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序章
とりあえず軽く仕返し♡
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(私はとんでもない間違いを犯したんじゃ無いだろうか・・・今日の息子の目はどこか違っていた。
躾と評した虐待部屋に入れられるとき、いつもなら怯えた表情をしていたというのに、今日は底の見えない怒りの目をしていた気がしたのだ)
アルジオ・フォン・アルゴノートは、一人頭を抱えるような思いで帝都の三つ星レストランに家族三人で訪れていた。
妻であるグレコと、娘であるアルナはそんな彼の悩みを知ることもなく、食事をしながら談笑を楽しんで居た。
「お父様、どうしたのです?手が止まってますわよ?食欲がないのですか?」
「あ、あぁすまない。少し考え事をしていたんだ」
「ふふっ、お父様ったら。今日は家族水入らずなのです。普段はアレがいるから、家族団らんできませんが、今日はお父様とお母様と三人で食事が出来て嬉しいですわ」
「えぇ、あれも少しは分を弁えてほしいわね。平民でうちの敷居に跨がること自体が名誉なことだというのに、毎日食事がほしいだなんて」
「お母様の言うとおりですわ。平民はワタクシ達貴族のために存在しているというのに、全く不遜もいいところですのよ」
「そうだな。アレは学園卒業後に処分する予定だ。すまないがそれまでは待ってくれ。かわいいアルナのためだ」
「わかっていますわ。でもちょっと今日のワタクシを見る態度がムカつきましたわ。明日はワタクシも直々に懲罰を行いますの!」
「まぁ!アルナはまだ九歳だというのに、貴族の仕事を行うと言うのね。良いことだわ」
「えぇ、お母様ばかりに大変な作業をさせるわけには行きませんもの!」
そうだ、大丈夫だ。私達は貴族で、アレは平民だ。絶対に大丈夫だ・・・
アルジオはそう自分に言い聞かせた。
しかし一抹の不安で、三つ星レストランの味を楽しむことはできなかった。
*
俺は窓の戸を開いて辺りを見る。
昨夜飛び出したときと現状は変わってないな。
「うわっ、汚い」
「さっき話しただろ。俺のうちでの扱いはこんなもんだ」
『これは酷いですね。臭いですし、寝る場所を辛うじて確保できてるくらいで、あとはなにもない。なのに臭い!』
鼻を手で押さえながらクレが浄化魔法を使用してくれた。
助かる。
俺は収納魔法しかまだ覚えられてないしな。
ちゃんと<狂戦士の襟巻き>はしまった。
間違いない!
「とりあえず飯だな。まだ朝六時くらいだからあの愚両親とアルナは起きてないと思う。使用人しか起きてないだろうから厨房いくぞ」
「なんか泥棒みたい」
「仕方ないだろ。あー、俺の身体じゃまだドアをぶち破れないや。クレ、頼む」
クレは何も言わずにドアを細切れにしてくれた。
わかってるな。
俺はもうこの家に遠慮するつもりはない。
前世でもそうだが、俺は悪いことはなにもしてない。
だったら堂々としていればいいんだ。
「サンキュー、じゃあ行こうぜ。俺、腹減っちまった」
『教育に悪いので先に言っておきますよ。ミライは真似しては駄目ですからね』
「いや、おじさん。九歳になったら物事分別くらい普通つくよ・・・」
まるで俺が物事の分別がついてないみたいな言い方だ。
それにしても、なんだかんだ言って初めてこの屋敷の廊下を歩くかも知れない。
大体は髪を引っ張られながら引きずられてたし。
「思えば、なんでリアスはこんな環境で我慢していたんだろうな。もう迷惑をかける家族も生きていないし、一矢報いるとかしそうなもんだが」
『それは生きたかったのでしょう?少なくともあなたが学園に行くまでは、本当に最低限ですが衣食住の保証をしていますし。ヒューマンの子供が一人で生きていけるほど、世界は甘くないと思います』
「そんなもんかー」
「ちなみに精霊もだよ!むしろおじさんみたいに契約者なしで100年も生きてる方が珍しいかも」
「たしかに、魔力が補充されないならキツそう」
『私は風神ですからね。魔力を使わなくても風を起こしたりはできますので、空にいれば大抵の相手は手が出せませんからね』
へぇ、風を起こすだけなら魔力を使わないんだ。
さすが神の名を持つだけあるな。
「よっ、風神様」
「よーっ風神!」
『二人とも馬鹿にしているのですか?ふんふんっ、良い匂いがしてきましたね』
気がつけば厨房まで来ていた。
正直場所がわからなかったから、当てずっぽうで進んでたけど当たりだったみたいだな。
俺は思いきり扉を開ける。
調理中だった厨房の使用人達は、ギョッとした顔でこっちを見つめてきたが、再び作業に戻った。
「邪魔すんぞ。なんでもいいんだけど、俺とこの子、そしてこいつの三人分の飯作ってくれよ」
「・・・」
あ、無視か。
そうかそうか、そういう態度取っちゃうか。
「あ、あいつは」
『あの金髪の青年ですか?知り合いですか?』
「いやちょっとな」
こいつ、いつもリアスに食事を運んでくれてたんだよな。
何を思って運んでくれていたんだ?
今は包丁で野菜を切ってるな。
邪魔しちゃ悪いか?
まぁそんなことどうでもいいか。
「おいあんた」
「・・・」
「無視すんなよ。クレ」
肩に乗るクレに目配せすると、包丁を砕け散る。
本当は<狂戦士の襟巻き>で壁を叩いて恐怖心を煽って話を聞いてもらう予定だったけど、アレを装備すると狂人になってしまうので、その役をクレにやってもらうことにした。
まぁ見事に恐怖で顔を青ざめている。
クレとミライのことは見えてるはずなんだけどな。
「り、リアス様。いらっしゃったのですね。何かご用で------」
「え、さっきこっちみてたよね?何すっとぼけてんの?あ、もしかして包丁と同じ目に遭うのがご所望?」
更に顔が蒼白し、失禁までしてしまった。
ありゃりゃ、子供相手に情けない。
でも俺は虐待を見て見ぬ振りした使用人全員に配慮するつもりは全くない。
「リアスくんが別の意味で怖いかも知れない!」
『見るからに悪人ですね。まぁ手を出していないから、ギリギリセーフというラインでしょうか?』
俺は二人の言うことを横目でチラリと見る。
うー、否定できないのが辛い。
前世では妹にチンピラ呼ばわりされたが、あの時は否定言葉が出来た。
けど今は否定出来ない。
でも仕方ないよな。
だって結局暴力でなんでも解決してしまうんだ。
話し合いをするにはこちらもそれ相応の力と圧力がないとダメだと言うことを、死んでから学んだ。
死ぬまでは、俺は手を出してないのに世間は誰も信じてくれないと、半ば諦めて暮らしていたし。
結局力の前には、善意も法も関係ないのだ。
「お漏らしはよくないぞ調理場で。さっき入ったときにも言ったと思うけど------」
ご飯を作って欲しいだけなんだ。
そう言おうと手を伸ばしたところで、彼は怯えてしまった。
ズボンを湿らした状況で料理を作らせるのもどうかと思うし、着替えさせるために手を貸しただけなのに
「ひっ、ひぃ!」
「おい、話聞けよ」
ピタリと動きが止まる。
もう涙目で、一周回って可哀想に思えてきたな。
「は、はい。なんでしょうか?」
「だから三人分の飯作ってほしいんだよ。理解していると思うけど、俺は男爵家の人間だろ?使用人が当主の息子に食事を与えるのは至極当然のことだと思うんだ」
「そ、そちらの方にも・・・ですか?そちらの方は一体?」
ミライの方を指さしてる。
たしかにこれは俺の落ち度だ。
先に自己紹介させるべきだった。
「ボク?ボクは彼のパートナーだよ?名前は教えてっ、あっげないよ」
『こらミライ、大人に対する態度じゃないです。リアス、真似をしてしまったじゃないですか』
「え、俺の所為なの?だってこいつら俺が殴られたり蹴られたりしてるとき、見て見ぬ振りをしたんだぜ?八つ裂きにする権利はなくとも、礼節を弁える必要はなくね?」
厨房にいる使用人達が全員顔を青ざめて下を向いている。
自覚はあるだろうけど、アルゴノート家は平民に対して横暴だ。
止めに入ればどうなるかは明白。
俺は必要とされた人材だから生かされてるけど、下手したらあいつらは殺しかねない。
故に無視、傍観だ。
「り、リアス様。私達は男爵夫人様から、あなたへの食事の制限を命じられています。勝手に食事を出すことは、男爵家への忠義を背く結果になりかねないのですが・・・」
お漏らしコックさんの言葉はおそらく本当だろう。
あの阿婆擦れ年増はそんな命令をしかねない。
「えー、そうなのー?じゃあさ、俺この家から出て行ってもいい?」
「へ?」
「だから、今、食事を出してくれないならこの家を出て行くって言ったの。わかります?あの現状を作り出したのは俺だ。てめぇらを全員八つ裂きにしてもいいんだけど、それじゃあ俺はタダのチンピラの暴君だ。君たちはなにもしてないからね」
俺は包丁の方に指さしながらペラペラと言葉を並べていく。
正直家を出るつもりはあるけど、それは俺自身に力が身についてからにしたい。
さっきだってクレが魔法を使っただけで俺は何もしてないし。
「だけど、食事すらさせてもらえないんじゃ、ここに居る意味ってあるか?さすがに野宿の方がマシだと思うんだぜ。だからお前らが食事を出してくれないなら、俺はこの家を出て行く。そして使用人が食事を出してくれないから家出をしてきましたと、帝都で噂を流せば完璧だ」
それを聞いてますます顔が真っ青。
もう魔族って言っても不思議じゃないね!
この世界魔族居るかしらんけど。
魔物はいるからいそうだけどな。
「聡い人はもうわかるよね?この家ではまだ俺の存在が必要だ。しかし一度噂が流れればどうなるか」
当然この家の人間に虐待しているという話が舞い込む。
そしてそうなれば、彼らは使用人を切るに決まってる。
更に王都でそのお触れが浸透したら、彼らの就職先は絶望的となり食いっぱぐれるのはたしかだ。
だから多少の過激な行動は多めに見るよ?
『リアス、後ろから包丁であなたを刺そうとしてくる人が居ます。どうしますか?』
「いや止めてよ」
『殺すかどうかの話ですよ。とっくに止めてます』
「子供のリアスくんに酷いコトするなんて、それでも大人かな?ちょっとお仕置き!」
バチバチと電気の音がする。
ミライが何かしてくれたのか。
全く俺には勿体ない相棒達だ。
「今、俺のことを刺そうとした奴がいたね?誰も止めなかったね?どうして?」
「な、なんなんだそれは!」
「何って魔法だけど?」
「何故あんたが魔法を使えているのかを聞きたい!これじゃあ、男爵夫人の命令を実行したところで俺達の命はないじゃないか!」
お漏らしコックさんは、もう何も隠す気がないみたいだ。
一体どういうことだろう?
しまったって顔をしたお漏らしコックさんの顔が非常に間抜けだ。
「命令ってなに?」
「おい、メルセデス!それは」
あ、彼の名前はメルセデスって言うんだ。
良いこと聞いた。
「ねぇメルセデス?その話を詳しく教えてくれない?この包丁みたくなりたくなかったら早く答えた方が良いぜ」
「ひっ、お、俺は男爵夫人様に言われて------」
「リアス様、彼はどうやら初めて魔法を見たようで混乱しているようです。ここは一旦退室------」
「黙れよ」
俺が今まで見せたことのない威圧感に、少しだけ後ずさる口を挟んだおっさん。
見た感じこの中で彼が一番歳を取ってそう。
料理長か何かか?
でもまぁ関係ない。
何かを隠そうとしていて、それが俺にとってろくでもないことはたしかだ。
「俺が話をしてるのはメルセデスだ。てめぇは黙っとけ」
「くっ・・・いえ、そうはいきません!」
「なんで?」
「彼は私の部下です。部下を守るのは、この場を預かる最高責任者として当然のことです」
「あ、そう。じゃあ最高責任者さん。さっき包丁を振りかざしてきた奴のことはお咎め無しにしてあげるから黙ってくれる?」
彼が言うことが正しいなら、殺人未遂を犯した喧嘩早い人間も彼の部下だ。
責任を持つというなら、殺人未遂の責任も取ってくれるのだろう。
多分昨日まで俺はここまで言いくるめることも、ましてや強気に厨房に入ってくることもしてない。
だから周りは慌てふためき、最高責任者さんも不利な状況に歯を噛みしめている。
『さすが、前世で虚偽の疑いをかけられた人は精神力が違いますね』
「それ嫌み?」
『褒めてるんですよ』
ホントかよ。
ミライはクスクス笑ってる。
どうやらこの状況はミライに取ってセーフラインらしい。
ここに花そその主人公がいたら、俺のことを止めたんだろうな。
「じゃあメルセデス話して良いよ。君が何を話しても俺が君を守ってやる。君は目の前で俺の力を目にしたからそれが可能だってことはわかるだろ?」
本当は俺の力ではなくクレの力なのだが、それは言わない約束。
クレの話が本当なら、人間で魔法を使える奴はいないんだから、人の世のルールで俺が魔法を行使したのと同じだろ。
「俺達は、男爵夫人に言われたんだ。リアス様への食事は、奥方様の指示がなければ与えなくて良いと。ワガママを言えば危害を加えてでも止めるようにと。だけど俺達はできる限り子供には手を出したくなかった。だから無視を決め込んだんだ」
「まぁそんなことわかってたことだけどな。それで?そんなことだけじゃ、あの最高責任者さんは慌てたりしないだろ?」
「それだけじゃない。俺達は男爵夫人から・・・」
「よせメルセデス!」
「18歳を迎えてあなたがこの家に戻ってきたときに、食事に毒を盛るように命令された。俺達全員を派遣としてではなく、専属で雇う事を条件に」
なるほど、専属で雇うと言う甘い条件に未遂とは言え殺人の命令を了承したわけね。
そりゃ慌てるわ。
でも奴ら考えてるな。
この命令の肝は簡単に隠蔽できることだ。
毒殺を行った使用人を殺すだけで、口封じが簡単に可能だと言うこと。
「それって子供を自分の出世のために売ったってこと!信じらんない!それを命令する人も了承する君たちも!」
ミライが出会ってから初めて怒りの顔を見せた。
俺のために怒ってくれるなんて優しいな。
「あぁわかってる。恥を忍んで頼みたいことがある。俺は殺しても構わない。だけど俺がやろうとしたことを世間に公表しないでほしいんだ。どうか俺の家族には手を出さないでくれ!」
「家族?」
「あぁ、貧しくて男爵家からしたら取るに足らない家かも知れないが、俺にとっては大事な家族なんだ。殺人犯の家族を持ったとすれば、あいつらは路頭に迷ってしまう。これは勝手な頼みだけどどうか頼む!俺は殺してもいい。けど俺の母さんと妹には手を出さないでくれ!」
へぇ、少しだけ見直した。
こいつが食事を持ってきてくれたのは、妹がいて俺と姿が重なったってところか?
まぁ家族のために身体を張れるってことは、こいつは悪い奴じゃないのかもしれないな。
「まぁたしかに俺はここに居る全員を殺す権利はあるよな?一服盛ろうとしたわけだし。人を殺そうとするって事は、自分達が殺される可能性を視野に入れておかないといけないぜ?」
俺はこの場にいる全員に睨みを聞かせる。
多分彼らからしたら俺は悪魔のように映っているだろう。
泣き叫んだり、大声を上げたりする者まで出てきた。
「慌てんなよ。俺はお前らを殺すつもりはない」
『いいのですか?正直殺されても文句言える状況じゃないでしょう彼らは』
「俺を大量殺人犯にする気か?こいつらのために手を汚すなんてごめんだよ」
「たしかにリアスくんがそんな惨状作るのはみたくないかも。やるなら協力するけどね!」
ミライは見た目は天使のようにかわいらしいのに、お転婆なところがあるな。
まぁ止めてる訳だし、実際は俺が殺人をすることを良しとは思ってないだろう。
何が起きても俺に着いてくれるってのは心強くはある。
前世も含めて、そんな間柄の人間居なかったからな。
でもここで殺したら完全に暴君だ。
前世で俺をハメた上司と何ら変わらない。
「幸い未遂だしな。まぁ一服盛ろうとした奴らに食事を作ってほしくはなくなったな。おい、メルセデス」
「なんだ。殺すのか?できればひと思いにやってくれ」
もう俺に敬語を使う気は無いようだ。
俺としてもその方がありがたい。
「お前にチャンスをやるよ。俺と俺の相棒、こいつとこの子達に舌を唸らせるような食事を提供してくれ」
驚いた顔でぽかんとしている。
別にこいつを信用したわけじゃない。
ただ、メルセデスは俺に食事を持ってきてくれていた。
他の使用人とは違ってだ。
普通の食事の場以外ではこいつが飯を持ってきてくれなきゃ、リアスは下手したら飢え死んでたかもしれないんだ。
なにせ、一月も食事の場を提供されなかったこともあるんだから。
水だけは設置された水道でなんとかなってたけど、栄養源はどうしよもない。
ほんの少しだけ感謝しても良いかもしれない。
「一体どういうつもりだ坊ちゃん?未遂とはいえ、あんたを殺そうとした一人だ」
「もちろん、毒を盛れば即座に首を落として、妹の首も斬り落としてから母親に突きつけてやる」
「リアスくん発想が怖いよ」
「脅しとしてはこれくらいが丁度良いだろ?見ろよ?効果覿面みたいだ」
今にも気絶してしまいそうなくらい血行が悪くなっている。
でもここで食事を逃す訳にはいかない。
俺も腹が減ってるんだよ
「やるの?やらないの?」
「や、やります!やらせていただきます!」
「あ、口調は崩していいぞ」
「そ、そうか?じゃあ待ってろ、腕によりをかけて作ってやる」
やる気を出してすぐに調理場へと戻っていった。
包丁は予備があるみたいだ。
しかしメルセデスよ。
ズボンが湿ったままなのはいいのか?
「楽しみにしてる。あ、ぼーっと突っ立てるお前も仕事に戻って良いぞ。俺はお前らを咎める気は無い。だけど、メルセデス以外で俺に意見してくることや俺達の食事を作ることは許さない。最高責任者さんも含めてな。わかったらさっさと仕事しなよ。あ、最高責任者さんもどうぞ?名前は知らないけど、俺が最初入って来たときみたいに無視してていいから」
俺は笑顔を向ける。
そんな青い顔ばかりしてると、本当に血行障害になるぞ。
「ふぁー、やっと食事にありつけるね」
『メルセデスという男は、どんな料理を出してくれるのでしょうか?楽しみですね。あ、二人とも安心して下さいね。人間が盛る毒程度なら、私の浄化魔法で綺麗さっぱり無くせますから』
「さすがに家族のために命を投げ出せるんだ。そんなことしないだろう」
俺達はリビングに移動して、食事がくるのを待った。
しばらくするとメルセデスが料理を出してきた。
香辛料を使った鶏もも肉だ。
いつも出されていた食事より、庶民的だったが庶民である俺にはこの味のが好みと合って美味しかった。
この世界の料理文化とかはちゃんとしてて良かったと思った。
躾と評した虐待部屋に入れられるとき、いつもなら怯えた表情をしていたというのに、今日は底の見えない怒りの目をしていた気がしたのだ)
アルジオ・フォン・アルゴノートは、一人頭を抱えるような思いで帝都の三つ星レストランに家族三人で訪れていた。
妻であるグレコと、娘であるアルナはそんな彼の悩みを知ることもなく、食事をしながら談笑を楽しんで居た。
「お父様、どうしたのです?手が止まってますわよ?食欲がないのですか?」
「あ、あぁすまない。少し考え事をしていたんだ」
「ふふっ、お父様ったら。今日は家族水入らずなのです。普段はアレがいるから、家族団らんできませんが、今日はお父様とお母様と三人で食事が出来て嬉しいですわ」
「えぇ、あれも少しは分を弁えてほしいわね。平民でうちの敷居に跨がること自体が名誉なことだというのに、毎日食事がほしいだなんて」
「お母様の言うとおりですわ。平民はワタクシ達貴族のために存在しているというのに、全く不遜もいいところですのよ」
「そうだな。アレは学園卒業後に処分する予定だ。すまないがそれまでは待ってくれ。かわいいアルナのためだ」
「わかっていますわ。でもちょっと今日のワタクシを見る態度がムカつきましたわ。明日はワタクシも直々に懲罰を行いますの!」
「まぁ!アルナはまだ九歳だというのに、貴族の仕事を行うと言うのね。良いことだわ」
「えぇ、お母様ばかりに大変な作業をさせるわけには行きませんもの!」
そうだ、大丈夫だ。私達は貴族で、アレは平民だ。絶対に大丈夫だ・・・
アルジオはそう自分に言い聞かせた。
しかし一抹の不安で、三つ星レストランの味を楽しむことはできなかった。
*
俺は窓の戸を開いて辺りを見る。
昨夜飛び出したときと現状は変わってないな。
「うわっ、汚い」
「さっき話しただろ。俺のうちでの扱いはこんなもんだ」
『これは酷いですね。臭いですし、寝る場所を辛うじて確保できてるくらいで、あとはなにもない。なのに臭い!』
鼻を手で押さえながらクレが浄化魔法を使用してくれた。
助かる。
俺は収納魔法しかまだ覚えられてないしな。
ちゃんと<狂戦士の襟巻き>はしまった。
間違いない!
「とりあえず飯だな。まだ朝六時くらいだからあの愚両親とアルナは起きてないと思う。使用人しか起きてないだろうから厨房いくぞ」
「なんか泥棒みたい」
「仕方ないだろ。あー、俺の身体じゃまだドアをぶち破れないや。クレ、頼む」
クレは何も言わずにドアを細切れにしてくれた。
わかってるな。
俺はもうこの家に遠慮するつもりはない。
前世でもそうだが、俺は悪いことはなにもしてない。
だったら堂々としていればいいんだ。
「サンキュー、じゃあ行こうぜ。俺、腹減っちまった」
『教育に悪いので先に言っておきますよ。ミライは真似しては駄目ですからね』
「いや、おじさん。九歳になったら物事分別くらい普通つくよ・・・」
まるで俺が物事の分別がついてないみたいな言い方だ。
それにしても、なんだかんだ言って初めてこの屋敷の廊下を歩くかも知れない。
大体は髪を引っ張られながら引きずられてたし。
「思えば、なんでリアスはこんな環境で我慢していたんだろうな。もう迷惑をかける家族も生きていないし、一矢報いるとかしそうなもんだが」
『それは生きたかったのでしょう?少なくともあなたが学園に行くまでは、本当に最低限ですが衣食住の保証をしていますし。ヒューマンの子供が一人で生きていけるほど、世界は甘くないと思います』
「そんなもんかー」
「ちなみに精霊もだよ!むしろおじさんみたいに契約者なしで100年も生きてる方が珍しいかも」
「たしかに、魔力が補充されないならキツそう」
『私は風神ですからね。魔力を使わなくても風を起こしたりはできますので、空にいれば大抵の相手は手が出せませんからね』
へぇ、風を起こすだけなら魔力を使わないんだ。
さすが神の名を持つだけあるな。
「よっ、風神様」
「よーっ風神!」
『二人とも馬鹿にしているのですか?ふんふんっ、良い匂いがしてきましたね』
気がつけば厨房まで来ていた。
正直場所がわからなかったから、当てずっぽうで進んでたけど当たりだったみたいだな。
俺は思いきり扉を開ける。
調理中だった厨房の使用人達は、ギョッとした顔でこっちを見つめてきたが、再び作業に戻った。
「邪魔すんぞ。なんでもいいんだけど、俺とこの子、そしてこいつの三人分の飯作ってくれよ」
「・・・」
あ、無視か。
そうかそうか、そういう態度取っちゃうか。
「あ、あいつは」
『あの金髪の青年ですか?知り合いですか?』
「いやちょっとな」
こいつ、いつもリアスに食事を運んでくれてたんだよな。
何を思って運んでくれていたんだ?
今は包丁で野菜を切ってるな。
邪魔しちゃ悪いか?
まぁそんなことどうでもいいか。
「おいあんた」
「・・・」
「無視すんなよ。クレ」
肩に乗るクレに目配せすると、包丁を砕け散る。
本当は<狂戦士の襟巻き>で壁を叩いて恐怖心を煽って話を聞いてもらう予定だったけど、アレを装備すると狂人になってしまうので、その役をクレにやってもらうことにした。
まぁ見事に恐怖で顔を青ざめている。
クレとミライのことは見えてるはずなんだけどな。
「り、リアス様。いらっしゃったのですね。何かご用で------」
「え、さっきこっちみてたよね?何すっとぼけてんの?あ、もしかして包丁と同じ目に遭うのがご所望?」
更に顔が蒼白し、失禁までしてしまった。
ありゃりゃ、子供相手に情けない。
でも俺は虐待を見て見ぬ振りした使用人全員に配慮するつもりは全くない。
「リアスくんが別の意味で怖いかも知れない!」
『見るからに悪人ですね。まぁ手を出していないから、ギリギリセーフというラインでしょうか?』
俺は二人の言うことを横目でチラリと見る。
うー、否定できないのが辛い。
前世では妹にチンピラ呼ばわりされたが、あの時は否定言葉が出来た。
けど今は否定出来ない。
でも仕方ないよな。
だって結局暴力でなんでも解決してしまうんだ。
話し合いをするにはこちらもそれ相応の力と圧力がないとダメだと言うことを、死んでから学んだ。
死ぬまでは、俺は手を出してないのに世間は誰も信じてくれないと、半ば諦めて暮らしていたし。
結局力の前には、善意も法も関係ないのだ。
「お漏らしはよくないぞ調理場で。さっき入ったときにも言ったと思うけど------」
ご飯を作って欲しいだけなんだ。
そう言おうと手を伸ばしたところで、彼は怯えてしまった。
ズボンを湿らした状況で料理を作らせるのもどうかと思うし、着替えさせるために手を貸しただけなのに
「ひっ、ひぃ!」
「おい、話聞けよ」
ピタリと動きが止まる。
もう涙目で、一周回って可哀想に思えてきたな。
「は、はい。なんでしょうか?」
「だから三人分の飯作ってほしいんだよ。理解していると思うけど、俺は男爵家の人間だろ?使用人が当主の息子に食事を与えるのは至極当然のことだと思うんだ」
「そ、そちらの方にも・・・ですか?そちらの方は一体?」
ミライの方を指さしてる。
たしかにこれは俺の落ち度だ。
先に自己紹介させるべきだった。
「ボク?ボクは彼のパートナーだよ?名前は教えてっ、あっげないよ」
『こらミライ、大人に対する態度じゃないです。リアス、真似をしてしまったじゃないですか』
「え、俺の所為なの?だってこいつら俺が殴られたり蹴られたりしてるとき、見て見ぬ振りをしたんだぜ?八つ裂きにする権利はなくとも、礼節を弁える必要はなくね?」
厨房にいる使用人達が全員顔を青ざめて下を向いている。
自覚はあるだろうけど、アルゴノート家は平民に対して横暴だ。
止めに入ればどうなるかは明白。
俺は必要とされた人材だから生かされてるけど、下手したらあいつらは殺しかねない。
故に無視、傍観だ。
「り、リアス様。私達は男爵夫人様から、あなたへの食事の制限を命じられています。勝手に食事を出すことは、男爵家への忠義を背く結果になりかねないのですが・・・」
お漏らしコックさんの言葉はおそらく本当だろう。
あの阿婆擦れ年増はそんな命令をしかねない。
「えー、そうなのー?じゃあさ、俺この家から出て行ってもいい?」
「へ?」
「だから、今、食事を出してくれないならこの家を出て行くって言ったの。わかります?あの現状を作り出したのは俺だ。てめぇらを全員八つ裂きにしてもいいんだけど、それじゃあ俺はタダのチンピラの暴君だ。君たちはなにもしてないからね」
俺は包丁の方に指さしながらペラペラと言葉を並べていく。
正直家を出るつもりはあるけど、それは俺自身に力が身についてからにしたい。
さっきだってクレが魔法を使っただけで俺は何もしてないし。
「だけど、食事すらさせてもらえないんじゃ、ここに居る意味ってあるか?さすがに野宿の方がマシだと思うんだぜ。だからお前らが食事を出してくれないなら、俺はこの家を出て行く。そして使用人が食事を出してくれないから家出をしてきましたと、帝都で噂を流せば完璧だ」
それを聞いてますます顔が真っ青。
もう魔族って言っても不思議じゃないね!
この世界魔族居るかしらんけど。
魔物はいるからいそうだけどな。
「聡い人はもうわかるよね?この家ではまだ俺の存在が必要だ。しかし一度噂が流れればどうなるか」
当然この家の人間に虐待しているという話が舞い込む。
そしてそうなれば、彼らは使用人を切るに決まってる。
更に王都でそのお触れが浸透したら、彼らの就職先は絶望的となり食いっぱぐれるのはたしかだ。
だから多少の過激な行動は多めに見るよ?
『リアス、後ろから包丁であなたを刺そうとしてくる人が居ます。どうしますか?』
「いや止めてよ」
『殺すかどうかの話ですよ。とっくに止めてます』
「子供のリアスくんに酷いコトするなんて、それでも大人かな?ちょっとお仕置き!」
バチバチと電気の音がする。
ミライが何かしてくれたのか。
全く俺には勿体ない相棒達だ。
「今、俺のことを刺そうとした奴がいたね?誰も止めなかったね?どうして?」
「な、なんなんだそれは!」
「何って魔法だけど?」
「何故あんたが魔法を使えているのかを聞きたい!これじゃあ、男爵夫人の命令を実行したところで俺達の命はないじゃないか!」
お漏らしコックさんは、もう何も隠す気がないみたいだ。
一体どういうことだろう?
しまったって顔をしたお漏らしコックさんの顔が非常に間抜けだ。
「命令ってなに?」
「おい、メルセデス!それは」
あ、彼の名前はメルセデスって言うんだ。
良いこと聞いた。
「ねぇメルセデス?その話を詳しく教えてくれない?この包丁みたくなりたくなかったら早く答えた方が良いぜ」
「ひっ、お、俺は男爵夫人様に言われて------」
「リアス様、彼はどうやら初めて魔法を見たようで混乱しているようです。ここは一旦退室------」
「黙れよ」
俺が今まで見せたことのない威圧感に、少しだけ後ずさる口を挟んだおっさん。
見た感じこの中で彼が一番歳を取ってそう。
料理長か何かか?
でもまぁ関係ない。
何かを隠そうとしていて、それが俺にとってろくでもないことはたしかだ。
「俺が話をしてるのはメルセデスだ。てめぇは黙っとけ」
「くっ・・・いえ、そうはいきません!」
「なんで?」
「彼は私の部下です。部下を守るのは、この場を預かる最高責任者として当然のことです」
「あ、そう。じゃあ最高責任者さん。さっき包丁を振りかざしてきた奴のことはお咎め無しにしてあげるから黙ってくれる?」
彼が言うことが正しいなら、殺人未遂を犯した喧嘩早い人間も彼の部下だ。
責任を持つというなら、殺人未遂の責任も取ってくれるのだろう。
多分昨日まで俺はここまで言いくるめることも、ましてや強気に厨房に入ってくることもしてない。
だから周りは慌てふためき、最高責任者さんも不利な状況に歯を噛みしめている。
『さすが、前世で虚偽の疑いをかけられた人は精神力が違いますね』
「それ嫌み?」
『褒めてるんですよ』
ホントかよ。
ミライはクスクス笑ってる。
どうやらこの状況はミライに取ってセーフラインらしい。
ここに花そその主人公がいたら、俺のことを止めたんだろうな。
「じゃあメルセデス話して良いよ。君が何を話しても俺が君を守ってやる。君は目の前で俺の力を目にしたからそれが可能だってことはわかるだろ?」
本当は俺の力ではなくクレの力なのだが、それは言わない約束。
クレの話が本当なら、人間で魔法を使える奴はいないんだから、人の世のルールで俺が魔法を行使したのと同じだろ。
「俺達は、男爵夫人に言われたんだ。リアス様への食事は、奥方様の指示がなければ与えなくて良いと。ワガママを言えば危害を加えてでも止めるようにと。だけど俺達はできる限り子供には手を出したくなかった。だから無視を決め込んだんだ」
「まぁそんなことわかってたことだけどな。それで?そんなことだけじゃ、あの最高責任者さんは慌てたりしないだろ?」
「それだけじゃない。俺達は男爵夫人から・・・」
「よせメルセデス!」
「18歳を迎えてあなたがこの家に戻ってきたときに、食事に毒を盛るように命令された。俺達全員を派遣としてではなく、専属で雇う事を条件に」
なるほど、専属で雇うと言う甘い条件に未遂とは言え殺人の命令を了承したわけね。
そりゃ慌てるわ。
でも奴ら考えてるな。
この命令の肝は簡単に隠蔽できることだ。
毒殺を行った使用人を殺すだけで、口封じが簡単に可能だと言うこと。
「それって子供を自分の出世のために売ったってこと!信じらんない!それを命令する人も了承する君たちも!」
ミライが出会ってから初めて怒りの顔を見せた。
俺のために怒ってくれるなんて優しいな。
「あぁわかってる。恥を忍んで頼みたいことがある。俺は殺しても構わない。だけど俺がやろうとしたことを世間に公表しないでほしいんだ。どうか俺の家族には手を出さないでくれ!」
「家族?」
「あぁ、貧しくて男爵家からしたら取るに足らない家かも知れないが、俺にとっては大事な家族なんだ。殺人犯の家族を持ったとすれば、あいつらは路頭に迷ってしまう。これは勝手な頼みだけどどうか頼む!俺は殺してもいい。けど俺の母さんと妹には手を出さないでくれ!」
へぇ、少しだけ見直した。
こいつが食事を持ってきてくれたのは、妹がいて俺と姿が重なったってところか?
まぁ家族のために身体を張れるってことは、こいつは悪い奴じゃないのかもしれないな。
「まぁたしかに俺はここに居る全員を殺す権利はあるよな?一服盛ろうとしたわけだし。人を殺そうとするって事は、自分達が殺される可能性を視野に入れておかないといけないぜ?」
俺はこの場にいる全員に睨みを聞かせる。
多分彼らからしたら俺は悪魔のように映っているだろう。
泣き叫んだり、大声を上げたりする者まで出てきた。
「慌てんなよ。俺はお前らを殺すつもりはない」
『いいのですか?正直殺されても文句言える状況じゃないでしょう彼らは』
「俺を大量殺人犯にする気か?こいつらのために手を汚すなんてごめんだよ」
「たしかにリアスくんがそんな惨状作るのはみたくないかも。やるなら協力するけどね!」
ミライは見た目は天使のようにかわいらしいのに、お転婆なところがあるな。
まぁ止めてる訳だし、実際は俺が殺人をすることを良しとは思ってないだろう。
何が起きても俺に着いてくれるってのは心強くはある。
前世も含めて、そんな間柄の人間居なかったからな。
でもここで殺したら完全に暴君だ。
前世で俺をハメた上司と何ら変わらない。
「幸い未遂だしな。まぁ一服盛ろうとした奴らに食事を作ってほしくはなくなったな。おい、メルセデス」
「なんだ。殺すのか?できればひと思いにやってくれ」
もう俺に敬語を使う気は無いようだ。
俺としてもその方がありがたい。
「お前にチャンスをやるよ。俺と俺の相棒、こいつとこの子達に舌を唸らせるような食事を提供してくれ」
驚いた顔でぽかんとしている。
別にこいつを信用したわけじゃない。
ただ、メルセデスは俺に食事を持ってきてくれていた。
他の使用人とは違ってだ。
普通の食事の場以外ではこいつが飯を持ってきてくれなきゃ、リアスは下手したら飢え死んでたかもしれないんだ。
なにせ、一月も食事の場を提供されなかったこともあるんだから。
水だけは設置された水道でなんとかなってたけど、栄養源はどうしよもない。
ほんの少しだけ感謝しても良いかもしれない。
「一体どういうつもりだ坊ちゃん?未遂とはいえ、あんたを殺そうとした一人だ」
「もちろん、毒を盛れば即座に首を落として、妹の首も斬り落としてから母親に突きつけてやる」
「リアスくん発想が怖いよ」
「脅しとしてはこれくらいが丁度良いだろ?見ろよ?効果覿面みたいだ」
今にも気絶してしまいそうなくらい血行が悪くなっている。
でもここで食事を逃す訳にはいかない。
俺も腹が減ってるんだよ
「やるの?やらないの?」
「や、やります!やらせていただきます!」
「あ、口調は崩していいぞ」
「そ、そうか?じゃあ待ってろ、腕によりをかけて作ってやる」
やる気を出してすぐに調理場へと戻っていった。
包丁は予備があるみたいだ。
しかしメルセデスよ。
ズボンが湿ったままなのはいいのか?
「楽しみにしてる。あ、ぼーっと突っ立てるお前も仕事に戻って良いぞ。俺はお前らを咎める気は無い。だけど、メルセデス以外で俺に意見してくることや俺達の食事を作ることは許さない。最高責任者さんも含めてな。わかったらさっさと仕事しなよ。あ、最高責任者さんもどうぞ?名前は知らないけど、俺が最初入って来たときみたいに無視してていいから」
俺は笑顔を向ける。
そんな青い顔ばかりしてると、本当に血行障害になるぞ。
「ふぁー、やっと食事にありつけるね」
『メルセデスという男は、どんな料理を出してくれるのでしょうか?楽しみですね。あ、二人とも安心して下さいね。人間が盛る毒程度なら、私の浄化魔法で綺麗さっぱり無くせますから』
「さすがに家族のために命を投げ出せるんだ。そんなことしないだろう」
俺達はリビングに移動して、食事がくるのを待った。
しばらくするとメルセデスが料理を出してきた。
香辛料を使った鶏もも肉だ。
いつも出されていた食事より、庶民的だったが庶民である俺にはこの味のが好みと合って美味しかった。
この世界の料理文化とかはちゃんとしてて良かったと思った。
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