感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ7

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「よく考えてみれば、僕が家にいない間、君が何をしているのか全く知らない」
 髪を撫でていた指先が耳をかすめた。ほとんどの時間を、インターネットをして過ごしているとは、さすがに想像しないだろう。
  サイドテーブルに置かれたランプの光が、天井をほんのり照らしている。
 隣にいる和明と、僅かに重なった部分から体温が伝わってくる。
「行きたいところがあるのなら……」
 連れて行ってもらえるのだろうか。ひかりには、行きたい場所があるわけではなく、和明と一緒にどこかへ行きたかった。
「喜多川君に頼むといい。僕よりは時間をとれるはずだ」
 ひかりは思わずため息をついた。
「行きたい場所は……ありません」
 和明が、ひかりの頭を撫でた。
「本当に君は、不可解だ」
 和明は手をとめた。
「どこまで維持できるだろう」
 聞き逃しそうなほどの声でいう。
 それから「そろそろ眠ろう」と言って、ひかりの頭のしたからゆっくりと腕を抜いた。
 自分のベッドへ戻っていく。すぐに、ライトを消した。
 途端に暗闇になる。
 ひかりは、さっきまで和明がいた場所に手で触れた。まだ温もりがある。
 和明の発した言葉の意味を考えてはいけない。
 ひかりは、目を閉じた。そして、もう一度開ける。
 どちらにしても、目の前には暗闇だけがあった。
 翌日から、和明は言っていたとおりに遅かった。
「先生に、観光プランを立てておくように言われたから、一緒に考えよう」
 夕食の最中に、亮から話しかけられた。
「いつ?」
 知る必要も無いことを確認したくなる。
「今週末だったよな?」
「そうじゃなくて、いつ、プランを立てるように言われたの?」
 亮は首をかしげながら「昼過ぎ」と答えた。
 仕事中、ひかりに連絡をくれることはほとんどない。
「なんか、怒ってる?」
「別に」
 ひかりは自分を抑えられなかった。
「嫌なら、別に一人で考えるよ」
 亮にあたっても仕方がないのはわかっている。
「嫌じゃない」
 ひかりにはプランにいれてもらいたいものがあった。船に乗って、カモメに餌をあげてみたかった。亮に話すと「楽しそうだな」と、言った。
「それは、必ずいれよう。他には?」
 石のベンチが本当にあるのかも確かめたかった。それについては「片道は徒歩で渡りたい」と、伝えた。
 ひかりはふと、これが『聖地巡礼』と、言うものではないかと、思った。
 
 
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