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第二十八章
第百二十九話:(幻想蝶外伝)実家に帰らせていただきます(4)
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◆一つ目:幻想蝶
◆二つ目:幻想蝶
※レイアのお話は、瀬里奈さん達出発前の時間軸になります。
********************************************
◆
流石は、瀬里奈様の最新作です。注目の的になっております。トランスポートを使って瀬里奈様謹製のキャリッジごと移動したのですが、移動先で冒険者達の目が点になっております。
迷宮の環境で馬などの乗り物利用は、現実的で無いというのが常識となっている最中…それを無視する行い。食糧事情の厳しい迷宮で乗り物などは現実的に厳しい。更に、モンスターに殺される恐れも高く費用対効果は非常に悪い。
ですが、私達モンスターにとってはあまり関係ありませんけどね!! お食事になるモンスターは幾らでも沸いてきます。ステイシスさん達のお食事にも困りませんし、どんな悪路でも走れる仕様なので迷宮においてこれ以上の乗り物はありません。
「なにこれ…俺が知っている迷宮ってこんな乗り物使わないぞ」
「マルガルドさん、貴方の常識が世の中の常識ではありませんよ。あと、…魔法は、お得意ですか?」
「全属性使える。あぁ~、そういう事か分かった。『土』の魔法で危なそうな所は道を馴らすから気にせず進んでいいぜ」
ギッギ『さぁ、迷宮最速攻略レコードはこの瀬里奈が頂いたわ!! あっ、もうちょっと詰めてね』
ムッシュシュ(道中のご飯は、皆処理するから安心してね!! )
ムッシュ(エンジンでしたっけ?アレのおかげで荷台が軽くていいですね)
ムムシュ(くっちょーーー。僕、この旅が終わったら幻想蝶ちゃんに告白するんだ)
あらあら、楽しみに待っていますわね。
「では、出発~!!」
ギッギ『30層までの地図は、あるわ!! 目標は、夜までに30層までいくわよ~』
瀬里奈様の号令とともに、進み始めた。
………
……
…
普通の冒険者なら一階層進むのに半日から一日かかるというのに僅か一時間でがんがん突破していく。道をふさぐモンスターが居てもステイシスさん達によって瞬時に捕食される。
だけど、ご飯の匂いに釣られてモンスターハウスに突撃するステイシスさん達は後でお仕置きです!!
数は圧倒的に向こうが多いけど、ステイシスさん達の実力は遥か上をいく。よって両者にらみ合いっている状況だ。ご飯が食べたいステイシスさん達とご飯が食べたいモンスター達…両者全く同じ思考なのだ。
ギーー『無駄な時間を掛ける気は無いわ。一気に処理してくるからここで待ってなさい』
完全武装した瀬里奈様が緑色をした小さなボールを取り出した。大きさにして5cm程のサイズの物だが…実に嫌な予感がします。蛆蛞蝓ちゃんが管理する倉庫から取り出してきた物という事は間違いなく、危険物!!
ガチャリ
キャリッジの中が完全気密状態になった。そして、空気清浄を行うエアーダスターちゃんも居るので無菌室状態になる。
「マルガルドさん、もし気分が悪くなったらコレを首に打ってくださいね」
「分かった。しかし、ここまで何もしてないのでようやく出番かとおもったのだが…何もしないでいいのか?この階層程度ならば、俺だけでも始末を付けられるぞ」
「問題ありません、外を見ていればわかります」
窓の外で瀬里奈様が緑色のボールを二つほど破裂させた。
モンスター達は、瀬里奈様の姿に見惚れているがそれが命取りとなるでしょう。きっと、凄まじい劇毒です。何匹の小型のモンスターが突然、苦しみ藻掻いて血反吐をはいて、息を引き取った。
ギギーー『MMOの醍醐味は範囲狩り!! このBC兵器の前にモンスターなど無力!! もっと経験値を!! さて、レアドロップは何処かしらね…』
瀬里奈様が何やらモンスターをツンツンしている。きっと、モンスターがアイテムに替わるとでも思っているのでしょうか。基本、剥ぎ取りですよ。
「おぃおぃ、一瞬であれだけの数のモンスターが息絶えたぞ…何やったんだよ」
「うーーん、詳しくは教えられませんが毒です。それもかなり強力な物です」
そんな驚いたような顔で此方を見ないでください。大丈夫です…マルガルドさんのお仕事は戦闘は勿論ですが、基本はその培った迷宮での生存方法などを教えていただく事にあります。どうか、瀬里奈様を正しい冒険者の道へ導いてください。
◆
『モロド樹海』29層まで来てしまった。道行くモンスターを食い荒らし…道が無ければ魔法で作り、こんな短時間で到着できるとは流石です。
「いったん止まれ。あそこの地面…見た目だけじゃ判断しにくいが、落とし穴だ。待ち伏せするには絶好の地形だから、知恵の働くモンスターが居ると言うことだ」
「なるほどなるほど」
うーーん、前方を見てみますが、全く分かりません。恐らく、落とし穴が作られてからしばらく時間が経過して馴染んでしまったのでしょう。『土』の魔法が使える人がいると、こういう細かい事が出来るから嬉しいですね。
「そういう知恵の働く奴らは、金になる。基本的に、殺した冒険者から集めた装備を持っていることが多いからな。金欠の場合は狙い目だ」
ギィィ『という事は!! とらわれの美少年も居るという事ね!? 俄然、殺る気が出てきたわ。迷宮で思いついた物理木遁を披露するときだわ』
瀬里奈様がキャリッジを飛び出していって、周辺に生えている木を根っこから引き抜いた。どうやら、そのまま鈍器として使うらしい。これが、お父様や瀬里奈様が言っていた忍びが使うという技なのですね。奥が深いです。
「俺が必要だとは思えないが、給料泥棒にはなりたくないのでね。せめて、モンスター相手の急所の指導くらいは出来そうだから行ってくる。お嬢ちゃんは、ここに残っていな。ステイシスだっけ?彼らが居れば近づくモンスター達も居ないだろう」
「ご安心を!! この肉体のスペックならば、十分戦えます。200m程と制限は付きますが、このキャリッジの中から操作可能なのです」
えっと、瀬里奈様から頂いた人型模型の説明書には…なになに…目からビーム!? ロケットパンチ!? 最近、瀬里奈様と一緒に居すぎて疲れたのかしら、蛆蛞蝓ちゃんが書いたはずの説明書に不吉な文言が沢山羅列されている。
他にも鼻からスパゲティを食べる機能。美少女はおトイレにいかない機能。おならが絹毛虫ちゃんの香水と同じ匂いになる機能。
い、一体瀬里奈様は何処を目指しているのでしょうか。
「本当なら連れて行きたくは無いのだが、クライアント様のご要望とあっては仕方がない。近くに居る限り守ってやるが離れるなよ」
「問題ありません!! …ですが、着替えるので早く外に出て頂けませんか?」
「コレは失礼。では、彼女は一人でも問題無いだろう。俺はお嬢ちゃんのおもりをしよう」
………
……
…
人型模型用の完全武装は、デザイン性を重視している軽装なので身体のラインがはっきり分かってしまう。…いいえ、それよりも!! なぜにスカートなのですか!? デザインを大事にしたのは分かりますが、迷宮でスカートって可笑しいですよ!! 小型の蟲に刺されたり、皮膚呼吸によって毒を取り込んで偉い目に遭いますよ。
後、この小手と一体化されているタイプのドリルが若干気になります。これでどうしろと…。
ギェェェ『物理木遁!! チェストーーー』
マルガルドさんと瀬里奈様が猛威を振るう場所に来てみるとあたりの木々が根こそぎ引っこ抜かれており、モンスター達が四散している。
「すげーな。まさか、ここにある物を武器として使うなんて考えてもみなかったわ。しかし、彼女は恐ろしく強い…全く、レイアの知り合いはびっくり箱だ」
「強いのは当然です!! ですが、マルガルドさんも働いてください!! 」
「はいはい、お嬢ちゃんの仰せのままに」
マルガルドさんが、腰に下げているレイピアを抜いた。細い30cm程の得物ですが…随分と貧弱に思えます。お金に困っているわけでも無いでしょうから、もっと大きな物でも購入出来るでしょう。
「コレが気にあるかいお嬢ちゃん。まぁ、見てな」
マルガルドさんが、瀬里奈様に加勢すべく歩き出した。当然、モンスター達にとっては泣きたい状況でしょう。瀬里奈様だけに戦力を集中しても、次から次に葬られている状況ですが…マルガルドさんの加勢を止めないわけにはいかず戦力を分散してきた。
襲ってくる大型のコボルト系のモンスターから、振り下ろされる一撃で地面に大きな傷跡が出来る。当たれば痛いでしょうが…マルガルドさんは、軽く横ステップで回避、去り際に振り下ろされた左手にレイピアを数回刺したように見えました。
ギッギ『4回かしらね…流石は、レイアちゃんのお知り合いだわ。文字通り針を刺すような正確無比の攻撃。今ので、腕の神経を切断したわ』
うっそ~!!
モンスターの神経って種族などによってバラバラで簡単に位置が分かるような物じゃないはずですよ。蛆蛞蝓ちゃんのような、解剖大好きっ子でも無い限り!!
はっ!? マルガルドさんの技を覚えれば、モンスターの活き作りも作れちゃうと言うことか!! お父様のお役に立てる技術を身につけるチャンスだわ。
「マルガ…」
ググォォ(何故だ!? なぜ、同じモンスターである貴様が人間に加勢している)
瀬里奈様の事を貴様呼ばわりですって!! 幾ら同じモンスターだからって許せません。手負いのモンスターくらいならば、この人型模型で楽勝です。
えーっと、確かロケットパンチと叫ぶと腕が飛んでいくんでしたっけ…飛んで…どうやって!? 腕をまじまじと見てみるが接合部らしき物はない。触ってみるが、やはり異常は無い。
せ、瀬里奈様じゃありませんが、言ったらどうなるか試してみたい!! 押すなと言われたら押したくなると言う気持ちが少し分かった気が致します。
「どうした、お嬢ちゃん。片腕だけ動かなくしただけじゃ不安かな?」
「お嬢ちゃんじゃ在りません!! ええい、その証拠にいまからその目の前のモンスターを一撃で倒して見せましょう」
えっと、構えは目標に向かって右手を前に出して握り拳を構える。そして、頭を低くする。最後に、自分が弾丸になった気持ちで大きな声で叫ぶ…えっ!?
ギッギーー『ロケットパーーーーンチ!!』
瀬里奈様の声に反応して身体が勝手に動いた!? 有線接続して上位の操作権限を持っている私の意思とは関係なく!!
しまった!! と思ったときには既に時は遅かった。無駄に高性能なこの人型模型の身体能力をフル活用して文字通り、自らが飛ぶパンチと化す…それが瀬里奈様が考えたロケットパンチ機構だったのね。
そして、右手を突き出した状態で身体を捻り…モンスターに体当たりする。
いやぁぁぁぁぁぁ。
ブッシャーーー
見事にモンスターの身体に穴を開けた。当然その代償で全身が血まみれになるというアクシデントに見舞われてしまった。汚されちゃった…くずん。
「ひゅ~、まさか…そう来るか。流石の俺も予想外だわ」
「私だって想定外です!! なんですか、このロケットパンチ!? 」
マルガルドさんが可哀想な子を見るような、生暖かい眼差しを送ってくる。間違いなく、今、マルガルドさんの中で私の淑女度がワンランク落ちたわ。
「いや、自分でやっといて何言っているんだよ。あぁ、そうか気がつかなくて悪かったな
。疲れていたんだろう…後の事は俺に任せて寝てていいぜ」
「在らぬ誤解です!! 今のは私ではなく、彼女が…」
瀬里奈さんが左右に手を振っている。私、知らないわよと言わんばかりに。
「うんうん、分かってる。分かっている」
ぜ、絶対に分かってないわ。いいえ、分かっているかも知れませんが…この人、絶対に私で遊んでいる!! 人とモンスターの共存を目指しているこの私ですが、殴りたいこの笑顔と思ったのは初めてです。
お、落ち着くのよ私!!
傾国のモンスターと言われ、お父様の元で多方面の知識を習得し、才色兼備なこの私ならばまだ巻き返しのチャンスはあるわ。
こうなったら、ゴリヴィエ様に教えて頂いたサブミッションでモンスターを華麗に無効化して汚名返上致しましょう。別に、マルガルドさんのように正確無比の攻撃が出来なくともモンスターなど関節を全て粉砕すれば良いのです。
「コホン…今のはちょっとした失敗です。次からが本番です!! いいですか、マルガルドさん。この私が立派な淑女である事を証明しましょう。一撃も食らいませんからよく見ていてくださいね」
「まぁ、構わない。……このレベルのモンスターを無傷で倒せるのが淑女基準というのもな(ボソ」
「今、何か言いましたか?」
サブミッションで大事な事は、相手の身体の構造を理解し、関節の可動域を確実に潰していくことが大事!! ふっふっふ、更に言えば、この瀬里奈様謹製の軽装は、えげつないことに身を守る箇所の全て大根おろしの様になっております。攻防に優れた…あれ?それだと、また血まみれになってうんじゃないかしら!!
チラ
マルガルドさんの方を見てみたが…親首を立てて「しっかり見てるぞ」と言っている。
ひ、引けないわ!! いい女は一度言い出したことは必ず完遂する!!
今晩瀬里奈様の額に肉って書いて仕返しするもんね!! 毛布だって一人で使っちゃうもんね!! ウ=ス異本の執筆活動もお休み頂いちゃうもんね!!
もう、自棄よ!!
◇
ま、間に合う予定だったのだけど…道中、お手洗いという生理的現象には勝てなかった。恥も外聞も無く、全力で来れば間に合ったと思うけど、人としての尊厳を失ってまでは、ちょっとね。
よって、瀬里奈さん襲撃の主犯格確保に間に合わなかったのだ!! このレイア痛恨の失敗だ。
だが、何も心配することは無い。これも、神器プロメテウスによって確定されていた未来なのだ。全く、ウーノ・メンテルの死亡する日程はまだ先だったからね。この私が出てきた以上、死の運命からは不可避だという事実も分かったので結果オーライだ。
モモキュ(お客様ですよ~お父様)
扉を開けて入ってくるマルガルドさん。うむ、隙が無いな~。
「先日ぶりですマルガルドさん。お待ちしておりました」
「はぁ~、何がお待ちしていましただ。こんな物騒な呼び出しをしておいて」
「だって、私の可愛い幻想蝶ちゃんを口説いていたからじゃないですか。幻想蝶ちゃんが欲しければ、まず私を倒してから妻達を倒して欲しいですね」
「普通に死ぬわ」
昼間に、幻想蝶ちゃんを口説いていたマルガルドさんには伝言を託した。変身前だったにしろ、マルガルドさんを殺す気で鉄製のカプセルに手紙を入れて投げつけた。無論、その程度かるくやり過ごせるだけの実力はあるだろうから何も心配はしていない。
「ごほん、では、本題にはいりましょう。ゴミ掃除の手伝いをお願いできませんかね?」
「必要ないだろう…レイアの実力で排除できない敵がそんなに多く居るとも思えないが」
「そんな事無いですよ。私なんて実家だと下から数えた方が早いんですよ」
『闇』の使い手、ゴリフターズ、私と…最下位だった。冒険者全体でみても上から数えた方が早いと思っていたけど、実は下から数えた方が早いとか残念極まりないわ。
「何処の人外魔境だよ」
なに、ちょっと現存するランクAが3名も居るだけです。
「ただ、排除するだけなら可能でしょうが、遺恨を残さぬように根絶やしにしたいのでお手伝いをお願い致します。報酬は…『ウルオール』のエズミール伯爵家の長女にお手つきして指名手配をされている件、無かった事にしましょう」
「でもな~、レイアが面倒だと思うほどだからきっと大変なんだろう」
そうでなければ、此方もここまでの報酬は用意致しませんよ。いくら『ウルオール』とはいえ、伯爵家のご令嬢にお手つきした件をもみ消すのは大変なんです。必要ならば、記憶操作も厭わない覚悟だ。無論、義理の両親の許可の元でね。
「『神聖エルモア帝国』のガドルフ男爵家の次女…」
「………も、もう一声」
なにか、それ違いませんかね。
「『聖クライム教団』大司祭長のお孫さんに~」
よかったね!!
流石のこの私でも王家に手を出していたら、もみ消せるだけの人脈はない!! ちなみに、本当に生死問わず首に賞金が掛かっているのだよ。『聖クライム教団』については、少々骨を折るだろうが、食糧事情を盾にして首を振らせるまでだ。首を縦に振るまで、食料及び経済制裁を行う準備も終えた。
「さて、悪党共をぶっころすとしよう。それで、何処の馬鹿者が現ヴォルドー侯爵を狙っているんだ」
「背後関係は、不明です。神器プロメテウスが健在にも関わらず、私の母を狙うという事は相当大規模な組織か。愚か者か…。そこで、マルガルドさんには何か思い当たる組織が無いかなと思いましてね」
マルガルドさんは、実力もさることながら素晴らしい情報網を持っている。主に寝技で仕入れた情報らしいけどね!! まじ、まねできないわ。よって、この私が知らない情報も持っているに違いない。
「真っ先に思いつくのが、レイアが潰したギルドだ。規模も人材も間違いなくトップだった。残党も居るだろうが、もはや有象無象だろうな。ギルド高官だった連中は、何処にいってもお尋ね者…生き残っている連中の話も聞くが、殆どは落ちぶれて乞食となっているらしい」
ギルド高官達の首は、敗戦国としては優先的に差しだして少しでも大国の温情を授かろうと必死だったらしいからね。おかげで、蟲達に頼らなくてもガンガン首が届いた。今まで散々人の命を弄んでいたのだから、当然の報いだね。
「で、次の候補は?」
「言わずも『筋肉教団』だ。だが、『筋肉教団』の可能性は無いと言えるほどだろう。レイアが生きていたとなれば、『筋肉教団』なんて裏を返せばヴォルドー家の手駒みたいな物だ。事実、『筋肉教団』の人事と財政は、ほぼ全てヴォルドー家から派遣された蟲達が行っているときく」
外から見たらそう見えるのか。蟲達の就職先として便利に活用しているだけでもあるんだがな。まぁ、スポンサーの地位でもあるから、幅を利かせているのは認めよう。
「『筋肉教団』の裏切りなど不可能だ。私の蟲達がヴォルドー家に牙をむく依頼など、受注などしない。速やかに処理されるのが関の山だ」
「だろうな。次に可能性が高いのは、4大国だな。まぁ、ヴォルドー家に手を出すのは処刑台に上るも同意義に近いから、ないだろうな…つか、危険度が高い連中が軒並みレイアの味方か、同盟って関係じゃねーかよ」
「当然でしょう!! 死にたくないから、手を出せなくなるように色々手回ししたんですよ」
世界なんて、金と食料を抑えれば、勝負は決まったも同然だ。
「はぁ~………だったら、俺が考えられる可能性は、二つだけだ。一つは、独自運営に走ったギルド連中だ。現状、『筋肉教団』一強。だが、規律が厳しすぎる『筋肉教団』参加には、後ろ暗い連中には辛い。参加加入と同時に無職決定だからな」
「経営努力が足りないだけでしょうに…で、次の可能性は?」
「商会連合って知っているか? 大体どの国家でもあるんだが…ヴォルドー家が、文字通り価格破壊して相当市場を荒らしているだろう。それで、どれだけの者達が苦しんでいるか、言わずも分かるだろう」
「あぁ、確か何度か実家に手紙が届いていたな。是非、会話する場を持ちたいと…だけど、興味がありませんと返事もかいておいた。しかし、市場を荒らしたと言っても、『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』に関して言えば過剰に干渉していないぞ。それ以外の国家については、命綱を握るために色々と工作をしたのは認めるが…基本的に生かさず殺さずの計算してやっている」
「まぁ、そんなわけでレイアの知らないところで恨みは買っているぞ」
どちらにせよ。手を出してきた以上、どうなるかは教えてあげなければならない。怪しい組織を上から順に物理的に洗っていき、無実なら記憶を抹消して何も無かったことにする。そうすることで、誰にも知られずに事が片付く。
『筋肉教団』に加盟していない独自運営のギルドを一人で全部回るのは、幻想蝶ちゃんが『モロド樹海』59層に到達するまでの時間から考えても不可能だ。私としては、先回りして待っていたよ幻想蝶ちゃんという感動のシーンをやってあげないといけない。
それに、明日の夜には再度瀬里奈さんが襲撃される予定が入っているので、ネームレスに居る必要がある。なんせ、その日がウーノ・メンテルの命日になっているのだからね。死因は、言うまでも無くこの私だ!!
「商会連合については、冒険者ではないが中々裏事情に詳しい者がいる此方が引き受ける。マルガルドさんも知る死神マーガレット嬢が実家の商家で幅を利かせているらしいからね。マルガルドさんは、私と手分けして独自運営にはしったギルドを洗いましょう。移動手段と尋問及び記憶操作には私の蟲達を預けるので活用してください」
「相変わらず便利な蟲をもっているな。じゃあ、おれは近場……って!? 近くと言っても国外じゃねーか」
当然です。大国にある元ギルドはほぼ全て『筋肉教団』に加盟した。特に『ウルオール』と『神聖エルモア帝国』においては加盟率100%だ。
「大丈夫ですよ。ステイシス達に乗れば、三日後の早朝には三カ所くらい掃除して帰ってこれる計算です。遠い箇所は、この私が担当致しますのでご安心を」
蟲達をマルガルドさんに託してそれぞれ夜の空へと駆け上がった。
マーガレット嬢とはいえ、夜分遅くに女性を訪ねるに手土産が無いと紳士として恥ずかしいな。冒険者でもないマーガレットでは、筋肉ポイントを稼ぐ手段が無い…よって、この筋肉ポイントで手に入る商品カタログから好きな商品を選ばせてあげよう。
喜べマーガレット嬢、結婚への道が開けるぞ!!
************************************************
何故こんなに長くなってしまったw
これも瀬里奈さんのせいか><
さて、物理木遁も出せたので…もう、忍術の開祖といってもいいよね@@
◆二つ目:幻想蝶
※レイアのお話は、瀬里奈さん達出発前の時間軸になります。
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流石は、瀬里奈様の最新作です。注目の的になっております。トランスポートを使って瀬里奈様謹製のキャリッジごと移動したのですが、移動先で冒険者達の目が点になっております。
迷宮の環境で馬などの乗り物利用は、現実的で無いというのが常識となっている最中…それを無視する行い。食糧事情の厳しい迷宮で乗り物などは現実的に厳しい。更に、モンスターに殺される恐れも高く費用対効果は非常に悪い。
ですが、私達モンスターにとってはあまり関係ありませんけどね!! お食事になるモンスターは幾らでも沸いてきます。ステイシスさん達のお食事にも困りませんし、どんな悪路でも走れる仕様なので迷宮においてこれ以上の乗り物はありません。
「なにこれ…俺が知っている迷宮ってこんな乗り物使わないぞ」
「マルガルドさん、貴方の常識が世の中の常識ではありませんよ。あと、…魔法は、お得意ですか?」
「全属性使える。あぁ~、そういう事か分かった。『土』の魔法で危なそうな所は道を馴らすから気にせず進んでいいぜ」
ギッギ『さぁ、迷宮最速攻略レコードはこの瀬里奈が頂いたわ!! あっ、もうちょっと詰めてね』
ムッシュシュ(道中のご飯は、皆処理するから安心してね!! )
ムッシュ(エンジンでしたっけ?アレのおかげで荷台が軽くていいですね)
ムムシュ(くっちょーーー。僕、この旅が終わったら幻想蝶ちゃんに告白するんだ)
あらあら、楽しみに待っていますわね。
「では、出発~!!」
ギッギ『30層までの地図は、あるわ!! 目標は、夜までに30層までいくわよ~』
瀬里奈様の号令とともに、進み始めた。
………
……
…
普通の冒険者なら一階層進むのに半日から一日かかるというのに僅か一時間でがんがん突破していく。道をふさぐモンスターが居てもステイシスさん達によって瞬時に捕食される。
だけど、ご飯の匂いに釣られてモンスターハウスに突撃するステイシスさん達は後でお仕置きです!!
数は圧倒的に向こうが多いけど、ステイシスさん達の実力は遥か上をいく。よって両者にらみ合いっている状況だ。ご飯が食べたいステイシスさん達とご飯が食べたいモンスター達…両者全く同じ思考なのだ。
ギーー『無駄な時間を掛ける気は無いわ。一気に処理してくるからここで待ってなさい』
完全武装した瀬里奈様が緑色をした小さなボールを取り出した。大きさにして5cm程のサイズの物だが…実に嫌な予感がします。蛆蛞蝓ちゃんが管理する倉庫から取り出してきた物という事は間違いなく、危険物!!
ガチャリ
キャリッジの中が完全気密状態になった。そして、空気清浄を行うエアーダスターちゃんも居るので無菌室状態になる。
「マルガルドさん、もし気分が悪くなったらコレを首に打ってくださいね」
「分かった。しかし、ここまで何もしてないのでようやく出番かとおもったのだが…何もしないでいいのか?この階層程度ならば、俺だけでも始末を付けられるぞ」
「問題ありません、外を見ていればわかります」
窓の外で瀬里奈様が緑色のボールを二つほど破裂させた。
モンスター達は、瀬里奈様の姿に見惚れているがそれが命取りとなるでしょう。きっと、凄まじい劇毒です。何匹の小型のモンスターが突然、苦しみ藻掻いて血反吐をはいて、息を引き取った。
ギギーー『MMOの醍醐味は範囲狩り!! このBC兵器の前にモンスターなど無力!! もっと経験値を!! さて、レアドロップは何処かしらね…』
瀬里奈様が何やらモンスターをツンツンしている。きっと、モンスターがアイテムに替わるとでも思っているのでしょうか。基本、剥ぎ取りですよ。
「おぃおぃ、一瞬であれだけの数のモンスターが息絶えたぞ…何やったんだよ」
「うーーん、詳しくは教えられませんが毒です。それもかなり強力な物です」
そんな驚いたような顔で此方を見ないでください。大丈夫です…マルガルドさんのお仕事は戦闘は勿論ですが、基本はその培った迷宮での生存方法などを教えていただく事にあります。どうか、瀬里奈様を正しい冒険者の道へ導いてください。
◆
『モロド樹海』29層まで来てしまった。道行くモンスターを食い荒らし…道が無ければ魔法で作り、こんな短時間で到着できるとは流石です。
「いったん止まれ。あそこの地面…見た目だけじゃ判断しにくいが、落とし穴だ。待ち伏せするには絶好の地形だから、知恵の働くモンスターが居ると言うことだ」
「なるほどなるほど」
うーーん、前方を見てみますが、全く分かりません。恐らく、落とし穴が作られてからしばらく時間が経過して馴染んでしまったのでしょう。『土』の魔法が使える人がいると、こういう細かい事が出来るから嬉しいですね。
「そういう知恵の働く奴らは、金になる。基本的に、殺した冒険者から集めた装備を持っていることが多いからな。金欠の場合は狙い目だ」
ギィィ『という事は!! とらわれの美少年も居るという事ね!? 俄然、殺る気が出てきたわ。迷宮で思いついた物理木遁を披露するときだわ』
瀬里奈様がキャリッジを飛び出していって、周辺に生えている木を根っこから引き抜いた。どうやら、そのまま鈍器として使うらしい。これが、お父様や瀬里奈様が言っていた忍びが使うという技なのですね。奥が深いです。
「俺が必要だとは思えないが、給料泥棒にはなりたくないのでね。せめて、モンスター相手の急所の指導くらいは出来そうだから行ってくる。お嬢ちゃんは、ここに残っていな。ステイシスだっけ?彼らが居れば近づくモンスター達も居ないだろう」
「ご安心を!! この肉体のスペックならば、十分戦えます。200m程と制限は付きますが、このキャリッジの中から操作可能なのです」
えっと、瀬里奈様から頂いた人型模型の説明書には…なになに…目からビーム!? ロケットパンチ!? 最近、瀬里奈様と一緒に居すぎて疲れたのかしら、蛆蛞蝓ちゃんが書いたはずの説明書に不吉な文言が沢山羅列されている。
他にも鼻からスパゲティを食べる機能。美少女はおトイレにいかない機能。おならが絹毛虫ちゃんの香水と同じ匂いになる機能。
い、一体瀬里奈様は何処を目指しているのでしょうか。
「本当なら連れて行きたくは無いのだが、クライアント様のご要望とあっては仕方がない。近くに居る限り守ってやるが離れるなよ」
「問題ありません!! …ですが、着替えるので早く外に出て頂けませんか?」
「コレは失礼。では、彼女は一人でも問題無いだろう。俺はお嬢ちゃんのおもりをしよう」
………
……
…
人型模型用の完全武装は、デザイン性を重視している軽装なので身体のラインがはっきり分かってしまう。…いいえ、それよりも!! なぜにスカートなのですか!? デザインを大事にしたのは分かりますが、迷宮でスカートって可笑しいですよ!! 小型の蟲に刺されたり、皮膚呼吸によって毒を取り込んで偉い目に遭いますよ。
後、この小手と一体化されているタイプのドリルが若干気になります。これでどうしろと…。
ギェェェ『物理木遁!! チェストーーー』
マルガルドさんと瀬里奈様が猛威を振るう場所に来てみるとあたりの木々が根こそぎ引っこ抜かれており、モンスター達が四散している。
「すげーな。まさか、ここにある物を武器として使うなんて考えてもみなかったわ。しかし、彼女は恐ろしく強い…全く、レイアの知り合いはびっくり箱だ」
「強いのは当然です!! ですが、マルガルドさんも働いてください!! 」
「はいはい、お嬢ちゃんの仰せのままに」
マルガルドさんが、腰に下げているレイピアを抜いた。細い30cm程の得物ですが…随分と貧弱に思えます。お金に困っているわけでも無いでしょうから、もっと大きな物でも購入出来るでしょう。
「コレが気にあるかいお嬢ちゃん。まぁ、見てな」
マルガルドさんが、瀬里奈様に加勢すべく歩き出した。当然、モンスター達にとっては泣きたい状況でしょう。瀬里奈様だけに戦力を集中しても、次から次に葬られている状況ですが…マルガルドさんの加勢を止めないわけにはいかず戦力を分散してきた。
襲ってくる大型のコボルト系のモンスターから、振り下ろされる一撃で地面に大きな傷跡が出来る。当たれば痛いでしょうが…マルガルドさんは、軽く横ステップで回避、去り際に振り下ろされた左手にレイピアを数回刺したように見えました。
ギッギ『4回かしらね…流石は、レイアちゃんのお知り合いだわ。文字通り針を刺すような正確無比の攻撃。今ので、腕の神経を切断したわ』
うっそ~!!
モンスターの神経って種族などによってバラバラで簡単に位置が分かるような物じゃないはずですよ。蛆蛞蝓ちゃんのような、解剖大好きっ子でも無い限り!!
はっ!? マルガルドさんの技を覚えれば、モンスターの活き作りも作れちゃうと言うことか!! お父様のお役に立てる技術を身につけるチャンスだわ。
「マルガ…」
ググォォ(何故だ!? なぜ、同じモンスターである貴様が人間に加勢している)
瀬里奈様の事を貴様呼ばわりですって!! 幾ら同じモンスターだからって許せません。手負いのモンスターくらいならば、この人型模型で楽勝です。
えーっと、確かロケットパンチと叫ぶと腕が飛んでいくんでしたっけ…飛んで…どうやって!? 腕をまじまじと見てみるが接合部らしき物はない。触ってみるが、やはり異常は無い。
せ、瀬里奈様じゃありませんが、言ったらどうなるか試してみたい!! 押すなと言われたら押したくなると言う気持ちが少し分かった気が致します。
「どうした、お嬢ちゃん。片腕だけ動かなくしただけじゃ不安かな?」
「お嬢ちゃんじゃ在りません!! ええい、その証拠にいまからその目の前のモンスターを一撃で倒して見せましょう」
えっと、構えは目標に向かって右手を前に出して握り拳を構える。そして、頭を低くする。最後に、自分が弾丸になった気持ちで大きな声で叫ぶ…えっ!?
ギッギーー『ロケットパーーーーンチ!!』
瀬里奈様の声に反応して身体が勝手に動いた!? 有線接続して上位の操作権限を持っている私の意思とは関係なく!!
しまった!! と思ったときには既に時は遅かった。無駄に高性能なこの人型模型の身体能力をフル活用して文字通り、自らが飛ぶパンチと化す…それが瀬里奈様が考えたロケットパンチ機構だったのね。
そして、右手を突き出した状態で身体を捻り…モンスターに体当たりする。
いやぁぁぁぁぁぁ。
ブッシャーーー
見事にモンスターの身体に穴を開けた。当然その代償で全身が血まみれになるというアクシデントに見舞われてしまった。汚されちゃった…くずん。
「ひゅ~、まさか…そう来るか。流石の俺も予想外だわ」
「私だって想定外です!! なんですか、このロケットパンチ!? 」
マルガルドさんが可哀想な子を見るような、生暖かい眼差しを送ってくる。間違いなく、今、マルガルドさんの中で私の淑女度がワンランク落ちたわ。
「いや、自分でやっといて何言っているんだよ。あぁ、そうか気がつかなくて悪かったな
。疲れていたんだろう…後の事は俺に任せて寝てていいぜ」
「在らぬ誤解です!! 今のは私ではなく、彼女が…」
瀬里奈さんが左右に手を振っている。私、知らないわよと言わんばかりに。
「うんうん、分かってる。分かっている」
ぜ、絶対に分かってないわ。いいえ、分かっているかも知れませんが…この人、絶対に私で遊んでいる!! 人とモンスターの共存を目指しているこの私ですが、殴りたいこの笑顔と思ったのは初めてです。
お、落ち着くのよ私!!
傾国のモンスターと言われ、お父様の元で多方面の知識を習得し、才色兼備なこの私ならばまだ巻き返しのチャンスはあるわ。
こうなったら、ゴリヴィエ様に教えて頂いたサブミッションでモンスターを華麗に無効化して汚名返上致しましょう。別に、マルガルドさんのように正確無比の攻撃が出来なくともモンスターなど関節を全て粉砕すれば良いのです。
「コホン…今のはちょっとした失敗です。次からが本番です!! いいですか、マルガルドさん。この私が立派な淑女である事を証明しましょう。一撃も食らいませんからよく見ていてくださいね」
「まぁ、構わない。……このレベルのモンスターを無傷で倒せるのが淑女基準というのもな(ボソ」
「今、何か言いましたか?」
サブミッションで大事な事は、相手の身体の構造を理解し、関節の可動域を確実に潰していくことが大事!! ふっふっふ、更に言えば、この瀬里奈様謹製の軽装は、えげつないことに身を守る箇所の全て大根おろしの様になっております。攻防に優れた…あれ?それだと、また血まみれになってうんじゃないかしら!!
チラ
マルガルドさんの方を見てみたが…親首を立てて「しっかり見てるぞ」と言っている。
ひ、引けないわ!! いい女は一度言い出したことは必ず完遂する!!
今晩瀬里奈様の額に肉って書いて仕返しするもんね!! 毛布だって一人で使っちゃうもんね!! ウ=ス異本の執筆活動もお休み頂いちゃうもんね!!
もう、自棄よ!!
◇
ま、間に合う予定だったのだけど…道中、お手洗いという生理的現象には勝てなかった。恥も外聞も無く、全力で来れば間に合ったと思うけど、人としての尊厳を失ってまでは、ちょっとね。
よって、瀬里奈さん襲撃の主犯格確保に間に合わなかったのだ!! このレイア痛恨の失敗だ。
だが、何も心配することは無い。これも、神器プロメテウスによって確定されていた未来なのだ。全く、ウーノ・メンテルの死亡する日程はまだ先だったからね。この私が出てきた以上、死の運命からは不可避だという事実も分かったので結果オーライだ。
モモキュ(お客様ですよ~お父様)
扉を開けて入ってくるマルガルドさん。うむ、隙が無いな~。
「先日ぶりですマルガルドさん。お待ちしておりました」
「はぁ~、何がお待ちしていましただ。こんな物騒な呼び出しをしておいて」
「だって、私の可愛い幻想蝶ちゃんを口説いていたからじゃないですか。幻想蝶ちゃんが欲しければ、まず私を倒してから妻達を倒して欲しいですね」
「普通に死ぬわ」
昼間に、幻想蝶ちゃんを口説いていたマルガルドさんには伝言を託した。変身前だったにしろ、マルガルドさんを殺す気で鉄製のカプセルに手紙を入れて投げつけた。無論、その程度かるくやり過ごせるだけの実力はあるだろうから何も心配はしていない。
「ごほん、では、本題にはいりましょう。ゴミ掃除の手伝いをお願いできませんかね?」
「必要ないだろう…レイアの実力で排除できない敵がそんなに多く居るとも思えないが」
「そんな事無いですよ。私なんて実家だと下から数えた方が早いんですよ」
『闇』の使い手、ゴリフターズ、私と…最下位だった。冒険者全体でみても上から数えた方が早いと思っていたけど、実は下から数えた方が早いとか残念極まりないわ。
「何処の人外魔境だよ」
なに、ちょっと現存するランクAが3名も居るだけです。
「ただ、排除するだけなら可能でしょうが、遺恨を残さぬように根絶やしにしたいのでお手伝いをお願い致します。報酬は…『ウルオール』のエズミール伯爵家の長女にお手つきして指名手配をされている件、無かった事にしましょう」
「でもな~、レイアが面倒だと思うほどだからきっと大変なんだろう」
そうでなければ、此方もここまでの報酬は用意致しませんよ。いくら『ウルオール』とはいえ、伯爵家のご令嬢にお手つきした件をもみ消すのは大変なんです。必要ならば、記憶操作も厭わない覚悟だ。無論、義理の両親の許可の元でね。
「『神聖エルモア帝国』のガドルフ男爵家の次女…」
「………も、もう一声」
なにか、それ違いませんかね。
「『聖クライム教団』大司祭長のお孫さんに~」
よかったね!!
流石のこの私でも王家に手を出していたら、もみ消せるだけの人脈はない!! ちなみに、本当に生死問わず首に賞金が掛かっているのだよ。『聖クライム教団』については、少々骨を折るだろうが、食糧事情を盾にして首を振らせるまでだ。首を縦に振るまで、食料及び経済制裁を行う準備も終えた。
「さて、悪党共をぶっころすとしよう。それで、何処の馬鹿者が現ヴォルドー侯爵を狙っているんだ」
「背後関係は、不明です。神器プロメテウスが健在にも関わらず、私の母を狙うという事は相当大規模な組織か。愚か者か…。そこで、マルガルドさんには何か思い当たる組織が無いかなと思いましてね」
マルガルドさんは、実力もさることながら素晴らしい情報網を持っている。主に寝技で仕入れた情報らしいけどね!! まじ、まねできないわ。よって、この私が知らない情報も持っているに違いない。
「真っ先に思いつくのが、レイアが潰したギルドだ。規模も人材も間違いなくトップだった。残党も居るだろうが、もはや有象無象だろうな。ギルド高官だった連中は、何処にいってもお尋ね者…生き残っている連中の話も聞くが、殆どは落ちぶれて乞食となっているらしい」
ギルド高官達の首は、敗戦国としては優先的に差しだして少しでも大国の温情を授かろうと必死だったらしいからね。おかげで、蟲達に頼らなくてもガンガン首が届いた。今まで散々人の命を弄んでいたのだから、当然の報いだね。
「で、次の候補は?」
「言わずも『筋肉教団』だ。だが、『筋肉教団』の可能性は無いと言えるほどだろう。レイアが生きていたとなれば、『筋肉教団』なんて裏を返せばヴォルドー家の手駒みたいな物だ。事実、『筋肉教団』の人事と財政は、ほぼ全てヴォルドー家から派遣された蟲達が行っているときく」
外から見たらそう見えるのか。蟲達の就職先として便利に活用しているだけでもあるんだがな。まぁ、スポンサーの地位でもあるから、幅を利かせているのは認めよう。
「『筋肉教団』の裏切りなど不可能だ。私の蟲達がヴォルドー家に牙をむく依頼など、受注などしない。速やかに処理されるのが関の山だ」
「だろうな。次に可能性が高いのは、4大国だな。まぁ、ヴォルドー家に手を出すのは処刑台に上るも同意義に近いから、ないだろうな…つか、危険度が高い連中が軒並みレイアの味方か、同盟って関係じゃねーかよ」
「当然でしょう!! 死にたくないから、手を出せなくなるように色々手回ししたんですよ」
世界なんて、金と食料を抑えれば、勝負は決まったも同然だ。
「はぁ~………だったら、俺が考えられる可能性は、二つだけだ。一つは、独自運営に走ったギルド連中だ。現状、『筋肉教団』一強。だが、規律が厳しすぎる『筋肉教団』参加には、後ろ暗い連中には辛い。参加加入と同時に無職決定だからな」
「経営努力が足りないだけでしょうに…で、次の可能性は?」
「商会連合って知っているか? 大体どの国家でもあるんだが…ヴォルドー家が、文字通り価格破壊して相当市場を荒らしているだろう。それで、どれだけの者達が苦しんでいるか、言わずも分かるだろう」
「あぁ、確か何度か実家に手紙が届いていたな。是非、会話する場を持ちたいと…だけど、興味がありませんと返事もかいておいた。しかし、市場を荒らしたと言っても、『神聖エルモア帝国』と『ウルオール』に関して言えば過剰に干渉していないぞ。それ以外の国家については、命綱を握るために色々と工作をしたのは認めるが…基本的に生かさず殺さずの計算してやっている」
「まぁ、そんなわけでレイアの知らないところで恨みは買っているぞ」
どちらにせよ。手を出してきた以上、どうなるかは教えてあげなければならない。怪しい組織を上から順に物理的に洗っていき、無実なら記憶を抹消して何も無かったことにする。そうすることで、誰にも知られずに事が片付く。
『筋肉教団』に加盟していない独自運営のギルドを一人で全部回るのは、幻想蝶ちゃんが『モロド樹海』59層に到達するまでの時間から考えても不可能だ。私としては、先回りして待っていたよ幻想蝶ちゃんという感動のシーンをやってあげないといけない。
それに、明日の夜には再度瀬里奈さんが襲撃される予定が入っているので、ネームレスに居る必要がある。なんせ、その日がウーノ・メンテルの命日になっているのだからね。死因は、言うまでも無くこの私だ!!
「商会連合については、冒険者ではないが中々裏事情に詳しい者がいる此方が引き受ける。マルガルドさんも知る死神マーガレット嬢が実家の商家で幅を利かせているらしいからね。マルガルドさんは、私と手分けして独自運営にはしったギルドを洗いましょう。移動手段と尋問及び記憶操作には私の蟲達を預けるので活用してください」
「相変わらず便利な蟲をもっているな。じゃあ、おれは近場……って!? 近くと言っても国外じゃねーか」
当然です。大国にある元ギルドはほぼ全て『筋肉教団』に加盟した。特に『ウルオール』と『神聖エルモア帝国』においては加盟率100%だ。
「大丈夫ですよ。ステイシス達に乗れば、三日後の早朝には三カ所くらい掃除して帰ってこれる計算です。遠い箇所は、この私が担当致しますのでご安心を」
蟲達をマルガルドさんに託してそれぞれ夜の空へと駆け上がった。
マーガレット嬢とはいえ、夜分遅くに女性を訪ねるに手土産が無いと紳士として恥ずかしいな。冒険者でもないマーガレットでは、筋肉ポイントを稼ぐ手段が無い…よって、この筋肉ポイントで手に入る商品カタログから好きな商品を選ばせてあげよう。
喜べマーガレット嬢、結婚への道が開けるぞ!!
************************************************
何故こんなに長くなってしまったw
これも瀬里奈さんのせいか><
さて、物理木遁も出せたので…もう、忍術の開祖といってもいいよね@@
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