ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
44 / 138
【第3章】

■第44話 : 陰謀渦巻く勝負ルール①

八尾との勝負が決まった翌々日の、2004年10月19日の昼下がり。

ファーストフード店にて昼食をとり終えた優司。
店を出て、さぁこれからどうするかと考えていたところ、不意にポケットに入っている携帯が振動を始めた。

かけてきた相手をディスプレイで確認した後、軽くため息をついてから電話に出た。

「もしもし……」

「おっす夏目!
 俺だよ俺、八尾。覚えてるだろ?」

「……ああ。忘れるわけないだろ」

「そっかそっか!
 なんかわりいな、勝負の約束してから2日も連絡しないで」

「……」

「細かいルールを決めたからさ、とりあえずチェックしてくれよ。
 これでオッケーだったら、次は勝負の日程決めないといけないしな」

「そのルールってのは、まだ決定したわけじゃないよな?」

「もちろんだ。そっちがチェックして、なんか不備や不満があんなら直すぜ。
 じゃあとりあえず、4時に東口駅前の『ブラジル』っていう喫茶店に来てくれ。
 それでな、来る時は誰か一人、そっち側の人間を連れてきて欲しいんだ。
 今度の勝負にも必要な存在だから、真剣に選んだ方がいいぜ?」

「え……? 誰か一人を連れていく……?
 なんでそんな必要があるんだ?」

「まあ、それは来てから説明するよ。
 こっちは信次を連れてく。
 こないだ俺と一緒にいたヤツだ」

「……わかった。必要だってんなら連れてくよ。
 じゃあ、4時に」

「おう! 遅れないでくれよな!」

そこで電話は切れた。

しかし、何故連れが必要なのか、その点がいまいち理解できない。

(なんか面倒くさい勝負になりそうだな……)

若干気が滅入ってきた。

優司としては、シンプルに『設定6を掴んだ方が勝ち』というルールの方が好ましい。

当然、設定読みが得意だということが最大の理由だが、それ以外にも『即興で決められた細かい制約がある』というのが嫌なのだ。

まず、八尾の決めたルールを吟味するという作業が面倒。
勝負相手が作ったルールなのだから、当然相手に有利になるようにできている可能性大だ。
しかも、パッと見ではそれがわからないように巧妙な作りにしてくるはず。

特に八尾は、なりふりかまわず勝ちを拾いにくる人間だと聞いている。
充分に注意しなければならない。

そして、しっかりと吟味したつもりでも、即興で決まったルールの中では『紛れ』も多い。

予想もつかないようなことで足元をすくわれるかもしれないのだ。
逆に、予想もつかないようなことに助けられることもあるわけだが。

(誰か連れてこい、か。よし、日高に頼むか)

優司は、一度ポケットにしまった携帯を再び取り出し、日高へと電話をした。



◇◇◇◇◇◇



約束の時間を過ぎた、16:20頃。
八尾に指定された駅前の『ブラジル』にて。

「……遅いな。本当に、その八尾ってのは来んのか?」

日高が軽く疑念を抱く。

今日は、朝から北斗を打っていた日高。
しかし、どうみても設定6はなさそうだと判断してやめたところに、丁度優司から電話がかかってきたのだ。

自分の打っている台の設定が期待できないことで優司に協力する時間が出来たため、呼ばれるままに『ブラジル』へ来た。

「大丈夫だよ日高。絶対来るよ。
 大体、アイツから呼び出したんだし、ここで来なけりゃ勝負自体成立しないんだしね。
 絶対来るでしょ」

「……だったらいいけどよ」

やや腑に落ちないとった面持ちの日高。

それもそのはず。
いきなり連れてこられて、しかも不毛に待たされているのだ。
不機嫌になるのもやむを得ない。

その時、不意に優司が声を出す。

「あっ……。来た、あいつらだ」

その言葉に反応し、日高は優司の視線を追う。

二人の男がこちらへ歩いてくるのがわかった。

「あの二人か?」

「ああ。茶髪で、両耳に3連ピアスをしてる方が八尾だよ」

短い言葉を交わしながら、敵が現れたことで身を強張らせる優司と日高。

「よぉ、ちょっと待たせちまったな、わりいわりい」

八尾がふてぶてしい態度で言葉を発した。

優司は、冷静に返答する。

「まあいいけどさ。さっさと話を進めようよ」

「おう。
 ……で、相方は日高君でいいんだな?」

八尾が、日高を指差しながら言った。

「おい、なんで俺のこと知ってんだ? 初対面だろ?」

「そりゃ知ってるよ!
 有名だもんなぁ。『エース』なんていうヌルいホールに居座り続けてられるなんて羨ましいよ」

「……なんかトゲある言い方だな。ケンカ売ってんのか?」

「別に? そう取るのは勝手だけどよ」

会ったそうそう、いきなり一触即発状態へと陥った。 
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話