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一章

雷封じの音速剣術

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「ウォォォ!!」

「君達との遊びは終わり。消えて、韋駄天!」

 闘いの邪魔になるだろうから魔物達は一瞬で消し去ったよ。
 すべてを塵にする雷属性最強の魔法、韋駄天。
 落雷を無数に落とす、言うなれば雷の雨を降らす魔法。
 ボクが作った固有魔法オリジナルだ。
 どうやらリアスくんとイルミナもそれぞれ魔物を一掃したみたいだね。

「ボクらだけで倒しちゃっていいのかなぁ」

 まぁ仕方ないよね。
 魔物の軍勢すらも簡単に掃討する魔法なのに、それすら受けとめてしまうあの剣の付与は、相当なものだね。
 綺麗に彼女の居た場所だけ地面が焦げてない。

「いやすごいねぇ。ボクの全力で放った魔法なのにさぁ」

「なんだい・・・あんたは一体なんなんだい!」

「え、応えてあげる義務があるの?」

 喋りながら魔法を飛ばすも、剣に吸われてしまった。
 ライトニングスピアはまぁ通らないよね。
 だったら天雷は?
 
「天雷っ!」

 あちゃーやっぱりダメか。
 と言うより何であんなに呆けてるんだろう?
 それなら炎属性の魔法をぶつけちゃえばダメージ入りそう。
 まぁボクは燃費が悪いのが目に見えてるから打たないけど。
 隙ができたときのタメに魔力は温存しとかないとね。

「そうだ。あんたがいくら雷属性の魔法に長けていても、雷属性の時点でこの避雷針の剣には無力なんだよ」

「多分事実そうなんだろうね。天雷すら受けとめるなんて、その剣の付与は本物だ」

 そう、その剣は本物。
 だけど、ボクも雷神の娘としてあんな剣に負けるわけにはいかない。
 右腕を背中に手を当てて、剣を上に掲げる彼女。
 武器は剣だけど、まるでレイピアを扱う構えだね。
 そうか、腰に携帯してる武器が彼女のメイン武器なんだ。

「ハァァァァ!」

「太刀筋はまぁまぁだね。キレはないけど」

 この程度の速さなら、イルミナの蹴りのが数段速い。
 そもそもレイピアの様な細くて比較的軽い剣を使う構えを、重たい剣でしようとするのがおかしいよね。
 剣はその重さに合わせた正しい剣の使い方があるんだし。
 つまり彼女は元々レイピア使いだけど、雷の魔法使い用の避雷針の剣を使うように指示されて、仕方なく使っていると見て良いね。
 つまり相手が得意としていない武器。
 あぁ、これ楽勝だよ。

「ふふっ」

「何がおかしい!」

「貴女が滑稽だと思ってさ。そうだなぁ・・・。ボクは宣言するよ」

 ボクは右の一指し指を上に向ける。
 ちょっと令嬢っぽく、左手は右肘に当てようかな。

「ショックボルト」

「は?」

「君は上級魔法でも固有魔法でもない。ショックボルトで倒すよ」

「この小娘が!馬鹿にしやがって!アタイはもう10年も軍部に所属してる。間違ってもあんたみたな小娘に負けるはずがない」

 軍部ね。
 つまり彼女たちはどこかの国の軍の人間で確定だね。
 色々と情報を整理したいところだけど。

「喰らいな!ウォーターヴェール!」

 水のカーテンと言われる水の中級魔法。
 防御魔法として元々作ったって言われてる。
 しかし水の壁を維持するキープ力が無くて、圧力で押し潰れてしまったために攻撃魔法となった。
 簡単に言うとプチ津波だね。

「シールド」

「馬鹿め!シールドじゃ、ウォーターヴェールは防ぎきれない!」

「そうだね。片手ならね」

 魔法は手一本につき一つしか使えない。
 理由は知らない。
 そういうものだからとしか言いようがない。
 そしてシールドは一般的に片手で防ぎながら、もう片方で攻撃をすると言われてるし、精霊や人間問わずそれが常識。
 でも両方シールドを貼ればどうなるか。
 まさかドーム状に覆うシールドが出来るなんて。

「ドーム状・・・あんた・・・」

「あれ、意外。もっと驚くと思ってたのに。じゃあスローウィンド」

 彼女は吹き飛ばされていく。
 あ、避雷針の剣だけあって、他の魔法には対応してないんだね。
 まぁ魔力を吸うタイプなら、確実にパンクしてたと思うしそんなものかな。

「風魔法!?フルシールドだけじゃなくて、副属性持ち、ダブルか!」

 ダブルとは、複合魔法使いの名称らしい。
 ボクも人間社会に6年も入れば、色々と人間達が作った歴史や用語くらいわかる。
 因みにダブルは二つの複合魔法使いのことで、数が増えるごとに、トリプル、クアトロまであるらしい。
 五つ以上の違う属性の魔法を操れる人間は居ないそうなので、五つ目以降はないらしい。
 まぁ精霊が魔法を使ってる以上ないだろうね。
 だって他の属性の魔法を放つとコスパがすこぶる悪い。
 五つも違う属性の魔法なんて放てない。
 人間はせっかちだから、多分同時にどれだけの属性が使えるのかを試すことしかしてないんだよね。
 まぁボクも半分は人間だし、お母さんみたいなのんびりめの人間も居るけどさ。

「どうだろうね」

「何もかも教えないってことね」

「逆に聞くけど教える理由はないでしょ」

 人差し指を前に向ける。
 ライトニングスピアを彼女に向かって乱れ打ち。
 全部ちゃんと吸収した。
 うーん。
 攻略法が見つからないなぁ。
 
「ふっふん。複合属性には驚かされたけど、結局雷魔法が攻撃メインのあんたでは、アタイに勝つのは不可能よ!」

「そうなんだよねー。炎の魔法や水魔法に土魔法、どれも使えるけどコスパが悪いんだよねー」

 すごく驚いてるけど、別に嘘はついてない。
 でも下手にボクの内包してる魔力以上の魔力を使ってしまうと、同じく戦闘中のリアスくんが崩れるかもしれない。
 何故ならボクの魔力が空になれば、自動的にリアスくんの魔力から補充される。
 結契の場合、普通の契約と違って契約者の魔力回復速度の半分をもらうから、聖霊のボクでも自動で魔力が回復する。
 でも代わりに常に満タンになるように徐々に魔力が補充されてく契約と違って、魔力内包量が1割切ると一瞬で満タンまで補充されてしまう。
 ボクの魔力はリアスくんの魔力の2割。
 リアスくんは異常な魔力量だから実際は、一気に魔力が無くなることで、貧血に似た魔力酔いにかかる可能性も否めない。
 だからボクは内包する魔力以上の魔力は使わないようにしないといけないんだよね。
 
「馬鹿なこと言わないで頂戴!」

「ボク対策にその避雷針使ってるんだろうけどさー、それで君本来の持ち味が減るからやめた方がいいと思うよ」

「黙れ!」

 短気だなぁ。
 太刀筋が寝ぼけてる。
 これじゃいくらやってもボクには当たらない。
 リアスくんもイルミナも、ボクの命がかかってるから容赦なく急所の心臓部分狙ってくるし。
 速いからあんまり連続で動かれると、魔法を打つ暇がないんだよね。
 ショックボルトくらいなら打てるから、隙をついて放つんだけど、それでも二人との模擬戦は負け越すことが多いんだよね。

「そんなんじゃいつまで経ってもボクに攻撃は当たらない」

 地面に手を当てる。
 今は雨が降ってる。
 ということは、感電させることは可能なのでは?
 
「地面から電撃とは考えたねぇ!でも残念~!関係ないわ。アタイの近くに電気が発生すれば全てこの剣が吸収してくれるのよ!」

「えー!ずるいなぁ」

 どうしようかな。
 正直打つ手がない。
 こんな時リアスくんならどうするだろう?

「考えごとかい?余裕あるねぇ!」

 右と左にウォーターヴェールかぁ。
 これはボクへの攻撃が目的じゃないね。
 右左に移動させないための動きだ。

「死ねぇ!」
 
「あーあ。シールドの魔法は物理攻撃防げないんだよ?でもフルシールド貼らないと呑まれる------あ!言い方考えた!」

「ごちゃごちゃうるさいわ!!」

 この状態で唯一逃げる方法がある。
 星には磁力があるらしい。
 リアスくんの前世のチキュウとかいう場所ではそうだって言ってた。
 浮遊したりできるんじゃないかって。
 つまりここまで飛んできた時のように空高く浮けばいいんだ。
 
「とぅ!」

「なっ!?と、飛んだ!?浮遊魔法も使えるのかい!?」

 風の上級魔法は使えてもコスパ悪いよ!
 でもまぁ電磁浮遊っていう立派な魔法かな?
 本当は壁に張り付くための中級魔法なんだけどね。
 
「あ、そうだ!これで剣を地面に貼り付けたらどうだろう?」

 吸収するっていっても、電磁力は効くはずだよね。
 あの剣は電気を吸収するだけで魔法そのものは吸収しないんじゃないかと考えた。
 だって避雷針が全ての電気を吸収するわけじゃないからね。
 でも予想とは裏腹に、あの剣に電磁力で地面に貼り付けようとしてもビクともしない。
 えー、もしかして雷の魔法自体を吸収してるのかな?
 そうだとしてもどこまでの範囲で吸収してるのかも知りたいよね。

「電磁パルス」

「こ、今度はなんだい!」

 電磁パルスは、前方に電磁波を流して、相手の位置を把握する魔法。
 頭の中に立体図面のように記録される。
 これは雷の魔法だけど、浴びてるで電磁波は極少量。
 ボクが情報を把握できなかった部分が吸収されてる範囲だ。
 まぁ最初の韋駄天である程度は把握できてるけどね。

「あれ?」

「脅かしやがって!はぁ!」

 太刀筋は相変わらず。
 でもひとつ分かったことがある。
 電磁パルスを放った時、彼女の剣も間違いなく認証された。
 つまり彼女の避雷針の剣は、雷の魔法ではなく、ある一定量の電気を吸収してるということ。
 ならアレに付け入る隙がある。
 
「君、敵相手にちょっと油断しすぎじゃない?」

「何言ってるんだい!敵である以上、それがたとえ子供であろうともアタイは油断しないよ!はぁ!!」

「それが油断だって言ってるの」

 剣の速度は確実に見切れる範囲。
 これでこの避雷針の剣がどこまで電力を吸収してるかわかる。
 だって通り過ぎる剣に対して、微量の電力をかけて測定するチャンスをくれるってそういうことだよね?
 そして一通り剣を交え終えたことで、検証結果がわかった。
 雷の魔法で最も攻撃力の低いショックボルトですら吸収される。
 しかし電磁パルスをはじめとした、補助魔法に当たる電力の場合は吸収はしなかった。
「さて、一通り攻撃して満足かな?」

「ハァ、ハァ、どうして!攻撃が当たらない!」

「どうしてって言われても」

「本来ならウォーターヴェールでほとんどの人間は死に伏しているんだよ!アタイの魔法も剣術をこうもあっさりと避けるんだい!」

「え、そんなの単純に実力差でしょ?」

 この人何馬鹿なこと言ってるんだろう。
 たしかにウォーターヴェールは中級魔法だと言うのに強力だよ?
 それにあの避雷針の剣もかなり有用性がある剣だね。
 でも使い手がこうも実力差を理解していないとは、宝の持ち腐れもいいとこだよ。

「アタイは負けてない!」

「たしかに負けてない。ね」

 まだ決着はついてない。
 あとモノの数秒で敗北を期するんだからね。
 まぁ彼女は自分の剣術によっぽど盲信してるのか、それとも単純な馬鹿なのか知らないけど、一度たりとも掠らない剣撃に、最早驚異すら浮かばない。
 あるのは少々危ない凶器を振り回してるおばさんだ。
 彼女の突撃をスローウィンドで下に弾いて、剣の胸を踏む。
 これで相当力を入れないと抜けなくなったことと、かなり大きな隙ができる。
 当然だよね。
 彼女の自信は、この剣にあるのだから
 ボクは

「あなたの絶対の自信はこの剣にあるんだ。もしこの剣を失えば、あなたは一体どうなるんだろう?」

「アタイからこの剣を奪おうっての?」

「うん!永遠にね。アーク放電」

 剣はドロドロと溶け始めた。
 ボクはリアスくんに言われて、電気炉製鋼法と言うものを魔法で実現させた。
 まぁ、リアスくんの想像してたよりも鉄の融解速度が激しい製法だったから、触ることもできず八方塞がりになって諦めたけどね。
 なんかリアスくんはジュウとか言う、ボクのための護身道具を作ろうとしてたみたい。
 それが役に立った。
 ボクのことを考えて作ろうとしてたみたいだけど、いざ失敗したら落胆が凄かったから、リアスくんもジュウが欲しかったのかな?
 
「なっ!?」

「熱いから離れた方がいいよ。火傷じゃ済まないと思う」

 鉄の融点は1538度。
 多分それは軽く超えてるだろうから、まぁ火傷じゃ済まないことはよくわかるよね。
 融点とかも全部リアスくんから聞いたんだけど。
 リアスくんの前世って色々と進んでるなぁ。
 1538度ってどうやって測ったんだろう?

「アタイの剣が・・・」

「さて、じゃあ剣が無くなったところで、君どうしようか」

 さすがに戦意喪失して降参してくれるとありがたいんだけど・・・

「ふふ・・うふふ・・うふふふふふふ」

「壊れたかな?」

「いいえ、アタイ間違ってた。あんたの雷魔法にビビるあまりに弱気になっていたわ」

 帯刀する細剣を鞘から抜き、再び手を腰に当てる。
 大丈夫、彼女の太刀筋は見切った。
 しかし彼女の踏み込みは、先ほどまでとは違った。
 
「ハッ!!」

「えっ!?」

 さっきと速度が全然違う!?
 何この速さ!?
 剣が変わるだけで、ここまで動きが変わるの!?

「くっ!ライトニングスピア」

「シッ!!」

 ライトニングスピアの狙いは胸。
 当たれば即気絶。
 だと言うのに、恐れもしないのか突きは速度を増し始めた。
 ひとつ、ふたつ、みっつと、数がどんどん増えていく。

「こんなことできるなら最初からやりなよ!」

「カッ!!」

 うっわ!
 更に速度が上がった。
 でも魔法を恐れてたからって、これだけの実力者が、相性が良いとはいえ不得手な剣を使ってたのっておかしくない?
 何か理由がある?
 でもそんなこと考える余裕は今はなさそうだ。
 彼女がボクの一点に集中して狙いを定めている。
 これは極めて危険だよ。
 ボクは目を閉じる。

「ハァァ!!」

「フラッシュ!」

「なにっ!?」

 光属性の魔法で、視界を数秒だけ真っ白にする目眩し。
 ボクは目を閉じてたから問題ないけどね。
 彼女は剣術は一流だけど、騎士としては二流以下ってことだね。
 ボクの目を見ていれば、何をするか予想できたはずだ。

「これで終わりだよ!天雷!!」

「甘いわぁ!」

「なっ!いったぁ!」

 ボクは天雷は手を空高く伸ばして天に向けて指差し、それを振り下ろすことで魔法を行使してる。
 だから振り下ろす前に、ボクの腕を突き刺して無理矢理上に掲げたままにした。

「音が聞こえれば大体の位置は把握できるんだよぉ!」

「お、音・・・」

 うぅっ、冷静なこの人はそこそこできる。
 悔しいな。
 けど、それでもボクが勝つ。

「痛いよ!」

「当然でしょ?そしてこの距離ならあなたが反応できても負けはないわ。諦めなさい」

 たしかにボクの目の前に彼女はいる。
 手が届く範囲だ。
 彼女がボクの腕から剣を抜いて、そのままボクの胸に突き刺すとしたら、これに反応できないだろう。

「ひとつ聞いても良い?」

「なにかしら?」

「なんで最初から細剣を使わなかったの?」

「言ったでしょう?あなたの雷魔法を恐れたのよ。でも吹っ切れたから------」

「なるほど、心の弱さが招いた隙なんだね」

 理由は今はどうでもよかった。
 ボクは彼女の頬にそっと左手を置く。
 先ほどの気迫の彼女ならこんなこと許さなかっただろうね。
 でももう置いてしまった。
 一瞬だけ気が緩んだ、その隙が彼女の命取りだ。

「ねぇ」

「心の弱さなんて関係ないわ。最後に勝てばいいの!さぁこれでさようならよ!」

「言ったよね?」

 ボクは口角を吊り上げると共に、彼女を上目遣いで蔑んだ目を向ける。
 多分彼女の目には、ボクが鬼のように写っていることだろう。
 顔が真っ青だ。
 でも最初に言ったじゃないか。

「ショックボルトで倒すってさ」

「ちょっ、まっ!」

「待たない♡」

「アババババ!」

 見事にその一撃を喰らった彼女は、剣から手を離して、その場に倒れ込んだ。
 本来であれば、ショックボルトでも気絶程度で済んでいたかもしれないね。
 でも目の前の女性は、全身に焦げ跡が付いて髪の毛がボサボサになっていた。
 それはこの雨で、全身が水だらけになっていたために、感電しちゃったんだろうねー。

「痛かった」

 ボクは腕に刺さった細剣を抜き取り、刺さった箇所に治癒魔法をかける。

「ヒールっと」

「あぁ・・・どうして・・」

「え、すごい。ショックボルトに加えて感電したのに、気絶しないどころか喋れるんだ。普通は舌も痺れて、喋ることすらままならないのに」

 本気で驚いた。
 雷魔法を恐れてるってよく言うよ。
 電気にそこそこ耐性があるのに。
 もう一度ショックボルト喰らわそうかな。

「ま、待ちな。アタイはもう動けない。それに動くなら、声は出さないだろう?」

 慌てた様子で身体が動かせないながらも弁明してる。
 でもさっきも騙されたんだよねー。
 怪しい。

「信じらんない」

「ま、待って待って!本当なのよ!」

 頬に手をつけても暴れるそぶりも見せない。
 これは本当?

「わかんないけど、なんで喋り出したのかくらいは聞いてあげる」

「あ、ありがとう。何度も聞いたけどあなた達は------貴女は一体何者?」

 またそれ?応える義務はないって言ったのに。

「じゃあそのまま返すよ。君たちはなにが目的で魔物大量発生スタンピードを引き起こしたの?」

 驚愕の表情を隠せないくらい、口をパクパクとさせている。
 まぁ普通に考えたら、意図的に起こしたとは思わないよね。
 でも意図的じゃないなら、あまりにも規模がおかし過ぎる。
 幻惑の森にいた頃もここまでひどい魔物大量発生スタンピードは起こらなかったし。
「帝国を亡国にするためにやったのはわかるけどさー、止められちゃうと思わなかったわけ?」

「何もかもお見通しってことね。ねぇ、たった3人で約1万の魔物を全滅させると、想像できる人間がいるのかしら」

 事実いたんだけどね。
 まぁ普通の人間はイルミナしかいないけど。

「それくらい、あなたほどの実力者は最悪の事態を想定しそうなもんだけど」

「もちろん防がれるのは予想できたよ。大勢の犠牲、貴族道連れにできればそれでいいと思った。まさか一人の犠牲者も出さずに終わるなんてねぇ」

 それは君達が悪いと思うなー。
 だって焦って出てこなきゃ撃ち漏らした魔物も多かっただろうし、犠牲は免れなかったとは思う。
 それにボク達はあまり手柄を立て過ぎないようにしてたわけだし。

「君達がボク達を放っておけば多少の犠牲は出たと思うよ?流石に全ての手柄にするのは、この先色々と面倒そうだし。判断力バツだね」

「ハハッ。こんなことしたあんたらを蔑ろにする奴らがいる国なら、勝手に滅ぶと判断してのことだよ。全く、絵本に書いてある誇張のがまだ現実味があるよ」

 気がつくと彼女は意識を飛ばしていた。
 流石に感電すれば身体の倦怠感もヤバそうだしね。

「何はともあれボクの勝ちだね。二人はどうだろう?この人は・・・自陣に持ち帰ろうかな」

 
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