感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ7

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 三人で食卓を囲む。ひかりから提供できる話題はないので、二人の会話に耳を傾けていた。
「先生、一度数日間実家に戻ろうと思ってるんです」
「いつだい?」
「特に、いくつか資料を取りに行こうかと。親に探してもらったんですが、見つけられないと言われて。親からしたら、全部同じタイトルにみえるらしくって」
 和明は不思議そうな顔をしたけれどひかりにはよくわかった。
「こっちに来てもらうのを急かしたからね」
 和明が亮に謝った。
「いえ、感謝してます。先生や教授には良い刺激をいただけているので」
 日程が決まったら教えてくれることになった。
 亮がいない間、またそっけなくされるのではないかと少し不安になる。
「僕の書斎には自由に入って好きな本を持って行ってもらってかまわないよ」
 あの部屋には、研究に関するデータなどもあるはずだ。PCにはロックがかかっているにせよ、プリントアウトした資料もあった。
 和明の亮への信頼はなんだろう。七年音信不通だった元生徒に対して無防備すぎる気がする。もちろんひかりは亮を信頼している。
「次の週末はきちんと休みをとって、三人でどこかへ観光でもと思っていたんだが、資料を取りに帰るのは重要事項だからね。仕方ない」
 和明が、残念そうに言う。そんな提案をしてくるとは、ひかりは想像していなかった。
「週末は、避けますよ。まだ、自由がきく身ですから」
 亮が予定を合わすという。三人で、観光に行く。和明とでかけられるのは嬉しい。亮とでかけることにも抵抗はない。ただ、三人一緒にでかけるのは、不安だった。
「週末休むために、明日から毎晩遅くなる。ひかりのためにも、実家へ戻るのは後の週にしてもらえないかな?」
 亮は承諾した。
「実は、僕たちもほとんど観光らしいことはしたことがないんだ。さすがに泊まりは難しいから、日帰りできそうな範囲でどこかへ行こう」
 ひかりにとってこの数年、マンションの中と近所のスーパーへの買い物がすべてだった。和明の大学へ行ったのも、数回程度だ。WEB小説の中に入り浸ることでしか、変化を感じられたない生活だった。
「どこか、行きたい場所はあるかい?」
 亮は「特には、思いつきませんね」と、すぐに返した。
「君は?」
 日帰りできる範囲がわからなかった。しかし、そのままを伝えると失望される気がした。ちょうど、『教授の実験室』で、二人が日帰り旅行をしていた。
「あの……天橋立はどうでしょう?」
 和明がひかりをじっとみている。探るような視線だった。
「遠いですか?」
 和明は顔を左右にゆっくりと動かした。
「最適な場所だと思うよ。まるで、事前に調べていたかのように」
 和明は、とても嬉しそうに言った。
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