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何度繰り返しても愛してる
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フッと目が醒める。目の前には愛しい君。だけど俺が知る君よりも幼い。幼い君に必死で手を伸ばす。
そして気がつく。また生まれ変わったのだと。
痛くない? 苦しくない? 俺を、覚えてる?
彼女は俺に手を伸ばす。その指を小さい手で掴むと、驚いたように目を丸くした。
ああ、彼女は。
「うふふ、フランったらリルちゃんのことがすっかり気に入ったみたいね」
「ほ、ほんと?」
「ええ。だって、フランはこんなに幸せそうよ?」
リル、リル、その名前を何度も頭の中で繰り返して噛みしめる。
彼女は、リルは俺を覚えてない。
心が喜びに震えた。
リルが俺を覚えてないことが嬉しくてたまらない。
もうあんな悲しいことは起こらない。もう俺は彼女は手離さない。
リルは俺のもの。俺だけのもの。
ああ、こんな強い口調じゃダメだ。彼女の、リルの一生の座を得るんだ。警戒されないよう、愛らしい、そう、幼い口調で。
僕、そう、自分のことは僕と言おう。
彼女を怖がらせないように、彼女の愛が僕へと向くように。
なにも覚えてない彼女の恋心を奪うためならなんだってしよう。
彼女との年齢差は三つ。もう少し早く生まれていれば彼女の生まれた瞬間からずっと見守れたのだと思うと口惜しい。
だけど今はこの幸運を噛みしめなければ。
僕が生まれた瞬間から、彼女との婚約は決まっていた。王家と宰相家の血の繋がりを濃くするためらしい。
僕にとってはそんな家の思惑なんて関係ない。
彼女が手に入るのだから。
アルリリアは俺の三つ上で、母親が王族の姫だった。アルリリアは今の国王の姪にあたる。愛称はリル。前とはあまり似ていない名前だ。
リルはあまり自分に自信のない気弱で、素直な女の子。そんなところも愛らしい。
僕以外の男と二人きりにはなってはダメだよ、と教え込むと素直に頷きその通りにする。
リルの記憶がないのは少し残念だけど、そうでもなければきっと僕たちの溝はそのままだから、かえってよかったのかもしれない。
あの不幸はもう二度と経験したくない。彼女に「愛してるなんて信じられない」とはもう二度と言われたくない。
「リル」
「フラン様!」
僕の呼びかけにリルは満面の笑みで答える。
僕より年上の彼女なのに、なんだか幼く感じる。いや、これが本来の彼女だった。
無邪気で愛らしい彼女。幼さの残る笑みで僕を魅了してやまない。
繰り返しの人生で疲弊した彼女は疲れきって、なにかを悟ったような笑みだった。けれど最初の彼女は確かにこんな風に満面の笑みで僕を受け入れてくれていた。
僕が壊した笑顔がここにある。
リルの家と僕の家はとても近いところにある。赤ん坊だった自分を利用してリルから離れなかった結果だ。さすがに泣いたのは子供っぽかったかとは思ってる。
基本的にこの二つの家に住んでるのは僕の母とリルの母とそれから数人の使用人たち、そして僕とリル。僕の父親は城にほとんど寝泊まりしていて、リルの父親と兄は本家と領地を行ったりきたりだ。
あんなに忙しい父を見てると、宰相職には就きたくないなって思う。なるしかないんだけど。もしなっても、絶対に夜はリルのいるところに帰ろう。絶対に。
屋敷の庭園が僕とリルの待ち合わせ場所。
「フラン様、聞いてください。昨日、ダンスのレッスンで褒めてもらえたんです」
褒めて褒めて、とリルの目が訴えてる。
微笑ましいリルの様子に笑みを浮かべながら、彼女の頭を撫でるとリルは頬を染めて照れ臭そうに笑った。
「偉いね、リル」
「私、頑張ってフラン様の隣にふさわしい淑女になります」
「──うん。でも、無理はしないでね」
今のままでもリルは立派な淑女だ。
僕が神童なんて呼ばれてるばっかりに、それに相応しくあろうとしてる。人生二十八回分の記憶があるんだ。そんな僕と張り合わなくていいのに。そう思うけど、リルの好きなようにさせてやろうと思う。
リルは思い込みが激しい。彼女たちはみんな思い込みが激しかったように思える。そんなところもかわいいけど。
思い込みが激しいリルは、きっと自分が僕に相応しくないと思い悩んで、いつか変な決断をしてしまいそうで怖い。
でももうそんなすれ違いはしたくないから。
「リル、愛してるよ」
リルが不安にならないように、愛してるを繰り返す。
僕がそう囁くたびに、リルは瞳を潤ませ顔を赤くさせてとても愛らしい。
「り、リルもっ! フラン様のこと、愛してます……っ!」
そして必死に僕に愛を返してくれる。
自分の中の僕たちが歓喜に狂うのがわかる。
愛してる。信じてもらえなかった言葉を今の彼女は信じてくれる。繋がらなかった想いが一つになる。
リルの豊かな金の髪を一房手にとって口付ける。
リルが固まって、それからはくはくと口を開いて、閉じて、顔をこれ以上ないほど赤くさせる。
「ふ、ふらん様ぁ……」
「無理だけはしちゃダメだよ、リル。リルが僕から離れたら、僕がおかしくなっちゃうから」
にっこりと冗談交じりで本音を言う。
リルが消えたらどうなるんだろう。また一緒に死ぬのか。自分でもわからない。前回は完全に彼女を道連れにした。
冷たい冬の水の中だ。彼女も助からなかっただろう。
彼女だけでも助かっていたとしても、彼女はとても優しい。僕が殺されて平気でいるとは思えない。生きていても、頭の中は僕のことだけを考える人生だろう。
それがどうしようもなく嬉しい自分はきっとどこか壊れてる。
「リルはフラン様から離れません」
「うん。信じてるよ、リル。なにかあったらまずは僕に言うこと。二つ目の約束だよ」
「はいっ」
しっかりと返事をしたリルの頭を撫でる。
ちなみに一つ目は僕以外の男と二人きりにならないこと。
リルはかわいい。贔屓目なしに、かわいらしい。容姿もだけど、性格も。そんな彼女を手に入れようとする奴はこの先絶対湧いてくる。と、幼い僕は思ったので、話せるようになってすぐにその約束をした。
案の定、リルの従兄弟である王太子殿下はリルを婚約者にと望んでる。誰がリルを渡すか。リルは僕の愛しい子。王太子を暗殺してでも渡さない。
「フラン様? どうしました? 怖い顔してる……」
「ああ、ごめんね。リルになにかあったら、と考えてたら不安になっただけ。ねぇ、リル。キスしてもいい?」
リルは僕の言葉にこてんと首を傾げて暫く考える。それから言葉の意味がわかったのか、みるみるうちに顔をりんごのように赤く染めた。
そろそろキスくらいいいんじゃないかなって思うんだよね。
愛らしいリルにもう一度キスしてもいいかと聞くと、顔をこれ以上ないほどに赤くしながらかすかに頷く。
すかさずその唇に自分の唇を重ねた。
「ふ、フランさま……」
「かわいいリル。大好きだよ。愛してる」
触れるだけのキスしかしてないのに、いっぱいいっぱいというような表情を浮かべるリルに愛しさが募る。
「ずっと、君だけを愛してる」
「リルもです、フラン様……」
今は触れるだけのキス。いつか大人になったら、深いキスをしよう。
僕たちはまだ子供だから、まだまだ未来は長い。
一歩づつ、君と一緒に歩んで行こう。
そして気がつく。また生まれ変わったのだと。
痛くない? 苦しくない? 俺を、覚えてる?
彼女は俺に手を伸ばす。その指を小さい手で掴むと、驚いたように目を丸くした。
ああ、彼女は。
「うふふ、フランったらリルちゃんのことがすっかり気に入ったみたいね」
「ほ、ほんと?」
「ええ。だって、フランはこんなに幸せそうよ?」
リル、リル、その名前を何度も頭の中で繰り返して噛みしめる。
彼女は、リルは俺を覚えてない。
心が喜びに震えた。
リルが俺を覚えてないことが嬉しくてたまらない。
もうあんな悲しいことは起こらない。もう俺は彼女は手離さない。
リルは俺のもの。俺だけのもの。
ああ、こんな強い口調じゃダメだ。彼女の、リルの一生の座を得るんだ。警戒されないよう、愛らしい、そう、幼い口調で。
僕、そう、自分のことは僕と言おう。
彼女を怖がらせないように、彼女の愛が僕へと向くように。
なにも覚えてない彼女の恋心を奪うためならなんだってしよう。
彼女との年齢差は三つ。もう少し早く生まれていれば彼女の生まれた瞬間からずっと見守れたのだと思うと口惜しい。
だけど今はこの幸運を噛みしめなければ。
僕が生まれた瞬間から、彼女との婚約は決まっていた。王家と宰相家の血の繋がりを濃くするためらしい。
僕にとってはそんな家の思惑なんて関係ない。
彼女が手に入るのだから。
アルリリアは俺の三つ上で、母親が王族の姫だった。アルリリアは今の国王の姪にあたる。愛称はリル。前とはあまり似ていない名前だ。
リルはあまり自分に自信のない気弱で、素直な女の子。そんなところも愛らしい。
僕以外の男と二人きりにはなってはダメだよ、と教え込むと素直に頷きその通りにする。
リルの記憶がないのは少し残念だけど、そうでもなければきっと僕たちの溝はそのままだから、かえってよかったのかもしれない。
あの不幸はもう二度と経験したくない。彼女に「愛してるなんて信じられない」とはもう二度と言われたくない。
「リル」
「フラン様!」
僕の呼びかけにリルは満面の笑みで答える。
僕より年上の彼女なのに、なんだか幼く感じる。いや、これが本来の彼女だった。
無邪気で愛らしい彼女。幼さの残る笑みで僕を魅了してやまない。
繰り返しの人生で疲弊した彼女は疲れきって、なにかを悟ったような笑みだった。けれど最初の彼女は確かにこんな風に満面の笑みで僕を受け入れてくれていた。
僕が壊した笑顔がここにある。
リルの家と僕の家はとても近いところにある。赤ん坊だった自分を利用してリルから離れなかった結果だ。さすがに泣いたのは子供っぽかったかとは思ってる。
基本的にこの二つの家に住んでるのは僕の母とリルの母とそれから数人の使用人たち、そして僕とリル。僕の父親は城にほとんど寝泊まりしていて、リルの父親と兄は本家と領地を行ったりきたりだ。
あんなに忙しい父を見てると、宰相職には就きたくないなって思う。なるしかないんだけど。もしなっても、絶対に夜はリルのいるところに帰ろう。絶対に。
屋敷の庭園が僕とリルの待ち合わせ場所。
「フラン様、聞いてください。昨日、ダンスのレッスンで褒めてもらえたんです」
褒めて褒めて、とリルの目が訴えてる。
微笑ましいリルの様子に笑みを浮かべながら、彼女の頭を撫でるとリルは頬を染めて照れ臭そうに笑った。
「偉いね、リル」
「私、頑張ってフラン様の隣にふさわしい淑女になります」
「──うん。でも、無理はしないでね」
今のままでもリルは立派な淑女だ。
僕が神童なんて呼ばれてるばっかりに、それに相応しくあろうとしてる。人生二十八回分の記憶があるんだ。そんな僕と張り合わなくていいのに。そう思うけど、リルの好きなようにさせてやろうと思う。
リルは思い込みが激しい。彼女たちはみんな思い込みが激しかったように思える。そんなところもかわいいけど。
思い込みが激しいリルは、きっと自分が僕に相応しくないと思い悩んで、いつか変な決断をしてしまいそうで怖い。
でももうそんなすれ違いはしたくないから。
「リル、愛してるよ」
リルが不安にならないように、愛してるを繰り返す。
僕がそう囁くたびに、リルは瞳を潤ませ顔を赤くさせてとても愛らしい。
「り、リルもっ! フラン様のこと、愛してます……っ!」
そして必死に僕に愛を返してくれる。
自分の中の僕たちが歓喜に狂うのがわかる。
愛してる。信じてもらえなかった言葉を今の彼女は信じてくれる。繋がらなかった想いが一つになる。
リルの豊かな金の髪を一房手にとって口付ける。
リルが固まって、それからはくはくと口を開いて、閉じて、顔をこれ以上ないほど赤くさせる。
「ふ、ふらん様ぁ……」
「無理だけはしちゃダメだよ、リル。リルが僕から離れたら、僕がおかしくなっちゃうから」
にっこりと冗談交じりで本音を言う。
リルが消えたらどうなるんだろう。また一緒に死ぬのか。自分でもわからない。前回は完全に彼女を道連れにした。
冷たい冬の水の中だ。彼女も助からなかっただろう。
彼女だけでも助かっていたとしても、彼女はとても優しい。僕が殺されて平気でいるとは思えない。生きていても、頭の中は僕のことだけを考える人生だろう。
それがどうしようもなく嬉しい自分はきっとどこか壊れてる。
「リルはフラン様から離れません」
「うん。信じてるよ、リル。なにかあったらまずは僕に言うこと。二つ目の約束だよ」
「はいっ」
しっかりと返事をしたリルの頭を撫でる。
ちなみに一つ目は僕以外の男と二人きりにならないこと。
リルはかわいい。贔屓目なしに、かわいらしい。容姿もだけど、性格も。そんな彼女を手に入れようとする奴はこの先絶対湧いてくる。と、幼い僕は思ったので、話せるようになってすぐにその約束をした。
案の定、リルの従兄弟である王太子殿下はリルを婚約者にと望んでる。誰がリルを渡すか。リルは僕の愛しい子。王太子を暗殺してでも渡さない。
「フラン様? どうしました? 怖い顔してる……」
「ああ、ごめんね。リルになにかあったら、と考えてたら不安になっただけ。ねぇ、リル。キスしてもいい?」
リルは僕の言葉にこてんと首を傾げて暫く考える。それから言葉の意味がわかったのか、みるみるうちに顔をりんごのように赤く染めた。
そろそろキスくらいいいんじゃないかなって思うんだよね。
愛らしいリルにもう一度キスしてもいいかと聞くと、顔をこれ以上ないほどに赤くしながらかすかに頷く。
すかさずその唇に自分の唇を重ねた。
「ふ、フランさま……」
「かわいいリル。大好きだよ。愛してる」
触れるだけのキスしかしてないのに、いっぱいいっぱいというような表情を浮かべるリルに愛しさが募る。
「ずっと、君だけを愛してる」
「リルもです、フラン様……」
今は触れるだけのキス。いつか大人になったら、深いキスをしよう。
僕たちはまだ子供だから、まだまだ未来は長い。
一歩づつ、君と一緒に歩んで行こう。
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