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第三章 王都での栄光と、実家の末路
第三十四話 地龍と共に空を舞う
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極北の空は、オーロラさえも黒く染めるほどの瘴気に満ちていた。
地龍の背に乗ったレティシアの頬を、凍てつく風が打つ。だが、彼女の心にあるのは恐怖ではなく、眼下に広がる「汚れ」への強い憤りだった。
「……あそこに、もう一頭の龍様がいらっしゃるのですね」
『……然り。我が兄弟、天龍だ。かつては空の清浄を司る誇り高き龍であったが、今は帝国の呪毒を全身に浴び、苦しみの果てに狂っている』
地龍の言葉通り、雲の裂け目から巨大な影が躍り出た。
それは地龍と同じほどの巨躯を持ちながら、その美しい銀色の鱗はどす黒く変色し、体中の節々からは絶えず泥のような瘴気が溢れ出している。
「グルゥゥゥ……ガァァァァァッ!!」
天龍が咆哮と共に、凝縮された闇のブレスを吐き出す。
アレクシスは即座に魔剣を抜き、レティシアを庇うようにその一撃を銀色の魔力で弾き返した。
「レティシア、このままでは地龍まで汚染される。一気に決めるぞ!」
「はい、アレクシス様! ……あの龍様、泣いています。体の中がゴミだらけで、とっても痛いんだわ……!」
レティシアは地龍の首筋を優しく叩いた。
『……心得た。娘よ、我の全魔力を貴殿の箒に預ける。思う存分、空を洗い清めるが良い!』
地龍がその巨体を黄金に輝かせ、天龍に向かって猛加速する。
二頭の龍が空中で激突せんとするその瞬間、レティシアは地龍の背を蹴って、空へと舞い上がった。
「――お掃除最大出力! 隅から隅まで、ピカピカになぁれ!!」
アレクシスがレティシアの体を片腕で支え、彼女の魔力を極限まで増幅させるための補助魔法を展開する。
レティシアが掲げた箒から放たれたのは、もはや光の柱と呼ぶべき奔流だった。それは天龍の体中を這いずる黒い呪いの鎖を、一本残らず「漂白」していく。
「ガ、アアアァァ……ッ!?」
天龍の口から、どろりとした黒い塊が吐き出された。
それは長年、帝国が天龍を操るために植え付けてきた『呪いの核』。
レティシアはその核を見逃さず、指先から放った浄化の雫で、空中でそれを美しい砂へと変えて見せた。
光が収まると、そこには美しい銀色の鱗を取り戻し、穏やかな瞳をした天龍が浮遊していた。
「……綺麗になった。よかった……」
力を使い果たし、崩れ落ちるレティシア。
アレクシスは彼女をしっかりと抱きとめ、愛おしそうにその額を自分の胸に寄せた。
「見事だ、レティシア。君は……本当に、世界を洗ってしまったな」
二頭の龍が寄り添い、天を貫く咆哮を上げる。
それは世界の終わりではなく、汚れなき新しい時代の始まりを告げる歌だった。
……だが。
その光景を、遥か遠くの王都のゴミ山から見つめている、濁った瞳があった。
「……あはは……あはははは! 綺麗ね、本当に綺麗……。でもね、レティシア……。最後に勝つのは、この『世の中の底』に溜まった私の憎しみよ……」
ミランダが、血のついた指で魔導書の最後のページを破り取る。
彼女の背後に広がるゴミの山が、まるで生き物のように蠢き始めていた。
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地龍の背に乗ったレティシアの頬を、凍てつく風が打つ。だが、彼女の心にあるのは恐怖ではなく、眼下に広がる「汚れ」への強い憤りだった。
「……あそこに、もう一頭の龍様がいらっしゃるのですね」
『……然り。我が兄弟、天龍だ。かつては空の清浄を司る誇り高き龍であったが、今は帝国の呪毒を全身に浴び、苦しみの果てに狂っている』
地龍の言葉通り、雲の裂け目から巨大な影が躍り出た。
それは地龍と同じほどの巨躯を持ちながら、その美しい銀色の鱗はどす黒く変色し、体中の節々からは絶えず泥のような瘴気が溢れ出している。
「グルゥゥゥ……ガァァァァァッ!!」
天龍が咆哮と共に、凝縮された闇のブレスを吐き出す。
アレクシスは即座に魔剣を抜き、レティシアを庇うようにその一撃を銀色の魔力で弾き返した。
「レティシア、このままでは地龍まで汚染される。一気に決めるぞ!」
「はい、アレクシス様! ……あの龍様、泣いています。体の中がゴミだらけで、とっても痛いんだわ……!」
レティシアは地龍の首筋を優しく叩いた。
『……心得た。娘よ、我の全魔力を貴殿の箒に預ける。思う存分、空を洗い清めるが良い!』
地龍がその巨体を黄金に輝かせ、天龍に向かって猛加速する。
二頭の龍が空中で激突せんとするその瞬間、レティシアは地龍の背を蹴って、空へと舞い上がった。
「――お掃除最大出力! 隅から隅まで、ピカピカになぁれ!!」
アレクシスがレティシアの体を片腕で支え、彼女の魔力を極限まで増幅させるための補助魔法を展開する。
レティシアが掲げた箒から放たれたのは、もはや光の柱と呼ぶべき奔流だった。それは天龍の体中を這いずる黒い呪いの鎖を、一本残らず「漂白」していく。
「ガ、アアアァァ……ッ!?」
天龍の口から、どろりとした黒い塊が吐き出された。
それは長年、帝国が天龍を操るために植え付けてきた『呪いの核』。
レティシアはその核を見逃さず、指先から放った浄化の雫で、空中でそれを美しい砂へと変えて見せた。
光が収まると、そこには美しい銀色の鱗を取り戻し、穏やかな瞳をした天龍が浮遊していた。
「……綺麗になった。よかった……」
力を使い果たし、崩れ落ちるレティシア。
アレクシスは彼女をしっかりと抱きとめ、愛おしそうにその額を自分の胸に寄せた。
「見事だ、レティシア。君は……本当に、世界を洗ってしまったな」
二頭の龍が寄り添い、天を貫く咆哮を上げる。
それは世界の終わりではなく、汚れなき新しい時代の始まりを告げる歌だった。
……だが。
その光景を、遥か遠くの王都のゴミ山から見つめている、濁った瞳があった。
「……あはは……あはははは! 綺麗ね、本当に綺麗……。でもね、レティシア……。最後に勝つのは、この『世の中の底』に溜まった私の憎しみよ……」
ミランダが、血のついた指で魔導書の最後のページを破り取る。
彼女の背後に広がるゴミの山が、まるで生き物のように蠢き始めていた。
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