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うつつ6
七
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「幼馴染とは聞いているが、君と喜多川君の実家は近いのか?」
そんなことも知らなかったのかと、思う。今まで訊かれたことはなかった。
学生時代の亮が、どのくらい自分の話をしていたかも全く知らない。
実家は、同じ町内にある。学年が同じだから自然に遊ぶようになった。亮は、幼い頃から運動ができて頭も良く、明るかった。大人しく、一人になりがちなひかりをいつも気にしてくれていた。
「喜多川君と共同生活していくのに、少しは二人の情報を得ておかないと、昨夜、話がかみ合わなかったんだ」
興味を持ってくれたのではなく、実害あっての質問らしい。
「僕の疑問を解消できるまで、車を走らせたいところだが、地球環境によくない」
「帰るんですか?」
「いや」
なかなか続きを言わない。和明の横顔越しに、川が見える。いつの間にか橋を渡っていた。
「車を走らせながらの方が、話がしやすいとすれば、この行為も無駄にはならないが……」
ひかりは、こうして相手をしてもらえるのなら、場所はどこでもよかった。
「そうだ、君と行ってみたい場所があった。そこへ向かおうか」
そんな場所があるなら、ひかりも行きたいと思う。
「どこですか?」
「君はきっと嫌がると思うな」
どんな場所か、予想もつかない。
「遠いんですか?」
「多分、このまま行けばある。結構あちこちにあるみたいだよ」
チェーン店らしい。和明は食べ物に興味がない。珍しいと思った。コーヒー好きではあるから、カフェかもしれない。
ただ、ひかりが嫌がると言っていた。普段からあまり人と会わないから、人混みは苦手だ。そういう場所なのかもしれない。
和明は、物静かではあるが、いつも学生に囲まれている。
亮の持っていた写真の中に見つけた時も、穏やかに微笑んでいた。今もそう変わらないのかもしれない。
「私も少し、質問してもいいですか?」
和明が一瞬こちらに顔を向けた。
「君が僕の何を知りたがっているのか、予測できない」
返された言葉が意外すぎて、もう、正面を向いてしまった和明の横顔をじっとみつめた。
「君は、僕のことを何も知らなくても良いんだと思っていた」
言われるまで意識はしていなかったが、そうかもしれない。
「訊きたいことがあるなら、どうぞ」
和明は、答える気でいるらしい。大学でどう過ごしているかを訊こうとしたが、どうでもよく思えてきた。
「いえ、知らなくても、何も困らないことなので……」
「そう言うと思った」
和明が一瞬ひかりの方を向いて微笑んだ。
「君のそういうところが、一番理解できない。しかし……」
和明の手が伸びてきて、ひかりの頬に触れた。
「そうでなければ、今まで一緒にいられなかった」
そばにいる以上のことを、何も望んではいけない。それは、感じとっていた。
「僕はね、本当に実験以外何もできない人間なんだよ。実験以外は……」
「わかっています」
これからも邪魔しないように心得ておかなければ。
「僕は研究にかまけて、つい最近まで、君の存在価値に気づけずにいた。随分寂しい思いをさせていたんじゃないかな?」
そんなことも知らなかったのかと、思う。今まで訊かれたことはなかった。
学生時代の亮が、どのくらい自分の話をしていたかも全く知らない。
実家は、同じ町内にある。学年が同じだから自然に遊ぶようになった。亮は、幼い頃から運動ができて頭も良く、明るかった。大人しく、一人になりがちなひかりをいつも気にしてくれていた。
「喜多川君と共同生活していくのに、少しは二人の情報を得ておかないと、昨夜、話がかみ合わなかったんだ」
興味を持ってくれたのではなく、実害あっての質問らしい。
「僕の疑問を解消できるまで、車を走らせたいところだが、地球環境によくない」
「帰るんですか?」
「いや」
なかなか続きを言わない。和明の横顔越しに、川が見える。いつの間にか橋を渡っていた。
「車を走らせながらの方が、話がしやすいとすれば、この行為も無駄にはならないが……」
ひかりは、こうして相手をしてもらえるのなら、場所はどこでもよかった。
「そうだ、君と行ってみたい場所があった。そこへ向かおうか」
そんな場所があるなら、ひかりも行きたいと思う。
「どこですか?」
「君はきっと嫌がると思うな」
どんな場所か、予想もつかない。
「遠いんですか?」
「多分、このまま行けばある。結構あちこちにあるみたいだよ」
チェーン店らしい。和明は食べ物に興味がない。珍しいと思った。コーヒー好きではあるから、カフェかもしれない。
ただ、ひかりが嫌がると言っていた。普段からあまり人と会わないから、人混みは苦手だ。そういう場所なのかもしれない。
和明は、物静かではあるが、いつも学生に囲まれている。
亮の持っていた写真の中に見つけた時も、穏やかに微笑んでいた。今もそう変わらないのかもしれない。
「私も少し、質問してもいいですか?」
和明が一瞬こちらに顔を向けた。
「君が僕の何を知りたがっているのか、予測できない」
返された言葉が意外すぎて、もう、正面を向いてしまった和明の横顔をじっとみつめた。
「君は、僕のことを何も知らなくても良いんだと思っていた」
言われるまで意識はしていなかったが、そうかもしれない。
「訊きたいことがあるなら、どうぞ」
和明は、答える気でいるらしい。大学でどう過ごしているかを訊こうとしたが、どうでもよく思えてきた。
「いえ、知らなくても、何も困らないことなので……」
「そう言うと思った」
和明が一瞬ひかりの方を向いて微笑んだ。
「君のそういうところが、一番理解できない。しかし……」
和明の手が伸びてきて、ひかりの頬に触れた。
「そうでなければ、今まで一緒にいられなかった」
そばにいる以上のことを、何も望んではいけない。それは、感じとっていた。
「僕はね、本当に実験以外何もできない人間なんだよ。実験以外は……」
「わかっています」
これからも邪魔しないように心得ておかなければ。
「僕は研究にかまけて、つい最近まで、君の存在価値に気づけずにいた。随分寂しい思いをさせていたんじゃないかな?」
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