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ゆめ6
二十九
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布地に残る奥村さんの体温に包まれた。奥村さんの匂いがする。なぜか、心拍数があがる。
奥村さんは、ジャケットを脱いでしまうと、綿のシャツだけになる。私より薄着なのに。
「奥村さんは大丈夫なんですか?」
「心配するな。男の方が寒さに強いようにできてる」
奥村さんが、私の頭の上に大きな手のひらをのせた。
軽くめまいがして、奥村さんのかけてくれたジャケットの襟元を、握りしめてたえた。
頭に触れられただけなのに、お酒に酔ったように顔まで火照ってきた。
体が、反応している。
これはもしかしたら、『発情』というものではないか。
恥ずかしい。気づかれたくない。
「わざわざ俺から話しはしないが、そのうちお前の耳にも入るかもしれない。過去は、悩もうが何をしようが変わらないから、俺はもう気にしていない」
別れた奥さんとの間に、複雑な経緯がありそうだ。
気にしていないと言っていても、笑って話せるほどではないのだろう。
「瑞樹」
唐突に名前を呼ばれて、ドキッとしてしまった。
「これから、お前にはなにかと酷なこともあるが、俺にできる限りの配慮はする」
「はい」
抵抗がなくなっただけでなく、私は、この先を知りたくなっている。
「とにかく行くか。今日のは、俺にとってもなかなかの試練だ」
教授は、一体、何をしたのだろう。私には想像もつかない。
高速道路から、山間の景色が見える。ところどころ集落もある。風景に変化が出てきたので、しばらくは外を見て過ごした。
鹿の飛び出しに注意を促す看板が目に入る。
奥村さんは何も話しかけてこない。奥村さんの方は、今日、何をするのか知っている。
試練……と言っていた。
教授は、毎回時間を計り記録してきた。
相当変わっているのは、経験のない私にもわかる。
答えの出ないことを考えている内にかなり進んだようで、高速道路からおりた。
「よく考えたら、海をみるのは久しぶりだ。少し楽しみではある」
「あっ、海なんですね」
海にはたどり着いていない。のどかな街並みがあるだけだ。
「天橋立だといっただろう」
「それはわかってたんですが」
天橋立という、名所へいく認識でしかなかった。
「教授と同じ、廻旋橋からの順路で行く」
言われてもわからない。車を停めて、旅館やお土産屋の立ち並ぶ道を歩いた。
「時間に余裕があったら、後で文殊堂には寄ろう」
とにかく頷く。
「廻旋橋が動くのを待つのはめんどうだ。べつにみなくていいよな」
「橋が動くんですか」
「船を通すために、回るだけだ」
十分すごい。見てみたい気もしたが、言い出せなかった。
橋を二つ渡る。松林のあいだに舗装されていない道がある。まばらに人が歩いている。前から自転車がきた。
「3.6キロもあるからな。俺だったら自転車を借りる」
さっきレンタサイクルがあった。
「結構距離がありますね」
「歩きでないと、教授のノートにあった場所を見逃すからな」
ということは、この途中で研修が?
「ここで何を?」
「何をって、昨日練習しただろう」
「まさか、手で?」
「そうだ」
私は、あまりのショックに立ち止まった。
さっきから、結構人とすれ違う。ここのどこに、あんなことができる場所があるというのだ。
「今回のは俺も気は進まない。どうしても無理だったら途中でやめればいいだろう」
人からもし見られたら、奥村さんの方がきっと……
触ってる方も十分恥ずかしい。
「行くぞ」
声をかけられ歩き始めた。
せっかく天橋立まで来たのに、風景を楽しむどころではなくなった。
奥村さんは、ジャケットを脱いでしまうと、綿のシャツだけになる。私より薄着なのに。
「奥村さんは大丈夫なんですか?」
「心配するな。男の方が寒さに強いようにできてる」
奥村さんが、私の頭の上に大きな手のひらをのせた。
軽くめまいがして、奥村さんのかけてくれたジャケットの襟元を、握りしめてたえた。
頭に触れられただけなのに、お酒に酔ったように顔まで火照ってきた。
体が、反応している。
これはもしかしたら、『発情』というものではないか。
恥ずかしい。気づかれたくない。
「わざわざ俺から話しはしないが、そのうちお前の耳にも入るかもしれない。過去は、悩もうが何をしようが変わらないから、俺はもう気にしていない」
別れた奥さんとの間に、複雑な経緯がありそうだ。
気にしていないと言っていても、笑って話せるほどではないのだろう。
「瑞樹」
唐突に名前を呼ばれて、ドキッとしてしまった。
「これから、お前にはなにかと酷なこともあるが、俺にできる限りの配慮はする」
「はい」
抵抗がなくなっただけでなく、私は、この先を知りたくなっている。
「とにかく行くか。今日のは、俺にとってもなかなかの試練だ」
教授は、一体、何をしたのだろう。私には想像もつかない。
高速道路から、山間の景色が見える。ところどころ集落もある。風景に変化が出てきたので、しばらくは外を見て過ごした。
鹿の飛び出しに注意を促す看板が目に入る。
奥村さんは何も話しかけてこない。奥村さんの方は、今日、何をするのか知っている。
試練……と言っていた。
教授は、毎回時間を計り記録してきた。
相当変わっているのは、経験のない私にもわかる。
答えの出ないことを考えている内にかなり進んだようで、高速道路からおりた。
「よく考えたら、海をみるのは久しぶりだ。少し楽しみではある」
「あっ、海なんですね」
海にはたどり着いていない。のどかな街並みがあるだけだ。
「天橋立だといっただろう」
「それはわかってたんですが」
天橋立という、名所へいく認識でしかなかった。
「教授と同じ、廻旋橋からの順路で行く」
言われてもわからない。車を停めて、旅館やお土産屋の立ち並ぶ道を歩いた。
「時間に余裕があったら、後で文殊堂には寄ろう」
とにかく頷く。
「廻旋橋が動くのを待つのはめんどうだ。べつにみなくていいよな」
「橋が動くんですか」
「船を通すために、回るだけだ」
十分すごい。見てみたい気もしたが、言い出せなかった。
橋を二つ渡る。松林のあいだに舗装されていない道がある。まばらに人が歩いている。前から自転車がきた。
「3.6キロもあるからな。俺だったら自転車を借りる」
さっきレンタサイクルがあった。
「結構距離がありますね」
「歩きでないと、教授のノートにあった場所を見逃すからな」
ということは、この途中で研修が?
「ここで何を?」
「何をって、昨日練習しただろう」
「まさか、手で?」
「そうだ」
私は、あまりのショックに立ち止まった。
さっきから、結構人とすれ違う。ここのどこに、あんなことができる場所があるというのだ。
「今回のは俺も気は進まない。どうしても無理だったら途中でやめればいいだろう」
人からもし見られたら、奥村さんの方がきっと……
触ってる方も十分恥ずかしい。
「行くぞ」
声をかけられ歩き始めた。
せっかく天橋立まで来たのに、風景を楽しむどころではなくなった。
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