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リィナとシリィは森を駆け抜けていた。
ゴッドサウス王国との国境まで少しだったから。
しかしシリィはともかくリィナは限界まで来ていた。
足の筋肉が悲鳴を上げて、無理して走っていると言った感じだった。
「リィナ、もういいわ。私も走るわ」
「ダメよ。シリィの能力でなんとか敵と鉢合わせずに逃走できてるんだもの。私こそごめんね、お姉ちゃんなのに」
「いいの。もう私達しか居ないんだから」
「そうね。みんな生きてるかしら?」
「レインは死亡してるって出たわ。でも他のみんなは大丈夫。呪法で記憶を改変されて解除方法を調べればなんとかなるわ。何年かけても見つけて見せるわ」
「・・・シリィ少し提案があるの」
リィナは逃走中で、もうどうあがいても二人で逃げ切ることはできないと思っていた。
だから逃げてる間に考えたこの状況を打破する可能性をシリィに提案する。
「何を言ってるの・・・?」
「もう、これしか生き残る術はないの。ごめんねシリィ」
「そうね。私達二人が逃げきる方法は、正直ほとんどないわ。わかったわ、その方法を取る。お父様とお母様には迷惑をかけるわ・・・」
二人とも残りの体力は僅か。
シリィの頭がパンクするか、リィナの体力が力尽きるか。
どっちが先になるかわからない。
そこでガサッと音がした。
目の前にはフォッカーが現れる。
「フォッカー!無事だったのね!」
「銀髪の少女・・・見つけた。陛下の命を狙う賊め!」
しかしフォッカーは正気じゃなかった。
呪法によりシリィを殺すように命令を受けていた。
「痛い・・・呪法ってこんなこともできるの!?」
「これ呪法!?」
「えぇ!私の殺害命令を受けてるみたいだわ」
リィナの体力では、フォッカーに対抗するのは難しい。
しかしフォッカーも剣婦に蹴り飛ばされて脇腹に大ダメージを負っている。
だから可能性はあった。
フォッカーがシリィに向かって振り下ろす剣を受けとめて、上に弾いて見せた。
「なにっ!?賊の護衛か」
「フォッカー・・・ごめん!」
フォッカーがリィナにターゲットを変えて剣を振るった瞬間、リィナもそれに合わせて剣を砕いた。
この剣はフォッカーが亡き皇帝チャリオットにもらった形見であり、それをいつも大事に磨いているのを天の架け橋の面々は知っている。
フォッカーとチャリオットの関係はアハトやルルシア達のような幼馴染みの関係に近く、そんな剣を折られるのは心を引き裂くに等しい。
「できるな!しかしワシは素手になろうと陛下をお守りする!」
「シリィ、さっき言ったとおりよ!二手に分かれるわ!」
「わかったわ!リィナ、死なないで!」
「うん!」
リィナとシリィが再会することはないとお互いが理解していた。
それでも森を駆け抜ける。
フォッカーはどちらを追いかけるか悩んだ末、リィナを追いかけることを選んだ。
奇襲を受けたときにどっちがまずいかはわかりきったことだった。
そして森を駆け抜けて行き、リィナは限界の身体を酷使し続けて色々な方向へ障害物を使い逃げていく。
しかしフォッカーの足は健在だった。
「足跡があるからこっちだが・・・」
「あ・・・」
フォッカーはちらっと見える銀髪の女性の影を見る。
自分が本来リリノアールに命令されていたのは銀髪の賊の排除だった。
なので銀髪少女の方へとターゲットを変え、その華奢な身体をつかみ取る。
「見つけたぞ!」
「ふっ」
少女は何も喋らず、不敵な笑みを浮かべる。
そのことにフォッカーは怒りで頬を殴りつける。
「何故陛下を狙う!堅帝の陛下の志をなんと心得る!」
しかし少女はその問に答えない。
そのためフォッカーは腕を踏みつけ、少女は悲鳴を上げた。
腕は曲がってはいけない方向に曲がる。
フォッカーは例え幼い人間だとしても容赦はしなかった。
それは少年兵を戦争で何人も殺してきた経験からだった。
「アァァァァア・・・」
「たかが腕一本で陛下を狙った罪が消えると思うなよ?」
「つ・・・み・・・」
それでも、涙を浮かべながらも負けないとフォッカーを睨み付ける。
その先にリリノアールが居る。
二人の作戦はこうだった。
一人を囮にしてもう一人が公爵家であるランジェル家に助けを求めて国外逃亡を図る。
「そうだ!悪いが連行させてもらう」
「い・・や・・よ」
かすれた声でフォッカーの頬に唾を吐きかける。
フォッカーは抵抗された場合は殺意を底上げされる呪法をかけられていた。
その為逆上したフォッカーにシリィは無抵抗に殴られる。
全身を殴られ続け、腹を思い切り殴られたところで少女が全く動かなくなっていることに気づいた。
少女は息をしていなかった。
死亡している証拠だった。
「賊を排除した・・・雨?」
フォッカー自身何故か自分の頬に液体が流れているのに気づく。
しかし雨が降ってる様子はなかった。
そして遺体を放置してその場を後にする。
しかし死んではおらず、少しだけ息を止めて死亡を装った。
フォッカーがその確認を怠るかは賭けだったが、その賭けに成功する。
それもそのはずで、リリノアールはその光景を森の上から見ており、そうするように呪法で操作した。
そしてフォッカーと入れ違うようにアハトが辿りついた。
これもリリノアールの策略であり、アハトにシリィの最期を看取らせ第二皇子として傀儡にしたあと万が一呪法を解除されたときに気力を無くさせるためだった。
「シリィ・・・」
「あ・・・は・・・と」
「すまない・・・俺がランジェル家の虐待に気づいていれば・・・」
なんとなく状況を察してアハトに声をかけようにも、咽も潰されて使い物にならなかった。
そして内臓もほとんど破裂していて感覚が無く、自分に死期が近いこともわかっている。
「私の家族を・・・恨まないで・・・ね」
しかしそのまま少女の腕はアハトの手をすり抜けて力尽きる。
アハトは少女の亡骸を抱えて一頻り泣いた後、その場を後にしランジェル邸へと向かった。
天の架け橋崩壊まであと1人。
ゴッドサウス王国との国境まで少しだったから。
しかしシリィはともかくリィナは限界まで来ていた。
足の筋肉が悲鳴を上げて、無理して走っていると言った感じだった。
「リィナ、もういいわ。私も走るわ」
「ダメよ。シリィの能力でなんとか敵と鉢合わせずに逃走できてるんだもの。私こそごめんね、お姉ちゃんなのに」
「いいの。もう私達しか居ないんだから」
「そうね。みんな生きてるかしら?」
「レインは死亡してるって出たわ。でも他のみんなは大丈夫。呪法で記憶を改変されて解除方法を調べればなんとかなるわ。何年かけても見つけて見せるわ」
「・・・シリィ少し提案があるの」
リィナは逃走中で、もうどうあがいても二人で逃げ切ることはできないと思っていた。
だから逃げてる間に考えたこの状況を打破する可能性をシリィに提案する。
「何を言ってるの・・・?」
「もう、これしか生き残る術はないの。ごめんねシリィ」
「そうね。私達二人が逃げきる方法は、正直ほとんどないわ。わかったわ、その方法を取る。お父様とお母様には迷惑をかけるわ・・・」
二人とも残りの体力は僅か。
シリィの頭がパンクするか、リィナの体力が力尽きるか。
どっちが先になるかわからない。
そこでガサッと音がした。
目の前にはフォッカーが現れる。
「フォッカー!無事だったのね!」
「銀髪の少女・・・見つけた。陛下の命を狙う賊め!」
しかしフォッカーは正気じゃなかった。
呪法によりシリィを殺すように命令を受けていた。
「痛い・・・呪法ってこんなこともできるの!?」
「これ呪法!?」
「えぇ!私の殺害命令を受けてるみたいだわ」
リィナの体力では、フォッカーに対抗するのは難しい。
しかしフォッカーも剣婦に蹴り飛ばされて脇腹に大ダメージを負っている。
だから可能性はあった。
フォッカーがシリィに向かって振り下ろす剣を受けとめて、上に弾いて見せた。
「なにっ!?賊の護衛か」
「フォッカー・・・ごめん!」
フォッカーがリィナにターゲットを変えて剣を振るった瞬間、リィナもそれに合わせて剣を砕いた。
この剣はフォッカーが亡き皇帝チャリオットにもらった形見であり、それをいつも大事に磨いているのを天の架け橋の面々は知っている。
フォッカーとチャリオットの関係はアハトやルルシア達のような幼馴染みの関係に近く、そんな剣を折られるのは心を引き裂くに等しい。
「できるな!しかしワシは素手になろうと陛下をお守りする!」
「シリィ、さっき言ったとおりよ!二手に分かれるわ!」
「わかったわ!リィナ、死なないで!」
「うん!」
リィナとシリィが再会することはないとお互いが理解していた。
それでも森を駆け抜ける。
フォッカーはどちらを追いかけるか悩んだ末、リィナを追いかけることを選んだ。
奇襲を受けたときにどっちがまずいかはわかりきったことだった。
そして森を駆け抜けて行き、リィナは限界の身体を酷使し続けて色々な方向へ障害物を使い逃げていく。
しかしフォッカーの足は健在だった。
「足跡があるからこっちだが・・・」
「あ・・・」
フォッカーはちらっと見える銀髪の女性の影を見る。
自分が本来リリノアールに命令されていたのは銀髪の賊の排除だった。
なので銀髪少女の方へとターゲットを変え、その華奢な身体をつかみ取る。
「見つけたぞ!」
「ふっ」
少女は何も喋らず、不敵な笑みを浮かべる。
そのことにフォッカーは怒りで頬を殴りつける。
「何故陛下を狙う!堅帝の陛下の志をなんと心得る!」
しかし少女はその問に答えない。
そのためフォッカーは腕を踏みつけ、少女は悲鳴を上げた。
腕は曲がってはいけない方向に曲がる。
フォッカーは例え幼い人間だとしても容赦はしなかった。
それは少年兵を戦争で何人も殺してきた経験からだった。
「アァァァァア・・・」
「たかが腕一本で陛下を狙った罪が消えると思うなよ?」
「つ・・・み・・・」
それでも、涙を浮かべながらも負けないとフォッカーを睨み付ける。
その先にリリノアールが居る。
二人の作戦はこうだった。
一人を囮にしてもう一人が公爵家であるランジェル家に助けを求めて国外逃亡を図る。
「そうだ!悪いが連行させてもらう」
「い・・や・・よ」
かすれた声でフォッカーの頬に唾を吐きかける。
フォッカーは抵抗された場合は殺意を底上げされる呪法をかけられていた。
その為逆上したフォッカーにシリィは無抵抗に殴られる。
全身を殴られ続け、腹を思い切り殴られたところで少女が全く動かなくなっていることに気づいた。
少女は息をしていなかった。
死亡している証拠だった。
「賊を排除した・・・雨?」
フォッカー自身何故か自分の頬に液体が流れているのに気づく。
しかし雨が降ってる様子はなかった。
そして遺体を放置してその場を後にする。
しかし死んではおらず、少しだけ息を止めて死亡を装った。
フォッカーがその確認を怠るかは賭けだったが、その賭けに成功する。
それもそのはずで、リリノアールはその光景を森の上から見ており、そうするように呪法で操作した。
そしてフォッカーと入れ違うようにアハトが辿りついた。
これもリリノアールの策略であり、アハトにシリィの最期を看取らせ第二皇子として傀儡にしたあと万が一呪法を解除されたときに気力を無くさせるためだった。
「シリィ・・・」
「あ・・・は・・・と」
「すまない・・・俺がランジェル家の虐待に気づいていれば・・・」
なんとなく状況を察してアハトに声をかけようにも、咽も潰されて使い物にならなかった。
そして内臓もほとんど破裂していて感覚が無く、自分に死期が近いこともわかっている。
「私の家族を・・・恨まないで・・・ね」
しかしそのまま少女の腕はアハトの手をすり抜けて力尽きる。
アハトは少女の亡骸を抱えて一頻り泣いた後、その場を後にしランジェル邸へと向かった。
天の架け橋崩壊まであと1人。
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