2 / 42
第2話 宿屋の看板娘ハミールに出会う
しおりを挟む
「ふぅ着いたぜ。いや~遠かった!」
身体を大きく伸ばしてるのは俺、ガオ。理由はわからないが王都騎士団から追放されて、休息も兼ね田舎町イナーカにやってきたのである。
イナーカにやってきて取り敢えず宿を決め、荷を下ろす。さすが田舎だけあって宿が安い。
山に森、田んぼに無駄にだだっ広いだけの広場(草原)。土と草木、家畜の匂いがする絵に描いたようなところであった。
「さて、夕方で飯食うにも微妙な時間だな。やることもないしそこら辺でもぶらつくか」
そう言って宿の裏すぐの広場で一人の女の子が木刀を振り回していた。16~7歳くらいの見た目で、茶髪で肩までの長さ。黄色の瞳は一心不乱に木刀を振り下ろす先を見定めていた。年頃の娘にしては少し筋肉質であるが、女性的な膨らみが手のひらほどあり、素振りの度に少し揺れる。
膨らみは置いておき、我流なのだろうが随分と太刀筋に光るものを感じて、しばらく眺めていた。
20分ほど経ったころ、彼女が視線に気付いたのかこちらに近付いてきた。
「あの、ずっとそこに居ますが私に何かようでしょうか?宿でしたらすぐ後ろにございますが」
「あぁ、気に障ったならすまない。そこの宿をとって散歩していたら君を見かけて、剣の太刀筋が良かったもので思わず見入っていたよ」
自分をずっと眺める不審者に訝しんだ顔をして訪ねてきた木刀娘。確かに側からみたら不審者そのものだな俺は。
「あ、ありがとうございます!太刀筋がわかるということは冒険者様とかでしょうか!?」
突然、目を輝かせて問いかけてきた。テンションの落差に少しビックリする、そして顔が近い。
「いや、冒険者ではないが剣のことなら一通りのことは修めた身ではある」
「冒険者様ではないのですね・・・・。あの、よろしければ剣の扱いについてご指導をお願いできませんでしょうか?」
まぁ一応、国の最高峰の機関、王都騎士団所属ではあったため剣に多少の自信はある。
しかし、彼女のちょっとガッカリした反応を見るに、彼女は冒険者を目指しているのだろう。”ロマン<安定した暮らし”の思考である俺からしたら、収入不安定でプー太郎に近い冒険者というものはどうも魅力を感じない。
とはいえ暫くは暇も持て余すだろうし、長旅で鈍った身体を動かすには丁度いいか。
「まぁ、しばらくの間は暇だし、いいよ見てあげる」
「あ、ありがとうございます!!!私の名前はハミールと申します。あなたのお名前は?」
「俺の名前はビーコムズ・ガーオ。ガオと呼んでくれ」
「はい。ガオさん。よろしくお願いします」
「それじゃ早速で悪いが、その木刀で俺に好きなだけ打ち込んできてくれ」
そう言いながら俺はそこらへんの丁度良さげな枝を拾い上げる。
「えっと・・・ガオさん?その枝でよろしいのでしょうか?そしていきなり打ち込んでも・・・?」
「構わないよ。取り敢えず、君が君自身の目で、俺が教えを請うに足る師かどうか見極めてくれ」
「は・・・はい。それではいきます!!」
ハミールが木刀を振り上げ斬りかかる。が、光るものがると言えどまだまだ未熟。
「振り上げるときに肩に力が入りすぎている!足も力が入る踏み込みではない!余裕があるなら腕じゃなくて腰を回せ!振った後の戻しが遅い!視野をもっと広く!」
彼女の木刀を薄皮ギリギリで躱しながら、彼女の改善すべき点を枝でペシペシ指摘する。
そして暫く打ち込んだ後、先ほどの練習の疲れもあってか急激に動きが遅くなったため終了とした。
「うん。改善点は山ほどあるけどやはり筋がいい。指摘をすぐ取り入れる姿勢もグッドだ!」
「ハァ・・・・ハァ・・・・ありが・・・とう・・・・ございます・・・ハァ・・・」
ハミールは疲れはあったものの、自身の渾身の打ち込みを全て児戯のようにあしらわれて驚愕していた。女ながらに、イナーカでは誰にも負けなかった。そういった自信が打ち砕かれるのを感じた。一方で、どのくらいの実力差があるかもわからない彼に指導を受けられる喜びも感じていた。
「それじゃ、本格的な指導は明日からってことで。ハミールはいつ訓練している?」
「ハァ・・・ハァ・・・スーーーーーー。訓練は早朝とお店の手伝いが終わった後の今日のこの時間です」
「わかった。じゃあ早朝とこの時間に指導をする。よろしくな」
「はい。こちらこそお願いします」
約束をして二人は別れ・・・・るはずだったが、同じ方向に歩いていく。そして同じ宿に入っていく。
「もしかしてハミールの手伝ってるお店って・・・」
「はい。この宿が私の実家です!」
まさかの宿の看板娘であった。
身体を大きく伸ばしてるのは俺、ガオ。理由はわからないが王都騎士団から追放されて、休息も兼ね田舎町イナーカにやってきたのである。
イナーカにやってきて取り敢えず宿を決め、荷を下ろす。さすが田舎だけあって宿が安い。
山に森、田んぼに無駄にだだっ広いだけの広場(草原)。土と草木、家畜の匂いがする絵に描いたようなところであった。
「さて、夕方で飯食うにも微妙な時間だな。やることもないしそこら辺でもぶらつくか」
そう言って宿の裏すぐの広場で一人の女の子が木刀を振り回していた。16~7歳くらいの見た目で、茶髪で肩までの長さ。黄色の瞳は一心不乱に木刀を振り下ろす先を見定めていた。年頃の娘にしては少し筋肉質であるが、女性的な膨らみが手のひらほどあり、素振りの度に少し揺れる。
膨らみは置いておき、我流なのだろうが随分と太刀筋に光るものを感じて、しばらく眺めていた。
20分ほど経ったころ、彼女が視線に気付いたのかこちらに近付いてきた。
「あの、ずっとそこに居ますが私に何かようでしょうか?宿でしたらすぐ後ろにございますが」
「あぁ、気に障ったならすまない。そこの宿をとって散歩していたら君を見かけて、剣の太刀筋が良かったもので思わず見入っていたよ」
自分をずっと眺める不審者に訝しんだ顔をして訪ねてきた木刀娘。確かに側からみたら不審者そのものだな俺は。
「あ、ありがとうございます!太刀筋がわかるということは冒険者様とかでしょうか!?」
突然、目を輝かせて問いかけてきた。テンションの落差に少しビックリする、そして顔が近い。
「いや、冒険者ではないが剣のことなら一通りのことは修めた身ではある」
「冒険者様ではないのですね・・・・。あの、よろしければ剣の扱いについてご指導をお願いできませんでしょうか?」
まぁ一応、国の最高峰の機関、王都騎士団所属ではあったため剣に多少の自信はある。
しかし、彼女のちょっとガッカリした反応を見るに、彼女は冒険者を目指しているのだろう。”ロマン<安定した暮らし”の思考である俺からしたら、収入不安定でプー太郎に近い冒険者というものはどうも魅力を感じない。
とはいえ暫くは暇も持て余すだろうし、長旅で鈍った身体を動かすには丁度いいか。
「まぁ、しばらくの間は暇だし、いいよ見てあげる」
「あ、ありがとうございます!!!私の名前はハミールと申します。あなたのお名前は?」
「俺の名前はビーコムズ・ガーオ。ガオと呼んでくれ」
「はい。ガオさん。よろしくお願いします」
「それじゃ早速で悪いが、その木刀で俺に好きなだけ打ち込んできてくれ」
そう言いながら俺はそこらへんの丁度良さげな枝を拾い上げる。
「えっと・・・ガオさん?その枝でよろしいのでしょうか?そしていきなり打ち込んでも・・・?」
「構わないよ。取り敢えず、君が君自身の目で、俺が教えを請うに足る師かどうか見極めてくれ」
「は・・・はい。それではいきます!!」
ハミールが木刀を振り上げ斬りかかる。が、光るものがると言えどまだまだ未熟。
「振り上げるときに肩に力が入りすぎている!足も力が入る踏み込みではない!余裕があるなら腕じゃなくて腰を回せ!振った後の戻しが遅い!視野をもっと広く!」
彼女の木刀を薄皮ギリギリで躱しながら、彼女の改善すべき点を枝でペシペシ指摘する。
そして暫く打ち込んだ後、先ほどの練習の疲れもあってか急激に動きが遅くなったため終了とした。
「うん。改善点は山ほどあるけどやはり筋がいい。指摘をすぐ取り入れる姿勢もグッドだ!」
「ハァ・・・・ハァ・・・・ありが・・・とう・・・・ございます・・・ハァ・・・」
ハミールは疲れはあったものの、自身の渾身の打ち込みを全て児戯のようにあしらわれて驚愕していた。女ながらに、イナーカでは誰にも負けなかった。そういった自信が打ち砕かれるのを感じた。一方で、どのくらいの実力差があるかもわからない彼に指導を受けられる喜びも感じていた。
「それじゃ、本格的な指導は明日からってことで。ハミールはいつ訓練している?」
「ハァ・・・ハァ・・・スーーーーーー。訓練は早朝とお店の手伝いが終わった後の今日のこの時間です」
「わかった。じゃあ早朝とこの時間に指導をする。よろしくな」
「はい。こちらこそお願いします」
約束をして二人は別れ・・・・るはずだったが、同じ方向に歩いていく。そして同じ宿に入っていく。
「もしかしてハミールの手伝ってるお店って・・・」
「はい。この宿が私の実家です!」
まさかの宿の看板娘であった。
0
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる