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第3節 震撼
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「眞鍋さん、これはどうゆうことですか?」
正人は、眞鍋の姿を見て、恐怖心からは少し解放されたものの、自分の置かれた状況がまだ理解できずに、眞鍋に駆け寄った。
「ですから、単にこの場所を知られることを避けたかっただけでございます。」
カウンターキッチンから、クッキーを盛った皿を持ちながら出てきた柳田が言った。
「あなたは、さっきの運転手の…。」
「はっはっは、私は運転手ではありませんよ。幸司さまの執事でございます。ようこそ、眞鍋邸へ。」
柳田は、ダイニングテーブルにクッキーを盛った皿を置いた。
「…眞鍋邸って。ここ、どこかの倉庫に映画のセットを作っただけのようですが。」
正人は、またキョロキョロと周囲を見回しながら言った。
「…えぇ、訳があって、今はここを仮住まいにしています。お気になる点は後程。さぁ、まずはお茶でも飲んでリラックスしてください。」
柳田はそう言うと、ダイニングテーブルの椅子を引き、正人に座るように促した。正人は言われるがまま、椅子に座り、眞鍋が入れた紅茶を飲もうとした。
「村上さん、ダメだ!!」
ソファから池畑が大声で叫んだ。正人は驚き口を付けるのを止め、カップをソーサーに戻した。
「眞鍋さん、俺たちをどうするつもりだ。携帯はどこにやった。」
池畑は目覚めていたが、様子を伺うため眠っている振りをしていた。
「ふっははは。池畑さん、警戒しすぎですよ。だいたい、あなたたちに危害を加えるのであればとっくにやってますよ。あなたたちは大切なお客様、ただこの場所を知られることを避けたかっただけです。ですから、GPSが見られる携帯電話はお預かりさせていただいております。また、駅にお送りした時にお手元にお返ししますから。」
柳田が池畑に近づき、一礼をして、ダイニングテーブルに案内をし、椅子に座らせた。
「警戒するお気持ちも理解できます。」
柳田はそう言うと、正人に出された紅茶を手に取り一気に飲み干した。
「この通り、安全な美味しい紅茶でございます。」
柳田は、新しいカップに紅茶を注ぎ、正人と池畑の前に置いた。眞鍋がテーブルの誕生日席に当たる部分に立ち、一礼した。
「さて、では早速本題に入りましょうか。紅茶を飲みながらで結構ですので話をお聞きください。…柳田、頼む。」
眞鍋の合図で柳田は、部屋のセットを飛び出し、セットの調度対面に置かれていた、巨大な布で覆われた物体の横に立ち止まり、一礼した。
「まずは、本日の主役になります、リムをご覧いただきたい。」
眞鍋がパチンッと指を鳴らすと、柳田が覆われた布を勢いよく引っ張り、物体が露になった。
「あれが…リム。」
正人と池畑は、ゆっくり立ち上がり、部屋のセットのギリギリまでリムを見るために歩き出した。
リムは、真っ黒な電話ボックスのような縦長の出入口付きの箱が両側にあり、真ん中には、まるで管制室のような巨大な操作盤が置かれていた。更に、その後ろにはエンジン部分であろう巨大な箱形の装置があり、その迫力に正人は圧倒された。
「……これで、佐倉が生き返るのか…。」
池畑は、リムの外見に圧倒され、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「さぁさぁ、興奮されるのも理解できますが、まだ話の途中ですので席にお戻りを。」
眞鍋が二人に戻るように指示をし、二人はまたダイニングテーブルへと腰かけた。
「次に、生き返らせたい方の一部分はお持ちいただけましたかね。お出しください。」
正人と池畑は、それぞれの隣に置かれていた私物の鞄を漁った。正人は、千里の小さな骨の一部を、池畑は髪の毛が数本入った透明なビニールを取り出した。
「あいつのヘアブラシを捨てずに取っておいて助かりましたよ。」
眞鍋は、二人から提示されたものを受け取ると、いつの間にか眞鍋の隣に戻っていた柳田に手渡した。
「次に、生き返らせる対象の監督責任者になるあなた方の登録をします。この後、リムの前まで移動していただき登録作業していただきますが、今回の生命再生が完了するまでの流れを簡単に説明します。」
正人は、メモを取るために、以前パソコンから打ち出した分厚いマニュアルを鞄から取り出した。
「村上さん、ご用意がいいですね。そこに書いてあることですが、改めて簡易的に説明します。まず、あなた方の登録が済みましたら、先程お預かりした骨と髪の毛をリムにセットします。リムには縦長のボックスが二つありますが、二人を同時に生き返らせることが可能です。事前に村上さんから聞いておりますが、池畑さんが生き返らせたい方は生死が不明ということで、まだこの世に存在している場合は、生き返らせることができませんのでご承知おきください。だいたい、四時間ほどで再生は完了いたします。再生後ですが、また皆様を横浜駅までお送りいたしますが、帰りは目隠しでお願いいたします。」
非現実的な内容を淡々と説明し、眞鍋は着席した。
「…たったの四時間で人間が造れるんですか!?」
「新生児は十月十日かかるのに、驚きだな。」
正人と池畑は予想外の時間の短さに驚きの表情を見せた。眞鍋はニコリと笑い、説明を続けた。
「ここからが最も大事なことですが、生き返らせた方が生前と全く同じ記憶を持っているとは限りません。亡くなる前に余りに衝撃を受け、強く印象に残っているものなどが前面に出る形で記憶が形成される可能性があります。これがこのリムの弱いところで、記憶に関しては個体によってかなり差違が出ることをご承知おきください。それから、生き返った方が再び自ら命を絶ったり、誰かに殺害されたりした場合は、監督責任者のあなた方も命を落とすことになります。…命を粗末に再生しないための、意味のある誓約ですので、ご理解ください。…では、今の説明内容に同意いただけましたら、リムの前まで移動していただきたい。」
眞鍋はそう言うと立ち上がり、柳田とともにリムへとゆっくり歩き出した。正人は、すっと立ち上がり、また池畑は一回深呼吸してから立ち上がり、眞鍋たちの後ろをゆっくりと歩き出した。
「………千里、もうすぐだ…。」
正人は、眞鍋の姿を見て、恐怖心からは少し解放されたものの、自分の置かれた状況がまだ理解できずに、眞鍋に駆け寄った。
「ですから、単にこの場所を知られることを避けたかっただけでございます。」
カウンターキッチンから、クッキーを盛った皿を持ちながら出てきた柳田が言った。
「あなたは、さっきの運転手の…。」
「はっはっは、私は運転手ではありませんよ。幸司さまの執事でございます。ようこそ、眞鍋邸へ。」
柳田は、ダイニングテーブルにクッキーを盛った皿を置いた。
「…眞鍋邸って。ここ、どこかの倉庫に映画のセットを作っただけのようですが。」
正人は、またキョロキョロと周囲を見回しながら言った。
「…えぇ、訳があって、今はここを仮住まいにしています。お気になる点は後程。さぁ、まずはお茶でも飲んでリラックスしてください。」
柳田はそう言うと、ダイニングテーブルの椅子を引き、正人に座るように促した。正人は言われるがまま、椅子に座り、眞鍋が入れた紅茶を飲もうとした。
「村上さん、ダメだ!!」
ソファから池畑が大声で叫んだ。正人は驚き口を付けるのを止め、カップをソーサーに戻した。
「眞鍋さん、俺たちをどうするつもりだ。携帯はどこにやった。」
池畑は目覚めていたが、様子を伺うため眠っている振りをしていた。
「ふっははは。池畑さん、警戒しすぎですよ。だいたい、あなたたちに危害を加えるのであればとっくにやってますよ。あなたたちは大切なお客様、ただこの場所を知られることを避けたかっただけです。ですから、GPSが見られる携帯電話はお預かりさせていただいております。また、駅にお送りした時にお手元にお返ししますから。」
柳田が池畑に近づき、一礼をして、ダイニングテーブルに案内をし、椅子に座らせた。
「警戒するお気持ちも理解できます。」
柳田はそう言うと、正人に出された紅茶を手に取り一気に飲み干した。
「この通り、安全な美味しい紅茶でございます。」
柳田は、新しいカップに紅茶を注ぎ、正人と池畑の前に置いた。眞鍋がテーブルの誕生日席に当たる部分に立ち、一礼した。
「さて、では早速本題に入りましょうか。紅茶を飲みながらで結構ですので話をお聞きください。…柳田、頼む。」
眞鍋の合図で柳田は、部屋のセットを飛び出し、セットの調度対面に置かれていた、巨大な布で覆われた物体の横に立ち止まり、一礼した。
「まずは、本日の主役になります、リムをご覧いただきたい。」
眞鍋がパチンッと指を鳴らすと、柳田が覆われた布を勢いよく引っ張り、物体が露になった。
「あれが…リム。」
正人と池畑は、ゆっくり立ち上がり、部屋のセットのギリギリまでリムを見るために歩き出した。
リムは、真っ黒な電話ボックスのような縦長の出入口付きの箱が両側にあり、真ん中には、まるで管制室のような巨大な操作盤が置かれていた。更に、その後ろにはエンジン部分であろう巨大な箱形の装置があり、その迫力に正人は圧倒された。
「……これで、佐倉が生き返るのか…。」
池畑は、リムの外見に圧倒され、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「さぁさぁ、興奮されるのも理解できますが、まだ話の途中ですので席にお戻りを。」
眞鍋が二人に戻るように指示をし、二人はまたダイニングテーブルへと腰かけた。
「次に、生き返らせたい方の一部分はお持ちいただけましたかね。お出しください。」
正人と池畑は、それぞれの隣に置かれていた私物の鞄を漁った。正人は、千里の小さな骨の一部を、池畑は髪の毛が数本入った透明なビニールを取り出した。
「あいつのヘアブラシを捨てずに取っておいて助かりましたよ。」
眞鍋は、二人から提示されたものを受け取ると、いつの間にか眞鍋の隣に戻っていた柳田に手渡した。
「次に、生き返らせる対象の監督責任者になるあなた方の登録をします。この後、リムの前まで移動していただき登録作業していただきますが、今回の生命再生が完了するまでの流れを簡単に説明します。」
正人は、メモを取るために、以前パソコンから打ち出した分厚いマニュアルを鞄から取り出した。
「村上さん、ご用意がいいですね。そこに書いてあることですが、改めて簡易的に説明します。まず、あなた方の登録が済みましたら、先程お預かりした骨と髪の毛をリムにセットします。リムには縦長のボックスが二つありますが、二人を同時に生き返らせることが可能です。事前に村上さんから聞いておりますが、池畑さんが生き返らせたい方は生死が不明ということで、まだこの世に存在している場合は、生き返らせることができませんのでご承知おきください。だいたい、四時間ほどで再生は完了いたします。再生後ですが、また皆様を横浜駅までお送りいたしますが、帰りは目隠しでお願いいたします。」
非現実的な内容を淡々と説明し、眞鍋は着席した。
「…たったの四時間で人間が造れるんですか!?」
「新生児は十月十日かかるのに、驚きだな。」
正人と池畑は予想外の時間の短さに驚きの表情を見せた。眞鍋はニコリと笑い、説明を続けた。
「ここからが最も大事なことですが、生き返らせた方が生前と全く同じ記憶を持っているとは限りません。亡くなる前に余りに衝撃を受け、強く印象に残っているものなどが前面に出る形で記憶が形成される可能性があります。これがこのリムの弱いところで、記憶に関しては個体によってかなり差違が出ることをご承知おきください。それから、生き返った方が再び自ら命を絶ったり、誰かに殺害されたりした場合は、監督責任者のあなた方も命を落とすことになります。…命を粗末に再生しないための、意味のある誓約ですので、ご理解ください。…では、今の説明内容に同意いただけましたら、リムの前まで移動していただきたい。」
眞鍋はそう言うと立ち上がり、柳田とともにリムへとゆっくり歩き出した。正人は、すっと立ち上がり、また池畑は一回深呼吸してから立ち上がり、眞鍋たちの後ろをゆっくりと歩き出した。
「………千里、もうすぐだ…。」
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