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プロローグ 夫には妻が二人いると言われている
しおりを挟む夫には妻が二人いると言われている。
戸籍上の妻と仕事上の妻。
戸籍上の妻とは私、リオナ・グライユル(20)で、夫レグラン・グライユル(27)の姓を名乗る事実上の妻だ。
そして仕事上の妻は……
「室長、おはようございます」
「おはよう。朝からご苦労」
「いえ、副官として当然のことですから」
「今日もよろしく頼む」
「はい。あ、奥様おはようございます」
「……おはようございます。ラミレスさん」
夫レグランとの会話の後に取ってつけたように私に挨拶をしてきたこの女性、名をメリッサ・ラミレス(25)という。
若干二十七歳にして魔法省特別監査室の室長を務めるレグランの副官で、彼女が夫の仕事上の妻と揶揄されている女性なのだ。
お見合いで結婚したばかりの私よりも遥かに長くレグランの側にいる。
夫レグランは平民だがその高い魔力と優秀な頭脳で魔術学園を首席で卒業し、魔法省の入省試験でも首席を取った出世街道を爆走する超エリートだ。
同じく平民でありながら魔法省の高官となり、以前の部署ではレグランの上官であった父の紹介で私たちは見合い結婚をした。
だから私とレグランの付き合いは一年半にも満たない短いもの。
(入籍と結婚式までがあっという間にトントン拍子に進んでいった)
対して副官であるラミレスさんとは監査室の室長となる前から数えるとすでに五年の付き合いになるという。
なので悔しいかな妻である私よりも、彼女は夫の事を熟知しているのだ。
省内でも長くレグランを支える優秀な副官として“グライユルの仕事上の妻”と揶揄されているらしい……。
見合いをしてすぐにレグランの方から結婚の申し込みがあり、瞬く間に婚約者となった後で私はその話を知った。
そしてすぐに父に事実関係を確認したのだった。
すると父は何でもない事のように、
「確かに省内であの二人を仕事上の夫婦などと言っている人間もいるが、それはあくまでも一部で揶揄されているだけのものだ。優秀なグライユルをやっかんでわざとスキャンダラスに言う輩もいるらしい。だがそれは上に上がる人間には付きものの妬み嫉みでもある、気にしていたらキリがないぞ。それに男女問わず近くでサポートする者を“女房役”というのは昔からじゃないか」
「でもお父さん、私いやだわ。そんな事言われている女性が側にいる男性なんて……せめて婚約を結ぶ前に知っていれば……」
「知っていてもお前は逃れられなかったと思うぞ?」
「え?何か言った?」
「いや?なにも。それより誓って言おう、グライユルに疚しいところは一つもない。彼は勤勉で誠実な男だ。……まぁ多少感情の起伏が乏しく生真面目過ぎる男だが、必ずお前を大切にそして幸せにしてくれると私は確信している」
「………そう。お父さんがそこまで言うのなら間違いはないのでしょうね。でも……」
でも、メリッサ・ラミレスの方はそうではなかったら?
未だに独身の彼女。
彼女の方には特別な感情があって彼の側にいるのだとしたら?
とその時、私はそう思ったのだ。
女の勘…というものなのかしら……。
そしてその勘が当たっていた事を、私は結婚式当日に知る事になるのだった。
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皆さま、あけましておめでとうございます。
今年もましゅろうの拙作にお付き合い頂けましたら光栄にございまする。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(ノ-᷅ ̫̈-᷄ )ノハハ―♡
感想欄は解放しますが、お返事はままならないかも……。
ゴメンなさい( ߹꒳߹ )
なんと!明日の朝も更新があるそうな!
𖠶𖠶ꜝꜝ𖠶𖠶ꜝꜝ𖠶𖠶ꜝꜝ
応援ありがとうございます!
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