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ゆめ6
二
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「そうですか……」
ホッとした。
「とにかく、ああいう店は合わなくて、時間の無駄の極みのようで苦痛に感じたが……」
なんの話だと思ったけれど、どうやら雑談らしい。
「そうなんですね」
相槌を打つ。
「お前相手に、教授がやってたようにしてみようか……」
「それも研修ですか?」
そんな訳はなかった。だいたい、教授が違う。
「いや、単なる俺の興味の問題だ」
キャバクラはお酒を飲むお店で、間違いないはず。
「雰囲気出すためにグラスにうつすか……」
奥村さんが、自分の分のグラスを取りにたった。キャバクラには行ったことがないので、雰囲気も何もよくは知らない。
髪を明るく染めてクルクルに巻いた女の子が、ドレスを着てお話を聞いてくれるイメージ……
そして、裏ではお客を取り合って、髪の毛を引っ張り合う喧嘩をするはずだ。
奥村さんが戻ってきた。やっぱり、ぴったりとくっついて座られた。
「お前となら、少しは話も合うからな。ひょっとしたら楽しいかもしれない。とりあえずお前は残りを飲んでしまえ」
テーブルに手を伸ばしグラスを取った。口をつけた。
奥村さんが、わたしの太ももに手をのせた。驚いて、見る。
何食わぬ顔で、お酒を飲んでいる。
「あの……」
手を動かさないでほしい。
横目でわたしをみた。
「待て、話題はどれにするか、今考えてる」
撫でられながら、会話するの? そんな器用なことはできない。
「意外に共通の話題が見つからない。専門分野が俺は動物、お前は植物だからな」
確かに、細胞壁があるかないかで大きく違う。だいたい、奥村さんの専門は動物ではなく人だと思った。
「難しい話をするものなんですか? その、キャバクラでは……」
「いや、くだらん話がほとんどだ。だから、時間の無駄なんだろう」
くだらない話とは、どの程度のことだろう。
「昨日の食事とかそういうのですか?」
「何が?」
どうやら違うみたいだ。
「くだらない話は、具体的にどういうのなんですか?」
「履いてる下着の色だとか」
確かにくだらない。
「そうだな……なんでも良いから、俺を褒めてくれ」
突然そんなことを言われても困る。
首を捻って考え込む。なんとか思いついた。
「ただただ怖い人かと思ってましたが、意外に話しやすいところもあるかなと……」
「それは、褒めてるか?」
頷く。しかし、足りない気はする。奥村さんの顔をみてみる。
「あと、眼鏡、似合ってると思います」
「ふむ」
微妙に、口元が緩んだ。
「ほかには?」
「指がキレイだなと思ったことが……」
言った後に、少し恥ずかしくなった。
「お前に褒められても、胸くそ悪くはならないな……」
奥村さんがグラスのお酒を飲み干して「もう少し、飲むか」とお酒を取りに行った。少し機嫌が良くなっているだけで、顔色は何も変わっていない。お酒が強いんだろう。
缶を二つ持って戻ってきた。すぐに開けて注いでいる。
「奥村さんは、褒められて、よく嫌な気分になるんですか?」
「『よく』ではないけどな。ああいう店で褒められると腹が立ってくるな」
何を言われたらそこまで嫌になるのか気になって訊いた。
「カッコいいとか、ステキとか、背が高いとか」
「普通、喜ぶもんじゃないんですか?」
「目の前でだ。教授のことを、おでこが広くて可愛い、光ってキレイとか、たっぷったっぷのお腹……あー、腹はなんて褒めたか忘れたが……なんでもかんでも褒めとけばいいと思ってるんだろ」
わたしは奥村さんをみた。目が合う。
ホッとした。
「とにかく、ああいう店は合わなくて、時間の無駄の極みのようで苦痛に感じたが……」
なんの話だと思ったけれど、どうやら雑談らしい。
「そうなんですね」
相槌を打つ。
「お前相手に、教授がやってたようにしてみようか……」
「それも研修ですか?」
そんな訳はなかった。だいたい、教授が違う。
「いや、単なる俺の興味の問題だ」
キャバクラはお酒を飲むお店で、間違いないはず。
「雰囲気出すためにグラスにうつすか……」
奥村さんが、自分の分のグラスを取りにたった。キャバクラには行ったことがないので、雰囲気も何もよくは知らない。
髪を明るく染めてクルクルに巻いた女の子が、ドレスを着てお話を聞いてくれるイメージ……
そして、裏ではお客を取り合って、髪の毛を引っ張り合う喧嘩をするはずだ。
奥村さんが戻ってきた。やっぱり、ぴったりとくっついて座られた。
「お前となら、少しは話も合うからな。ひょっとしたら楽しいかもしれない。とりあえずお前は残りを飲んでしまえ」
テーブルに手を伸ばしグラスを取った。口をつけた。
奥村さんが、わたしの太ももに手をのせた。驚いて、見る。
何食わぬ顔で、お酒を飲んでいる。
「あの……」
手を動かさないでほしい。
横目でわたしをみた。
「待て、話題はどれにするか、今考えてる」
撫でられながら、会話するの? そんな器用なことはできない。
「意外に共通の話題が見つからない。専門分野が俺は動物、お前は植物だからな」
確かに、細胞壁があるかないかで大きく違う。だいたい、奥村さんの専門は動物ではなく人だと思った。
「難しい話をするものなんですか? その、キャバクラでは……」
「いや、くだらん話がほとんどだ。だから、時間の無駄なんだろう」
くだらない話とは、どの程度のことだろう。
「昨日の食事とかそういうのですか?」
「何が?」
どうやら違うみたいだ。
「くだらない話は、具体的にどういうのなんですか?」
「履いてる下着の色だとか」
確かにくだらない。
「そうだな……なんでも良いから、俺を褒めてくれ」
突然そんなことを言われても困る。
首を捻って考え込む。なんとか思いついた。
「ただただ怖い人かと思ってましたが、意外に話しやすいところもあるかなと……」
「それは、褒めてるか?」
頷く。しかし、足りない気はする。奥村さんの顔をみてみる。
「あと、眼鏡、似合ってると思います」
「ふむ」
微妙に、口元が緩んだ。
「ほかには?」
「指がキレイだなと思ったことが……」
言った後に、少し恥ずかしくなった。
「お前に褒められても、胸くそ悪くはならないな……」
奥村さんがグラスのお酒を飲み干して「もう少し、飲むか」とお酒を取りに行った。少し機嫌が良くなっているだけで、顔色は何も変わっていない。お酒が強いんだろう。
缶を二つ持って戻ってきた。すぐに開けて注いでいる。
「奥村さんは、褒められて、よく嫌な気分になるんですか?」
「『よく』ではないけどな。ああいう店で褒められると腹が立ってくるな」
何を言われたらそこまで嫌になるのか気になって訊いた。
「カッコいいとか、ステキとか、背が高いとか」
「普通、喜ぶもんじゃないんですか?」
「目の前でだ。教授のことを、おでこが広くて可愛い、光ってキレイとか、たっぷったっぷのお腹……あー、腹はなんて褒めたか忘れたが……なんでもかんでも褒めとけばいいと思ってるんだろ」
わたしは奥村さんをみた。目が合う。
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