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ゆめ6
三十四
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「ど……したんですか?」
驚きすぎて声が震える。奥村さんにまだ包まれたままで、私は顔をあげられなかった。
「カモメではないデカい鳥がお前をめがけてきた」
全然気づかなかった。
「手は、つつかれてないか?」
驚いただけで、どこも痛くはない。
「大丈夫です」
「よかった。みっともないから立つか」
奥村さんは先に立って、私を引き上げてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「もうエサやりはやめておこう」
私は頷いた。まだ、驚いた時の動悸が治まってくれない。
小袋を開けてえびせんをひとつ摘まんだ。
「投げればいいようだ」
一応は、一羽のカモメに向けて投げてみた。風で思ったところにはいかない。
それでも違うカモメが、器用にさらっていった。
「すごい!」
つい、奥村さんの袖をつかんで「すごかったですね?」と同意を求めてしまった。
奥村さんは面食らったあと、「そうだな」と少し笑った。
「ほかのやつも待ってるぞ」
私は楽しくて、投げる先を変えながら投げた。
「楽しそうだな」
「奥村さんも投げますか?」
断られるかと思ったけれど、私に手のひらを広げてみせたので、いくつか載せた。
奥村さんは最初、舟のほんの近くに投げた。カモメはそれでも器用にえびせんを口にくわえて、すぐに船から離れた。
「驚いた。すごい能力だ。本気で感心する」
奥村さんも次からは意地悪をやめて遠くに投げた。
私ももっと遠くの方へ投げたくてえびせんを持った手を、精一杯伸ばした。
「危ない」
奥村さんが声と同時に私の手を強引にさげさせ、覆い被さってきた。訳もわからないまま、しゃがみ込む。
「大丈夫だったか?」
何が起こったのかわからない。
「ど……したんですか?」
驚きすぎて声が震える。奥村さんにまだ包まれたままで、私は顔をあげられなかった。
「カモメではないデカい鳥がお前をめがけてきた」
全然気づかなかった。
「手は、つつかれてないか?」
驚いただけで、どこも痛くはない。
「大丈夫です」
「よかった。みっともないから立つか」
奥村さんは先に立って、私を引き上げてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「もうエサやりはやめておこう」
私は頷いた。まだ、驚いた時の動悸が治まってくれない。
「さっきの鳥はトンビらしい」
奥村さんが調べて教えてくれた。
「くちばしでなく、足で獲物を取りにくるんだと」
どちらでも、怖い。残ったカッパえびせんは後で食べることにした。
船をおり「こっちも回るか?」と訊かれた。
「少し歩き疲れました」
素直に返す。
「ゆっくり帰るか」
天橋立を後にした。帰りは特に会話もなかった。
家に帰り着き、軽く夕食をとった。
「今日は疲れただろう。早めに寝るといい」
天橋立でした分だけで、今日の研修は終わりらしい。
いつも夜はいろいろとされていたので、拍子抜けした。たしかに疲れている。お風呂に入って、もう眠ることにした。
ベッドに一人で入る。
奥村さんは、何をしているのか見当もつかない。本を読んでいるのかもしれない。
ウトウトしていると、奥村さんが寝室に入ってきた。
必要ない気はしたが、起き上がった。
「起こしたか、悪かったな」
「まだ、起きていました」
「そうか」
奥村さんがベッドに入ってきた。
肩が触れるわけではないが温もりが伝わる距離にいる。
なぜか、いつも以上に落ち着かない。
「今日は、思った以上に楽しめた」
話しかけられた。あまり表には出ないけれど、楽しんでいたのなら良かった。
「動きやすい服で行くように言えば良かったな。あのなんだ、天橋立を逆さまにみるやつが、できなかっただろう」
興味がないのかと思っていた。私が長いスカートをはいていてできないから、遠慮したようだ。
「また行く機会があればそうします」
「研修が終わるまでは、景色をみる気分じゃなかったしな。そう遠くないからまた連れて行ってやる」
また、一緒に行くのか……
それは、研修関係なく?
そうなると、なんの名目になるのだろうと考えている内に、いつの間にか眠っていた。
驚きすぎて声が震える。奥村さんにまだ包まれたままで、私は顔をあげられなかった。
「カモメではないデカい鳥がお前をめがけてきた」
全然気づかなかった。
「手は、つつかれてないか?」
驚いただけで、どこも痛くはない。
「大丈夫です」
「よかった。みっともないから立つか」
奥村さんは先に立って、私を引き上げてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「もうエサやりはやめておこう」
私は頷いた。まだ、驚いた時の動悸が治まってくれない。
小袋を開けてえびせんをひとつ摘まんだ。
「投げればいいようだ」
一応は、一羽のカモメに向けて投げてみた。風で思ったところにはいかない。
それでも違うカモメが、器用にさらっていった。
「すごい!」
つい、奥村さんの袖をつかんで「すごかったですね?」と同意を求めてしまった。
奥村さんは面食らったあと、「そうだな」と少し笑った。
「ほかのやつも待ってるぞ」
私は楽しくて、投げる先を変えながら投げた。
「楽しそうだな」
「奥村さんも投げますか?」
断られるかと思ったけれど、私に手のひらを広げてみせたので、いくつか載せた。
奥村さんは最初、舟のほんの近くに投げた。カモメはそれでも器用にえびせんを口にくわえて、すぐに船から離れた。
「驚いた。すごい能力だ。本気で感心する」
奥村さんも次からは意地悪をやめて遠くに投げた。
私ももっと遠くの方へ投げたくてえびせんを持った手を、精一杯伸ばした。
「危ない」
奥村さんが声と同時に私の手を強引にさげさせ、覆い被さってきた。訳もわからないまま、しゃがみ込む。
「大丈夫だったか?」
何が起こったのかわからない。
「ど……したんですか?」
驚きすぎて声が震える。奥村さんにまだ包まれたままで、私は顔をあげられなかった。
「カモメではないデカい鳥がお前をめがけてきた」
全然気づかなかった。
「手は、つつかれてないか?」
驚いただけで、どこも痛くはない。
「大丈夫です」
「よかった。みっともないから立つか」
奥村さんは先に立って、私を引き上げてくれた。
「あの、ありがとうございます」
「もうエサやりはやめておこう」
私は頷いた。まだ、驚いた時の動悸が治まってくれない。
「さっきの鳥はトンビらしい」
奥村さんが調べて教えてくれた。
「くちばしでなく、足で獲物を取りにくるんだと」
どちらでも、怖い。残ったカッパえびせんは後で食べることにした。
船をおり「こっちも回るか?」と訊かれた。
「少し歩き疲れました」
素直に返す。
「ゆっくり帰るか」
天橋立を後にした。帰りは特に会話もなかった。
家に帰り着き、軽く夕食をとった。
「今日は疲れただろう。早めに寝るといい」
天橋立でした分だけで、今日の研修は終わりらしい。
いつも夜はいろいろとされていたので、拍子抜けした。たしかに疲れている。お風呂に入って、もう眠ることにした。
ベッドに一人で入る。
奥村さんは、何をしているのか見当もつかない。本を読んでいるのかもしれない。
ウトウトしていると、奥村さんが寝室に入ってきた。
必要ない気はしたが、起き上がった。
「起こしたか、悪かったな」
「まだ、起きていました」
「そうか」
奥村さんがベッドに入ってきた。
肩が触れるわけではないが温もりが伝わる距離にいる。
なぜか、いつも以上に落ち着かない。
「今日は、思った以上に楽しめた」
話しかけられた。あまり表には出ないけれど、楽しんでいたのなら良かった。
「動きやすい服で行くように言えば良かったな。あのなんだ、天橋立を逆さまにみるやつが、できなかっただろう」
興味がないのかと思っていた。私が長いスカートをはいていてできないから、遠慮したようだ。
「また行く機会があればそうします」
「研修が終わるまでは、景色をみる気分じゃなかったしな。そう遠くないからまた連れて行ってやる」
また、一緒に行くのか……
それは、研修関係なく?
そうなると、なんの名目になるのだろうと考えている内に、いつの間にか眠っていた。
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