128 / 193
126
しおりを挟む
騒動が収まった後、ロアーナの葬儀はすぐに行われた。
キンブラ家からは少ない人間しか出席しておらず、魔女というレッテルから葬儀の人数も少なかった。
しかし貴族や平民にも多数の犠牲者が出た為、葬儀を行えるだけまだマシな方とも言える。
「ロア、ロアぁ。私の所為で・・・」
ルルシアはロアーナの棺の前でずっと泣いていた。
幼馴染の仲でも初めてできた友達であり、二人は親友と言っても過言ではなかった。
それが自分達と対峙した敵が自爆したことが原因で手がつけられなかったと聞かされれば、責任を感じてしまうのは仕方のないことだった。
「ロア、ええダチを持ったで・・」
「すまないレイン。これは俺の落ち度だ」
「何ゆーてんねんアハト。悪いんはあのスライムの化け女や。それにこの国の間者やで」
「あぁ!ふざけやがって!ロアをこんな目に合わせたやつ、絶対に償わせて見せる!」
「カイン・・・」
カインは復讐に燃えていた。
目の前で大事な友人を助けられる位置にいてそれができなかった自分の不甲斐なさと、この事態を作った首謀者への怒りでどうにかなりそうだったのだ。
「ロア・・・」
「ディラ」
ディーラはロアーナの従姉妹である。
つまり、この中で一番付き合いの長い人物でもあった。
「悔しいです」
「俺も同じ気持ちだ。二人で協力して首謀者は絶対に報いを受けさせよう」
「はい!」
二人は手を握り締める。
そんな二人を温かい目で見ている人物がいる。
「ロア、愛されてるわね」
「大事な幼馴染を殺されたんだ。俺も許せないところはあるよ」
「ごめんアハト。私はロアやみんながこんな事になってるのに、呑気に呪法の調べ物をしてたなんて」
シリィは手で顔を覆い隠してその場に蹲る。
いくら泣いても、ロアーナは帰ってこない。
貴族として、友に死者が出て人目を憚らず泣くのは作法に反する。
しかしそんなことは、当事者になった事ない者しか言えないと初めて自覚した。
「シリィ、ルルの横に、ロアのところにいこう?」
「リィナ・・」
シリィをリィナは抱えて棺の方へと向かって歩いていく。
シリィもルルと同じ様にそのまま泣き出した。
「本当につらい。ワシがついていながら」
「フォッカーはよくやってくれたよ」
「責めてくれた方が気が楽ですぞ。こちらトバルの詳細についてです」
フォッカーはシリィの宝具、全知の片眼鏡を使いトバルの情報をかき集めた。
頭痛で何度も意識が飛びかけたが、そんなのはお構いなしに調べ続けた為、かなり詳細の情報を開示する事に成功した。
「トバルはナンチョウと通じてたのか」
「そうでさぁ。どうやらトバルにとって女房のことは納得はできても許せるものではなかった様で」
「それは当然だよ。仮に俺が逆の立場でシリィが正当に処刑されそうになっていたとして、それでも怒りでどうにかなったと思う」
トバルがナンチョウと通じる様になったのは、シリィの義母が産んだ下の子を、魔力があるからと助産師であるトバルの妻が殺したことで死刑になった事が原因だった。
「愛のない政略結婚と言うのも、こう言った正常な判断をさせる為なんでしょうなぁ」
「まぁ政略結婚はうまくいくケースのがレアだよ。それよりもだ。この記載は本当か?」
「えぇ、間違いないかと」
「はは・・・」
アハトが乾いた笑いが上がるほど、書かれた内容はとんでもないものだった。
「そうか、この国は根本から腐ってたのか」
「それはアハト様が変えていってくだせえ」
「もちろんそのつもりだよ」
そしてアハトは資料全てに目を通した後、しっかりと収納魔法で自分だけが見れる場所にしまった。
葬儀も終わり、ロアーナの入った棺桶を土葬し、ロアーナ・フォン、キンブラと刻まれた石碑がその上に置かれる。
葬儀の参加者達もこれを見届けると次々とその場を後にしていく。
そして残ったのはロアーナの幼馴染、天の架け橋の面々だけになる。
「ルル、立って」
「ごめんシリィ」
ルルシアの目は赤く腫れ上がり、もう心が折れてしまいそうな勢いだった。
「ごめんみんな、ちょっと話があるんだ」
「話?なんやねん」
「俺達だけを待ったってことは」
「うん。信用の出来る者だけに聞かせたかったんだ。今回のトバルの裏切り、それにナンチョウのグイド、いやフランチェスカの侵入をミスミス許した原因を」
そのことを知るシリィ以外は、真剣な眼差しでアハトを見つめた。
「調べたのはシリィか。流石は時期皇妃やな」
「えぇ。そしてこの国はもう、アハトが皇帝にならなければ終わっているくらい腐ってるわね」
「アハトが皇帝を?皇太子よりも前に・・・シリィまさか!?」
「そうだよカイン。でもその前に今一度誓いを立てたいんだ」
アハトは拳を前に出し、シリィもそれに倣って拳を出す。
そして次々と同じ様に拳を前にした。
残るは消沈してるルルシアだけだった。
「ルル、手を前に出して」
「私は・・・」
「ルルは弱い人間だ。でもそれはみんな同じ話だよ」
ルルシアは初めてみんなの顔を見渡した。
みんな目を赤く腫らしており、泣きじゃくっていたのが伺える。
「俺達はこれまでも、そしてこれからもどんな時でも仲間だ。立場が変わろうと、洗脳されようと、例え命を落とそうとも」
アハトのその言葉にレインとカインは笑い、シリィとリィナとディーラは涙を浮かべる。
「ロアの仇を討ち、そして帝国を変える!」
アハトはそれ以上言葉は言わず、ただルルシアだけを見つめていた。
ルルシアは涙を拭いその場から立ち上がる。
「全く。えぇそうね!私達は仲間、いやずっと友達よ!」
そしてルルシアも手を前に掲げた。
そうして7人はこの誓いを胸にそれぞれの人生を歩んでいく。
キンブラ家からは少ない人間しか出席しておらず、魔女というレッテルから葬儀の人数も少なかった。
しかし貴族や平民にも多数の犠牲者が出た為、葬儀を行えるだけまだマシな方とも言える。
「ロア、ロアぁ。私の所為で・・・」
ルルシアはロアーナの棺の前でずっと泣いていた。
幼馴染の仲でも初めてできた友達であり、二人は親友と言っても過言ではなかった。
それが自分達と対峙した敵が自爆したことが原因で手がつけられなかったと聞かされれば、責任を感じてしまうのは仕方のないことだった。
「ロア、ええダチを持ったで・・」
「すまないレイン。これは俺の落ち度だ」
「何ゆーてんねんアハト。悪いんはあのスライムの化け女や。それにこの国の間者やで」
「あぁ!ふざけやがって!ロアをこんな目に合わせたやつ、絶対に償わせて見せる!」
「カイン・・・」
カインは復讐に燃えていた。
目の前で大事な友人を助けられる位置にいてそれができなかった自分の不甲斐なさと、この事態を作った首謀者への怒りでどうにかなりそうだったのだ。
「ロア・・・」
「ディラ」
ディーラはロアーナの従姉妹である。
つまり、この中で一番付き合いの長い人物でもあった。
「悔しいです」
「俺も同じ気持ちだ。二人で協力して首謀者は絶対に報いを受けさせよう」
「はい!」
二人は手を握り締める。
そんな二人を温かい目で見ている人物がいる。
「ロア、愛されてるわね」
「大事な幼馴染を殺されたんだ。俺も許せないところはあるよ」
「ごめんアハト。私はロアやみんながこんな事になってるのに、呑気に呪法の調べ物をしてたなんて」
シリィは手で顔を覆い隠してその場に蹲る。
いくら泣いても、ロアーナは帰ってこない。
貴族として、友に死者が出て人目を憚らず泣くのは作法に反する。
しかしそんなことは、当事者になった事ない者しか言えないと初めて自覚した。
「シリィ、ルルの横に、ロアのところにいこう?」
「リィナ・・」
シリィをリィナは抱えて棺の方へと向かって歩いていく。
シリィもルルと同じ様にそのまま泣き出した。
「本当につらい。ワシがついていながら」
「フォッカーはよくやってくれたよ」
「責めてくれた方が気が楽ですぞ。こちらトバルの詳細についてです」
フォッカーはシリィの宝具、全知の片眼鏡を使いトバルの情報をかき集めた。
頭痛で何度も意識が飛びかけたが、そんなのはお構いなしに調べ続けた為、かなり詳細の情報を開示する事に成功した。
「トバルはナンチョウと通じてたのか」
「そうでさぁ。どうやらトバルにとって女房のことは納得はできても許せるものではなかった様で」
「それは当然だよ。仮に俺が逆の立場でシリィが正当に処刑されそうになっていたとして、それでも怒りでどうにかなったと思う」
トバルがナンチョウと通じる様になったのは、シリィの義母が産んだ下の子を、魔力があるからと助産師であるトバルの妻が殺したことで死刑になった事が原因だった。
「愛のない政略結婚と言うのも、こう言った正常な判断をさせる為なんでしょうなぁ」
「まぁ政略結婚はうまくいくケースのがレアだよ。それよりもだ。この記載は本当か?」
「えぇ、間違いないかと」
「はは・・・」
アハトが乾いた笑いが上がるほど、書かれた内容はとんでもないものだった。
「そうか、この国は根本から腐ってたのか」
「それはアハト様が変えていってくだせえ」
「もちろんそのつもりだよ」
そしてアハトは資料全てに目を通した後、しっかりと収納魔法で自分だけが見れる場所にしまった。
葬儀も終わり、ロアーナの入った棺桶を土葬し、ロアーナ・フォン、キンブラと刻まれた石碑がその上に置かれる。
葬儀の参加者達もこれを見届けると次々とその場を後にしていく。
そして残ったのはロアーナの幼馴染、天の架け橋の面々だけになる。
「ルル、立って」
「ごめんシリィ」
ルルシアの目は赤く腫れ上がり、もう心が折れてしまいそうな勢いだった。
「ごめんみんな、ちょっと話があるんだ」
「話?なんやねん」
「俺達だけを待ったってことは」
「うん。信用の出来る者だけに聞かせたかったんだ。今回のトバルの裏切り、それにナンチョウのグイド、いやフランチェスカの侵入をミスミス許した原因を」
そのことを知るシリィ以外は、真剣な眼差しでアハトを見つめた。
「調べたのはシリィか。流石は時期皇妃やな」
「えぇ。そしてこの国はもう、アハトが皇帝にならなければ終わっているくらい腐ってるわね」
「アハトが皇帝を?皇太子よりも前に・・・シリィまさか!?」
「そうだよカイン。でもその前に今一度誓いを立てたいんだ」
アハトは拳を前に出し、シリィもそれに倣って拳を出す。
そして次々と同じ様に拳を前にした。
残るは消沈してるルルシアだけだった。
「ルル、手を前に出して」
「私は・・・」
「ルルは弱い人間だ。でもそれはみんな同じ話だよ」
ルルシアは初めてみんなの顔を見渡した。
みんな目を赤く腫らしており、泣きじゃくっていたのが伺える。
「俺達はこれまでも、そしてこれからもどんな時でも仲間だ。立場が変わろうと、洗脳されようと、例え命を落とそうとも」
アハトのその言葉にレインとカインは笑い、シリィとリィナとディーラは涙を浮かべる。
「ロアの仇を討ち、そして帝国を変える!」
アハトはそれ以上言葉は言わず、ただルルシアだけを見つめていた。
ルルシアは涙を拭いその場から立ち上がる。
「全く。えぇそうね!私達は仲間、いやずっと友達よ!」
そしてルルシアも手を前に掲げた。
そうして7人はこの誓いを胸にそれぞれの人生を歩んでいく。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる