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一章

エピローグ

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 目の前の少女は、目から血の涙を流していた。
 辺りの惨状は酷いモノだった。
 豊かだった帝都は見る影も無く、四方八方は倒壊した建物ばかり。
 生存者も絶望的だった。

「これはあなた達が原因・・・ふふっ」

 そう言う彼女の言葉が胸にチクリと突き刺さる。
 この惨状を作ったのが自分だからと自覚していたからだ。

「あなたはこんなことをして良心が痛まないの!」

「私の命を奪った人間に対して良心なんて生まれると思うのかしら?」

 何を言っても、目の前の彼女は納得しないだろう。
 何故なら、彼女は信頼していた人間に陥れられて、婚約者自らに断罪された。
 冤罪で処刑までされてしまった少女だからだ。

「それは悪かったと思ってる。わたしだけでも、貴女を信じていれば」

「まぁ!悪かったで済むと思ってるのですか。あなたが同じ立場なら納得するのでしょうか?無理でしょうね。あなたは命を取られた人間に対して許すことができるのですか?」

「できる!」

「それは命を奪われていないから、命ある身だから言えるのでしょうね。実際に奪われればそんな気持ちは一切起こらないと思いますよ」

「そんなこと!」

 ないと言いたかった。
 でも言えなかった。
 もしそれに頷いてしまえば、この現状を作っている彼女も肯定することになる。
 帝都の人間のほぼすべての命を奪った彼女も、同じ事を言えるからだ。
 では彼らも許してくれたでしょうと。
 
「いいんだリリィ。君は悪くない。どんな理由があろうと民の命を奪った彼女を許すことは出来ない」

「アル・・・」

 リリィと呼ばれた少女は、愛しの人物にそう言われて自分の行いは間違ってないと勇気づけられた。
 しかしすぐにそれは打ち砕かれる。
 他でもない彼女の言葉で。

「あら、貴方にだけはそんなことは言われたくないわ。私が誰かを虐めていた事実を知りながら、婚約者をそこの者に据えたいがために、敢えて見過ごした。そしてターニャ家諸共、私達は全員斬首刑と処されたわね。さぞ気分が良いでしょうね?邪魔者を排除して、最愛の人間を手に入れたのだから」

「え、嘘でしょアル?」

 アルと言われた青年は下唇を噛みながら俯く。
 それが彼女の言葉が事実だと言うことを物語っていた。
 
「そんな・・・嘘・・・」

「だから貴方を生かしてあげていたのよ!貴方は最愛の人間が殺される様を見て無様に生き残らせるためにね!」

 しかしそれでも俯いたままの青年に対して、興味が失せたのか彼女の表情は変わる。

「まぁ良いわ。どのみち帝国内で生きている人間はあなた達だけよ。貴女が囲っていた人間もすべて殺したのは私。さぁ闘いましょう。得意でしょ?話し合いが出来ない、力による理不尽を味わいなさい!」

 少女の言葉と共に、空間が闇に包まれていく。
 そしてあるのは、少女二人と青年一人の姿のみ。

「さぁ闘いましょう。帝国最後の生存者共。あなた達を殺して私は復讐を完遂する!」

「ア、アル!話は後で聞くわ。今は彼女を!」

「あ、あぁ」

 そして帝国のたった二人の生存者と、たった一人で帝国を滅ぼした少女との闘いが始まった。



「うわああああああ!」

「わっ!びっくりした。すごい汗。大丈夫?」

 ミラか。
 なんだ夢か。
 俺は悪夢で目が覚めてしまった。
 それはもう鮮明だった。
 花そそのプレイ中に何度も見てきた場面。
 一周目のラスボス、悪役令嬢グレシアとの戦闘前のシーンだ。
 攻略キャラはアルバートだったが、それは俺が転生したことによる影響だろう。
 夢だし。

「5日も寝てたから心配したよ。クレセントおじさんは大丈夫だけど、怪我の所為で目が覚めるのが遅くなるって言ってたし。あ、はい濡れタオル」

「サンキューミラ」

 5日も寝てたのか。 
 そりゃ一歩間違えたら死んでた怪我をしてたらそうなるよな。
 たしか大剣の男を倒したところでイルシア先輩が来て、クレが治療してくれたところ記憶が途絶えてる。
 傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
 さすがクレだな。
 俺は掻いた汗を拭った。
 それにしても入学前にこの夢を見るなんて縁起が悪いな全く。

「リアスくんは寝相が良いから、うなされたりしてないけど、叫び声を上げたって事は怖い夢だったんだよね」

「あぁ」

 俺は慎ましい胸のミラの胸元に顔を埋める。
 そしてミラが俺の頭を抱きしめた。
 アルゴノート領では不安なときや、疲れてるときはいつもこうしてもらっていた。
 領地改革の山場の時はほぼ毎日してもらったな。

「そんなに疲れたり不安になったりする夢だったの?」

「一周目の花そそのヒロインになった夢を見た。グレシアとの闘いのときの話だ」

 クレとミラにはどうしてヒロインがラスボスと立ちはだかるかの背景も話してある。
 俺の前世の記憶というのも薄れてしまってきてるからな。
 まぁ6年も暮らしてればそうなるよな。
 一応シナリオを書き記したメモもある。

「それって攻略キャラが悪役令嬢を裏切っていたんだよね」

「あぁ、それでライザー帝国が滅んだ。今になってそんな夢をみるなんてな」

 と言うか今までそんな夢見たことが無かった。
 魔物大量発生スタンピードを防いで気が緩んだか?

「入学が近いからじゃない?それにその未来を知ってるボク達は、未然にそれを防ぐことも可能だと思うよ」

「そうだな」

 精霊契約の儀について俺達はほとんどわかっていない。
 わかるのは精霊の心を無理矢理従わせて契約を行使することの出来る儀式と、それが帝国内でのみ行われている言うことだけだ。
 でもそれは今だけかも知れない。
 例え帝国が滅んだとしても精霊契約の儀がどこから洩れるかわからない。
 だから俺はこの帝都で精霊契約の儀について解明する。
 それが相棒、クレたっての願いだからだ。
 まぁそれが無くても領民達を今更に見捨てるのも目覚めが悪いしな。
 だって俺達と違って力が無いのにあの場に現れたんだから、俺が逃げ出すのはかっこ悪いだろう。

「学園ではすることが多いね」

「まぁ若いうちの苦労は、大人になったらきっと身になると思うさ」

「おー、一度三十路まで生きた男は言うことが違うね」

 ほっとけ。
 元々俺達が学園に通う目的は、アルザーノ魔術学園の生徒のみが閲覧可能な書庫があるからだ。
 アルゴノート領の書庫だけでは、精霊契約の儀の歴史についてしか発見することが叶わなかった。

「精霊契約の儀のついでではあるが、帝国が滅ばないに越したことはない。俺は領でアルナの庇護下の元、ミラ達と慎ましく平穏に暮らせればそれでいいからな」

「今は慎ましさや平穏とは、ほど遠いと思うけどね。でもまぁボク達に迫る邪魔者を消す権利はもぎ取れたし今回は大分こっちにメリットがある報奨だと思うよ」

「なんだその権利?」

「寝ぼけてるのー?、ボク達に手を出したら、裁判をせずその場で断罪する権利だよ。帝国を守り切ったらもらう約束だったでしょー?」

「そういやそんな権利をくれって陛下に言った記憶あるなぁ」

 他には皇帝と同等の権利も報奨としてもらっていたはずだ。
 待てよ?
 
「じゃあ俺、学園に通わなくても書庫を覗けるんじゃないか?それに宮廷の書庫だって場合によっては閲覧可能------」

『それはまだ無理ですね』

「クレ、居たのか」

『イチャついてる若人の邪魔をするほど、私は無粋じゃありませんよ?』

 若人って言っても俺は精神年齢はかなり上だけどな。
 まぁそうすると俺はロリコンって事になるから何も言わないが。

「今、失礼なこと考えた?」

「いや?」

 エスパーかよ。
 
「まだ無理ってどういうことだクレ?」

「今回の功績は余りにも大きすぎるから、三年後の公爵を授与するまで報奨は延期することになったからだよ」

『面倒ごとを避けるためには仕方ないです』

 たしかに爵位も与えずに公爵以上の権利を与えるのはまず不可能だ。
 例えそれを実行したとしても、確実にどっかから暗殺者が呼ばれてしまうことは必至。
 現状を見ていた子爵や男爵からは刺客を送らないだろうが、それ以上の階級はわからない。
 別に暗殺者を送られても、対処は可能ではあるが面倒なことは変わりないだろう。

「皇帝の配慮か」

『彼女はよくわかっていますね。私としても報奨は後の方が良いと考えます。帝国が滅んでは元も子もないですからね。幸い、帝国での基盤を固める方が無難ですからね。精霊契約の儀のために、二人の生活を削る気もありませんから』

 たしかに精霊契約の儀を解明するために、生活を削っては本末転倒。
 それはクレも望まないところだろう。

「つまり今のところは、学園の書庫だけで精霊契約の儀に着いて調べないといけないって訳か」

『そうですね。本格的に調べるのは後でもよろしいでしょう。その前に調べることがありますよ』

「調べること?」

「リアスくん、悪役令嬢グレシアは大規模範囲魔法を使って帝都をめちゃくちゃにしたんだよね?」

「あぁ」

「だったら、彼女の魔力は神話級の精霊のおじさんやボクより多かったことになる」

 言われてみればそうだ。
 二人は魔力が足りなくて大規模範囲魔法を使えなかった。
 つまり、魔力さえあれば使える。
 俺の魔力を使えば使用することが出来た。
 その時俺は魔力切れで魔力欠乏症を起こして倒れた。
 魔力欠乏症は内包する魔力が割りを切ると疲労に現れる症状だ。
 貧血と同じだな。
 最も人間は精霊と違って魔力がゼロになっても死なないから、苦しいだけだ。

「つまりグレシアが大規模範囲魔法を使えるだけの魔力があるかどうかを確かめる必要があるな」

「それは多分、多くないよ」

『ですね。それだけの魔力量が高いならどれだけ隠しても、我々は気づくことができます。この帝都に魔力が一番高いのは貴方ですし、貴方に匹敵するほどの魔力を感じられません。それどころか我々よりも大きな魔力も感じ取れない。それは貴方が眠っている間もそうでした』

 この世界はステータス確認という便利な機能はないが、精霊は魔力を感じ取れる。
 精霊であるクレとミラが言うのなら間違いないだろう。
 だとすると後天的に魔力を手に入れたことになるよな。

「魔力量って生まれつき変わらないよな?」

『いえ、多少は上がりますよ。貴方は魔力が多すぎるから実感を持てないのでしょう。まぁ莫大な量となるとあり得ないですね。大規模範囲魔法は貴方の魔力の6割ほど使っています』

「ボクもこの6年間で内包する魔力量が1割増えたよ」

「え、マジ?」

 驚いた。
 ミラの魔力量も上がってたのか。
 
『ミラはかなり増えてる方ですけどね。普通は一生かけて魔力量が1割増えれば良い方ですよ』

「なるほど、ミラは例外な増え方をしてるってわけか。じゃあ1割どころか自身が内包する魔力量よりも増やす方法があるってことか。それも短気間の間で」

 何故ならラスボスである悪役令嬢のイベントは学生でのイベントのため、少なくとも3年以内でそれだけの魔力を手に入れていないとおかしい。

『信じられませんがそうなりますね。それについては調べる必要があります』

「でも可能なのか?神話級の精霊の三倍以上の魔力を手に入れることなんて。それも三年以内に」

「魔力量を増やしたわけじゃないかも知れないよ。大規模範囲魔法をコスパを良くした固有魔法オリジナルかも知れないし。現にリアスくんの複合魔法は上級魔法でありながら威力は最上級魔法にも劣らない訳だし」

 たしかにそっちの方が現実的だな。
 魔力量は普通は増えない。
 それに魔法の種類の分類の仕方も結構あやふやだ。
 浮遊魔法は下級魔法だが、飛翔魔法は中級魔法なのがその証拠だ。
 使い方は同じなのに、階級が分かれてる。
 魔法は精霊と人間が唯一共通するモノだ。
 じゃなきゃ、人の号令に合わせて精霊が魔法を発動するなんてできない。
 基本的に魔法の威力と難しさ、魔力の消費量で下級、中級、上級、最上級と分けられているのは、人間も精霊も共通してる。
 しかし俺の複合魔法は威力と魔力の消費量もさることながら、魔法を同じ威力に設定しないといけないため難易度は最上級魔法と同じくらいに当たるはずなのに、記録にないから上級魔法の固有魔法オリジナルと分けられる。
 まぁ最上級魔法を俺は使えないから、上級魔法以上、最上級魔法以下の難易度ではあるが。

「俺の複合魔法同様に大規模範囲魔法と思わせる魔法をグレシアが開発した可能性、これは俺的には一番しっくりきたな」

『たしかに盲点でした。リアスという異常な存在がいるのに、その可能性に気づかないとは』

「異常って酷いな。でも固有魔法オリジナルとなると調べようがないぞ」

「それはもう本人に聞く方が早いと思うな。ボクは同じ女子だし、それとなく聞いてみることにするよ。なんなら友達になってみようと思う!それにリアスくんにグレシアが言いよらないとも限らないし?」

「別に言いよられても、俺はミラ以外に靡かないぞ?」

 俺は不誠実な真似は出来ないしする気も無い。
 浮気をしてミラが離れていかない保証なんてどこにもないだろう。
 モテる憧れって、恋人がいない人間の幻想だと思ってる。

「そういう問題じゃないの!ともかくグレシアのことはボクとイルミナに任せて!」

「お、おう」

『乙女心がわかっていませんねぇ』

「悪かったな。クレだって結契したことないだろう!」

『私は生涯独身ですので良いのですよ。それにリアスは息子のようなモノで、ミラは娘のようなモノですしね』

 それで良いのかと言いたいがやめておこう。
 本人も納得してることだし。
 ていうか起きるか。
 外を見た感じまだ昼前みたいだし。
 俺はベッドから起き上がって背伸びする。

「んー!って言うかもう明後日までに迫るのか入学すんの」

「あ、急に動いちゃ駄目だよ。五日も寝てたんだし。メルセデスに頼んでおかゆ作ってもらってくるよ」

「あぁ、グレコに虐待されてた頃に比べたらマシだ」

 俺は首をボキボキと鳴らす。
 普通に一週間飯抜きとされたこともあるし、胃はそこそこ慣れてるはずだ。

「でも胃には悪いからしばらくは消化の良い食べ物を作ってもらおう?ね?」

「あぁわかった。陛下からはあれから連絡あったのか?」

『アデルと言う者が、報奨の話と礼を述べに来たくらいですね』

 アデルさんか。
 宰相がわざわざ男爵の子息の家に出向いてたら目立つだろうに、そこは配慮してくんなかったのかねぇ。

「俺達が闘った三人ってどうなるんだ?」

「現在、尋問中だって。処分が下る時は追って連絡してくれるってアデルさん言ってたよ」

 少なくともあの大剣野郎が口を割るとは思えないなぁ。
 というかあんな奴知らねぇし、あれもモブ以下のガヤってことか?
 花そその世界って登場キャラが極端に弱かったわけじゃなかろうな?
 いや主人公とグレシアは強いしなぁ。

「ていうか悪いな。俺が寝てたばかりに、帝都観光出来なくて」

「ううん、そんなのは別に良いよ」

『ずっとミライは心配していましたからね。五日間食事の時間以外は貴方のベッドの横で手を握ってたんですよ?』

「え、マジ!?嬉しい!」

「あ、いや、えっとその!なんでバラしちゃうのおじさん!」

 顔を真っ赤にして頬を手で押さえてやんやんと身体を横に振る。
 こんな子を婚約者に持ってる俺が、他の女子にほだされる?
 想像が付かないな。
 俺はミラの頭に手を乗せる。
 
「心配かけたな。ありがとう」

「うん!どういたしまして」

 あぁ、この笑顔だけで今回頑張った甲斐あるよな。
 クレがニヤニヤとこちらを見てこなければもっと良いんだが。
 ドタバタとドアの向こうから音がした。

「坊ちゃん!起きたのか!」

「兄貴ぃよかったよぉ!」

「リアス様、無事に起床されて何よりです」

『リアスさんおはようございます!』

『ナスタのご主人、メルセデスがずっと心配してたぞ!』

『イルミナも心配してたんだブヒィ!』

 おうおう、みんな勢揃いじゃないか。
 なんか日常に戻って来たって感じだな。

「悪いなお前ら。心配かけた」

「へっ、心配なんかしてねぇぜ。坊ちゃんはこんなところでどうにかなるタマじゃないしな!お、そうだ。起きたばかりで腹減ったろ。胃が驚かない消化のいいもん作ってきてやる」

 メルセデスはすぐに部屋から出て行った。
 あいつ結構気が利くんだよな。

「兄貴ぃ。ミライちゃんが怖かったですわぁぁぁ」

「いや、ミラお前何したんだ?」

「え、貴族のお茶会に参加するのは嫌だけど、情報は欲しいからアルナちゃんに言ってもらってただけだよ?」

 あぁ、そういうことね。
 脅されたって訳だ。
 アルナの精霊が襟から顔出してる。
 たしかヒューイとか言ったか。

『アルナ、お前、兄。気、使う』

 相変わらずカタコトでしかもこいつ基本的に無口なんだよな。

「はいはい。ありがとな」

 めぼしい情報があるなら、アルナがミラかイルミナに話してるだろうから、俺は兄らしく妹の頭を撫でてやる。

「リアス様、ご無事にお目覚めされて何よりです」

「あぁ、ヘマ打って怪我しちまった」

「相手は剣術メインの相手だと聞きました。もし彼がわたしの相手だったらと思うとゾッとします」

「同感だ。俺もあんな奴出来ることなら相手したくない」

 実際結構ギリギリだったしな。
 勝てたのは奇跡って言える。

『油断するからブヒィ!自分が死ぬくらいなら相手を殺しても許されるブヒィ!』

「生意気だぞシュバリン!」

 俺はシュバリンを抱いてワシャワシャする。
 たしかにシュバリンの言うとおり、殺すんだったら苦も無く勝てたと思うけど良いんだ。
 
「鍛錬の時間はもっと増やして行きましょうね」

「あぁ、だな」

「二人ともほどほどにね。二人の組み手見てるとヒヤヒヤするんだから」

 あまりの激しさに殺し合いに見えて、ミラが天雷で止めに入ったときもあったな。
 あのときは、俺達が死ぬかと思ったぞ。
 イルミナはシールドを貼る魔力がないんだから。
 結果俺がフルシールドで止まったからいいけど、天雷以上なら本当に死んでたかもしれない。

「気を付けます」

「気を付けるよミラ」

「よろしい」

 全く頭が上がらない。
 俺は尻に敷かれる結婚生活を送りそうだ。

「メルセデスの飯食ったら、最後にみんなで帝都観光にでも行くか?」

「賛成!兄貴は驕って下さいまし!」

「あぁ、全員好きなだけ驕ってやるよ!」

 俺はこの言葉を後悔した。
 精霊も含めた4人と5体が欲しいものすべてを買ったら、俺のポケットマネーは食費しか残ってない状態になったからだ。
 食品を買わないからって油断した。
 もっと遠慮してくれよバカ野郎!
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