感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ3

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 和明が戻ってきた。亮まで覗きにくる。
「俺、やります」
 亮はひかりの足元にしゃがみこみ散らばる大きめの破片を拾い始めた。
「後は自分で」
「実験道具を割るやつが結構いるから、俺の方がうまいよ。多分」
 亮がくるぶしの上辺りに触れた。ひかりは、つい足を引いた。和明の方を見たがいなかった。
「切れてる。念のため水で流した方がいいよ」
 和明は掃除機を取りに行っていたらしい。手に持って戻ってきた。あたりに掃除機をかけ、すぐに片付いた。
 ひかりは足を洗いにバスルームへ行く。傷口は浅かった。簡単に流して戻った。
 二人はもう飲み始めていた。亮が、ひかりのグラスにビールを注いだ。きれいに泡ができた。
 ひかりは、グラス一杯でもう眠くなってしまう。和明がみかねて風呂を用意した。客である亮にまず入ってもらうことにした。
「眠そうだね」
 二人きりになったところで、和明がひかりの頭をなでる。
「君が先に入ったらいいよ」
 いつも以上に優しく笑いかけてくれる。ひかりは、頷いた。
 亮はすぐに出てきた。続いてひかりが入る。ひかりがあがってリビングに戻ると、亮が見あたらなかった。
「疲れているようだから、先に休んでもらった」
 結局どの部屋にしたのか気になる。
「僕のベッドをつかってもらったから、今夜は君のベッドにお邪魔するよ。狭いかもしれないが男二人よりはましかと思うからね」
 ひかりが反応できずにいると和明は「正式に越して来るときは、別室を用意するから安心して」と笑った。 
 ひかりはソファに座り、和明が風呂からあがるのを待っていた。いつの間にかまどろんでいた。
 和明に名前を呼ばれて、目を開けた。
「風邪をひくよ」
 腕に温かい手が触れた。
「こんなに冷えて。おいで、温めてあげる」
 和明がやけに優しい。
 手を引かれて寝室に入った。亮がいなければ、久しぶりに期待してしまうところだ。
 灯りを消して二人でベッドに入った。和明はひかりの背中に胸を合わせ、後ろから包み込みこんだ。ひかりの腕をさする。
「足も冷えてるよ」
 耳元で優しく声をかけられ、ひかりの身体は熱を帯び始める。
 腕をさすってくれる手が、時々、ひかりの胸のわきを掠める。
 声が出るほどではない。それでもわずかには反応してしまう。和明が腕を動かす度に衣擦れがする。これだけ近ければ夫のささやきも亮に聞こえてしまいそうだとひかりは思った。
 亮は本当に寝ているのだろうか。
「もう温まったかな」
 和明が手を止める。ひかりは、もっと触れていて欲しかったが仕方ないと思った。
「少しだけ……僕の書斎で話さないか?」
 唐突だった。それでも「いいですよ」と返した。 
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