無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

キムラましゅろう

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ミニ番外編

閑話 父の願い

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 学園の掃除もすっかり終わり、理事会によりすぐに学園長トップの挿げ替えが行われた。
学園長は責任を取って辞任…まぁ解雇という言葉が妥当だろう。地方の小さな初等学校の教頭となったらしい)

 新しい学園長の下、新体制での学園の運営が急ピッチで進められている。

 そんな中、落ち着くまではと学園を休学中のポレットを、父親のフェリックスはとある場所へと連れて来ていた。

 王都の郊外にある王室の保養所。
 王家の直轄領区にある、風光明媚で自然豊かな場所だ。

 そこにポレットを連れてきたフェリックスは湖へと続く森の小道を歩きながら愛娘に言う。


「今回の事ではとても辛い思いをしたな、ポレット……」

「辛いというか……とても怖かったわ……人の悪意や害意って、呪いよりも恐ろしいものなのね……」

 ポレットがそう答えると、フェリックスは憐憫の表情を色濃くして娘を見た。

「……王子の婚約者でいる限り、このような事がこれからも起こるかもしれないぞ」

「……そうですね……」

「ポレット。父さまはな、いや父さまもお祖父さまも伯父さまもお前の従兄弟たちも、その他ワイズ家門の男たち皆が、お前には要らぬ苦労はして欲しくないと思っているんだ。平凡でも心穏やかに暮らせる人生を贈って欲しいと願っている」

「父さま……?」

「しかし、王家に嫁ぐとなればそうはいかない。お前が歩む道は決して平坦ではない。魑魅魍魎が有象無象蠢く修羅の道だ……。ポレット、もし、お前が望むなら、もう王子の婚約者など辞めたいと思うなら、父さまが何とかしてやる。絶対にお前を守ってみせる」

「父さま……」

「お前には本当に幸せになってもらいたいんだ。それが父さまの、心からの願いだ」

 その言葉を聞き、ポレットは父の瞳をじっと見た。
 自分の瞳は父の、この赤い瞳を受け継いでいる。

 そして受け継いでいるのは瞳の色だけではない。

 ポレットはひとつ、小さく息を吐いて父親に訊ねた。

「父さまはどうして一度会っただけの、顔も知らない母さまを探し続けたの?その時は兄さまが生まれている事も知らなかったのでしょう?それなのになぜ?」

「なぜ、どうしてか……。理由なんて考えた事はなかったな、ただもう一度会いたい、それだけの想いに突き動かされていたよ。それは理屈じゃ説明できないな、どうしようもない強い想いが胸の内にあり、それは決して消えることはないんだ」

 父がそう言ったのを受け、ポレットは穏やかな笑みを浮かべて頷いた。

「わかる。わかるわ父さま。それは自分の唯一だから、そうでしょう?」

「あぁ。そうだ」

「デイビッド様が、わたしの唯一なの」

「………」

 ポレットは前方に続く小さな小道を真っ直ぐに見据え、フェリックスに言う。

「歩んでゆく人生が人よりも平坦なものでなくても、重い責任や様々なしがらみに囚われる人生になるのだとしても、それでもデイビッド様と一緒に生きてゆきたい。それが私の希望よ、わたしだってワイズの血が流れているのよ?“ワイズの唯一”はわたしにもあるの」

「ポレット……」

「ありがとう父さま。それにいざとなったら、わたしと一緒に魑魅魍魎と戦ってくれるでしょう?王国随一の魔術騎士が味方なら、何も怖いものなどないわ。そんな頼もしい父さまの娘に生まれて本当によかった。わたしは幸せものです」

「ポレットぉっ……」

「だから父さま、いつまでも見守っていてね。それだけでわたしは強く生きてゆける」

「もちろんだっ……この先王家に嫁いだとしても、ポゥは父さまのだ、いつまでも、必ず、誰よりもポゥの味方でいると誓うよ……」

「父さまも、母さまも兄さまもノエルも、みんなみんながわたしの宝ものです」

「ポレット……大人になって……」

フェリックスはそう言って盛大なため息を吐いた。

「ハァァァーー……お前がそう言うのは分かっていたけど、やはり遣る瀬ない……なにも幼い内から苦労を背負いこまなくても……という思いは変わらないが、まぁお前が幸せならそれが一番だ。ほら、行って来なさい」

「え?」

歩きながら喋っていて、いつの間にか湖まで到着したようだ。

「すでに到着されているようだよ」

「到着……?」

小道の向こうがやけに眩しく輝いている。
それは光を乱反射する湖面の輝きだと気付き、目を細めながらもポレットは歩みを止めることなく、湖に向けて足を動かした。

やがて小道が途切れ、森が開けたその時。
眩しい湖面を前にこちらに背を向けて立つ人影を見つけた。

ポレットはその人影を見つめ、つぶやくようにその名を口にする。


「………デイ様……」

そこにはポレットの婚約者であるデイヴィッドが湖に向かって立っていた。

ポレットは思わず立ち止まってその背をじっと見つめる。

少し痩せただろうか。

ポレットはそれ以上声を発する事もなく、ただ呆然とデイビッドを見つめていた。

やがてゆっくりとデイビッドが振り返る。

そして彼の瞳がポレットを捉えたと同時にくしゃっと、今にも泣き出しそうな笑顔になった。
そしてその唇が最愛の者の名を形取る。

「ポレット……」

「デイ様……」


フェリックスが娘の背をぽんと押してやった。

するとポレットはゆっくりとデイビッドの元へと歩き出す。

「ポレット」

デイビッドは両手を広げてポレットの方を一心に見つめていた。
それを見つめ返しながら、ポレットはだんだんと足早になってゆく。

「デイ様っ……!」


そしてポレットは、デイビッドの胸に飛び込んだ。








───────────────────────



後ろの魔王様はどんな顔をしているのでしょうか……

①娘の成長を心から喜び目頭を熱くしている。

②デイくんに抱きついたポレットを見てショックを受けている。

③「おのれ小僧(不敬)離れろ~っ」と邪悪な念を送っている。

さて、どれでしょうね?
なんとなく全部、すんごく忙しい事になってるような気もします☆



そして皆様、この物語の書籍化に伴い、お祝いのメッセージをありがとうございました!

本当に、本当に嬉しかったです!

書影が解禁になりましたら、Xやアメブロでご紹介しますね。

よろしくお願いいたします。







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