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148(帝国)
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ルルシアが幼少期に過ごした屋敷。
ルルシアの両親にそこは売り払われたが、アハトが買取った。
そこが今のアハト達元天の架け橋の集いの場になっていた。
「アハト、どうやらルルも記憶が戻ったみたい」
リィナはそう言ってアハトの背中に寄りかかりながら話す。
アハトはリィナの言葉に驚きながらも少しだけ安堵の息を漏らす。
「ルルが?そうか・・・等々これで全員母の洗脳の支配下から抜けたんだね」
「でもディラは間に合わなかったわ。リリノアールはルルシアが逃げ出した時を踏まえてその呪法を施したみたいね」
「リリノアールには報いを受けさせる。いくらお前の母だからって容赦しねぇぞアハト」
「もちろんだカイン。俺だって容赦するつもりはない。でも厄介な事実もあるね」
「あぁ、監禁してたリリノアールが自殺したことだろ」
リリノアールを処刑するために、ルルシアを国外追放した日に牢獄へとリリノアールを閉じ込めたアハトだったが、その日の晩にリリノアールは自分の首を折って自殺していた。
最もこの場で知識が多いリィナが司法解剖を行ったが、確実にリリノアールだと判明した。
「彼女、確実に死んでるはず。なのにどうしても彼女が死んだとは思えないのよね」
「同感だ。自分の計画が崩れたからって死ぬタマじゃねぇだろあいつは」
「絶対に死んでは居ないですよ」
そしてこの部屋には天の架け橋以外にも出入りしている人間が何人かいた。
一人はこの女性、聖女ゴールドマリーだった。
「戻ったかマリ」
「アースにも言いましたがアハト様、私の事はゴールドマリーとお呼びになってください。どこで誰が見ているかわかりません」
「あぁそうだな。話は戻すが母上が死んでいない根拠は見つけてきたのか?」
「えぇ。剣婦の何人かは脱国を図っていますからね。一人は始末しましたよ」
そう言うと、窓の外を指さした。
屋敷の外にある森に一人の女性の頭を槍に刺した気味の悪い物が刺さっていた。
「バール・ベルゼブル・・・倒したのか。恐らく剣婦で一番厄介な能力だよ」
「俺が闘ったリヴァって奴が戦闘力は一番高いと思うけどな。それでゴールドマリー、宝具は回収したのか?」
「えぇ、これよ」
そう言うとゴールドマリーは化粧品の白粉を差し出す。
バールが持つのは飢餓の白粉であり、バールを殺したときにゴールドマリーが回収していた。
しかしそれに怪訝な顔をするアハト、カイン、リィナ。
「しくじったなゴールドマリー」
「どういうことですか?」
「お前、部屋に行ったんだよな?」
「えぇ、逃げ出すところだったのでその前に殺害しようとしていました」
「だったら、白粉を持っているのはおかしい。白粉の強みは複数箇所で保管できる事だ。なのにこんなあからさまなトコロに入れているわけがない。あの死体は恐らく偽物だろう」
「まさか!?」
ゴールドマリーはバールの死体を見に行こうとするが、リィナがその前に言葉を紡ぐ。
「解析は完了してるわ。あの頭はバールでは無いわ」
「チッ!掴まされたわね。ごめんなさい皆さん」
「構わねぇな。俺はリヴァって奴に雪辱も果たさないとならねぇ。その所為であいつにあんな決断をさせちまったんだから」
リィナは目を閉じて黙祷をする。
あの日死んだ二人は、リリノアールとリヴァが原因で死んでいた。
「俺がリヴァと相討ちにならなきゃ・・・すまねぇ」
「いいのよ。貴方は悪くない。きっと彼女もそう思って居ると思う」
「それを言うならワシが彼女の息の根を止めてしまいました・・・」
そしてもう一人入ってくる剣士がいた。
それは騎士団長フォッカーだった。
リリノアールに洗脳されていたが、アハト達同様に解除させることに成功した。
「それこそ仕方ないわよ。ルルの呪法と同じ様にフォッカーの呪法はリリノアールに感情を操作されるものだったわ。貴方の洗脳解除は正直賭けだったし、それでチャラって事で良いかしら?」
「そうはいかない。ワシはこの計画が終わったら、けじめを付ける」
「やめろよ。ルルの洗脳時の記憶にもお前は居るんだ。俺もアハトもそうだが、過去の俺と洗脳前の俺が混濁してるんだ。恐らくルルの洗脳時に一番いた家族はお前だ。悲しむぞ?」
「・・・そうですな。ルルシア様が帰還するまで、落ち着くまではこの命使いましょう」
「そうしてくれよ」
本物のフォッカーはそれでも恐らくルルシアと再会した後に自殺を図る事だろう。
それが彼の騎士の誇りだったり、色々とある。
「アースとアグリィが帰還したら、作戦を一つ実行してもらおうか」
「遂にやるのか。ルルは待たなくて良いのかよ」
「彼女を巻き込むのは不本意じゃない。それに彼女はリリノアールとフランチェスカ以外殺そうとはしないだろうからね」
「私も反対よ。でもこれしか手がないのも事実」
「そうかい。じゃあまぁいっちょやるか!ヒカラム共和国への侵攻を」
彼らの復讐と世界の安寧の為にヒカラム共和国は帝国に目を付けられた。
もしこれを知ればルルシアは止めに来ることだろう。
「ルルシア様が止めに来たらどうするのですか?」
「ゴールドマリー、お前が足止めを頼むぜ」
「人使いが荒いですね。その代わり、リリノアールは絶対に私の手で殺しますからね」
そして帝国はヒカラム共和国への侵攻へ向けて歩みを進め始めた。
ルルシアの両親にそこは売り払われたが、アハトが買取った。
そこが今のアハト達元天の架け橋の集いの場になっていた。
「アハト、どうやらルルも記憶が戻ったみたい」
リィナはそう言ってアハトの背中に寄りかかりながら話す。
アハトはリィナの言葉に驚きながらも少しだけ安堵の息を漏らす。
「ルルが?そうか・・・等々これで全員母の洗脳の支配下から抜けたんだね」
「でもディラは間に合わなかったわ。リリノアールはルルシアが逃げ出した時を踏まえてその呪法を施したみたいね」
「リリノアールには報いを受けさせる。いくらお前の母だからって容赦しねぇぞアハト」
「もちろんだカイン。俺だって容赦するつもりはない。でも厄介な事実もあるね」
「あぁ、監禁してたリリノアールが自殺したことだろ」
リリノアールを処刑するために、ルルシアを国外追放した日に牢獄へとリリノアールを閉じ込めたアハトだったが、その日の晩にリリノアールは自分の首を折って自殺していた。
最もこの場で知識が多いリィナが司法解剖を行ったが、確実にリリノアールだと判明した。
「彼女、確実に死んでるはず。なのにどうしても彼女が死んだとは思えないのよね」
「同感だ。自分の計画が崩れたからって死ぬタマじゃねぇだろあいつは」
「絶対に死んでは居ないですよ」
そしてこの部屋には天の架け橋以外にも出入りしている人間が何人かいた。
一人はこの女性、聖女ゴールドマリーだった。
「戻ったかマリ」
「アースにも言いましたがアハト様、私の事はゴールドマリーとお呼びになってください。どこで誰が見ているかわかりません」
「あぁそうだな。話は戻すが母上が死んでいない根拠は見つけてきたのか?」
「えぇ。剣婦の何人かは脱国を図っていますからね。一人は始末しましたよ」
そう言うと、窓の外を指さした。
屋敷の外にある森に一人の女性の頭を槍に刺した気味の悪い物が刺さっていた。
「バール・ベルゼブル・・・倒したのか。恐らく剣婦で一番厄介な能力だよ」
「俺が闘ったリヴァって奴が戦闘力は一番高いと思うけどな。それでゴールドマリー、宝具は回収したのか?」
「えぇ、これよ」
そう言うとゴールドマリーは化粧品の白粉を差し出す。
バールが持つのは飢餓の白粉であり、バールを殺したときにゴールドマリーが回収していた。
しかしそれに怪訝な顔をするアハト、カイン、リィナ。
「しくじったなゴールドマリー」
「どういうことですか?」
「お前、部屋に行ったんだよな?」
「えぇ、逃げ出すところだったのでその前に殺害しようとしていました」
「だったら、白粉を持っているのはおかしい。白粉の強みは複数箇所で保管できる事だ。なのにこんなあからさまなトコロに入れているわけがない。あの死体は恐らく偽物だろう」
「まさか!?」
ゴールドマリーはバールの死体を見に行こうとするが、リィナがその前に言葉を紡ぐ。
「解析は完了してるわ。あの頭はバールでは無いわ」
「チッ!掴まされたわね。ごめんなさい皆さん」
「構わねぇな。俺はリヴァって奴に雪辱も果たさないとならねぇ。その所為であいつにあんな決断をさせちまったんだから」
リィナは目を閉じて黙祷をする。
あの日死んだ二人は、リリノアールとリヴァが原因で死んでいた。
「俺がリヴァと相討ちにならなきゃ・・・すまねぇ」
「いいのよ。貴方は悪くない。きっと彼女もそう思って居ると思う」
「それを言うならワシが彼女の息の根を止めてしまいました・・・」
そしてもう一人入ってくる剣士がいた。
それは騎士団長フォッカーだった。
リリノアールに洗脳されていたが、アハト達同様に解除させることに成功した。
「それこそ仕方ないわよ。ルルの呪法と同じ様にフォッカーの呪法はリリノアールに感情を操作されるものだったわ。貴方の洗脳解除は正直賭けだったし、それでチャラって事で良いかしら?」
「そうはいかない。ワシはこの計画が終わったら、けじめを付ける」
「やめろよ。ルルの洗脳時の記憶にもお前は居るんだ。俺もアハトもそうだが、過去の俺と洗脳前の俺が混濁してるんだ。恐らくルルの洗脳時に一番いた家族はお前だ。悲しむぞ?」
「・・・そうですな。ルルシア様が帰還するまで、落ち着くまではこの命使いましょう」
「そうしてくれよ」
本物のフォッカーはそれでも恐らくルルシアと再会した後に自殺を図る事だろう。
それが彼の騎士の誇りだったり、色々とある。
「アースとアグリィが帰還したら、作戦を一つ実行してもらおうか」
「遂にやるのか。ルルは待たなくて良いのかよ」
「彼女を巻き込むのは不本意じゃない。それに彼女はリリノアールとフランチェスカ以外殺そうとはしないだろうからね」
「私も反対よ。でもこれしか手がないのも事実」
「そうかい。じゃあまぁいっちょやるか!ヒカラム共和国への侵攻を」
彼らの復讐と世界の安寧の為にヒカラム共和国は帝国に目を付けられた。
もしこれを知ればルルシアは止めに来ることだろう。
「ルルシア様が止めに来たらどうするのですか?」
「ゴールドマリー、お前が足止めを頼むぜ」
「人使いが荒いですね。その代わり、リリノアールは絶対に私の手で殺しますからね」
そして帝国はヒカラム共和国への侵攻へ向けて歩みを進め始めた。
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