳の特徴からエルフの血を濃厚に受け継いでいるのがわかる。ハーフゴ…エルフか。だけど、そんな事は些細な問題だ。

「名前は、なんと言うんだい。もう、決めているんだろう」

「よろしいのですか…なんというか、先ほどからこの部屋の入り口でお父様とガイウス様が苦しそうな声をあげて此方をみられていますが」

 ゴリフリーナの言葉を聞いて入り口を見てみたら、ゴリフリーザ王妃の手によって関節が外された男陣営が這いずって『うぉーーー』と言っている。そんな姿になっても名前を…という声が聞こえる。

 こえぇぇぇぇぇぇぇぇ

「大丈夫さ」

 まだ、第一子なのだ…二人目三人目も当然産むだろう。その機会に名前を付けさせてあげれば良い。

「この子の名前は、ゴリフィーナ」

 ゴリフリーテの女の子の方が、ゴリフィーナか…ゴリフはゴリフだが、これはギリギリセーフともいえるな。良い名前だ!! 

「私の子の方が、ラージャ」

 ら、ラージャ…インド神話に登場するナーガ・ラージャ的なあれの方だよね。間違いない!! 決して、○プコン製のラージャじゃないはずだ。

「良い名前じゃないか。ゴリフィーナ、ラージャ」

 赤子の手の名前を呼ぶと、反応したかのように動いた気がした。健やかに育つと良い、その為の環境はこの私が全て整えよう。

ギィー(ご報告致します。お父様…北方より、手練れの冒険者が十名以上がここを目指しております)

 一郎からのとんでもない報告が耳に入った。当然、一郎も気を利かせて敢えて筆談を行っていない。ゴリフターズに余計な心労を掛けないためだ。だが、ゴリフターズも察しただろう。

 だが、二人の出番など本日はないのだ。疲れただろうから今日はゆっくり休みなさいと伝えて蛆蛞蝓ちゃんとゴリフリーザ様に後を頼み分娩室をでた。後ろから、行ってらっしゃいませと聞こえた。

 そして、気持ちを切り替える。

 軽く待合室の者達を見たが全員準備万端のようだな。今日…このとき、この場所を襲ってこようと考えた者には地獄を見せてやろう。

「全く、人に恨まれるような事はしていないつもりなのですけどね。では、紳士的に話し合いにいきましょうか。女性は、この場に残って頂きたい。そして、男性には申し訳ありませんが、今日は赤子に触るのは諦めてください。血で汚れた身体で触ると良くないのでね」

 義弟達が行ってらっしゃいと手を振る。間違いなく、男性なのだが…女性陣営に混ざっても違和感の一つも無い。まぁ良いだろう。そして、分娩室の中に義弟達が飛び込んでいった「お母さんですよ~」と笑えないギャグを言ってね。すぐに、ゴリフリーザ様によって折檻される悲鳴が聞こえた。

 残当である。

「どこの手の者でしょうかねレイア殿」

「可能性が一番高いのは南方諸国の連中かな。戦勝国に散々毟り取られているから、その原因を作ったともいえるヴォルドー家に復讐をという線がありえそうだ」

 完全に更地にしてやらなかっただけでも感謝して欲しいのだがね。それに恨むなら、ギルド総本山とつるんでいた自国を恨めと言いたい。色々と美味しい思いもしていたはずだろうに。

「じゃが、タイミングを考えると我々のそばに他国のスパイが混ざっているかのう…この間、掃除をしたばかりだというのに」

「可能性が一番高いのは、うちだろうな。王族揃って移動したから、どうしても人目に付く事がある」

「確かに、ありえそうですね。ヴァーミリオン王家が総出でヴォルドー領に移動したとなれば、ゴリフリーナとゴリフリーテの身に何かあったと考える者も出るでしょう。仕方ありません…とりあえずば、捕らえて記憶を洗って芋づる式で処理していきます」

 注目度が高いと仕方ない。王宮なんて何処に人の目があるか分からないし、流石に執務を長期間放棄するとなれば、人に頼らざる終えない事もある。そういったところから情報は漏れるのだ。

「仕方がない。ここには、我が主グラシア殿もおられるから…可及的速やかに処理をするぞ」

「そうしましょう。そうそう、首から上だけは消し飛ばさないでくださいよ」

 面倒だなという顔をしているが本当にお願いしますよ『闇』の使い手。いくら、私の蟲達でも無いものから記憶を抽出する事はできない。今回の主犯格を捕らえて、誰に手を出したのかよく思い知らせてやらねばならない。

「では、紳士的に話し合いに行くとしましょう」

 妻のため、子供のため、家族のため、友のため、ライバルのため!!

 身内の平和な世界を作るために、働こうじゃないか。
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これにて本編は完結となります!!
本当に長い間、読者の方々ありがとうございます。
本日を無事に迎えられたことは作者にとって驚きでもあり非常に嬉しい事です。

まさか、ゴリフを嫁にとって子供まで作ることになるとは書き始めたときは予想すらしていなかったです。だって、作者はエルフ好きなのに、何故なのだろうか。考えても答えが出ない…。

色々、読者の方には感謝の言葉を伝えたいのですが、作者の言語力不足で月並みのことしか言えない事を許してください。

「いままで、本当にありがとうございます!!」


PS:
本編は、完結のですが外伝で蟲達のお話をやる予定ですので、
もうちょっとお付き合いして頂けたら嬉しいな><

(幻想蝶外伝)実家に帰らせていただきます(予告編)
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ピッピ(お父様は…お父様は、私の気持ちが分からない)

「まって~、幻想蝶ちゃん。一体、どうして!?」

 幻想蝶ちゃんが、泣きながら去って行く背中を見送る事しかできなかった。

 この私が、幻想蝶ちゃんを泣かせてしまうなんて何という事だ。心にグサってくる痛みは半端ない。のし掛かる罪悪感で死にたくなる。一体、何処で何を間違ったのか見当もつかない。
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