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ルルシア達がマーティンとの戦闘を繰り広げている頃、別の場所でも闘いが繰り広げられていた。
それはイガラシ家の影であるゴルドと剣婦ルミシのふたりだった。
ゴルドは黙ったまま精霊を潰し、魔法を唱えている。
「その命を対価に、我が身を強化せよ!」
精霊の命を奪うことで発生する瘴気を利用した魔法で身体強化を施すゴルド。
その魔法は精霊生贄魔法であり、精霊の怒りを買う代わりに強力な力を得る魔法だった。
「とても重いこぶしだねー」
「・・・」
ゴルドは魔法使いにしては珍しく、体術を好む魔導士。
そのため自身も肉体を鍛えている。
更に加えて精霊の命を犠牲にした身体強化は、従来の身体強化の3倍以上の効果を持っていた。
しかしそれほどまで強化された拳を何度も打ち込んだというのに、涼しい顔で受け止めたルミシにゴルドは驚きを隠せなかった。
受け止めているとは言っても、骨は曲がったり変な方向を向けたりしている。
腕はボキボキに折れているのに、涼しい顔をしている彼女に対しての畏怖の念もあった。
「貴様が何者かは知らないが、私の邪魔をするということはその腕のようには済まない覚悟があってのことか?」
「やっと喋ったねー。好きにしなよ」
「それでは遠慮はしない!」
すると今度は足を使い、ルミシを思い切り蹴り飛ばした。
腕は吹き飛び、胴体にゴルドの足が突き刺さる。
「すごいわね、身体強化だけでここまでやるとは」
「どうなっている?心臓を貫いた感触が確かにあったのに、苦しそうなそぶりすら見せないとはそれだけ鍛えているってことか?」
本来であればしゃべるのもままならなくなっておかしくないはず。
しかしルミシはこうなっても涼しい顔でゴルドに話かけてきている。
その答えは、後ろからゴルドの肩をちょんと叩く人物によって判明する。
「ばか・・・な!?貴様らは双子か?」
「あー、そっちの方の身体はもう使えないから、本人に返してあげないとね」
指を鳴らすと、胸を貫かれたルミシの姿が別の少女へと変貌を変えてしまった。
そしてその少女は血を勢いよく吐いたかと思うと、そのまま絶命してしまった。
「なにっ!?なんだこれは!?」
「目に見える物が世界の全てってことじゃないのよおっさん」
「貴様の仕業か!何者だ!」
「アハハ!無実の人を殺して罪悪感がないなんて、貴方はとーっても素敵な人ねぇ!」
ゴルドはルミシの言葉で大きく目を見開いた。
それは考えなかったことではなかった。
しかし受け入れたくなかった。
思わずゴルドは胃から吐しゃ物を吐き出してしまう。
「貴方護衛の割に心が弱いのね。何人も殺してきたでしょうに」
「貴様には関係ない!」
「あらそう。そうね、自己紹介がまだだったわね。私はルミシ・フォン・ニーフェ。帝国の剣婦よ。以後よろしくね」
「剣婦だと・・・倅が対峙したというあれか」
「あー、グンジョーと対峙したのは確かー、あぁディーラのことね。彼女は良い傀儡になると思ってたんだけどねぇ。まぁ彼女には同情してるわ」
「剣婦がこの国に何の用だ?」
「あぁ、貴方に用があるのよ。今、マーティンという兵士が暴動を起こしているのは知っているわよね?」
「私はそのために派遣されている!」
「それを破棄してはもらえないかしら?」
「断る!」
ゴルドは例えマシバの命が脅かされそうになろうとも、マシバの任務は絶対に達成すると常に考えて動いている。
「今ならそれで手を打ってあげるわよ?」
「貴様の意見を聞き入れる気はない!」
「そう、心変わりしても後悔しないわよね?でもまぁ、彼は貴方じゃ殺す事が出来ないもの。問題ないわよね」
「ほざけ。貴様と奴の関係は知った事じゃないが、奴程度どうにかなるわ」
「そうかしら?でも貴方の主人はそうは思ってないらしいわよ?」
「ふん、貴様に何がわかる?」
「でも今マーティンとマシバ会長の息子のグレン・イガラシがマーティン討伐を命じられて抗戦を始めたわよ?」
「彼は魔導士団所属だ。そう言った任務があるのは当然だろう」
「わかってないわねー!彼が貴方より実力があるから、会長は彼にその討伐を命じたのよ?」
ルミシがそうやって煽るも、マシバの忠誠心は鋼より固く、誰よりもマシバのことを信じている為、その挑発に乗ることはなかった。
「くだらん戯言だ。私と敵対しておいて、敵の言葉を信じる馬鹿はいまい」
「まぁそれは道理よね」
敵の言葉を信じるなんて愚かのことをする様なゴルドではない。
それは当然の理由で、よっぽど愚かでない限りそんな事はしない。
しかしルミシはそれでも良かったのだ。
「まぁ最初からそれはわかってたのよ。ねぇ、ところでこれなんだかわかる?」
ルミシがその場でくるりと回ると、ルミシの服装がメイド服に変わった。
それはゴルドは最も知る服装の一つでもあった。
「イガラシ財閥のメイド服・・・だと?」
「ねぇ、今イガラシ財閥にはメイドが何人いると思う?」
先ほどのこととその言葉で、ルミシの言葉の意味を知ったゴルドは彼女を睨みつけた。
「貴様、ロクな死に方はしないぞ!」
「お褒めに預かり光栄だわぁ!それで?」
「マーティン討伐を破棄しよう」
「それだけ?破棄してた貴方の願いは届かないわ。だってさっき言ったじゃない?今ならって」
それはさっき交わされるはずだった契約の話であり、今はもうそれだけじゃ足りなかった。
「私の言うことを一つ聞けば、その願いを叶えてあげるわ」
耳元でその願いをゴルドに話した時、ゴルドの表情はひどく険しく、苦虫を潰した様な顔をしてルミシを睨みつけた。
それはイガラシ家の影であるゴルドと剣婦ルミシのふたりだった。
ゴルドは黙ったまま精霊を潰し、魔法を唱えている。
「その命を対価に、我が身を強化せよ!」
精霊の命を奪うことで発生する瘴気を利用した魔法で身体強化を施すゴルド。
その魔法は精霊生贄魔法であり、精霊の怒りを買う代わりに強力な力を得る魔法だった。
「とても重いこぶしだねー」
「・・・」
ゴルドは魔法使いにしては珍しく、体術を好む魔導士。
そのため自身も肉体を鍛えている。
更に加えて精霊の命を犠牲にした身体強化は、従来の身体強化の3倍以上の効果を持っていた。
しかしそれほどまで強化された拳を何度も打ち込んだというのに、涼しい顔で受け止めたルミシにゴルドは驚きを隠せなかった。
受け止めているとは言っても、骨は曲がったり変な方向を向けたりしている。
腕はボキボキに折れているのに、涼しい顔をしている彼女に対しての畏怖の念もあった。
「貴様が何者かは知らないが、私の邪魔をするということはその腕のようには済まない覚悟があってのことか?」
「やっと喋ったねー。好きにしなよ」
「それでは遠慮はしない!」
すると今度は足を使い、ルミシを思い切り蹴り飛ばした。
腕は吹き飛び、胴体にゴルドの足が突き刺さる。
「すごいわね、身体強化だけでここまでやるとは」
「どうなっている?心臓を貫いた感触が確かにあったのに、苦しそうなそぶりすら見せないとはそれだけ鍛えているってことか?」
本来であればしゃべるのもままならなくなっておかしくないはず。
しかしルミシはこうなっても涼しい顔でゴルドに話かけてきている。
その答えは、後ろからゴルドの肩をちょんと叩く人物によって判明する。
「ばか・・・な!?貴様らは双子か?」
「あー、そっちの方の身体はもう使えないから、本人に返してあげないとね」
指を鳴らすと、胸を貫かれたルミシの姿が別の少女へと変貌を変えてしまった。
そしてその少女は血を勢いよく吐いたかと思うと、そのまま絶命してしまった。
「なにっ!?なんだこれは!?」
「目に見える物が世界の全てってことじゃないのよおっさん」
「貴様の仕業か!何者だ!」
「アハハ!無実の人を殺して罪悪感がないなんて、貴方はとーっても素敵な人ねぇ!」
ゴルドはルミシの言葉で大きく目を見開いた。
それは考えなかったことではなかった。
しかし受け入れたくなかった。
思わずゴルドは胃から吐しゃ物を吐き出してしまう。
「貴方護衛の割に心が弱いのね。何人も殺してきたでしょうに」
「貴様には関係ない!」
「あらそう。そうね、自己紹介がまだだったわね。私はルミシ・フォン・ニーフェ。帝国の剣婦よ。以後よろしくね」
「剣婦だと・・・倅が対峙したというあれか」
「あー、グンジョーと対峙したのは確かー、あぁディーラのことね。彼女は良い傀儡になると思ってたんだけどねぇ。まぁ彼女には同情してるわ」
「剣婦がこの国に何の用だ?」
「あぁ、貴方に用があるのよ。今、マーティンという兵士が暴動を起こしているのは知っているわよね?」
「私はそのために派遣されている!」
「それを破棄してはもらえないかしら?」
「断る!」
ゴルドは例えマシバの命が脅かされそうになろうとも、マシバの任務は絶対に達成すると常に考えて動いている。
「今ならそれで手を打ってあげるわよ?」
「貴様の意見を聞き入れる気はない!」
「そう、心変わりしても後悔しないわよね?でもまぁ、彼は貴方じゃ殺す事が出来ないもの。問題ないわよね」
「ほざけ。貴様と奴の関係は知った事じゃないが、奴程度どうにかなるわ」
「そうかしら?でも貴方の主人はそうは思ってないらしいわよ?」
「ふん、貴様に何がわかる?」
「でも今マーティンとマシバ会長の息子のグレン・イガラシがマーティン討伐を命じられて抗戦を始めたわよ?」
「彼は魔導士団所属だ。そう言った任務があるのは当然だろう」
「わかってないわねー!彼が貴方より実力があるから、会長は彼にその討伐を命じたのよ?」
ルミシがそうやって煽るも、マシバの忠誠心は鋼より固く、誰よりもマシバのことを信じている為、その挑発に乗ることはなかった。
「くだらん戯言だ。私と敵対しておいて、敵の言葉を信じる馬鹿はいまい」
「まぁそれは道理よね」
敵の言葉を信じるなんて愚かのことをする様なゴルドではない。
それは当然の理由で、よっぽど愚かでない限りそんな事はしない。
しかしルミシはそれでも良かったのだ。
「まぁ最初からそれはわかってたのよ。ねぇ、ところでこれなんだかわかる?」
ルミシがその場でくるりと回ると、ルミシの服装がメイド服に変わった。
それはゴルドは最も知る服装の一つでもあった。
「イガラシ財閥のメイド服・・・だと?」
「ねぇ、今イガラシ財閥にはメイドが何人いると思う?」
先ほどのこととその言葉で、ルミシの言葉の意味を知ったゴルドは彼女を睨みつけた。
「貴様、ロクな死に方はしないぞ!」
「お褒めに預かり光栄だわぁ!それで?」
「マーティン討伐を破棄しよう」
「それだけ?破棄してた貴方の願いは届かないわ。だってさっき言ったじゃない?今ならって」
それはさっき交わされるはずだった契約の話であり、今はもうそれだけじゃ足りなかった。
「私の言うことを一つ聞けば、その願いを叶えてあげるわ」
耳元でその願いをゴルドに話した時、ゴルドの表情はひどく険しく、苦虫を潰した様な顔をしてルミシを睨みつけた。
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