26 / 157
ゆめ3
三
「ああ、元妻が置いていったまま忘れていただけだ」
結婚していたことがあるとは知らなかった。
独り暮らしにしては家が広いのはそういことかと思った。
「はやく風呂に入って、始めよう」
今日は、どのくらいまでされるのだろう。
「心配するほどのことはない」
表情を読み取られてしまう。
「お前の大好きな教授は相当な……」
奥村さんが少し考え込んで「紳士だ!」と言った。
今回もまた、正座で向き合うところから始まった。
部屋が暗いことが本当にありがたい。手順通りに進んでいく。
奥村さんが、教授のノートの内容を所々暗唱する。思わず「暗記してるんですね」と訊いてしまった。
「ああ、もう、全頁頭に入っている。正直、俺の意思でしていると思われたくないからな」
奥村さんも、わたしとこういう行為に至るのは不本意なのだろう。
心配はいらないと言われたのに、そうでもなかった。
他人に胸を触られるのが、ここまで感じるものだと知らなかった。
だんだんと、声を我慢するのが大変になり、奥村さんにやめてほしいと頼んだ。
「だめだ。今夜は三日分をこなす予定だからな。一回一回短いから、これ以上にはならん安心しろ」
どう安心しろというのだ。
そういったそばから、奥村さんがわたしの胸に舌を這わせた。先端を口に含まれ、とうとう、声がもれてしまう。
突然、ピピピピピピピピと音が聞こえて驚いた。
「予定の20分が経ったので、ここまでとした」
奥村さんが体を離した。
「教授は毎回タイマーをセットしてするようだから、慣れろ。あと、2セットな。残りは15分設定だから、お前には楽だろう」
奥村さんはため息交じりにそう言った。
「時間を決めてするものですか?」
したことがなくても、さすがにおかしいとわかる。
「初日の反省点に『時間経過の感覚が通常とは異なる。後の処理を含めて就寝時間を守るための工夫が必要』と書いてあった」
教授らしいといえば教授らしい。
「とにかく続きをしよう。次はキスだけだ。髪を撫でたりそんなものだ」
奥村さんにとってはたいしたことじゃないかもしれない。スマホでタイマーをセットしている。数字が減っていくところを見せられる。
奥村さんは画面を伏せて置いた。
頬に手のひらが触れる。
「また、こんなに緊張して……キスも初めてだったのか?」
肯定はしなかった。
奥村さんはわたしの額に額をつけた。一度軽く唇が重なる。その後で、激しく押し付けられる。逃れようにも、手で頭を押さえられている。
舌が唇を割って入ってくる。舌に舌を絡められた。
息が苦しい。
奥村さんが一度唇を離し「おまえの唾液、甘い」と言った。
その言葉になぜか、首筋がぞくっと震えた。
奥村さんがわたしの唇を舐める。それだけで声がもれそうになる。
抱き寄せられた。奥村さんの体が熱い。力が抜けていく。背中を指先で撫でられる。軽く身をよじる。
唇は重ねられたまま。お互いの呼吸をやりとりしているようで、段々と気が遠くなっていった。
奥村さんのわずかな動きに、触れあっている肌が勝手に反応してしまう。
つい、もらした声は、奥村さんに飲み込まれた。
タイマーの音で我に返った。
奥村さんが舌打ちをしながら、止めた。
「少し時間を置いてさまそう。十分したら戻ってくる」
結婚していたことがあるとは知らなかった。
独り暮らしにしては家が広いのはそういことかと思った。
「はやく風呂に入って、始めよう」
今日は、どのくらいまでされるのだろう。
「心配するほどのことはない」
表情を読み取られてしまう。
「お前の大好きな教授は相当な……」
奥村さんが少し考え込んで「紳士だ!」と言った。
今回もまた、正座で向き合うところから始まった。
部屋が暗いことが本当にありがたい。手順通りに進んでいく。
奥村さんが、教授のノートの内容を所々暗唱する。思わず「暗記してるんですね」と訊いてしまった。
「ああ、もう、全頁頭に入っている。正直、俺の意思でしていると思われたくないからな」
奥村さんも、わたしとこういう行為に至るのは不本意なのだろう。
心配はいらないと言われたのに、そうでもなかった。
他人に胸を触られるのが、ここまで感じるものだと知らなかった。
だんだんと、声を我慢するのが大変になり、奥村さんにやめてほしいと頼んだ。
「だめだ。今夜は三日分をこなす予定だからな。一回一回短いから、これ以上にはならん安心しろ」
どう安心しろというのだ。
そういったそばから、奥村さんがわたしの胸に舌を這わせた。先端を口に含まれ、とうとう、声がもれてしまう。
突然、ピピピピピピピピと音が聞こえて驚いた。
「予定の20分が経ったので、ここまでとした」
奥村さんが体を離した。
「教授は毎回タイマーをセットしてするようだから、慣れろ。あと、2セットな。残りは15分設定だから、お前には楽だろう」
奥村さんはため息交じりにそう言った。
「時間を決めてするものですか?」
したことがなくても、さすがにおかしいとわかる。
「初日の反省点に『時間経過の感覚が通常とは異なる。後の処理を含めて就寝時間を守るための工夫が必要』と書いてあった」
教授らしいといえば教授らしい。
「とにかく続きをしよう。次はキスだけだ。髪を撫でたりそんなものだ」
奥村さんにとってはたいしたことじゃないかもしれない。スマホでタイマーをセットしている。数字が減っていくところを見せられる。
奥村さんは画面を伏せて置いた。
頬に手のひらが触れる。
「また、こんなに緊張して……キスも初めてだったのか?」
肯定はしなかった。
奥村さんはわたしの額に額をつけた。一度軽く唇が重なる。その後で、激しく押し付けられる。逃れようにも、手で頭を押さえられている。
舌が唇を割って入ってくる。舌に舌を絡められた。
息が苦しい。
奥村さんが一度唇を離し「おまえの唾液、甘い」と言った。
その言葉になぜか、首筋がぞくっと震えた。
奥村さんがわたしの唇を舐める。それだけで声がもれそうになる。
抱き寄せられた。奥村さんの体が熱い。力が抜けていく。背中を指先で撫でられる。軽く身をよじる。
唇は重ねられたまま。お互いの呼吸をやりとりしているようで、段々と気が遠くなっていった。
奥村さんのわずかな動きに、触れあっている肌が勝手に反応してしまう。
つい、もらした声は、奥村さんに飲み込まれた。
タイマーの音で我に返った。
奥村さんが舌打ちをしながら、止めた。
「少し時間を置いてさまそう。十分したら戻ってくる」
あなたにおすすめの小説
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?