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ようやく始まった新婚生活……?朝の風景
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『クロード、まさか私があなたの母親になるなんてね……』
───母さん、母さんだ。……そういえばあの手紙、本当に渡すべきなんだろうか……。
「………母さん……」
「母さん?………寝言?」
「……!」
朝、久しぶりに亡き母の夢を見たクロード。
つい口に出ていたようで、起きているのかと反応したジゼルの声にクロードは覚醒した。
そしてムクリと身を起こす。
すでに起き出して朝食の支度をしているジゼルがクロードに言った。
「……おはよう。そんなソファーで寝たら体バキバキになるやろ?家に帰ってちゃんと寝たら?」
夫婦は一緒に暮らすものだと押しかけてきたクロードだがジゼルが「寝室だけは別にして!」と頑として譲らなかったので、仕方なくソファーを運び込んでリビングで寝ている。
ジゼルはリビングが狭くなる、とも思ったが物が良いソファーだったので離婚後はそのまま置いといて貰おうとちゃっかり考えた。
「おはようジゼル。職業柄どこでも寝られるから問題ないよ。このソファーは大きめだしな」
そんな事言ってもクロードの身長は183センチ。長さが170センチのソファーでは小さいに決まっている。
そんな場所で寝て、ちゃんと疲れは取れてるのだろうか……。
ジゼルがそう思っているのがわかるのか、クロードはにやりと笑みを浮かべた。
「そう心配してくれるなら寝室に入れてくれてもいいんじゃないか?見たところベッドはセミダブルのようだし」
「なっ……!アレはっ、曲がりなりにも結婚して数ヶ月間ダブルベッドで寝とったから今更シングルで寝られへんようになってもうたの!」
じつは生来寝相の悪いジゼル。
シングルベッドで寝ていた時代は何度かベッドから落ちた事もある。
それがクロードと結婚してダブルという広いベッドを知ってしまった。
そうなればもう、シングルには戻れない。
アパートへ移る際、寝室の狭さで仕方なくセミダブルにはしたけれど。
だからといって恐らくあと数ヶ月で離婚するであろう夫と共寝なんてとんでもない。
そうだ、どうせクロードのソファー生活も期限付きなのだ。
それならべつに気にする必要はないとジゼルは思った。
クロードがアパートに転がり込んできて今日で一週間になる。
ラノベと違って押しの強いクロードに今のところ良い様にされているのが無性に腹が立つ。
が、クロードは存外に使える男で料理以外の家事は何でもそつ無くこなし、洗濯でも掃除でも率先してやってくれるのだ。
それに夫婦なんだからと生活費も多分に入れてくれて、ジゼルは食堂の稼ぎを丸々貯金に回せていたりする。
───…………まぁ出て行け言うても出て行かんのはクロードやし、どーせこの暮らしも期限付きやしな!その間ガッツリ貯めさせてもろとこ。
プライドより金、これからの人生である。
というわけでジゼルはこの便利な同居人……コホン、一応まだ旦那さまであるクロードと改めて新婚生活を送り始めたのであった。
「はい、朝ごはん出来たよ」
洗い終わった洗濯物を干しているクロードに声をかける。
今朝のメニューはお好み焼き風オムレツにした。
刻んだキャベツとベーコンを卵液に入れてふんわりと焼き上げる。
この世界にお好み焼きソースはないのでケチャップをかけて戴く。
あぁ……かつお節が恋しい。
クロードは騎士。
体が資本の仕事なのでとにかく沢山食べる。
ジゼルはオムレツ以外にもハムサラダやチーズをたっぷりのせたトロトロチーズトースト、フルーツを刻んで入れたヨーグルトなども用意した。
「お、今朝も美味そうだ」
クロードが嬉しそうにテーブルにつく。
「どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
それにジゼルは、誰かと向かい合って食事を摂るという事が少し嬉しかったりするのだ。
叔父の家では使用人のように一人台所の隅で食事をしていた。
たとえ少しの間だとしてもこうして一緒に「美味しいね」と言い合いながら食べられるなんて夢のようだ、とジゼルは思ってしまうのだ。
「美味い!このオムレツ絶品だよジゼル」
「……うん、ほんま美味しく出来てる」
なんだかいつもより美味しく感じるのが悔しい。
───おセンチになるなんてウチらしゅうもない。
ジゼルはおセンチな感情を振り切るように淡々と朝食を食べた。
───────────────────────
短めでごめんなさい。
でも明日の朝も更新あります。
しばらく小刻み更新かも?
───母さん、母さんだ。……そういえばあの手紙、本当に渡すべきなんだろうか……。
「………母さん……」
「母さん?………寝言?」
「……!」
朝、久しぶりに亡き母の夢を見たクロード。
つい口に出ていたようで、起きているのかと反応したジゼルの声にクロードは覚醒した。
そしてムクリと身を起こす。
すでに起き出して朝食の支度をしているジゼルがクロードに言った。
「……おはよう。そんなソファーで寝たら体バキバキになるやろ?家に帰ってちゃんと寝たら?」
夫婦は一緒に暮らすものだと押しかけてきたクロードだがジゼルが「寝室だけは別にして!」と頑として譲らなかったので、仕方なくソファーを運び込んでリビングで寝ている。
ジゼルはリビングが狭くなる、とも思ったが物が良いソファーだったので離婚後はそのまま置いといて貰おうとちゃっかり考えた。
「おはようジゼル。職業柄どこでも寝られるから問題ないよ。このソファーは大きめだしな」
そんな事言ってもクロードの身長は183センチ。長さが170センチのソファーでは小さいに決まっている。
そんな場所で寝て、ちゃんと疲れは取れてるのだろうか……。
ジゼルがそう思っているのがわかるのか、クロードはにやりと笑みを浮かべた。
「そう心配してくれるなら寝室に入れてくれてもいいんじゃないか?見たところベッドはセミダブルのようだし」
「なっ……!アレはっ、曲がりなりにも結婚して数ヶ月間ダブルベッドで寝とったから今更シングルで寝られへんようになってもうたの!」
じつは生来寝相の悪いジゼル。
シングルベッドで寝ていた時代は何度かベッドから落ちた事もある。
それがクロードと結婚してダブルという広いベッドを知ってしまった。
そうなればもう、シングルには戻れない。
アパートへ移る際、寝室の狭さで仕方なくセミダブルにはしたけれど。
だからといって恐らくあと数ヶ月で離婚するであろう夫と共寝なんてとんでもない。
そうだ、どうせクロードのソファー生活も期限付きなのだ。
それならべつに気にする必要はないとジゼルは思った。
クロードがアパートに転がり込んできて今日で一週間になる。
ラノベと違って押しの強いクロードに今のところ良い様にされているのが無性に腹が立つ。
が、クロードは存外に使える男で料理以外の家事は何でもそつ無くこなし、洗濯でも掃除でも率先してやってくれるのだ。
それに夫婦なんだからと生活費も多分に入れてくれて、ジゼルは食堂の稼ぎを丸々貯金に回せていたりする。
───…………まぁ出て行け言うても出て行かんのはクロードやし、どーせこの暮らしも期限付きやしな!その間ガッツリ貯めさせてもろとこ。
プライドより金、これからの人生である。
というわけでジゼルはこの便利な同居人……コホン、一応まだ旦那さまであるクロードと改めて新婚生活を送り始めたのであった。
「はい、朝ごはん出来たよ」
洗い終わった洗濯物を干しているクロードに声をかける。
今朝のメニューはお好み焼き風オムレツにした。
刻んだキャベツとベーコンを卵液に入れてふんわりと焼き上げる。
この世界にお好み焼きソースはないのでケチャップをかけて戴く。
あぁ……かつお節が恋しい。
クロードは騎士。
体が資本の仕事なのでとにかく沢山食べる。
ジゼルはオムレツ以外にもハムサラダやチーズをたっぷりのせたトロトロチーズトースト、フルーツを刻んで入れたヨーグルトなども用意した。
「お、今朝も美味そうだ」
クロードが嬉しそうにテーブルにつく。
「どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
それにジゼルは、誰かと向かい合って食事を摂るという事が少し嬉しかったりするのだ。
叔父の家では使用人のように一人台所の隅で食事をしていた。
たとえ少しの間だとしてもこうして一緒に「美味しいね」と言い合いながら食べられるなんて夢のようだ、とジゼルは思ってしまうのだ。
「美味い!このオムレツ絶品だよジゼル」
「……うん、ほんま美味しく出来てる」
なんだかいつもより美味しく感じるのが悔しい。
───おセンチになるなんてウチらしゅうもない。
ジゼルはおセンチな感情を振り切るように淡々と朝食を食べた。
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短めでごめんなさい。
でも明日の朝も更新あります。
しばらく小刻み更新かも?
応援ありがとうございます!
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