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ゆめ6
一
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着替えて、リビングに戻る。奥村さんは、もう服を着てグラスやおつまみをテーブルに並べていた。
「そういや、ここには服があんまりないんだな」
すぐに座るように言われる。
「お前は甘いのがいいよな」
できるだけお酒の味がわからないのがいい。
「あまり強くないので」
「まあ、様子をみるから、少しずつ飲んでくれ。潰れたら困るが、酔わないと意味がない」
奥村さんがチューハイの缶をあけて、わたしのグラスに注いだ。
「飲む気で買い込んだが、俺はビールだけにしとくか」
プルタブをひいて、いきなり口をつけた。奥村さんをついみつめてしまう。
「なんだ? 早く飲めよ」
「あ、はい……」
乾杯をするのかと思い込んでいた。宴会ではないのだからそんなものかもしれない。
甘くて飲みやすい酎ハイだった。
酔うとは、どこからの状態だろう。
バターピーナッツの入った小皿を渡された。一つつまむ。
奥村さんが、飲んでいたビールの缶を揺らした後で、乱暴にテーブルに置いた。倒れる。
「もう、入ってない」
「まだ、色々あるじゃないですか」
いくつか瓶も買っていたように思ったけれど、出してきていなかった。
奥村さんは並べてある缶に手を伸ばし、一つ一つ内容を確認している。
「こんなのはジュースと同じだ」
ため息をついている。わたしの苦手なハイボールなら、甘くはないはずだ。取って、奥村さんに渡した。
「いいのか、知らないぞ」
「弱いんですか?」
弱いのに、お酒が好きなら気の毒だ。
「弱くはない」
奥村さんが缶を開けた。
「あと、一本くらいは大丈夫だろう」
もしかしたら、眠いのだろうか。わたしも、お酒を飲むと眠くなる。
「お疲れなら、また後日に」
「馬鹿か」
睨まれた。
「これ以上先延ばしにするつもりはない」
気を遣っただけなのに……そこまで怒ることない。
「俺は、いつも、ギリギリのところで理性を保っているんだからな。酒が入るとどうなるかわからん」
ドキッとしてしまった。
「少しくらい、早まってもかまわないか」
わたしは、黙っていた。わざわざ嫌だと訴えるほどではもうなかった。
「できる限り、手順を守る努力はするさ」
奥村さんが少しふてくされたような顔をした。
「早く飲め。さっさと終わらせて寝る」
わたしはグラスを持ち、半分くらいまで飲んだ。多分もう、顔が真っ赤になる頃だ。
「弱そうだな……」
呆れたように言う。
「それ一本飲み終わったら、体の反応をみて、酒を追加するか決めよう」
「は、反応ですか……」
「安心しろ。服の上から少し触るくらいだ」
服を着たまま触られるのは、今までほとんどなかった。こちらの方がハードルが低いはずなのに、少し抵抗を感じる、単に慣れていないせいだとは思う。
「ソファに移動するか……」
奥村さんが、缶を持って立ち上がった。
「次飲むやつを選んで持って来とけよ」
缶に残っている分をグラスについだ。
次に飲むお酒は、特に好みもないので一番手前のを取った。
移動して奥村さんの隣に座る。
「もっとこっちに来い」
そこまで離れていない。
「あんまり寄ると飲みにくいのでは?」
奥村さんが寄ってきた。それから、腰に手を回された。
「教授がキャバクラへ行くのに、よく付き合わされていたんだが」
キャバクラ……華やかで若い女の子がたくさんいるお店と認識している……
「教授が……ですか……」
奥さんとしていることを知るより、こちらの方がよりショックだった。
「悪い、お前のとこのじゃない。ウイルス研の方のだ」
「そういや、ここには服があんまりないんだな」
すぐに座るように言われる。
「お前は甘いのがいいよな」
できるだけお酒の味がわからないのがいい。
「あまり強くないので」
「まあ、様子をみるから、少しずつ飲んでくれ。潰れたら困るが、酔わないと意味がない」
奥村さんがチューハイの缶をあけて、わたしのグラスに注いだ。
「飲む気で買い込んだが、俺はビールだけにしとくか」
プルタブをひいて、いきなり口をつけた。奥村さんをついみつめてしまう。
「なんだ? 早く飲めよ」
「あ、はい……」
乾杯をするのかと思い込んでいた。宴会ではないのだからそんなものかもしれない。
甘くて飲みやすい酎ハイだった。
酔うとは、どこからの状態だろう。
バターピーナッツの入った小皿を渡された。一つつまむ。
奥村さんが、飲んでいたビールの缶を揺らした後で、乱暴にテーブルに置いた。倒れる。
「もう、入ってない」
「まだ、色々あるじゃないですか」
いくつか瓶も買っていたように思ったけれど、出してきていなかった。
奥村さんは並べてある缶に手を伸ばし、一つ一つ内容を確認している。
「こんなのはジュースと同じだ」
ため息をついている。わたしの苦手なハイボールなら、甘くはないはずだ。取って、奥村さんに渡した。
「いいのか、知らないぞ」
「弱いんですか?」
弱いのに、お酒が好きなら気の毒だ。
「弱くはない」
奥村さんが缶を開けた。
「あと、一本くらいは大丈夫だろう」
もしかしたら、眠いのだろうか。わたしも、お酒を飲むと眠くなる。
「お疲れなら、また後日に」
「馬鹿か」
睨まれた。
「これ以上先延ばしにするつもりはない」
気を遣っただけなのに……そこまで怒ることない。
「俺は、いつも、ギリギリのところで理性を保っているんだからな。酒が入るとどうなるかわからん」
ドキッとしてしまった。
「少しくらい、早まってもかまわないか」
わたしは、黙っていた。わざわざ嫌だと訴えるほどではもうなかった。
「できる限り、手順を守る努力はするさ」
奥村さんが少しふてくされたような顔をした。
「早く飲め。さっさと終わらせて寝る」
わたしはグラスを持ち、半分くらいまで飲んだ。多分もう、顔が真っ赤になる頃だ。
「弱そうだな……」
呆れたように言う。
「それ一本飲み終わったら、体の反応をみて、酒を追加するか決めよう」
「は、反応ですか……」
「安心しろ。服の上から少し触るくらいだ」
服を着たまま触られるのは、今までほとんどなかった。こちらの方がハードルが低いはずなのに、少し抵抗を感じる、単に慣れていないせいだとは思う。
「ソファに移動するか……」
奥村さんが、缶を持って立ち上がった。
「次飲むやつを選んで持って来とけよ」
缶に残っている分をグラスについだ。
次に飲むお酒は、特に好みもないので一番手前のを取った。
移動して奥村さんの隣に座る。
「もっとこっちに来い」
そこまで離れていない。
「あんまり寄ると飲みにくいのでは?」
奥村さんが寄ってきた。それから、腰に手を回された。
「教授がキャバクラへ行くのに、よく付き合わされていたんだが」
キャバクラ……華やかで若い女の子がたくさんいるお店と認識している……
「教授が……ですか……」
奥さんとしていることを知るより、こちらの方がよりショックだった。
「悪い、お前のとこのじゃない。ウイルス研の方のだ」
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