身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第三章 王都での栄光と、実家の末路

第三十三話 戦場をお掃除します

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 地龍の背から見下ろす世界は、まさに地獄の様相を呈していた。
 かつてレティシアが浄化したはずの街道も、今は帝国の残滓である黒い霧に埋め尽くされようとしている。

「……ひどい。お花も、木も、みんな苦しそう……」

「レティシア、前を見ろ。来るぞ!」

 アレクシスがレティシアの腰を強く引き寄せ、背後を警戒する。
 霧の奥から現れたのは、帝国の残党魔術師たちが禁忌の術で造り出した『腐肉の翼ふにくのつばさ』――異形の怪鳥たちだった。それらは瘴気を撒き散らしながら、地龍を墜とさんと四方から肉薄してくる。

「アレクシス様、あの怪鳥たちも……元は綺麗な鳥さんだったはずなのに。あんなに汚されて……!」

「ああ、分かっている。奴らを解放してやるのが、俺たちの仕事だ」

 アレクシスが魔剣を振るう。銀色の衝撃波が空を裂き、怪鳥たちの動きを止める。
 その隙を突いて、レティシアは地龍の鱗を強く掴み、精神を集中させた。

「地龍様、風を! 私の光を、世界の端っこまで届けてください!」

『応よ! 我が風に貴殿の祈りを乗せん!』

 地龍が大きく翼を羽ばたかせると、そこから超高圧の暴風が巻き起こった。レティシアはその風に、自らの浄化魔力をすべて乗せて解き放つ。

「……お掃除、開始です! 汚れはすべて、光の塵におなりなさい!」

 ――ゴォォォォォォォン!!

 鐘の音のような衝撃と共に、地龍を中心として巨大な「浄化の波紋じょうかのはもん」が全方位へと広がった。
 波紋に触れた怪鳥たちは、その体からどす黒い泥を吐き出し、元の白い鳥へと戻って空へと飛び去っていく。そして、地上を覆い尽くさんとしていた黒い霧は、レティシアの光が触れた瞬間にキラキラとした結晶に変わり、雪のように大地へと降り注いだ。

「見て、アレクシス様! 霧が……消えていきます!」

「……信じられん。一国の軍勢でも太刀打ちできなかった絶望を、君はたった一振りの箒で……」

 アレクシスは驚愕し、そして改めて、自分の腕の中にいる少女の尊さに胸を熱くした。
 地上では、霧に飲まれかけていた兵士や平民たちが空を見上げ、地龍の背で輝く「黄金の乙女レティシア」の姿に跪き、涙を流して感謝を捧げていた。

 だが、安堵したのも束の間。地龍が低く唸った。

『娘よ、気を抜くな。……霧の源流は、さらに北。かつて我が兄弟が封印された『奈落の底ならくのそこ』にある。そこには、帝国の執念が生んだ真の怪物が待ち構えているぞ』

「奈落の底……。そこを掃除しない限り、この世界は本当には綺麗にならないんですね」

 レティシアはアレクシスの手を握り返した。
 アレクシスは、彼女の決意を汲み取り、不敵な笑みを浮かべる。

「いいだろう。どこへでも付き合う。……この世の果ての、一番汚い場所までな」

 地龍は咆哮を上げ、極北の地へとその翼を加速させた。

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